日曜日, 11月 16, 2025
ホームコラム《映画探偵団》30 野口雨情の「茨城県行進曲」

《映画探偵団》30 野口雨情の「茨城県行進曲」

【コラム・冠木新市】この十数年、AI時代だというのに、なぜか昭和初期がずっと気になっていた。多分、茨城県出身の詩人野口雨情の民謡との出合いがそうさせたのだろう。

2013年9月、「雨情からのメッセージ/幻の茨城民謡復活コンサート」を筑波学院大学の大教室で開催した。雨情が作詞した地元民謡11曲を掘り起こし、オペラ、ジャズ、ポップスの歌手に披露してもらった。

雨情の地元民謡は、昭和元年(1926)から昭和17年(1942)の間に作られ、昭和大恐慌と大東亜戦争の時期にあたっている。最初に作られたのは、「茨城県行進曲」(作曲堀内敬三)だ。茨城新聞社が企画制作し、大正末か昭和初期に作られた。茨城県各地の四季の光景を明るく表現している。

霞ケ浦の 水に浮く 山は筑波の 優(やさ)すがた
海の公園 茨城は 春の魁(さきがけ) 春が来る
春だ 春だ 春だ

2012年、雨情生誕130周年記念番組を茨城放送で企画中に、この音源が入ったCDをプロデユーサーから手渡された。東日本大震災の時、茨城新聞社の資料棚が倒れ、出てきたレコードから起こしたものだという。私は野口雨情との縁を感じた。

結局、スポンサーの都合で企画は流れてしまったが、その後のコンサートに結びついた。しかし、当時は音源や楽譜集めに夢中で思いつかなかったのだが、「茨城県行進曲」とドイツ映画「メトロポリス」(1927)は同じ時期に作られていたことに、最近になって気が付いた。

フリッツ・ラング監督の「メトロポリス」

「メトロポリス」は、フリッツ・ラング監督が当時ニューヨークの光景に刺激され作ったSF作品である。物語設定が2026年になっていて、100年先の未来社会を想像して描いている。現在の時点に立つと、6年先である。ラング監督の予測した未来社会とは、少数のエリートが住む地上と大勢の労働者が住む地下とに二分されている。

地上には、高層ビルが林立し、高速道路を車が走る。また巨大なスポーツスタジアムや図書館と劇場などが一つに収まった建物、快楽の園ヨシワラハウス、エネルギー工場などがある。地下には、寂れた礼拝堂、殺風景な労働者の住居、墓地などがある。二つの世界を支配しているのがバビロンタワービルに入る大企業で、コンピューターや原発を連想させる機械が出てくる。

物語の主人公は大企業の御曹司フレーダーで、偶然出会ったマリアなる美女にひかれ、地下世界に足を踏み入れる。そしてこの物語には二人のマリアが登場する。

一人は労働者に聖書の教えを説くマリア。もう一人はその影響力を恐れ経営者が送りこんだ人造人間マリアだ。このロボットが作り手のコントロールを無視、地上のエリートを色香でたぶらかし、地下の労働者をたきつけて工場破壊をあおる狂態振りを発揮する。

ロボットが人間をたらし込んだり、機械破壊を命令する行為は不気味である。同じ女優が清楚なマリアと狂ったマリアを演じており、異常ともいえる目の輝きに圧倒され、何度見てもそら恐ろしくなる。

だが、ラング監督の未来予測は的中しているといえる。しかし、こんな未来は、私はごめんである。むしろ、雨情が「茨城県行進曲」で描いた自然の光景が未来のすがたであるべきだと思う。めざす未来は90数年前の新民謡にある。私は十数年ずっと未来を夢みていたのだ。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

