【相澤冬樹】この春、筑波大学大学院教育研究科を修了、茨城県教員として採用が決まっている牛久市在住の石田理紗さん(23)の個展「旅のきろく展」が16日から、土浦市中央の「がばんクリエイティブルーム」で始まる。
筑波大学では地球学類、大学院では理科教育コースに学んだ。高校教育でいう理科4領域(物理・化学・生物・地学)のうち地学、中でも気象を専攻した。フィールドワークがものをいう学問分野、国内のみならず海外に旅した経験を得意の絵画に記録した作品展となる。
海外ではカナダのオーロラ、オーストラリアの巨石ウルル、ロシアのバイカル湖などを見に、厳しい環境の大自然を旅してきた。アクリルガッシュによる小品中心に13点ほどを展示する。
春から高校で教壇に
土浦の街なかで個展を開くことになったのには経緯がある。石田さんは「高校、大学、大学院と見守ってくれた皆さんにご報告がてら、これまでをたどれたらうれしいじゃないですか」という。
出身高校は県立土浦二高(土浦市立田町)、冬のある日、あまりの寒さに通学路にあるカフェ城藤茶店(同市中央、工藤祐治さん経営)に飛び込んだ。同市内外から常連が集まる店だが、実は比較的年齢層が高い。地元の高校の女子生徒となると、にわかにちやほやされる。
明るい笑顔で応えた石田さんはすぐにアイドル的存在になった。大学に進学すると、同市永井で漢方の薬草を育てる理系農家に招かれて、地球学類の仲間らと筑波山地域ジオパークのセミナーを開いたりした。カフェの常連も応援団よろしく聴講に駆け付けた。
地学、気象への興味を膨らませる一方、「得意」としていた絵画の才も磨いて、カフェで小さな個展を開くようになった。
こうした活動から、応援団に後押しされる格好で、武田康男 (気象予報士)さんの著作「今の空から天気を予想できる本」(緑書房)の挿絵を担当するなどした。「例えば積乱雲のイラストを描く際、雲底(うんてい)の様子など細かいところの注文をしなくていいのが重宝されたみたい」
大学から大学院合わせて6年間は、毎年のように異常気象が列島を襲った。線状降水帯とか爆弾低気圧とか猛暑日とか、気象用語にも新語の嵐が吹き荒れた。担当教授が出張して休講となるケースも少なくなかった。
そして6年目、コロナ禍の中での修士論文作成と就職活動となった。「修論のテーマは富士山の波状雲。集中力を高めるリモートワークがいい方向に働いたけど、教員採用試験は大変だった。高校の理科教諭のうち地学は採用枠が1人しかなかった」。地学を教える高校自体が少ないのだ。
その難関をかいくぐって合格を決めると、土浦の応援団が湧きたった。カフェの工藤さんは自身が運営するギャラリー「がばん…」での卒業記念展を持ち掛けた。「うれしくて二つ返事でした」
個展は21日まで。4月からは高校で地学の教鞭をとる。会期までには赴任校も決まりそうだという。