水曜日, 12月 2, 2020
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《くずかごの唄》73 弟の初孫 奎ちゃんの俳句 

【コラム・奥井登美子】本屋さんと図書館は私の楽しみのポイント。読みたい本を探すささやかな興奮は何ものにも代えがたい。この間、本屋で角川文化振興財団が発行する『俳句』11月号の表紙を見つけてびっくり。「角川俳句賞受賞 岩田奎 38年ぶりに最年少受賞記録を更新」。うれしくて、3冊も買ってしまった。

コロナ禍もあって、加藤の家で父の代から続いていた「正月」「ひな祭り」「誕生日」など、年に4~5回の兄弟おしゃべり会が途絶えてしまっている。奎ちゃんに会えないのが何より寂しい。奎は私の実弟・加藤尚武の初孫。高校生になって以来、この集まりのリーダー的存在になっている。

奎の両親は2人とも数学者。京都から東京へ越して来て、どういう偶然か、私が青春を謳歌(おうか)した東京薬科大学の校舎跡地に建った住宅に住んでいる。

「赤い夢」 岩田奎

にはとりの骨煮たたする黄砂かな

煮るうちに腸詰裂けて春の暮

珈琲に氷の残る蜃気楼

餡を炊く焜炉三台藤の花

トマト切るたちまち種の溢れけり

夕日いま葱のうしろへかたむけり

葱を煮るどろりと泡を抱くところ

男の子なのに調理に関心があるのは尚武と似ている。尚武は哲学者のくせに「食いしん坊」。調理が好きでいろいろなものを探してきては料理して人に食べさせる。そういうところは加藤の父にそっくりだ。父もそれで電気冷蔵庫の仕事をしたのだと思う。

祖父の哲学と両親の数学。大学3年21歳の奎ちゃんが俳句をどう発展させるか。これからが見ものである。(随筆家、薬剤師)

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