つくば市天久保の八百屋「La frutta(ラ・フルッタ)」入り口に今年初春、市の補助金でスロープが取り付けられた。車いすの利用客が店に提案したのがきっかけだ。障害者に配慮するために必要な費用を助成する市独自の合理的配慮支援事業補助金を利用した。
同補助金制度がスタートして3年だが、市によると、階段等の手すりの設置工事や筆談ボードの購入など、これまでに補助金が利用されたのは4事業者にとどまる。
一方、障害者が他の者と同等の生活を営むために必要な環境の調整である合理的配慮を、民間事業者にも義務づける改正障害者差別解消法が5月28日に成立した。今後ますます、市の補助金制度の重要性が高まってくる。
資料を店に持参
同店は昨年8月に店内を改装した。が、入り口には階段が2段あった。子ども連れの客も多かったが、改装した当初から、ベビーカーを持ち上げないと入店できなかった。
「お店で買い物をしたいから、スロープをつけてほしい」。昨年9月頃、同店に相談を持ち掛けたのは近所に住む佐藤美咲子さんだ。佐藤さんは重度の障害があり、外出時は介助者に車いすを押してもらう。同店が改装されたことを知り「買い物したい」と思ったが、入り口に階段があり、当初は諦めるしかなかった。
後日、佐藤さんは市の補助金の案内資料を同店に持って行き、折り畳み式スロープの購入費を助成してもらえることを説明した。
同店には以前から、ベビーカーのまま入店したいという子ども連れからの声が多くあった。佐藤さんの提案を受けて、市に問い合わせ、補助金を申請した。申請からスロープ設置まで数カ月かかったが、店側の負担はなく導入することができた。
ベビーカーも楽に
スロープ設置後、さっそく佐藤さんも買い物に訪れた。「地域には私のような障害者や、お年寄りもいるので、便利になって良かった」と佐藤さんは話す。
店員の池安あさ美によれば、スロープ設置後、佐藤さん以外にも車いす利用者が来店することが増えたという。「車いす利用者から『お店に入れなくて残念』と言われ、心か痛かった。スロープをつけることで、足の悪い人や、ベビーカーと一緒に来店する親御さんにも『楽に入店できるようになった』と笑顔で言ってもらえてうれしい」と池安さんは話す。
同市の補助金制度は、折り畳み式スロープや筆談ボードなどの物品購入では最大5万円、段差をなくしたり手すりを付けたりするなど工事には最大10万円の補助が出る。市内の商業者のほか地域団体も利用でき、今年度は105万5000円を予算化している。(川端舞)