新型コロナウイルス感染症の医療対策では、自宅療養を余儀なくされる軽症・中等症患者への対応が課題になっている。県保険医協会(県内の医師・歯科医師2100人余で構成)が実施した医療機関への調査で、診療所の5割が、軽症の自宅療養者に対する対応は不可能、9割が中等症患者に対する対応は不可能と回答していることが分かった。
同協会は、地域診療所の医師は多くが1人体制で、日常診療やワクチン接種を平行しながら管理するとなれば、容体急変時の迅速な対応が難しくなることから「不可能」とする回答が多くなっているのではないかと分析する。
9月と10月に、協会に所属する会員の診療所769件を対象にアンケート調査を実施した。回答があったのは148件(19.2%)だった。
自宅療養者への対応については、軽症患者に対しては51.3%の診療所が、中等症患者に対しては86.4%が対応不可能だと回答した。
一方で軽症患者に対しては「対応可能」「かかりつけ患者であれば対応可能」と回答した診療所が48.7%を占めた。特にかかりつけ患者の場合、既往歴などを把握していることから症状が比較的軽い場合は継続して診療を行えると判断する医療機関が一定数あることを裏付けた。
アンケート結果から中等症患者について「自宅療養での対応は不可能」と多くの医療機関が回答したことは、「自宅療養では適切な医療がうけられなことを示唆しており、第6波に備え、中等症以上の受け入れ先の確保は急務の課題だとしている。
事実、自宅療養者に対応するため改善が必要と回答したのは「急変時の搬送先の確保」が83.1%と最も高く、次いで「入院等の判断基準」(47.9%)、「自宅療養者への対応方法」(45.1%)、「3者間(保健所・市町村担当部署・医療機関)での情報共有(23.6%)と続いている。
現場の医師の声として「自宅療養よりも臨時医療施設の設置を優先すべき」「自宅療養そのものが不可」「観察施設の設置が必要」「自宅療養は医療とはいえないため、せめて宿泊施設であれば協力しやすくなる」「入院先が無く、なし崩し的に重症患者を在宅で診なければならなくなることに対する恐怖がある」「在宅死はあまりにも痛ましい。せめて収容施設を」など義務と責任のはざまで苦悩する立場が浮き彫りになっている。(山崎実)