保護犬を気軽に支援できる仕組みをつくりたいと、筑波大学の女子学生3人が、ワンコイン(500円)から簡単に支援できるプロジェクトを立ち上げた。
「#推しペットプロジェクト」(浜野那緒代表=芸術専門学群4年)と名付けた。SNSで公開された保護犬の画像や動画を見て気に入った保護犬を選んでもらい、ワンコインを寄付すれば、選ばれた保護犬の画像をプロジェクトが拡散する。寄付した支援者にも画像をシェアしてもらう。寄付金は保護犬の薬代などに活用する。
代表の浜野さんは「保護犬を可視化し身近な存在として捉えてもらうことが大きな目標。そのためにSNSを通じて、保護犬を『推し』として応援できる仕組みを作ろうと考えた」と話す。
「推し」はアイドルグループなどに用いられている言葉で、「特に好きなもの」「他の人にも勧めたいほど好き」という気持ちを表す。「推しメン(応援している好きなメンバーの意味)」などと使われる。
プロジェクトのSNSでは「キドックスカフェ」(つくば市吉瀬)で保護されている犬たちの写真や動画を発信している。NPO法人キドックス(土浦市大畑、上山琴美代表)が運営する、保護犬らと触れ合うことが出来るカフェだ。
浜野さんらは、誇張のない保護犬のありのまま姿の発信を目指している。「たくさんの人にSNSを通じて保護犬たちを見てもらうのが最初の目的。『推し』が見つかったら、ホームページ(HP)からワンコインで支援することが出来る。寄付をしたという内容でSNSに投稿するのはハードルがあるが、『推し』の支援のシェアは気兼ねなくすることができるのではないか」と浜野さん。
HPから集まった支援金はキドックスに寄付され、保護犬の病気や感染症予防のためのの医療費やえさ代などとして用いられる。ただし、プロジェクトはキドックスとは別に独立して行っている。
コロナ禍のペットブームきっかけ
プロジェクトを立ち上げたのは去年の夏。クラウドファンディングを通じてHPの制作費や運営費を募り、約7万3000円の支援金を集めた。
きっかけについて浜野さんは「昔から保護犬に興味があったというわけではなかった。コロナ禍で安易にペットを飼ったものの飼育が困難となり、手放してしまうケースが相次いでいるというニュースを見た。そのような社会的な課題に対しアクションを起こす人たちの存在を知り、調べるようになった」と話す。一方で「保護活動は、SNSで一部の過激な発信をする人だけが切り取られ、保護団体や保護犬に対し距離を取ってしまっている人が多いのではないかと感じられた」と語る。
そこで、保護犬支援の心理的ハードルを下げるためにSNSを活用するアイデアを思い付いた。浜野さんは、友人の和田すみれさん(芸術専門学群4年)と平石あすかさん(人文学群3年)に話をし、一緒にプロジェクトを立ち上げることになった。
「SNSはその特性からペットの『かわいい』部分だけが拡散される。一方で保護犬は『かわいそう』な印象の方が届きやすい。保護施設を訪問する中で、『かわいそうな存在』として保護犬と距離をとるのはこちら側の勝手な都合でしかなかったことに気づいた」と浜野さんは語る。(山口和紀)