ホーム開幕戦で敗れ2勝1敗 つくばサンガイア

バレーボールVリーグ男子のつくばユナイテッドSunGAIA(略称サンガイア、本拠地つくば市)は15日、土浦市大岩田の霞ケ浦文化体育会館で今季ホーム開幕戦を迎え、レーヴィス栃木(本拠地足利市)にセットカウント1-3で敗れた。これでサンガイアは2勝1敗で東地区4位。16日も午後2時から同会場でR栃木と再戦する。 2025-26 Vリーグ男子(東地区)レギュラーシーズン(11月15日、霞ケ浦文化体育会館)サンガイア 1-3 R栃木22-2520-2525-1623-25 第1セットは互いにサイドアウトを取り合う流れでスタート。中盤にはサンガイアがレフト浅野楓のブロックやスパイク、ライト長谷川直哉の多彩な攻撃などでリードを広げるが、終盤にR栃木が曾根裕也のサービスエースなどで追い上げ逆転に成功、22-25でサンガイアは最初のセットを落とした。 第2セットも序盤は拮抗した展開だったが、中盤にR栃木が5連続得点などで引き離し、結果20-25でサンガイアはこのセットも落とした。 「自分たちのやりたいことの半分くらいしか出せなかった。細かいつなぎやコンビネーションが良くなく、相手にチャンスボールを渡し、点につなげられてしまった」と武藤茂主将。「選手の良さを出しきれなかった。相手のポジショニングに想定と違う部分があり、高さでミスマッチが出たところを特に第1セットは突かれた」と加藤俊介監督。 R栃木の先発メンバーにも目を見張らされた。6人のうち架谷也斗、十文字龍翔、奥村航の3人がサンガイア出身。在籍時期やポジションは違うといえ、それぞれに一時代を築いた選手たちだ。 「出身選手だからという意識はなかったが、特に架谷と奥村には相当ポイントを取られたので、この2人を抑えなくてはと選手に話した」と加藤監督。武藤主将は「架谷は去年のうちのエースで、難しいボールも上手に打ちこなすやっかいな選手」と評し、長谷川直哉も「チームメートだったから特徴もよく分かっている。絶対負けたくない」とライバル意識を燃やしていた。 試合は第3セット、サンガイアがメンバーチェンジなどで流れを引き寄せた。セッターを森居史和から浅野翼に変更、村松匠のバックアタックをお膳立てするなど攻撃の幅を広げた。「森居はサイドへの速い供給が得意で、浅野はインサイドをうまく使う。それぞれに良さを出してくれた」と加藤監督。 第3セットを25-16で奪ったサンガイアは、第4セットも終盤まで粘りを見せるが、一歩及ばず23-25でセットを落とし試合終了。 明日の再戦に向けて長谷川は「今日できなかった守備のやり方や、かみ合わなったポイントなどを動画やミーティングで確認し修正したい」、また加藤監督は「うちの良いところが出ればリベンジできる。みんなコンディションは良く、その試合のベストメンバーを出す」と前を向いた。(池田充雄)

