月曜日, 3月 1, 2021
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《茨城鉄道物語》9 今度は「ひたちなか海浜鉄道」に乗ってみた

【コラム・塚本一也】新春企画第2弾として、今回は、現在県内で注目の的となっているひたちなか海浜鉄道湊線に体験乗車してきた。

正月明けに、鉄道関係者にとって耳を疑うようなニュースが飛び込んできた。それは、ひたちなか海浜鉄道湊線が、終点の阿字ヶ浦駅から国営ひたち海浜公園までの3.1キロを、2024年度の運行開始を目指して延伸することが認可されたという、ビッグニュースである。

ひたちなか海浜鉄道は、茨城交通とひたちなか市が出資する第3セクターが2008年から運営する鉄道会社であり、湊線は非電化の単線路線である。

私はJR東日本に技術者として15年間勤務した経験をもとに、本コラムを執筆しているが、国鉄の分割民営化以降、LRT(近代的路面電車)以外の地方ローカル線が延伸されたという話は聞いたことがない。バブル崩壊後、景気の低迷や人口減少のあおりを食った形で、地方ローカル線のほとんどが存亡の危機にひんしている。

鉄道経営の特徴として固定費がかかるという問題がある。つまり、空でも電車は時刻表通りに動かさなければならないので、営業収入が無くても人件費やメンテナンス費用がかかる。ゆえに、旅客数の減少は直接純利益に影響するのである。

そのような厳しい経営環境のもとで、営業キロが14.3キロ、駅数が10駅の地方路線が2割以上延伸し、3駅も新設するというのは、無謀ともいえる計画のような気がする。現状を確かめるべく、体験乗車に出向いた。

黄金色に輝く干し芋が見えた!

JR常磐線勝田駅から乗車すると、2駅目の金上(かねあげ)駅辺りまでは住宅地の中を縫うように走っていく。この辺の風景は都心の私鉄とあまり変わらない。そこを抜けると、田園地帯の中を真っすぐひた走る。路線の半分以上は線形が直進ではないか、と思わせるのはこのあたりのせいであろう。

那珂湊駅に着くと、何となくローカル線の雰囲気が漂い、駅舎のたたずまいや人の気配もそれらしくなってきた。これで雪でも降っていたら、高倉健の「駅」を彷彿(ほうふつ)させるロケーションである。いや、「犬神家の一族」の旧作にもラストシーンでもこんなホーム上家があったような気がする。

終点の阿字ヶ浦駅舎

そんなことを考えていると出発時刻になり、ディーゼル車のエンジンがうなり始めた。ここから先は海岸線に沿って走ることになるが、風光明媚(めいび)というわけにはいかず、相変わらずの農村地域を走っていく。広大な畑作地帯はひたちなか名産の干し芋の材料となるサツマイモ畑であろう。

人家の周りのビニルハウスの中には、その干し芋が黄金色の輝きを放ちながら、所狭しと並べられているのが見える。そのビニルハウスの彼方に、突然、大きな観覧車が姿を現し始めた。ひたちなか海浜公園である。「結構遠いなあ」と考えていたら、終点の阿字ヶ浦駅に到着した。

今回の取材で、ひたちなか海浜鉄道に初めて乗車した。延伸の目的は、経営戦略として住民サービスだけでなく、観光客を取り込んで増収を図ることであろう。地域の日常を支えると同時に、観光のキーワードである「非日常」をいかにして演出していくかが今後の課題だ。(一級建築士)

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