プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツに所属する松田康甫投手が、米国メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースとマイナー契約を結んだ。甲子園の経験もなく、けがが重なり、大学では1試合、BCリーグでは3試合の登板しかない23歳の無名の選手が、底知れないポテンシャルを武器にメジャーに挑む。
ドジャースの目に止まった松田選手は身長193センチ、体重93キロ、右投げ右打ちの大型投手。金沢高では3年夏に県ベスト8、拓殖大では1年冬に肩の内視鏡手術をし、ほとんど出番を得られなかった。だがプロへの道をあきらめ難く、BCリーグ合同トライアウトを経て茨城に入団。ここで大きな成長を遂げた。
「大学では毎日ブルペンに入っていたが、プラネッツでは週1回。球数を減らすことで、ただ投げるのではなく1回1回が大事になる。トレーニングの成果も出て、投げるたびに成長を実感できた」
昨季4月4日、栃木ゴールデンブレーブスとの開幕戦では中継ぎで登板し、自己最速の155.8キロを記録。「監督に(コントロール重視で)抑えますかと聞いたら、球を速くしろ、スピードガンコンテストだと言われ、ストレートのみで腕を振りまくった」そうだ。4月16日、3回目の登板となった巨人3軍との交流戦では先発し、打者3人に17球を投げて3三振を奪った。

これらの試合の動画などを見て「155キロを出し、素晴らしいスプリットを見せた。体格、球速、投球スタイルなど、全部が気に入った」と獲得の要因を語ったのは、17日の記者会見にオンラインで参加した、ドジャースのジョン・ディーブル環太平洋スカウティングディレクターだ。
だが巨人戦の後、肘の痛みが出て7月にトミージョン(ひじ靭帯再建手術)を受け、現在もリハビリ中。復帰には12カ月かかるといわれている。手術に踏み切ったのもドジャースとの相談の上だという。「1年後の出口というより、彼が持つポテンシャルでどんな未来を描けるか、ベストの道を選んだ」とアストロプラネッツの色川冬馬ゼネラルマネージャー。
ディーブル・スカウティングディレクターは「われわれは過去にも数々の日本人選手を獲得し育成してきた。選手が上へ駆け上がるための施設や環境が整っている。数々の成功例の流れに乗り、新しい歴史が残せると思う」という。
今、松田投手は、故郷の石川県で小学校の非常勤講師をしながらリハビリに励み、3月の渡米に備えている。ドジャースではじっくりと時間をかけて回復に全力を注ぎつつ成長を図り、リハビリを終えた後は経過を見ながら、現場で投げられるようプッシュしていく道筋だという。
「メジャーはあこがれの場。不安はあるが関係ない。行かないと自分の夢を果たせない」と話す。夢は世界一の野球選手になることで、そのためにリハビリを成功させるのが目の前の目標。メジャーのマウンドに立ったらどういう投球がしたいかという質問には「めっちゃ速い球投げたい。170キロとか」と、いたずらっぽく笑った。(池田充雄)