筑波大学の看護学生が、地域の中で看護実践をする「コミュニティーナース」を広めようと奮闘している。看護学類4年の總山萌(ふさやまもえ)さんだ。活動の背景にあるのは「看護学生は多くの場合、卒後そのまま病院に就職する。そうしたキャリアとは違った多様な看護のあり方があることを広めたい」という想いだ。
總山さんによれば、地域の中で看護活動を展開する人材を「コミュニティーナース」と呼ぶ。通常、看護といえば病院で行われる医療行為をイメージしがちだが、地域の日常の中で相手を思いやる人と活動を指す。「喉が枯れとるとあかんね、飴ちゃんどう?」などとおせっかいを焼く人のイメージ。「看護資格の有無は問わず、多くの人がコミュニティーナースであり得る」という。
總山さん自身が看護学生として「自分がやりたいケア」とは何かを考えていく中で、コミュニティーナースという考え方に惹かれるものがあった。そうした実践のありかたを知ることで「自分がやりたいケア」を見出したいと考えた總山さんは昨年、1年間の休学をした。休学中、コミュニティーナースの育成・普及に取り組む会社、Community Nurse Company(コミュニティナースカンパニー、島根県雲南市、矢田明子代表)で1年間のインターンを行った。
「暮らしのそばにおけるケアの実践を面白いと感じたし、自らのキャリアを一度立ち止まって考え直すために良いと考えた」と振り返る。インターン時には同社が行う「地域おせっかい会議」事業に携わった。雲南市で、既にコミュニティーナースのような活動をしている「まちの人」を巻き込み、チームとして一緒に成果を出そうとする事業だ。メンバーで定期的に集まり「『わたしこんなことやりたい!』、『こんな得意があるからこんなおせっかいができるよ』というアイデアをブレインストーミングしていき、それをみんなで形にしていく活動」と總山さん。
看護師の多様なキャリアを広めたい
将来、「まちの中にいる養護教諭」を目指している。大学では看護師になるため授業を受けつつ、並行して養護教諭の単位も揃え、教育実習にも行った。学外でも教育に関する知識を得るため、デンマークと韓国の教育施設へ視察しにいった。さまざまな角度から学校教育を見つめ、養護教諭は本来であれば学校の中に居る存在だが「そうではなくて、まちの中にいて困った時にすぐに頼ることが出来るような人になりたい」という。
卒業後は1年間インターンをしていたCommunity Nurse Companyの事業への参画を予定している。「看護学生は多くの場合、看護学校を卒業後にそのまま病院に就職する。コミュニティーナースに関わるのは、まちの中で活動するというキャリアの多様性に惹かれたから」だと總山さん。
現在、全国の看護学校に「コミュニティーナース」に関連する書籍を届けるプロジェクトを実施中だ。「活動を通じて全国の看護学生と関わっていく中で、卒後すぐに病院に就職してという進路ではない、色々なキャリアを一緒に考える機会が出来たらうれしい」と話す。(山口和紀)
◇總山さんは現在、矢田明子著「コミュニティナース|まちを元気にする“おせっかい”焼きの看護師」(木楽舎、2019年初版)を全国の看護学校に届けるクラウドファンディングを実施している。