つくだ煮とうなぎの老舗、土浦市大和町の小松屋食品(柳生剛社長)が、大成女子高(水戸市五軒町)と共同開発した新商品「Wこんにゃく釜めし」の発売が、3月から始まった。県北地域に伝わる伝統食材「凍みこんにゃく」を手軽に食べてもらおうと、レトルトパックの炊き込みご飯の素として考案された。
凍みこんにゃくは、厳冬期の外気と天日でこんにゃくを凍結乾燥させた珍しい食材。江戸時代に県北の山間部に伝わり、今では3社だけが製造を続けている。
これに着目したのが、大成女子高で「地域デザイン」を受講する3年生20人。地域デザインは、将来の自分に必要な能力を、社会と関わりながら身に付ける、同高独自の教科「キャリアデザイン」の中の1コース。地域の魅力を再発見し、発信するための一つの手段として、特産品を使った商品開発をしている。
生徒たちは2年次から、凍みこんにゃくを製造するクリタ(大子町上岡)の栗田晋一社長に話を聞き、製造の様子などを実際に見学し、歴史や食べ方、苦労や課題などを学んできた。
その後、イノベーション教育で習得したアイデア発想方法やプレゼンテーション技術を活用し、さまざまな商品プランを考えて栗田さんに提案、その中から「これはぜひ」と選ばれたのが「Wこんにゃく釜めし」だった。

このアイデアを形にしたのが小松屋食品の柳生社長。生徒たちの要望を基に試作を重ねて期待に応えた。「今回はコロナ禍の中、直接会うことが難しく、試作品を送って学校で炊いてもらい、試食した感想を送り返してもらって詰めていった」という。
凍みこんにゃくの独特な食感を生かし、普通のこんにゃくも入れて「しっとり」と「ぷるぷる」という2種類の食感を味わえるようにした。ほかにニンジン、シイタケ、ゴボウ、鶏肉などの具材が入っている。こんにゃくの存在感が引き立つよう、機械を使わず職人が手で刻んでいるものもある。
味付けは醤油とみりんだけで、原材料由来以外の添加物は不使用。シイタケの戻し汁でだしを利かせ、風味豊かに仕上げた。凍みこんにゃくのほど良いかみ心地が楽しく、食事としての満足感を高めてもいる。
「凍みこんにゃくは低カロリーでカルシウムや食物繊維が豊富。ヘルシーな食品としても注目を集めている。煮物や揚げ物、炒め物などさまざまな料理に使えるが『食べ方が分からない』などと言われ、手が出にくいようだ。この商品があることで、家庭料理にも取り入れてもらいやすくなる」と栗田社長。
小松屋の柳生社長は「今回初めて食べたが面白い食材。地域の食文化を再発見するきっかけにもなった。県内には魅力ある食品がほかにもさまざまあるので、もっと知られてほしい」と話す。(池田充雄)
◆「Wこんにゃく釜めし」は2合炊き用1パック入り、税抜き770円。土浦駅前の小松屋店舗およびオンラインショップのほか、水戸駅構内の「常磐・水郡 MADE STATION」、大子町池田の「道の駅奥久慈だいご」で販売されている。