コロナ禍、アルバイトが減った学生やひとり親家庭などに食材の無料配布を続けてきたつくば市の市民団体「学生応援プロジェクト@つくばPEACE」の活動が12月で1年を迎えた。冨山香織代表(40)にインタビューし、1年間で何が見えてきたのか聞いた。
―つくばPEACEの発足のきっかけは何ですか。
冨山 私自身が筑波大近くで飲食店を経営していて、困窮している学生を目の当たりにして、何かやってあげられることはないかと思い、知人や友人に声を掛けたのが始まりです。コロナ禍でバイトがなくなってしまった人や仕送りがなくなったという声も行動を起こすきっかけとなりました。
―1年経った感想はいかがですか。
冨山 初めはこんなに続くと思っていませんでした。この活動が続くということはそれだけ困窮している学生がいるということでもあり、素直に喜ぶことはできませんが、カンパをくれたり野菜を届けてくれる支援者がいてこそ活動が続けられたので、とても感謝しています。配布を受ける学生の人数に波はあったものの、頼れる場所になることができてよかったと思います。支援者の皆さんには本当に感謝しかありません。しかし、支援物資の提供を頼んだ時に「大学生ってそんなに生活に困ってないでしょ」と、困窮している大学生がいるという実情を知らない人もいました。一方でカンパを寄せてくれた人から、顔も知らないのに「活動応援しています。がんばって」という励ましのメールをもらったこともありました。支援する立場であるはずが、逆に励まされることもたくさんありました。
―1年を通して印象に残った出来事は何ですか。
冨山 ある学生に食材配布を行ったらお礼のメールが来て、その学生はもらったものをすべて実家に送っていることを知ったことです。実家には幼い弟と身体的に不自由な母がいて、その学生は自分のことよりも弟と母親を優先させていることに涙が出てきてしまいました。その状況に胸が痛くなりました。その学生は、自分に時間があったら手伝いたいとも言ってくれました。自分自身が生きるのに精一杯なのに。心からの優しさを感じ、私自身も視野が広がりました。
―活動を通して周囲にどんな変化がありましたか。
冨山 私たちの活動がSNSや口コミで地域に知れ渡り、支援してくれる人が増えました。私自身も今まではカンパを集めることに必死でしたが、今では少し心の余裕ができました。また、利用者が増加し、延べ3200人になりました。リピーターも多いです。
―活動を通してうれしかったことは何ですか。
冨山 学生たちが笑顔で(食材を)持って帰ってくれること。顔を合わせて直接話せることもうれしいです。この活動を通して地域住民や大学生、農家の方や企業などとも関わることができました。また、今年5月ごろから学生スタッフが増えました。スタッフになってくれた学生は、最初は自分が支援される立場として配布会に来て、「何かお手伝いできることはありませんか」と自ら声を掛けてくれた人たちです。一緒にダイコンを配ったこともありました。懐かしい。いろいろな人と出会うことができました。
―ほかに印象に残ったエピソードがあれば教えてください。
冨山 支援者の中には10万円を匿名で持ってきてくれた人がいました。その方は名前こそ教えてくれませんでしたが、「前からこの活動を気にかけていました。支援のきっかけを作ってくれてありがとう」とおっしゃった。またメディアに載ったことで今年1月と2月にカンパが増えました。配った食材でつくった料理をSNSでアップして報告してくれた学生もいました。そんなツイートを見かけるとうれしくなります。スタッフも10代から70代まで本当に幅広い人たちに支えてもらいました。一年間走り続けてきて、支援者とスタッフには感謝しきれません。たくさんのありがとうをもらいました。
―今後について聞かせてください。
冨山 これからも学生支援を引き続き実施できるよう努力していきたいと思います。皆さまのご支援、よろしくお願いします。本当にありがとうございます。
聞き手・武田唯希