土曜日, 5月 30, 2026
ホームつくば介助者という社会資源の少なさ【かなわなかった自立生活】㊦ 

介助者という社会資源の少なさ【かなわなかった自立生活】㊦ 

自立生活がかなわず今年1月に亡くなった蛯原千佳子さん(60)は、つくば自立生活センターほにゃらで2017年8月から宿泊体験を14回繰り返した。19年11月には、ほにゃらの介助者も蛯原さんの介助に自信が出てきて、人数さえ増えれば、一人暮らしを始められる状況になった。しかし、一人暮らしを支える介助体制をつくれないまま、蛯原さんは亡くなった。

ほにゃら事務局長の斉藤新吾さん(46)は、「地域で生活したい障害者の希望をかなえるためには、障害者が入所施設ではなく、地域で暮らすことは人間としての当たり前の権利であることを、ほにゃらの職員だけでなく、社会全体が認識していく必要がある」と話す。

街中で求人チラシ配る

蛯原さんに関わる介助者を増やすためには、当初から蛯原さんに関わっていた介助者が蛯原さんの介助に十分に慣れ、新しい介助者に障害の特性や体調に合わせた介助方法を伝えられるまでになる必要がある。宿泊体験を始めてから1年8カ月後の19年春、蛯原さんの介助に慣れてきたころ、ほにゃらでは蛯原さんの一人暮らしを支える介助者を募集した。

求人チラシを作成し、駅前で配ったり、全国の福祉系大学に求人票を郵送した。介助という仕事が持つ負のイメージを変えるために、仕事内容の紹介動画を作り、ホームページに載せたりもした。蛯原さん自身も宿泊体験中に介助者と一緒に街中に出かけ、直接チラシを配った。

ほにゃらの介助者だけでは足りず、他の訪問介護事業所と連携することも考え、20年1月には相談支援専門員を探し始めた。相談支援専門員とは、訪問介護や訪問入浴など複数の事業所が1人の障害者の生活に関わる際、事業所間の連絡調整をおこなったり、必要なサービスを受けるための行政的な手続きをおこなう機関である。

本来なら蛯原さん自身が自分に合った相談支援専門員を探すはずだったが、新型コロナが蔓延し、ほにゃらの介助者が施設で面会することもできなくなったため、ほにゃら側で蛯原さんの地域生活を支える相談支援専門員を探した。

20年7月に一度だけ短時間の面会が許可され、蛯原さんと相談支援専門員が初めて顔を合わせることができた。が、それ以降はまた面会が制限された。

一人暮らしに向けて、他の介護事業所とも連携したかったが、具体的にいつから介助派遣を依頼するか定まらないと、相談支援専門員から他の介護事業所に協力を求めるのも難しい。蛯原さんとほにゃら介助者、相談支援専門員が面会し、一人暮らしを始める具体的な日程を決められないまま、蛯原さんは体調を崩し、今年1月亡くなった。

つくば自立生活センターほにゃらのスタッフ・介助者と蛯原さん(手前)

「重度障害者の地域生活を支える社会資源の少なさと、新しい社会資源をつくり出せなかったことが、蛯原さんの一人暮らしが実現できなかった一番の原因なのでは」と、斉藤さんは話す。

権利知ってもらうことから

2014年に日本も批准した国連の障害者権利条約第19条では、障害者に、他の者と平等に、どこで誰と住むかを自分で選択し、特定の生活様式で生活することを義務づけられることなく、地域社会で生活する権利を保障し、そのために必要なサービスを提供するなど、適切な措置をとることを国に求めている。

しかし、障害者が入所施設ではなく地域で生活することは権利だという認識が、行政機関を含めて社会全体に浸透してないことが、障害者が地域で生活したくてもなかなかできない理由の1つだろうと、斉藤さんは話す。

「日本の学校では、人に優しくするというような道徳教育が重視され、自分がどのような権利を持っているかを学ぶ機会は、障害のない人でも少ない。自分の権利についても意識が低いのだから、障害者の権利と言われてもピンとこない人も多いだろう」と、ほにゃら代表の川島映利奈さん(39)は付け加える。

さらに川島さんは「相談支援専門員や行政機関の人の中でも、重度障害者が介助者を使いながら地域で生活できることを知らない人も多い。重度障害者でも地域で生活できることを社会に発信することもほにゃらの役割だと思う。まずは、障害者が堂々と社会に出ていき、障害者の存在を身近に感じてもらうことから始める必要がある」と話す。(川端舞)

