2015年9月の鬼怒川水害被害で市域の3分の1が浸水するなど甚大な被害を受けた常総市で17日、弁護士らによる国家賠償訴訟の住民説明会が開かれた。弁護士らは、水害は治水政策の誤りによるところが大きいとして、河川管理者である国を相手取って国の責任を問う裁判を起こしていくことを住民に呼び掛けた。住民が10人以上集まれば、国家賠償法の時効となる2018年9月までに水戸地裁下妻支部に提訴したいとしている。
つくば市の坂本博之弁護士ら八ツ場ダム(群馬県)差し止め訴訟や水害訴訟の経験がある弁護士が、7日に説明会のちらしを新聞折り込みで市内全戸に配布し、石下総合福祉センター(新石下)と水海道生涯学習センター(水海道天満町)の2カ所で開催した。弁護士4人が手弁当で参加した。
まず水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之代表が国による鬼怒川の治水対策について「上流に大規模ダムを屋上屋を重ねるようにつくり、下流の堤防整備は遅れていた。ダム偏重の河川行政により水害が起こった」と指摘した。
都内から参加した只野靖弁護士は「1984年の最高裁判決以降、住民に極めて厳しい判決が出されている」と水害訴訟の歴史を説明した上で、今回、越水や決壊が起こった2カ所の堤防のうち若宮戸地区について「堤防の役割を果たしてきた自然砂丘が長年にわたって削られていたのに国は保全や築堤の計画を立てず放置していた、特に2014年はソーラーパネルの設置により大規模に削られたのに改修箇所に入れてなかった」などと国の責任を指摘した。
石下福祉センターでは住民約50人が参加した。園芸農家の男性は「ハウスに甚大な被害を被った。若宮戸はもともと無堤地区。山林の砂丘が自然堤防だったのに(砂丘を削るという)業者の開発を認めたのは国。人災だと思っている。国の責任を認めさせるよう闘っていけたらと思う」と話した。
参加者からは「全壊に近いのに半壊しか認められなかった友人がいる。水害のショックが大きく心労が重なったことが原因で脳梗塞になり入院し死亡した。遺族は原告として参加できるか」「自分は裁判をやりたいが家や土地は親の名義になっている。親でないと原告になれないか」などの質問が次々に出された。
今後は、提訴の意向がある住民を対象にアンケート調査をした上で、弁護士が個別面談などを実施する予定という。(鈴木宏子)