「つくば市が進めようとしているつくばセンタービルのリニューアル計画は、文化財としての価値を失わせることになる」などとして、市民団体「つくばセンター研究会」(冠木新市代表)は1日、五十嵐立青市長と小久保貴史市議会議長宛てにそれぞれ、センター広場へのエスカレーター2基の設置計画(4月27日付)を見直すよう求める要望書を出した。
同研究会は、センタービルでこれまで20年間、さまざまな活動を展開してきた市民らでつくる。
要望書によると、同センタービルは建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した磯崎新氏のポストモダン建築の代表作で、市民の誇りであるとし、エスカレーターを2基設置し外観を改変してしまったら、後戻りはできない、などとしている。
さらに、築50年の2033年に登録文化財として申請すれば、将来のつくばの文化遺産及び観光資源になるのに、つくば市が改変を進めれば、市の貴重な文化資源の喪失になり、次世代の市民に引き継ぐ道を絶つことになる、などと指摘した。
センタービル1階に貸しオフィスと市民活動拠点を整備するのに伴うビル内部の改修についても言及し、東西南北どの方向からも広場に行き来できるよう設計されているのに、市の計画は、通路の一部を閉ざしてしまい、動線を減らすことになり、にぎわい創出とは逆方向だ、などとしている。
その上で、エスカレーター2基の設置見直しのほか、専門家の意見を聞いた上でセンタービルを文化財として保持すること、センター広場の活性化は、広く市民の意見を聞いて検討するよう求めている。
要望書を提出した冠木さんは「(市のリニューアル計画は)中心市街地が活性化していないことを、つくばセンタービルの設備のせいにしている。壊してしまったらもったいない。市にとって財産なのだから大事にしてもらいたい」などと話している。
同市議会の小久保議長は「要望書をお受けし、議員間で周知していきたい。(特別委員会の)勉強の機会もあるので、今後の取り扱いを協議したい」とした。
五十嵐市長宛ての要望書は飯野哲雄副市長に手渡され、関係者のみでやりとりが行われた。
「貴重な文化財に対する無謀な挑戦」
要望書は、著名な建築の専門家、筑波大学の鵜沢隆名誉教授の見解を紹介し、同センタービルは10数年後に登録有形文化財として認められ得る建造物であると断定している。
加えて、つくばセンタービルと筑波研究学園都市は、国の主要な科学研究機関を集約的に建設するという都市機能のユニークさと、都市建設の規模からも世界的に類を見ない新都市で、センタービルは研究学園都市の最も象徴的な文化施設だとして、将来の世界遺産登録の可能性すらある建造物群としてとらえるものだと指摘している。
エスカレーターの設置計画に対しては、磯崎新氏のプリツカー賞受賞に際して、改めて評価された中央広場に2基のエスカレーターを新設すること、市の改修計画が、磯崎氏のプリツカー賞受賞直後に作成されたことは「貴重な文化財に対する無謀な挑戦」で「将来に禍根を残すことにもなりかねない」と強調している。
さらに雨天への配慮から屋外のエスカレーターは屋根の設置が不可欠だが、エスカレーターの屋根は、「特筆すべき中央広場(センター広場)の空間意匠を決定的に損ねる」とし、動線を補強するなら既存のエレベーターの改修、拡充で対応すべきだとしている。
その上で、中央広場を活性化するためには、広場への関心や注目を常に新たに呼び起こすために広く市民からのアイデアや企画を絶えず求め、それらを空間利用の専門家たちが検討・実践していくという方法やプロセスを定着させることが最も着実な活性化である、などとする専門家の意見を紹介している。(鈴木宏子)
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