終わり

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

7 コメント

7 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

つくば市にも動物愛護協議会を設立《晴狗雨dog》10

【コラム・鶴田真子美】4月1日、つくば市にも、ようやく動物愛護協議会が産声を上げました。昨年夏、つくば市民ネットの小森谷市議、川村市議同席のもと、ペット防災や避難所運営について市の危機管理課と面談したのを機に、つくばにも動物愛護協議会が必要と痛感しました。両市議の尽力を得て、市内の動物保護団体や愛護推進員とミーティングを重ね、協議会の規約やあり方を審議してきました。 茨城県も「すべての市町村で協議会設置を目指す」と推進計画で明記しています。現在、県、水戸市、牛久市、阿見町、守谷市、取手市、常総市、神栖市、つくばみらい市、石岡市、小美玉市には動物愛護推進協議会が設置され、メンバーの方々が各地域の多様な課題に取り組んでいます。 つくば市動物愛護協議会の初イベントは、4月26日開催された「ピンクリボンフェスティバル2026」の里親会でした。私が代表を務める「動物愛護を考える茨城県民ネットワーク(CAPIN)」からも、犬たちが参加。みな、県動物指導センターから引き出した保護犬たちです。啓発パネルがつくば駅広場に並びました。6月4日を皮切りに、市役所で保護猫里親会も予定されています。 動物たちのSOSに奔走 協議会が発足してすぐ、市内で放浪していたシニア犬を市役所から預かり、シェルターに保護し、見つかった飼い主さんにお届けしたこともありました。市内で乳飲み子猫のSOSがあり、協議会のメンバーにレスキューに向かっていただきました。団体の垣根を超えて助けられました。愛護協議会ができてから早速、私たちは動物たちのSOSに奔走しています。 連携をとって意見交換し、現場で汗を流しながら協議会がスタートしました。人と動物の共生をめざし、地域住民を巻き込みながら活動してまいります。犬猫の預かりボランティアさん、里親希望者さん、イベント参加者さんを大募集しています。よちよち歩きの協議会ですので、みんなで育てていきましょう。(犬猫保護活動家)

TX乗車人員4.7%増の42万人に 過去最高を更新

つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区、渡辺良社長)は28日、2025年度(25年4月-26年3月)決算概要を発表した。1日平均乗車人員は前年度比4.7%増の42万3000人、年間乗車人員は1億5291万人となり過去最高を更新した。営業利益、経常利益、当期純利益いずれも過去最高益となった。 TXの乗車人員は2005年の開業以来、毎年増加を続け、19年度は1日平均39万5000人を超えた。一方、コロナ禍で20年度は大きく落ち込み、その後徐々に回復を続け、24年度は過去最高の40万3000人と、コロナ禍前の水準に戻った(25年6月2日付)。25年度は前年をさらに上回った。 乗車人員の内訳は、62%を占める定期が4.5%増、定期外も5.2%増加した。増加の理由について同社は、リモートワークなど働き方や生活スタイルの変化が定着した一方で、沿線の人口増加が緩やかに継続していることなどから輸送需要が増えたと分析している。 単体の決算概要は、運賃収入など本業で稼いだ営業収益は前年度比5.0%増の503億7600万円、一方、販売費及び一般管理費などの営業費は、開業から20年が経過し経年劣化した鉄道設備の保守管理や予防保全の修繕費の増加などにより同比3.7%増の396億7900万円になった、 この結果、本業で稼いだ営業利益は同比10.2%増の106億9700 万円、通常業務で得た経常利益は同比16.1%増の83億5800 万円になった。さらに今後の業績見通しを踏まえ繰延税金資産を積み増しし法人税調整額を10億4000万円計上した結果、当期純利益は同比36.5%増の81億8200万円になり、開業以来の過去最高益になったとしている。 26年度は、新造車両TX-4000系の導入に向けた検討に着手するほか、混雑緩和の対応として8両編成化に向け八潮駅と流山セントラルパーク駅でホーム延伸工事に着手する。ホーム延伸は25年度までに秋葉原駅から六町駅まで7駅で完了、柏たなか駅では工事に着手している。ほかに8両編成化などに伴って総合基地(つくばみらい市)の留置線拡張工事に着手などする。駅構内事業ではつくば駅の売店「TXアベニュー」の外装工事を実施し6月1日、リフレッシュオープンする。 各20駅の2025年度と24年度の1日平均乗車人数は以下の通り(人)。  駅名       25年度 24年度つ  く  ば    18,825  17,980研 究 学 園      8,076  7,877万博記念公園       3,780  3,575み ど り の      5,887  5,537み ら い 平      6,218  5,944守     谷    25,290  24,331柏 た な か      8,720  ...

