土曜日, 6月 10, 2023
ホーム つくば 5年で9割超の大幅減 殺処分 最新集計を検証する㊤

5年で9割超の大幅減 殺処分 最新集計を検証する㊤

【コラム《晴狗雨dogせいこううどく》特別編・鶴田真子美】2016年から20年まで、過去5年にわたる茨城県動物指導センター(笠間市)の犬猫収容数及び殺処分数に関する最新の集計が出てまいりましたので、読者の皆さまとこの数字を検証したいと思います。

今は希望殺到し予約待ち

県動物指導センターの犬の殺処分は、20年までの5年間で612匹から94%減の35匹に激減したことがわかります。

かつて、茨城県は犬の殺処分が8年連続で全国最多でした。2016年には子犬、人慣れした家庭犬さえ505匹が殺処分されました。子犬はきょうだいのうちいちばん可愛い1匹を除いて、残りは殺処分とされたのです。つい5年前のこと、そうした時代が最近までありました。

センターの子犬用モデル犬舎やふれあい犬舎の房数を見ますと、モデル犬舎は5匹分、ふれあい犬舎は8匹分の部屋しか用意されていません。数千匹という収容がある中で、ごくわずかな数しか生かされなかったのです。譲渡に選ばれなかった残りの犬は、収容中の犬猫の情報を公表する公示期限が過ぎたらガス室入りとなりました。

2021年の今は、小型犬や子犬には常に希望が殺到し、予約待ちとなっています。それほどに子犬の収容数が減ったことはほんとうに喜ばしいことです。

茨城県動物指導センター

個体識別され犬違いほぼなくなる

収容数が減れば、犬の過密収容もなくなります。1匹ごとの個体識別が可能になります。以前はセンターに犬を引き取りに行くと、犬違いが頻繁にありました。引き取り予定の犬はセンターが間違えて前日に殺処分しており、命に間に合わなかったことがあります。また、殺処分される前に保護団体が引き受ける「引き出し」申請をした犬とは別の犬が渡されたこともあります。

大部屋にいるたくさんの犬たちを前に、見分けがつかずに難儀することがありました。犬ごとの管理カードがあって犬がいない、探したら別の房の中に移されていたこともあります。あるいは管理カードがないのに犬が多くいる、という事態もありました。犬は一匹ごとに扱われることはなく、個体識別も重要視されていなかったのだと思います。どうせ3日後にはガス室に入るのだし誰も迎えに来ないのだから、と。

大部屋にいる犬たち。1匹1匹管理カードで識別されている=茨城県動物指導センター

これは、センターだけに責任があるのではありません。迷子になった犬を探してセンターに足を運ばなかった飼い主たちの責任でもあります。また、飼い主不明の迷子犬が集められてセンターで殺されるのを知りながら、センターから譲渡を受けずにペットショップに走った消費者である県民の責任でもあります。

しかし現在は、犬違いはほぼなくなり、2020年4月を最後に、成犬の殺処分は1年間は行われていません。

成猫は引き取り拒否に

猫の殺処分数も5年間で1679匹から337匹へと、約5分の1に減りました。

2019年にプレハブ猫舎2棟が建てられる以前は、猫は即日処分でした。今の雑居房2頭房がかつての猫の殺処分部屋でした。市町村や警察から集められた子猫成猫たちは、里親譲渡もされず、存在することさえ内密にされて、収容当日に殺処分されていました。

なぜなら、猫には狂犬病予防法に基づく公示の義務がないからです。飼い主を探すための2日の公示期間は、都道府県により延長され、1週間、1年と、センターや保健所により異なりますが、迷子の犬はまず飼い主探しが義務付けられています。

が、猫の収容と殺処分は法的根拠を欠いています。集めては密室で殺処分。これが繰り返されてきました。しかし、地域猫の取り組みが浸透するにつれ、また外飼いの猫の所有権侵害の問題から、成猫はセンターに持ち込んでも、引き取りは拒否されるように変わりました。

2014年くらいからでしょうか、茨城県は成猫の引き取り拒否に関して、ありがたいことに対応は早かったのです。成猫はだれかが地域で面倒をみている地域猫だったり、出入り自由の飼い猫の可能性があるから、勝手につかまえてセンターに持ち込んでも引き受けないのです。

譲渡に向けてワクチン接種やノミ・ダニ駆除のためパルTNR動物福祉病院に連れてこられた野良猫=土浦市内

茨城県は全国に比べて収容過多

県動物指導センターの収容数は5年間で、犬が1628匹から1063匹に減少しました。約3割減です。猫は2272匹から1401匹へ、約4割減です。もっと減ってもよい、茨城県は全国に比べて、これでも収容過多です。(犬猫保護活動団体CAPIN代表)

2 コメント

guest
名誉棄損、業務妨害、差別助長等の恐れがあると判断したコメントは削除します。
NEWSつくばは、つくば、土浦市の読者を対象に新たに、認定コメンテーター制度を設けます。登録受け付け中です。

