月曜日, 1月 19, 2026
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牛のげっぷから世界を救う 胃内細菌に新種を発見 農研機構

丑(うし)年もいよいよ師走。牛のげっぷには温室効果ガスであるメタンが大量に含まれることが知られるが、メタンの生成を抑える効果の期待される新種の細菌が、農研機構畜産研究部門(つくば市池の台、高橋清也所長)の乳牛の胃の中から発見された。乳牛精密管理研究領域、真貝拓三主任研究員らが取り組んだ研究成果だ。

牛などの反すう動物のげっぷには、消化管内での発酵により生じるメタンが含まれている。牛1頭からは1日あたり200~600リットルのメタンが放出されるという。メタンは、1個の炭素原子に4個の水素原子が結合する炭化水素で、地球温暖化の原因のひとつと考えられている。世界中の反すう家畜のげっぷに由来するメタンは、二酸化炭素換算で年間約20億トンと推定され、全世界で発生している温室効果ガスの約4%を占める。

牛には胃が4つあり、そのうちの第一胃と第二胃には内容液1リットルあたり10兆個以上の微生物(細菌など)が生息する。特に第一胃内には古細菌が高密度に生息し、発酵をさかんに行いメタンを生成する。発酵で生じる水素がメタンになり、げっぷとして排出されるのだが、細菌は本来えさを分解し、消化により牛に栄養を与える役割を担う。酢酸など短鎖脂肪酸をつくり、胃壁などから吸収される。

牛の第一胃内発酵の概略図 発酵で生じる水素はメタン産生やプロピオン酸産生等によって消費される=農研機構提供

プロピオン酸前駆物質を多く生成

研究では、第一胃内の代謝産物、プロピオン酸に注目した。第一胃内で生成される短鎖脂肪酸のうち、プロピオン酸の割合は15~20%程度にとどまるが、多くつくられると、メタンの生成が抑制されることが知られていた。

第一胃内の細菌は約2400種あるという。特殊な栄養環境であるため、培養可能なものは2割程度で、機能の分かっていない細菌が未だ多いのが現状というなか、農研機構が保有する牛から、胃液中のプロピオン酸濃度の高い乳用牛を選び、第一胃内微生物の核酸配列を元に、微生物群集構造を網羅的に解析した。

胃液中のプロピオン酸濃度の高い牛に特徴的な細菌を見出し、これをターゲットに分離すると、プレボテラ属細菌の一種と見られる新規の嫌気性細菌が見つかった。この細菌はグルコース(ブドウ糖)などを代謝し、コハク酸、乳酸、リンゴ酸を生成する。コハク酸などは、他の第一胃内微生物によって主にプロピオン酸に変換される。「プロピオン酸前駆物質」と呼ばれるものだ。

プレボテラ属細菌はヒトの口や腸内にも多く存在する嫌気性細菌だが、見つかった細菌は、既知のプレボテラ属とは保有する遺伝子や生理特性が異なる新種だった。既知の細菌よりもプロピオン酸前駆物質を多く生成する特徴があったという。

今後、新種菌による飼料分解や発酵機能、第一胃内での増殖促進条件を明らかにすることで、乳用牛をはじめとした反すう家畜からのメタン削減に活用が期待される。真貝主任研究員によれば、「反すう動物にとってメタンを大気中に放出することは、飼料として摂取したエネルギーの2~15%を失うことになる。そのため、家畜からのメタン産生量の削減は、地球温暖化の緩和ばかりでなく、家畜の生産性向上の面からも期待される」としている。(相澤冬樹)

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