「土浦の花火2025」を振り返る《見上げてごらん!》46

【コラム・小泉裕司】第94回土浦全国花火大会(11月1日)は、競技開始を知らせる直径約24センチの 8号玉5段雷花火が筒から打ち上げ後すぐに爆発、いわゆる過早発(8月17日掲載コラム参照)で、会場の数万人の脳裏に「中止」の二文字がよぎったに違いない。 通常、イベント開催を知らせる雷花火は直径12センチの4号玉なので、2倍の大きさがある。使用の機会はまれだ。安全確認後、プログラムは再開したが、それまでの13分間は、ただただ無事を祈るばかり。再開後は、前線の影響か、例年の風向きとは異なる南風で、観覧席や付近の住宅にガラが舞う夜となったが、大会は無事終了した。 それでは、恒例の「振り返り」をしよう。まずは競技の全体印象だが、2025年の総決算の大会と言って間違いないだろう。その中でも茨城勢と秋田勢、そして山梨勢の強さが際立つ大会となった。特に、夏の大曲全国花火競技大会で内閣総理大臣賞を受賞した野村花火工業(水戸市)のグランドスラム達成は圧巻だった。 10号玉の部(直径30センチの尺玉1発) 上位を占めたのは、やはり五重芯の作品。8作品のうち、優勝した野村花火工業、準優勝の山﨑煙火製造所(つくば市)の五重芯は、安定度抜群で甲乙付けがたい完成度。山﨑煙火のこれまでと異なる色の組み合わせが多少順位に影響したのかも知れないが、僅差(きんさ)であったことは間違いない。 2007年に四重芯花火を完成させた菊屋小幡花火店(群馬県)の五重芯も、昨年あたりから安定度が格段に増している。こうした多重芯が優位の中、入賞したマルゴー(山梨県)の「昇り曲付超(スーパー)変化菊」は、十八番の点滅系花火で、いわゆる自由玉の部類。 自由玉が進化すればするほど、こうした自由玉と多重芯花火を同じまな板の上で採点することについて、花火師や観客から違和感を指摘する声が聞かれる。この点、実行委員会ではすでに数年前から課題としているが、具体的解決策が見えておらず、早期の解決が待たれるところだ。 創造花火の部(直径15センチの5号玉7発) 18回目の優勝を飾ったのは、北日本花火興業(秋田県)の「赤いキツネと緑のタヌキ」。この日、会場で最も大きな歓声が湧いた作品だ。キツネは3匹中1匹、タヌキは4匹中3匹が審査委員側に顔を向けたが、この技術とアイデアこそ「型物花火の神様」と言われるゆえんだ。 社長の今野義和さん(61)は、昨年「現代の名工」に選ばれ、今月には「黄綬褒章」を受賞するなど、日本煙火史に残る卓越した成果を残し続けている。 準優勝は芳賀火工(宮城県)の「ラッパでドレミ」、特等は加藤煙火(愛知県)「今が旬!ドクドクきのこ」の2作品。これらを含めた上位3作品は、老若男女、誰にもわかりやすいデザイン。大きな拍手が審査員の採点を後押ししたに違いない。 打ち上げ順番が早い作品は高得点が出にくいと言われるが、それを実感したのが26番伊那火工掘内煙火店(長野県)の「幸せのクリスマスツリー」。7発一斉打ち上げはこれまで見たことがない。落ちるときに段階的に輝く彩色千輪の段咲きは、打ち上げや開発のタイミングを計算し尽くしたチャレンジングな作品で、まさに「創造花火」の秀作と言える。 審査員のみなさんには、前半とは言え「いいもの」には、勇気を持って高得点を付けていただきたい。 スターマインの部(直径12センチの4号玉以下400発以内) 優勝した野村花火の「颯爽と吹く風になって」は、選曲センスが抜群。ピアニストよみぃさんの演奏によるTVアニメ「とある科学の超電磁砲」 のオープニング曲は、アップテンポで疾走感のあるメロディー。十八番の野村ブルーとグリーンを基調とした八方咲き、輪菊、蜂など手抜きのない名花ばかりが、まさに駆け抜けるように音楽とシンクロ。お見事の一言に尽きる。 準優勝の山﨑煙火の「感情反転~愛と憎悪~」は、奇しくも野村花火と同じピアの曲を採用。ピアニスト清塚真也さんの「恋」と「怒りのともしび」の2曲をシーンごとに使い分けて、紅色のハート花火、牡丹、千輪菊などの連打に加えて、ひときわ大きな音を出す万雷を効果的に散りばめながら、愛情から憎しみへの激しい心の変化を表現した。 名作ぞろいの大会だったが、順位を分けたのは保安点、つまり落下による減点ではないだろうか。例年以上に多かったように感じた。その点、上位3作品は、垂れ落ちる星を一定の高さで消失するよう、見事にコントロールされていた。 内閣総理大臣賞受賞コメント 大会翌日2日の表彰式では、受賞者を代表して、内閣総理大臣賞を受賞した野村花火工業社長の野村陽一さんが謝辞を述べた。今回の受賞で土浦の花火13回、大曲の花火10回と、合わせて前人未踏の23回目の受賞を果たした。 「多くの花火業者が土浦に参加していただくことで多くの学びがある。花火の世界はWhyの連続。1歩進んで、2歩下がるどころか11歩下がってしまうこともある。そんな多くの課題を乗り越えて今があるが、数多の成績は、父との研究開発の成果だ。その私を、技術的にすでに超えた弟子の山口花火師とともに、100周年の土浦の花火がさらに発展するよう、さらには、みなさんに夢と感動を与えられるような花火づくりにこれからも取り組んでいきたい。」 それにしても、1年のうちに石破総理と高市総理2人の総理大臣から表彰された花火師は、史上初ではないだろうか。めでたし、めでたし。大会の無事開催を祝い「ドーン ドーン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

