茨城県独自の県民税として2008年度から徴収し、県内の森林保全・整備や霞ケ浦など湖沼・河川の水質保全事業に活用しててきた森林湖沼環境税が今年度で最終年度を迎え、開会中の県議会で与野党の論戦を呼んでいる。
すでに県内の林業や浄化槽など水質保全関係業界などから「継続」を求める陳情書が提出され、県議で構成する県森林・林業・林産業活性化促進議員連盟も歩調を合わせている。
同税は県民均等割超過課税方式により、県民1人当たり年間1000円を徴収(県民税均等割が非課税者は除く)している。08年度から今年度当初予算までの税収は約235億円となり、基金により他の税収と区分して管理している。
県議会の質疑応答の中で大井川和彦知事は、同税は当初、間伐など森林整備・管理の推進などに重点を置いていたが、知事就任後の18年度から方針を転換し、経営規模の拡大に意欲的な林業経営体への支援等を通じ、森林経営の集約化を推進してきた、結果、集約森林は17年度末の約2300ヘクタールから20年度末には約1万ヘクタールまで拡大した、自立に向けた規模拡大が進む成果がいわれてきていると、成果を強調している。
一方、湖沼、河川の水質保全では、特に霞ケ浦の水質浄化に関連し、高度処理型浄化槽の設置、下水道・農業集落排水施設への接続などに、重点的に活用したと強調。さらに小規模事業所の排水対策として、基準超過に対し罰則や改善命令ができる水質保全条例を改正、今年4月1日の条例施行前に、霞ケ浦沿岸の小規模事業所を立ち入り検査による指導で強化し、霞ケ浦のCOD(化学的酸素要求量)値は税導入前の1リットル当たり約9ミリグラムから約7ミリグラムに低下したとしている。
しかし近年は横ばい状態にあり、知事自ら「従来の枠組みにとらわれず、成果の高い施策にさらに重点化が必要なのではないか」と問題提起している。
このため、農林水産部、県民生活環境部など関係部局間で現在、事業や施策の具体的内容を検討中で、同税の継続か否かを含め、改正案の骨子がまとまり次第、県民の意見を聞きながら「第4回定例会(12月県議会)に改正条例案を提案したい」としている。(山崎実)
市町村から延長求め要望
一方、市町村からは同税の延長を求める要望書が提出されている。霞ケ浦流域の21市町村でつくる「霞ケ浦問題協議会」(会長・安藤真理子土浦市長)は15日、本年度で期限が切れる茨城県森林湖沼環境税の期間延長を求める要望書を、大井川和彦知事に提出した。安藤会長らが県庁を訪れ、大井川知事に要望書を手渡した。
同税は森林や湖沼・河川などの自然環境の保全を目的に導入され、現在は第3期課税期間。要望書では、霞ケ浦の水質浄化の目標達成には今後とも継続的な水質浄化対策が必要と指摘した上で、▽課税期間の5年間延長▽霞ケ浦に係る湖沼水質保全計画に位置付けられた、各種事業の着実かつ速やかな推進-などを求めた。
安藤会長は「霞ケ浦の水質浄化には時間がかかるため、長期的な視点での対策が必要。安定的な財源が確保されるよう、課税期間の5年延長を要望する」と述べた。