土曜日, 6月 13, 2026
ホームつくば気候変動で白濁するコメ 茨城大 回避策まとめ報告書

気候変動で白濁するコメ 茨城大 回避策まとめ報告書

【相澤冬樹】茨城大学(水戸市文京)に昨年4月設置された県地域気候変動適応センター(横木裕宗センター長)がこのほど、研究成果を初めての報告書「茨城県における気候変動影響と適応策―水稲への影響」にまとめた。気候変動の影響は、稲作においては白濁した白未熟粒の増加など品質低下の形で全国的に顕在化しており、本県も例外ではない。コメの品質低下の回避に向け、中長期的な適応戦略を具体的に示した。

収量減ないが品質低下が顕在化

報告書は水稲への影響と適応策に焦点を絞った。最新の予測データや予想される気候の変化に適応し、持続的に生産を行うための考え方について、「一般向けのわかりやすい言葉で紹介した」という。執筆者には同大学、県と県農業総合センター関係者のほか、農研機構(つくば市)の研究者が名を連ねている。

報告書は気候変動への適応策の考え方と大学や県の動きを概説した上で、茨城県の水稲生産の現状と今後の影響予測について解説。今後極端な降水量が増加することや、気候のシミュレーションモデルとその補正方法によって、本県の気温上昇の予測値が日本全体と比べて高くなる可能性も示された。

実地の研究例として、JAつくば市谷田部「有機稲作研究部会」の取り組みが紹介された。土壌中の窒素量が白未熟粒発生率の低減に関与する傾向がみられ、平均地温が上昇すればするほど白未熟粒の合計割合が上昇する関係が見出されている。

県西・南部から優先対策を

シミュレーションでは、近い将来にかけ、温暖化により水稲の収量が大きく減る地域は予測されないものの、白未熟粒の発生率は県西・南部から高くなっていく予測値が得られた。高温耐性品種や発生低減技術の導入といった適応策をこれらの地域から優先的に進めていく必要があるという。白未熟粒の発生を抑えるためには、10年に0.5度のスピードで気温上昇する想定に基づき、高温耐性品種を開発・導入すべきという指標を示している。

たとえば、県内で栽培される水稲は、品種構成が 「コシヒカリ」に大きく偏っていることで、収穫作業が短期間に集中することが問題となっていた。作業の集中により適期の収穫が困難となり、刈り遅れによる品質の低下を招いた。高温下でも品質が安定する早生品種 「ふくまる」など県育成の新品種の導入をはじめ、移植日の変更、スマート農業化などを提案。これら具体的な適応策ごとの時間・コスト・効果を踏まえて、中長期的な適応戦略を立て、生産者・行政・研究者・企業等が連携した取り組みを進めるべきだとまとめた。

センター長を務める同大学大学院理工学研究科の横木裕宗教授は、「大学として気候変動の適応策に関する様々な研究分野の研究の蓄積があったため、全国の地域気候変動適応センターの中でもいち早く報告書を出すことができた。水稲生産への影響予測は、農業県の茨城にあって最も関心が高い情報の一つだ。報告書が、各生産者における持続的な農業の見通しや自治体による支援策の一助となれば」と話している。

同センターは、茨城大学が事業者を務め、気候変動の影響予測の情報提供や自治体の気候変動適応計画の策定支援などを行う。2018年に制定・施行された気候変動適応法に基づき、全国で初めて大学を事業者とする地域気候変動適応センターとして昨年4月1日に設置された。

