日曜日, 9月 21, 2025
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夏の終わる朝に 《続・平熱日記》93

【コラム・斉藤裕之】夜明けが大分遅くなってきた。近くの公園に犬と散歩に出かける。低く刈り込まれたサルスベリの赤い垣根が満開でほのかに匂う。まだ薄暗い中でヒグラシの鳴き声が物悲しい。そういえば、夕方にこの公園を散歩していていた時に面白い場面に出会った。

公園の奥の方には、以前は田んぼだったと思われる貯水池のような広大な窪(くぼ)地が広がっている。その周りを囲む遊歩道の足元数メートル下、歩道と直交するように人が通れるほどの大きな土管が埋まっている場所がある。その土管の右側の湿地からウシガエルの鳴き声が聞こえる。するとそれに応えるかのように、今度は土管の左側の草むらからやや低めのウシガエルが鳴く。その2匹の声が土管にエコーして低音の金管楽器の演奏さながらで、しばらく聞き入った。

余談だが、ウシガエルは長い竹の先につるした三本針にたんぽぽの花を餌にして釣った。名人の小池君は針だけで引っ掛けた。「太ももの黄色いカエルがおいしいんよ」と小池君は言っていたが、実際に食べていたかは定かではない。

家の近くまで帰って来ると、今度はムクドリの大群が現れて電線に止まる。騒音に近いさえずり声だが、見ていると明らかに隣同士で会話をしている。そのうち誰かが号令でもかけるのか、大きな羽音を立てて一斉に飛び立った。それにしても、鳥といいセミといいあの小さな体でよくもあんな大音量を出せるものだと感心する。

まだ周りに家も少なかったころ、家から1キロ以上離れたところにある田んぼから、カエルの声が聞こえることに驚いたことを思い出した。声はさほど大きくないのに。

今年はクズの花を見かけない

早朝とはいえ少し汗ばんだ。コーヒーを飲みながら開いた新聞には、地球の温度上昇の予測の記事が出ている。「食べなければ痩せる」という一番簡単な答えはわかっているのに、悩んでいるダイエッターのようだと思った。

先日は散歩の途中でカミさんと虹を見た。蛙(カエル)という字は虫偏だが、虹も昔は虫の仕業ということで虫偏らしい。確かに虹を見つけると少しうれしくなるが、虹の向こうに夢をはせるロマンチックな時代は終わるのか。というのも、この夏は虹をよく見かけた。つまりゲリラ豪雨が多かったという証しだ。

生まれ育った瀬戸内は「雨が少なく温暖な気候」と習うのだが、今は線状降水帯の天気図を見るたびに事なきを祈るばかりだ。

その実家の2階には桃の木が手の届きそうなところにあって、夏の朝はこの木に群がるクマゼミの大合唱で目が覚めたことを思い出す。温暖化と共に箱根の関を超えたというが、ここら辺りではあのシャンシャンという声(故郷ではシャム=蝉=と呼んでいた)はまだ耳にしない。あのころはクーラーもなく、じっとりと寝汗をかいたのが懐かしい。

不思議なことに、今年はクズの花を全く見かけない。今年はクズの花の絵を描こうと思っていたのに…。ビーサンの鼻緒の痕もぼんやりとした夏が終わる。(画家)

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