【川端舞】フリーランスとして活動するつくば市の橘敦子さん(37)が、無料の市民防災講座「つくばセルフ防災ラボ」を始めた。市民や県民の防災意識を高めることで「茨城は防災意識が高くて、頼もしい」と言われる茨城ブランドを作ることが夢だと語る。
被災直後の生き残り術学ぶ
橘さんは、災害時に命を守る技術を伝える活動をする「危機管理リーダー教育協会」(東京千代田区)との出会いをきっかけに、災害対策やサバイバル技術に興味を持った。その後、災害時にとるべき行動や、人に伝える技術を学び、災害対策インストラクターやブッシュクラフトインストラクターの資格を取得。今年6月からオンラインの防災講座を開催し始めた。
どうやって防災教育を広めるか試行錯誤する中で、まずは自分の住んでいるつくば市から防災意識を高めていきたいと思い直し、市民対象の防災講座を無料で開催する同防災ラボを立ち上げ、今月から本格的に活動を開始した。
一般的な防災講座では、段ボールトイレの作り方など、避難所で快適に過ごす方法を紹介することが多い。しかし災害発生後、食料や救援物資の配給など公的な支援が被災地に届くまでには3日~1週間かかると言われており、その間は自分たちの力で生き残る必要がある。そのために、どのような準備をすべきかを一人一人に考えてもらうことが「防災ラボ」の目的だという。
今回のテーマは「オリジナル防災セットをつくろう」。実際に地震などの災害が起きた直後に取るべき行動の原則や、人間が生き残るために最低限必要な物を解説したあと、災害前に備えておくべきグッズを紹介する。普段、自宅にいることが多いのか、外出していることが多いのかによっても、必要な防災セットや、防災セットを置くべき場所は変わってくる。また、非常食ばかりではなく、チョコレートやレトルト食品など普段から食べているものを少し多めに備蓄しておくと、災害時でも自分がホッとできる瞬間を作れる。講座では、橘さんの説明を聞き、実際に防災グッズを体験しながら、参加者は自分の防災セットに何を入れるべきかを考えていく。
受講者のうち希望者には、各自準備した防災セットを見せ合ったり、より具体的に災害時のリスクを特定して対策を考えたりする研究会も今後開催する予定。また、今回の講座とは別に、野外で災害に遭遇した時に、効率的に助けを呼ぶ方法や、火おこしなど、親子で遊びながらサバイバル技術を身につける「防災×アウトドア講座」も有料で不定期開催する。
「最初から防災への関心が高い人だけでなく、野外活動が好きな人や、親子でイベントに参加したい人にも、楽しみながら防災に興味を持ってもらうきっかけになれば」と、橘さんは話す。
今回の講座では「人は食べなくても、3~4週間は生きていられる」という情報も提供される。このような知識を地域住民ひとりひとりが持っていれば、災害時も不必要な買い占め等は起こらずに、限られた物資を本当に必要な人や場所に届けられる。「日頃から防災意識を高く持ち、災害時も住民同士で助け合うことができれば、公的支援は被害の大きい場所に迅速に届けられる。そのような地域につくばをしていきたい」と橘さんは語る。
◆つくばセルフ防災ラボの今回の講座は、12月から毎月1~2回、Biviつくば(つくば市吾妻)内のイベントスペースや、LALAガーデンつくば(つくば市小野崎)内の「つくラボ」、ウエルシアつくば桜店内「ウエルカフェ」で開催する予定。新型コロナ感染状況によってはオンライン開催になる。