【山崎実】急速に進む人口減少に伴う水需要の減少や、老朽化した施設更新による将来負担増に対する懸念などから、水道事業をめぐる議論が浮上している。広域、官民連携が中心課題で、安定かつ持続的な経営を迫られる同事業にとって避けられない問題になっている。
契機は、2018年12月の水道法改正で、都道府県は市町村を超えた広域的な水道事業の連携推進施策を策定し、これを実施するなど、県が広域連携に取り組む必要があることを想定している。
県水政課によると、茨城県の場合、水道法の改正より前の16年度に、全市町村が参画する「広域連携検討の場」を設置した。以降、全体会議やテーマ別検討会などを開催し、市町村と広域連携について協議し検討を重ねてきた。
土浦市加わり3市町が共同発注
連携形態は、経営統合や一部施設の共同設置、事務の広域的処理など様々だ。先駆的な例として、かすみがうら市と阿見町の共同発注があるが、4月から土浦市も加わって3市町による広域連携に拡大された(同課)。
共同発注は、窓口、検針などの業務を複数市町村が共同発注することで委託費の削減を図るもので、設備投資などを必要としないことから、経費の削減効果が期待できる。しかしメリット論は認識しつつも、市町村間の広域連携に対する認識の相違から具体的な取り組みは進んでいないのが実情だ。
打開策を模索する県は、市町村との勉強会などを通して、組み合わせ市町村を”打診”するなど、個別的な市町村への調整と支援に乗り出しており、「広域連携は、水道事業の基盤強化を図る上で、有効な手段の一つ。事業の持続可能性に資する広域連携の取り組みを、市町村と共に推進していく」(県議会における保健福祉部長答弁)と、意欲的な姿勢を示している。
コンセッション方式は慎重
官民連携では、水質検査、浄水場の運転管理業務や水道料金徴収業務などの民間委託があるが、運営権を委ねるコンセッション方式については、人件費削減などの財政負担の軽減は期待できるが、業者が破綻した場合、事業継続が不可能になりサービスが低下、料金値上げの懸念など課題も多く、県は導入に慎重姿勢を崩していない。
水道事業はライフラインの中枢を担う事業だけに、広域連携をめぐる議論はさらに活発化しそうだ。