つくば市の人口、水戸市を抜いて県内一に 25年国勢調査速報

総務省統計局が29日発表した2025年国勢調査人口速報集計結果によると、つくば市の昨年10月1日時点の人口は26万8991人となり、水戸市の26万5773人を3218人上回って、県内一になった。 つくば市の人口は前回調査した2020年と比べ5年間で11.31%(2万7335人)増えた。15年から20年の5年間が6.47%増だったのと比べ、増加率が1.7倍になった。 一方、水戸市の人口は5年前より1.8%(4912人)減少した。茨城県全体の人口は5年間で2.6%減り279万1207人となった。 五十嵐立青つくば市長はSNSで「一人ひとりの選択と営みが積み重なってこの数字がある。人口増加の背景には、つくばエクスプレス沿線地域の住環境の良さに加え、子育て環境づくり、教育改革、スーパーシティの取り組みを評価して移住してきたという声を伺う。これらは市民や議会の皆さんと一緒に積み上げてきた」などとするコメントを発信した。

千波湖畔に「みと好文テラス」がオープン《令和樂学ラボ》41

【コラム・川上美智子】4月23日、水戸市の千波湖畔に「みと好文テラス」がオープンした。千波湖は水戸市民にとって、憩いの場としてシンボリックな役割を果たしてきた。遠方から客が来れば、まずは千波湖に案内し、偕楽園まで散策して、世界第2位の都市公園面積を誇る水戸の豊かな自然を実感してもらう。 早朝や夕方には、ランニングする老若男女の、土日には子連れで遊ぶ家族のにぎわいの場である。梅の季節、桜の季節には、湖の周囲を車で走るだけでも豊かな気持ちになり、この町の魅力を味わうことができる。 東京の孫たちが小さかったころは、水戸に来れば家から1~2キロの桜川緑地や千波湖、少年の森に歩いて行き、毎日、虫探しを楽しんでいた。孫が小学生のときには、「すごい。ここはまだ広い空き地がたくさんあるんだ」と驚いたりするのを聞いて、体験や学びの場になることをうれしく思っていた。千波湖にはお茶屋さんと好文カフェがあり、そこでソフトクリームを食べるのが孫たちの楽しみの一つだった。 その千波湖に、新たな魅力となるショップやレストラン、イベントやアクティビティのスペースが誕生した。既に土日はにぎわいの場所となっていて、順番待ちもあるようなので平日がお勧めである。偕楽園や道路からの展望を邪魔しないよう、自然になじむ水戸黒の屋根、黄茶色の壁に統一された平屋の建物が数棟建てられている。 芝生の広場を囲んでアクティビティのための多目的コート、カヤックやボートの貸し出し、着物レンタル、サウナ・バーベキュー・カフェなどが並ぶ。食事関係では、農産物直売所、だんご屋、さつまいも専門店、ベーカリー、コーヒー店、ビール醸造レストランなど、茨城らしい個性ある店が勢ぞろいしている。 イバラキ四季彩レストラン アオヤマ 筆者が20年来協力してきた水戸市赤塚のレストランAOYAMAも、IBARAKI四季彩RESTRANT AOYAMAとして今回こちらに移転した。 シェフは海外の大使館・領事館(スイス、カナダ、台湾)で腕を振るってきた料理人である。食物と健康の関係に関心が強く、体によい料理を提供したいと素材にもこだわっていて、海外に勤務されているときから当方の食品学研究室に連絡をくださっていた。以来、赤塚のパスタ祭り、笠間の陶炎祭、ロボッツ選手の補食弁当、日本高血圧学会の減塩食づくりなどで協力関係を築いてきた。 私は常々、食物は健康の視点にプラスして、何よりもおいしいこと、満足感を与えることが大切だとアドバイスしている。千波湖には、県外からのお客様も多数来られることから、茨城でおいしい食事ができたと喜んでいただけるレストランを目指して頑張ってほしいと願っている。また、お店の器などにも茨城ならではのこだわりをと、笠間の柳橋修二先生を紹介してディナー料理用の器を準備いただいた。 「製作に半年もかかって大変だったよ」との先生のお言葉通り、体にやさしい西洋料理にマッチした力作を楽しむことができる。また、お店の入り口と奥の個室には、筆者の作品も飾らせていただき、茨城ならではの演出をしている。水戸に行く機会があったら、ぜひ、足を運んでいただきたい。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)