【コラム・岩松珠美】文科省と厚労省の「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関係職種等の各学校、養成所及び養成施設等の対応」通知(2020年2月28日)を受け、今年度は介護福祉士養成校や介護施設などで行われる臨地実習は軒並み中止・延期になり、大変な年度であった。さらに厚労省は「実習施設が確保できない場合は、学内の演習に代えてもよい」と通知していた。
日本介護福祉士養成施設協会のアンケート(20年4月23日)によると、この団体加盟の養成校のうち回答した240校の約半分が、介護実習先から中止要望や人数変更などの連絡・要望があったという。
本来、看護学生や介護学生が実際に患者や利用者を受け持ち、直接コミュニケーションしながら生活支援の実践を学ぶ場が、医療機関・介護施設・保育所・地域などである。学内で修得した知識や技術をもとに、臨床現場で実践力や判断力を養うもので、看護師や介護福祉士の養成課程において、カリキュラムの一部を担う教育の場である。
それらの機会が減少したことにより、様々なシミュレーション教育や模擬患者さんを迎えたOSCE(客観的臨床能力試験)などを学内で実施した。この1年、様々な臨床現場を再現する教育技術が、試行錯誤ながらも工夫・開発された。
地域の施設・機関に感謝
こういった臨床現場により寄り添ったアプローチや研究の成果は、これから明らかになってくるであろう。利用者さんの自宅と訪問介護ステーションをリモートでつなぎ、学生たちが利用者やその家族と対話する記事を見たが、新しいコミュニケーションの取り方を活用する大切さも感じた。利用者さんはどんな気持ちでおられ、どんな援助がどんな配慮のもとに必要かを知ることは、振替学内演習でも臨地実習でも重要だと考えている。
私の勤務校の今年度240時間の介護実習は、延べ20カ所の施設や機関のご協力を得て臨地で実施することができた。地域の利用者さんと関わっていきたいという本校の意向を受け入れてくださった施設や機関のおかげである。心より感謝している。(つくばアジア福祉専門学校校長)