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県南名店の味を医療従事者へ クラウドファンディングで届くお弁当

【伊藤悦子】新型コロナウイルスとの戦いの最前線にいる医療従事者に、県南地域を代表する飲食店のお弁当を届けようという取り組みが行われている。レストラン中台(土浦市桜町)、旬の台所連根屋(牛久市神谷)とその常連客が立ち上げた「セーバーイーツ茨城」による活動で、クラウドファンディングで広く支援を募り、両店のお弁当を病院に届け始めた。

土浦、牛久の飲食店が常連客とタッグ

発案者は両店の常連客、戸田さつきさん(41)。新型コロナの影響から、両店とも売り上げが前年比80%減と苦境に立たされていた。「いつも旬の食材を使って、どんな料理でお客様に喜んでもらうかワクワクして考えていたのにむなしくなった」という中台義浩さん(55)の言葉に心を痛めた戸田さんはなんとかしたいと思った。

個人的なテイクアウトを毎食続けるわけにはいかず、「応援したいが食べられない」ジレンマがあった。折から戸田さんが親しむSNSのツイッターには、医療従事者へ応援や感謝の言葉があがる一方、「応援が拍手だけでいいのか?」など議論が交わされているのを目にした。

そこで、医療従事者へ感謝の気持ちを伝えるためお弁当を届ける「セーバーイーツ」を発案。お弁当作りならば、経営難に陥っている飲食店の仕事としてシフトできる。テイクアウトは土日に集中しがちだが、平日のスタッフの仕事もまかなえる。さらに「クラウドファンディングなら、多くの人々が感謝の気持ちを伝えることができるから、みんなが幸せになれるのでは」と考えたという。出資額は、医療従事者1人のお弁当代に相当する1500円からと決めた。

戸田さんとレストラン中台のシェフ中台義治さんは土浦生まれ、連根屋店主佐藤栄次さん(57)は牛久生まれだが、3人は県内の同じ高校出身。地元の味を届けようと、タッグを組んだ。

佐藤さんは、先にラジオで、都内で医療従事者に差し入れする話を聞き、やりたいなと思っているところに戸田さんから声をかけられた。「ふたつ返事でやるやる!」と応じたそう。

レストラン中台の女将(おかみ)、中台理香さんも「話を聞いてすぐにやりたいと思った」と話す。「1500円のお弁当だが、中身は1800円以上のものを使っている。クラウドファンディングでいただくのは材料費だけ。おいしかったと喜んでもらいたいから、儲けはいらないという気持ちだ」という。

目標額は3日で達成も募集継続

パンフレットを作り、サイトを立ち上げ、クラウドファンディングは5月1日にスタート。目標額の50万円はわずか3日で達成した。セーバーイーツのサイトには「頑張ってください」「応援しています」など支援者から医療従事者への感謝のメッセージが並ぶ。なかには「これからのことを考えると、医療の現場を守らないといけない」という10代の若者からの支援もあったという。

メッセージは印刷して、お弁当と一緒に病院に届けている。12日以降、JAとりで総合医療センター(取手市)と筑波大学付属病院(つくば市)にそれぞれ30食、40食を届けた。

佐藤さんは「店は20年近くやっているが、このように弁当の仕事をやるのは初めてに近い。中台さんと協力しあえるのも自分の店だけで全部こなさなきゃいけないわけじゃない、と気持ちの面で助かっている」と語った。

実際にお弁当を食べた医療従事者からは、「ハンバーグがおいしかった」「みなさんの支援がうれしい」「励みになった」という声が寄せられている。

受け入れる医療機関も募集中

目標額50万円には達しているが、31日まで募集している。戸田さんは「予算やお届け距離の都合もあるため、すべてに応じられないかもしれないが、新型コロナウイルス感染者が入院している、いないにかかわらずたくさんのに医療従事者に届けたい」とし、「もしお弁当を受け入れたい医療機関あれば、連絡してほしい」と話す。

クラウドファンディングは出資額に応じて、お弁当を届けられる人数が異なる。クラウドファンディングのリターンは、イラストレーター・画家の長友心平さん描き下ろしポストカード、ロゴ反射缶バッジ(直径40ミリ)が用意されている。

長友さんイラストと光る缶バッチ

コロナと戦う医療従事者に地元の美味を届けて、みんなを守りたい!セーバーイーツ茨城のサイトはこちら

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