▼データ版(PDFファイル)はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

高校進学を考える集いの可能性《竹林亭日乗》41

【コラム・片岡英明】つくば市の高校進学を考える第7回市民の集い(つくば市の小中学生の高校進学を考える会主催)が5月24日、つくば市役所コミュニテイー棟で行われた(5月18日付)。 第1部で、筑波、サイエンス、茎崎、牛久栄進、竹園の各県立高の校長先生から、各高校の魅力などについて説明してもらった。つくば市の副市長、市議の方々、市が選挙区の県議をはじめ、約90人の参加者が熱心に聞き入る様子を見て、市内高校不足問題から始まった小さな会の運動が、新しい段階に入ったと感じた。 夏休み前に各地で高校説明会を 各校長先生による学校の魅力説明は昨年から始まった(25年6月6日付)。それは、「つくばの県立高不足の解明だけで受験生の応援になるのか」という世話人会での問いから生まれた。 2回目の今回は、5校の校長先生の説明は生徒の学びが有機的につながり、ひとつのストーリーとなっていた。そして、参加した受験生の学習スイッチも入った。話を聞きながら、生徒の学びのために、このような高校の魅力説明会を各地で開いてほしいと感じた。 以前は、中学で高校説明会を行っていた。それが夏休みに生徒個人が学校説明会に参加する形になった。そのため受験校が定まらず、説明会に参加しない高校を受験する生徒も多い。これからは、夏休み前に各地域で公私連携して高校説明会を開いてほしい。説明会を通して、学校と地域の連携が強まれば、高校も魅力アップに力が入り、生徒の学びの応援にもなる。 高校不足と定員割れの混在 5月30日公表された2025年国勢調査で、つくば市の人口が水戸市を抜いて県内1位となった。それによると、つくば市の人口は5年前の調査よりも2万7000人(約11%)増えた。TX沿線の人口増に伴い、つくば市の中学卒業者数は2023年に水戸市を超えた。今年3月の県全体の中卒者数は2万4555人だったが、つくば市はその10.4%を占め、2562人に達した。 この生徒増に見合う県立高が、つくば市に配置されているだろうか? 現在、全日制県立高は県内に84校と1分校がある。生徒割だと、つくば市には8校が必要となる。しかし、1989年の市合併時には6校41学級あったのに、現在は3校17学級と大幅に減ってしまった。この数字は、水戸市の7校50学級の約3分の1であり、大問題なのは明らかといえる。そのため、多くの中卒者が市外の高校に入学しており、通学上の問題も深刻である。 一方、市内3校のうち筑波高校とサイエンス高校の2校が定員を満たしていない。つまり、つくば市は生徒が増えているのに高校が不足している、現在ある県立高の魅力をアップさせる必要がある―という2つの課題を抱えている。「地域にとって必要な学校とは何か」を探求している街とも言える。 つくばの課題、その解決策 今回の集いでは、各校の魅力は十分に光っていた。自信を持って、もっと前に出てほしい。これからの課題は、各校の魅力をどのように地域の人たちに届けるかだ。 今回の集いでは、①TX沿線の人口増に見合う高校学級増~学級増と高校審議会資料の疑問解消②県立高の魅力アップ~地域との連携強化③スクールバスへの県の支援~全額個人負担から県の通学支援を―の必要を提案した。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

かすみがうら市 土浦市に合併要望へ

2005年以来の激震 平成の大合併によるかすみがうら市誕生以来、地域に戸惑いが生じている。かすみがうら市議会が16日に、土浦市との合併を前提とした市政の転換と、合併相手となる土浦市と同市議会への要望を進める議案を議員提案することが明らかとなったためだ。 合併はかつて土浦市、旧霞ケ浦町、旧千代田町、旧新治村の4自治体間で協議されたが合意に至らず、2005年3月に旧千代田町と旧霞ケ浦町の2町がかすみがうら市に新設合併、翌年に旧新治村が土浦市に編入される形で現在に至る。 かすみがうら市の宮嶋謙市長は今年7月の任期満了で引退を表明している。市議会発の今回の合併要望は、宮嶋市長続投無しという状況により、7月に行われる市長選を見据え、新市長への最大の継承となる。 広域連携の基本姿勢を重点課題に かすみがうら市でこの課題の矢面に立つ経営企画課は「トップレベルの対話があったようだがまだ何の指示も降りてきていない。冷静に対処しなくてはならない」と語る。 折しも2026年度は、市政の根幹政策である第2次総合計画・後期5カ年計画の総仕上げの年度でもある。同課では市民アンケートをとり、今後ワークショップなどを通じて、2027年度スタートの第3次総合計画策定作業に入っている。合併協議が現実のものとなれば、この一大事業は大きく影響を受ける。 「総人口、財政規模から、当市が土浦市に編入される形を変えることはできないだろう。しかし、かすみがうら市のまちづくり理念は次期総合計画内でも重要なテーマ。当市だけでは乗りきれない、解決しなくてはならない課題というものがあり、広域連携を掲げて市民生活の支えにしようとしている」(経営企画課) この広域連携というテーマを土浦市に提案する合併要望の柱とすることで、「まさかの寝耳に水」に同市職員は取り組もうとしている。 「市の総人口は緩やかに自然減をたどっているが、産業支援やまちづくり政策を通した社会増もある。合併によって将来の居住地受け皿や豊かさを誇れる自然環境といった地域資源を、どのように生かしていくかも考えていくことになるだろう」 市民は冷静に事態を受け止めているようだが、「約20年、かすみがうら市という名称に慣れ親しんできた。これが消えていくと寂しさを禁じ得ない」といった声が聞かれた。 商都のカンフルになるのか かすみがうら市議会で議案が可決されれば、同市の要望を受け取る形となる土浦市政の現場は、困惑の表情だ。土浦市は9日「現時点ではかすみがうら市議会の動向を注視している段階であり、コメントを差し控える」と発表した。同市政策企画課は「上層部からの指示通達は何もない。今は動向を見守るだけ」と述べる。 2006年に旧新治村を編入し、市域の拡大と工業団地など産業誘致基盤を得た土浦市は、半面、歴史を積み重ねてきた中心市街地の地盤沈下という課題を抱えている。市政策企画課は「(合併のメリットや効果を)今は語る時ではない。中心市街地の活性化と、将来延伸してくるつくばエクスプレスの受け皿づくりといった課題に向き合わなくてはならない。合併の先にある可能性を、どこに見出していくべきかはこれからのテーマと認識している」「(両市とも)互いに人口減の問題がクローズアップされているが、土浦市における人口の社会増も地道な取り組みの持続によるもの。合併のための議論が始まれば、真剣に受け止めていかねばならない」とする。 かすみがうら市でも「社会増減は年度によって異なるが、2024年度に民間の人口戦略会議で分析された『消滅可能性自治体』には名を連ねなかった。条件付きで持続可能な分類という可能性は、かすみがうら市が守り継承すべき財産」と未来を見つめる。持続性という問題は、茨城県内では大半の基礎自治体が内包している。(鴨志田隆之)