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

つくば中学受験事情 分析事始め《竹林亭日乗》5

【コラム・片岡英明】5月の「つくば子どもと教育相談センター」総会で県立高校問題を5分ほど話した。すると参加者から中学受験の質問があり、それを契機に話し合いが盛り上がった。そこで今回は中学受験について考える。 中学受験の背景 つくば市は人口増の中、県立高校が削減され、そこにTX沿線開発で小中学生が激増。さらに2020年から県立付属中設置で高校入学枠の削減が追い打ちをかけた。つくば市の小中学生は自分の進路の選択肢が狭くなり、そのために中学受験に目が向いているのか。 中学受験に対する首都圏からの転入増の影響はどうか。東京の全日制高校は186校の都立より245校の私立の方が多く、その割合は4対6。私学の流れが強い。さらに187校ある私立中の133校(71%)が中高一貫。東京の中学受験の文化がつくば市にも流入しているのか。 しかし、生徒や保護者が知りたい中学受験に関して冷静な情報は少なく、素朴な疑問が解消されないまま、塾ベースの宣伝や口コミに流される傾向がある。そのため保護者にも不安がある。 そこで、「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」は6月の学習会で、つくばの県立高校不足の周辺の問題としてデータに基づいて中学受験についても考えることにした。

突然始まった【不登校、親たちの葛藤】上

突然、我が子が学校に行かなくなった。どうしよう―。子の不登校に、悩む親は少なくない。親子、夫婦の考えの違いが、時に、家族にきしみを生む。当事者である親たちの声に耳を傾けた。 親は困惑 「もう、学校には行きたくないんだ」。 3年前の9月。つくば市の中村昌人さん(44)、規乃さん(48)夫妻は、目の前で泣きじゃくる中1の長男(15)の訴えを戸惑いながら聞いていた。2週間前から学校で毎日のように体調不良で早退していた。少し様子がおかしいと思っていた。 行きたくない理由に、友人とのトラブルを挙げた。 「まさか、うちの子が不登校?」。信じられない思いだった。悪ふざけもするけど、明るい性格で誰とでも仲良くできるタイプだったはず。これまでも時々、行きたがらない日もあったが、休ませると、数日後には、自然に学校へと足が向いていた。

ワンピースのおんな《続・平熱日記》135

【コラム・斉藤裕之】トイレの中に随分前の「暮らしの手帳」という雑誌が置いてある。その中に「ワンピースのおんな」というタイトルのページがある。ワンピースを着た、多分それなりのキャリアを積んだとおぼしき女性の写真が載っていて、文章はちゃんと読んだことがないのだけれどもちょっと気になっていた。 そのワンピースのおんなは突然現れた。それも大柄の模様の「マリメッコ」のワンピースを着て。妻は大学を出てすぐに有名な布団屋さんに就職した。そのときの担当が有名ブランドのライセンス商品のデザインだった。だからうちには試作品などのタオルや生地サンプルなんかがあって、おおよそ暮らしぶりとはそぐわない一流ブランドのタオルなんかを普段用に使っていたのだけれども、その中にマリメッコという聞き慣れない独特のプリント柄が特徴のブランドがあった。しかし、私にはなじみがないだけであって、フィンランドを代表する有名ブランドであることを知った。 ワンピースのおんなは関ひろ子さんという。職業はアーティストのエージェント? ややこしい業界の話は置いておくとして、1990年代、美術畑とは無縁だった彼女はある若手作家をプロデュースし始め、やがてその作家は世に知られるまでの存在となる。千曲でお世話になったart cocoonみらいの上沢かおりさんもほぼ同時期に同様の活動を始めた方で、お2人はそれまでの閉ざされた?アート界に風穴を開けた、大げさではなく、美術史に残る先駆者的な存在なのだ。 今回の千曲での私の個展を含めたギャラリーのオープンに際しては、ひろ子さんはかおりさん宅に泊まって、プレス関係から食事の支度まで実に楽しそうに手伝いをしていた。 …着ることは自由と尊厳につながる

音楽朗読劇「ヒロシマ」 7月、土浦公演 市民団体が主催

紙芝居やチンドン屋の練り歩きなどを行っている土浦の市民団体「つちうら駄菓子屋楽校」(石原之壽=のことぶき=代表)が主催し、音楽朗読劇「ヒロシマ」の公演が7月22日、土浦市大和町の県県南生涯学習センターで催される。2021年から毎年、土浦で開催し3回目となる。 「ヒロシマ」は、78年前に広島で被爆した路面電車を擬人化し、当時の記憶を語っていく物語。作中には被爆者たちの様々な証言を、できるだけ表現を変えずに用いているという。俳優で演出家の嶋崎靖さん(67)が平和への思いを込めて制作・演出した。今回の公演では、広島市の劇団で活動する原洋子さんと、俳優の保可南さん、地脇慎也さんが出演し、武蔵野音楽大学大学院の青山絵海さんがマリンバを演奏する。音楽は嶋崎さんが制作を手がけた。 音楽劇「ヒロシマ」の一場面(石原さん提供) チンドン屋の先輩と後輩 主催する「つちうら駄菓子屋楽校」は石原さん(64)が3年前に立ち上げた。飛行船「ツェッペリン伯号物語」や「土浦花火物語」など、土浦を中心に地域の歴史や物語を題材にした紙芝居を制作し上演している。

記事データベースで過去の記事を見る