3S政策とマリリン・モンロー《映画探偵団》94

【コラム・冠木新市】中学1年生のころ。米国の進駐軍が戦争直後の日本の子どもたちにチョコレートやチュ一インガムを配る記録映像を目にし、不思議に思った。あの行為は、米国が日本人に好印象を持ってもらおうとの戦略だったのだろうか。 同じころ。古本屋で購入した「キネマ旬報/日本映画戦後18年総目録」の中に不思議な単語を見つけた。「…女性尊重、殿様の権威否定(もろもろの権威が殴られる)とともに、野球などのスポーツをねらったものがある。つまり3S政策といわれたものに対する、極めて素朴な、しかし商売上手な戦前からの転身が見られる」(戦後日本映画展望/井沢淳) 3S政策とはなんなのだろうか、疑問だった。だが、以後この言葉を目や耳にすることはなかった。1990年代に入って、ようやくその意味が分かる。 終戦後、米国はかねてから準備していた占領政策を打ち出した。その中核をなすのが「3S政策」、別名「日本弱体化政策」であった。3Sとは、SPORT(スポーツ)、SCREEN(スクリーン、映画)、SEX(セックス)の頭文字を示すもので、この3つのSを日本人の思考と身体に浸透させ、日本人を弱体化し、政治に興味をなくさせ、都合よく操ろうという計画だった(文献は残されていない)。 日本国民は、米国を美化して描いたハリウッド映画の洗礼を受け、知らず知らずに米国を理想化していった。大人たち以上にスクリーンの洗礼を受けた少年少女たちは、後に団塊の世代と呼ばれるようになり、3つのSが浸透し話題の中心となり、生き方を決めていくこととなった。 小津安二郎監督「東京物語」、溝口健二監督「雨月物語」、撮影中の黒澤明監督「七人の侍」など、日本映画界が黄金期を迎えていた1954年。 大リ一グの野球選手だったジョ一・ディマジオと結婚したセックスシンボルの女優マリリン・モンローが「帰らざる河」の撮影を終え、新婚旅行で日本にやって来た。表向きは、ディマジオが読売新聞の野球イベントに招待されたとされている。しかし、そのころは朝鮮戦争中で、モンローは韓国で戦う米兵の慰問を兼ねていたといわれる。米国でコンサートのリハ一サルまでして来たとの情報もある。 日本人は、モンローとディマジオの来日に熱狂した。2人の来日は、もしかして、文化復興してきた日本に対して、3S政策を再度強化するための作戦ではなかったのか(映画探偵団35)。 1960年代の高度成長期に入ったころから、日本人に糖尿病患者が急に増加する。テレビでは、コーラとチョコレートのCMがガンガン流れていた。映画館のスクリーンを見て、コーラを飲み、チョコレートを食べていた私は、成長して当然のように糖尿病となった。 2000年代に入ると、3S政策の話はちょくちょく目や耳にするようになる。そんなある日、病院からの帰り道で突然ひらめいた。3S政策のSとは、SUGAR(砂糖)ではないかと。進駐軍は子どもたちに甘味を覚えさせ、3S政策で興奮を与え、着々と糖尿病患者に育てようとしたと妄想するのだが、糖尿病患者の皆さんはどう思われるだろうか。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家) <お知らせ> 物語観光「つくつくつくばの七不思議セミナー」・日時:11月29日(土)午前11時~午後1時・場所:コリドイオ小会議室・内容: 映画上映「サイコドン(第2話)」、製作発表「新春つくこい祭/北条芸者ロマンの唄が聞こえる」の後、まちづくり懇談(参加費無料)

自動運転中の低速車両が接触事故 つくば市が実証実験

運行中止、原因検証へ つくば駅周辺でつくば市が実証実験を実施中の低速自動運転モビリティ(車両)が12日午後2時30分ごろ、自動運転中、同市竹園1丁目のイベントホール、つくばカピオの敷地内に設置されているスロープを時速3キロで走行し方向転換したところ、スロープの手すりに接触する事故を起こした。同市が13日発表した。事故時、運転手と一般の乗客2人の計3人が乗車していたが、けが人は無かった。 事故を受けて同市は12日午後、運行を中止した。同市科学技術戦略課は、原因を検証し適切な対策が講じられるまで運行を取り止めるとし、再開は未定としている。 同課によると、12日正午ごろから自動運転に使用している人工衛星の信号受信が不安定になり、補正信号の切り替えを行うなどの対策をして運行していた。午後2時30分ごろ、スロープを走行し方向転換した際、軌道がやや内側に寄っており、内輪差により、車両右側の路面から高さ30センチ付近がスロープの手すりに接触し、車両に長さ40センチほどのこすった跡ができた。同乗して自動運転を監視していた運転手はスロープに接触しないと判断しブレーキを踏む対応をしなかった。 接触事故後、車両は乗客2人を乗せたまま、つくばセンター広場まで戻った。運行事業者はその後、同市に連絡。警察に通報し、物損事故として現場検証などが行われた。 モビリティは、ゴルフカートのような4人乗りの車両。つくば駅前のつくばセンター広場からカピオまで片道約400メートルのペデストリアンデッキを、時速3~10キロ、片道約10分間、一般の人を無料で乗せて往復していた。子育て世代向けの移動サービスとして「こどもMaas」と銘打ち、同市が車載機器専門商社の東海クラリオン(名古屋市)に委託して運行している。運行期間は11月5日から16日までの間の10日間と、来年1月15日から26日までの間の10日間の2回で、今年度の事業費は約1800万円。運行を始めた昨年度は事故は無かった。 自動運転は、GPSを補強・補完する高精度の日本の準天頂衛星システム「みちびき」からの情報と、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発したソフトを使って車両の位置や方位を求めて運行する仕組み。運転手が同乗し監視しながら運行するレベル2での実証実験で、建物や樹木があって衛星からの信号が届きにくい場所では車両に搭載したセンサーを使う。2回の運行期間のうち、11月は、人工衛星と地上の基地局の両方からの位置情報を受信し自動運転する実証実験で、来年1月は、地上の基地局からの情報を使わず、人工衛星と三次元の地図情報を使い自動運転する計画だった。 12日の接触事故は、地上の基地局からの情報を、別の基地局の情報に切り替えた直後に発生したという。事故を受けて市は、委託先の東海クラリオンに対し、運行取り止めを指示したほか、安全・安心な運行を徹底するよう強く申し入れたとしている。