【相澤冬樹】東京など太平洋側の地域に接近する台風の増加が過去40年の観測データから明らかになった、と気象研究所(つくば市長峰)が25日報告した。接近する台風は強度がより強くなっていること、移動速度が遅くなっていることもわかったという。
25日付の発表論文について、同研究所応用気象研究部、山口宗彦主任研究官がオンライン記者会見で説明した。
太平洋側で軒並み増加
台風は、平均で1年間に約26個発生し、そのうち約11個が日本に接近(台風の中心が全国の観測地点から300キロ以内に入った場合)する。接近数が「体感的に増えている」と思われても、これまで地域別・都市別などでは定量化されたことがなかったため、1980年から2019年の過去40年分の観測データや気象解析データを詳細に調査した。80年は静止気象衛星ひまわりの運用が開始された年で、観測データの品質が均質で信頼できる期間について調べた。
その結果、東京で、期間の前半20年に比べて後半20年の接近数が約1.5倍となった(図1)のをはじめ、名古屋、高知など太平洋側の地域で軒並み増加傾向をみせた。 前半20年は南方の洋上にあった台風が後半20年間に押し上げられた格好だ。
その要因としては、太平洋高気圧の西方、北方への張り出しが強くなっていることが考えられる(図2)。ただ、山口研究官によれば「今回調査から後半の増加傾向がこの先も続くかは判定できない」という。
また、中心気圧が980ヘクトパスカル未満の強い強度の台風に注目しても接近頻度が増えていること、台風の移動速度が遅くなっていることも明らかとなった。要因として、接近時の海面水温の上昇、上層と下層の風の差の縮小、大気中の水蒸気量の増加が、どれも台風の発達により都合の良い条件になっていること、さらに偏西風が日本上空で弱まっており、これにより台風を移動させる風が弱くなっていることが考えられるという。
地球温暖化との関連については、今後の解析によるとした。「太平洋十年規模振動」と呼ばれる気候の内部変動がこれらの変化と関連している可能性があることに注目、地球温暖化の影響と合わせてさらに解析を行う予定でいる。