市長「事業者は共生ガイドライン当然守る」【つくばに日本最大級のデータセンター】

つくば市、五十嵐立青市長の定例記者会見が9日開かれた。同市大穂地区で建設が始まったデータセンターからの莫大な排熱など専門家が環境影響に懸念を示している問題について(5月19日付、同20日付)五十嵐市長は「日本データセンター協会が5月に地域共生ガイドライン(※メモ)をつくった。共生ガイドラインは事業者としても当然守っていきたいということ。今、環境を無視したり、地域住民を無視して事業を進めることは基本的に起こりえない」との見方を示した。 大穂地区のデータセンターは、グッドマンジャパン(東京都千代田区)の特定目的会社が同市開発公社から約46ヘクタールの用地を取得し建設を進めている。将来的に国内最大級の100万キロワットのデータセンターを建設する見通し。これに対し専門家は、100万キロワットのデータセンターが完成すれば、現在のつくば市全体の排熱量の2倍が同市大穂の予定地から排出され、夏の猛暑時などは周辺住民の健康影響が懸念されるなどと指摘している。 9日の定例会見で五十嵐市長は、100万キロワットのデータセンターから排出される排熱量が、現在の市全体の排熱量の2倍になると専門家が試算していることについて「電力量から想定すれば排熱量はこれぐらいになると当然計算できる」とする一方、「最新の施設を導入すると事業者から聞いており、周辺に悪影響にならないようモニタリングを継続していくことも事業者から聞いているので、きちんと進めていってもらえると思っている」とした。 一方、具体的な設備の冷却方法や周辺環境への排熱量について事業者からヒヤリングしているのかとの記者の質問に対し五十嵐市長は「正確な数字は実際に稼働してみないと分からない。現時点でこれというものは示されていない」と答えるにとどまった。 その上で五十嵐市長は「市とさまざまな形で協議してくためにも、(事業者と)協定締結などをする方向で進めている。市が言わなくても、企業価値の面で、事業者が環境投資をした方が企業としての相対的な価値が高まると日本だけでなく世界中でなっていると思う」などと話した。 一方、大穂地区の住民団体が住民説明会の開催を要望し現在、署名活動をしていることについては「データセンターの地域共生ガイドランの中で、コミュニケーションをとるということはひじょうに重要だとしている。地域にきちんとていねいに説明してほしいということは、われわれとしても(住民団体の)署名の話を伺う前から継続してしている」とし、市として前向きに対応する姿勢を見せた(6月8日付)。 住民団体「『ガイドライン守ってくれるはず』は無責任」 五十嵐市長の見解に対し、事業者による住民説明会の開催を求め現在、署名活動を展開している地元大穂地区の住民団体「データセンターから市民を守る会」(6月8日付)の柳町弘幸会長は「データセンター開発は、つくば市が土地を売却し、用途地域を変更し、開発許可を出したことで実現した。いわば、つくば市自身がこの計画の起点となっている。その行政のトップである市長が、法的拘束力のないガイドラインを根拠に『事業者が守ってくれるはず』と述べることは極めて無責任。本来であれば、市が事業者に対して住民説明や環境配慮を求め、その履行状況を確認する立場にある」と話す。 さらに「現時点で地域住民との共生が実現しておらず、住民から不安や懸念の声が上がり続けているにもかかわらず、市はグッドマンジャパンに対して説明会の開催や追加的な環境調査を求める行政指導を行ってこなかった。その結果として住民との信頼関係が構築されず、不信感だけが拡大している。開発許可権者として適切な指導を行わなかった行政の責任は重く、その行政を統括する市長には監督責任があると思う」とし、さらに「市長は排熱が巨大になることは認めたが、その影響は調べていない。これは大きな問題」だなどと指摘している。(鈴木宏子) ※メモ【データセンター地域共生ガイドライン】データセンターの事業者団体、NPO日本データセンター協会(東京都千代田区、理事長・田中邦裕さくらインターネット社長)が今年5月に策定したガイドライン。地域とのコミュニケーション、データセンターが周辺の気温に与える影響、騒音、景観や地価など、地域との共生のためにデータセンター事業者が遵守すべき事項などについて記している。つくば市大穂でデータセンターの建設を進めるグッドマンジャパンも、同協会の正会員になっている。一部のデータセンターで環境や防災上の懸念をめぐり近隣住民との関係が悪化するなど問題が顕在化し始めていることなどをめぐり、総務省と経産省の有識者会議が「データセンターの整備にあたっては、地域との共生は大前提で、事業者は近隣住民にていねいな説明の機会を設けるなど適切な対応を進めていくことが重要」との方針が示されたことを受けて策定された。

