つくば市が進めるつくばセンタービルリニューアル事業に対し、大規模事業評価を実施しないのは違法だなどとして監査請求を実施した18人のうち、元大学教授の酒井泉さん(72)ら6人が、監査結果を不服として5日、五十嵐立青市長を相手取って水戸地裁に住民訴訟を起こした。市がすでに支出した基本設計費とまちづくり会社に対する出資金計約7000万円を、市が、五十嵐氏個人や設計会社、まちづくり会社に返還請求するよう求めた。さらに同事業に対する今年度以降の公金支出を止めるよう求めている。
訴えによると、同リニューアル事業は5つの点で違法だとしている。
まず大規模事業評価については、事業は総額約10億3800万円であり、10億円以上の事業は大規模事業評価を行うと市が要綱で定めているのだから、評価を実施しないのは要綱に違反し、必要な手続きを踏んでいないのから公金支出は違法だ、などとしている。
一方、住民監査請求に対し市監査委員が「マニュアルに、出資は対象となりませんと明記されている」のだから「(出資金6000万円は)リニューアル事業の総事業費に含まれない」、出資金6000万円を差し引くと10億円に満たないのだから大規模事業評価をしなくても要綱に違反しないなどとする監査結果を出したことに対して、原告住民らは「要綱にマニュアルに対する委任条項はないのだから、マニュアルは規範とはいえず、内部資料に過ぎない。監査結果は、マニュアルさえ作ればいかようにも要綱を骨抜きにできることになってしまう」などと主張している。
原告住民らはほかに、まちづくり会社を設置した際、総務省の第3セクターの経営健全化指針に基づく手続きを欠いたのは違法である、つくばセンタービル1階をシェアオフィスなどとして私企業に貸すのは公の施設としての利用を拒否することになり地方自治法に違反する、リニューアルの基本設計をプロポーザルによる随意契約としたのは市契約規則に違反するーなどと主張している。
エスカレーター設置などによる外観の改変についても指摘し「市が推し進めようとしている改変は(設計者の)磯崎新氏の著作権の侵害であると同時に、市民が共有する文化的・芸術的財産の侵害だ」などと主張している。
原告代表の酒井さんは提訴に至った理由について「民主主義の基本は、情報共有と対等な議論、少数意見を見逃さないことの3つだが、議論が足りず、五十嵐市政はあまりにも道理が通らない。道理が通らないことを見逃すわけにはいかない」と話している。
これに対し被告のつくば市は「訴状が届いてないのでコメントできない」としている。