【コラム・岩松珠美】今年の春先は未知なるコロナ感染症の流行に見舞われた。皆が今の日常生活の当たり前さについて見直しを迫られている。
文部科学省の学校基本調査(2016年)によると、高校を終えた約116万人の進路は、大学が54.7%、専修学校が16.4%という。その中では、医療系の国家資格が取れる学科や専攻が人気のある分野と聞く。しかし、介護福祉や社会福祉について専門的に学び、介護福祉士や社会福祉士などの資格取得を目指したいと思う生徒は決して多くはない。
介護福祉士養成施設協会の報告(2019年)によると、加入している大学、短期大学、専門学校を卒業して、福祉現場に就職した学生は5697人。そのうち、17%が職業訓練生、6.7%が外国人留学生だった。
そのような状況の中で、私は今春、新3K(きつい、汚い、給料安い)といわれる介護現場のイメージをどう払拭できるかよりも、介護の仕事は「多くの人々の生き様に触れる『感謝と感動の仕事』である」ことを伝えたいと思い、介護福祉士を養成する新設の専門学校に赴任した。迎えた学生は全員が留学生の10人。
実践の場での学びが大事
感染症予防をしつつ、多くの大学、短大、専門学校がオンライン授業や課題自己学習指導で新学期を始めた時期に、私たちは通常対面式の授業・演習開講を決め、5月から学生を迎え入れた。感染対策として、検温、体調確認、手指のアルコール消毒を入口で確認してから、50席以上入る教室に10人が離れて座ってもらい、教室換気の手順も徹底して実施した。
介護教育では、2年間の修学期間(約2000時間)のうち、社会福祉関係施設で450時間の実習をすることが必要になっており、実習がカリキュラムの根幹を占めている。つまり、福祉の実践場での学びを重要視している。
コロナ禍の2020年度は、厚生労働省から、学内での介護実習内容に相当する授業・演習を介護実習と見なすという通達があったが、こういう状況下で、学生の現場実習を受け入れてくださった施設に深く感謝をしている。
オンラインゲームやSNSが普及した今、いろいろな世代とコミュニケーションを深めることがとても大事である。こういったツールも使いながら、介護分野での生徒のやりがいや感動を育てていくことが、現場の要請を担う専門学校の使命と思っている。(つくばアジア福祉専門学校 校長)
【いわまつ・たまみ】同志社女子大学(栄養生化学)卒。女子栄養大学大学院修士課程(食生態学)修了。老年看護学、地域看護学に研究分野を拡げ、大学や専門学校で教育に携わる。管理栄養士、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、看護師。著書に「六訂栄養士・管理栄養士をめざす人の社会福祉」(みらい出版、2020)など。現在、つくばアジア福祉専門学校(土浦市東真鍋町、2020年5月開校)校長。1961年、長野県生まれ。