がん治療を始めてから5カ月《ハチドリ暮らし》62

【コラム・山口京子】がん治療のため抗がん剤を半年使いますと言われてから、5カ月がたちました。3泊4日の抗がん剤点滴入院と、退院して10日間の静養という、2週間を単位とした抗がん剤治療を繰り返し、10回目の治療を終えて退院。直近の腫瘍マーカーのCEAは5.2。医師からは、この状況でMRIなどの検査で腫瘍が小さくなっていれば、手術を検討しましょうとのこと。 長いような、あっという間であったような…。やっぱり冷静ではない自分がいました。そもそもがんの状態は? 体に入れた薬剤はなんだったのか。薬名は? 効果や副作用は? 初診の見立てで、肛門縁より3センチの場所に出来ており、2センチ程度の大きさで腸管の半分くらいを塞(ふさ)いでいるとのこと。その後の検査で、がんは腸管の外にはみ出ていて、肝臓に3つのがん、両肺には小さながんが10ケ以上、リンパへの転移。診断はステージⅣの末期がん。 治療後のことはイメージできない 受けた治療は、「アバスチン+FOLFOX」といい、アバスチン(一般名ベバシズマブ)とエルプラット(成分名オキサリプラチン)、5-FU(成分名フルオロウラシル)という抗がん剤と、レボホリナートという5-FUの作用を強める薬剤との組み合わせでした。アバスチンは血管新生阻害剤という分子標的治療薬。エルプラットはアルキル系白金製剤で細胞分裂を阻害するもので、蓄積毒性があります。5-FUは代謝拮抗薬で、やはりがん細胞の増殖を防ぐものです。 治療は、がんを小さくする、広がりを抑える、がんによる症状を軽くするという効果が見られる一方、正常な細胞への副作用も見過ごせません。効果も副作用も個人差が大きいと言われました。自分が治療を受けてどうなるのかは、実際に治療をしてから事後的にわかるものです。事前に分からないということは、賭けの要素が大きいのでしょう。 やってみての効果は、マーカー値の低下、がんの縮小。肛門の違和感が消え、血便もなくなりました。現れたのは、脱毛、手足の指の変色やしびれ、足裏の違和感、嗅覚と味覚の異常、口内の渇き、疲労や食欲不振、気持ちの悪さ、倦怠感…、そうした身の置きどころのなさ。そして、血液検査の数字に現れるシグナル。抗がん剤により骨髄の機能が抑えられることで、血液の中の白血球や赤血球、血小板などの減少。肝臓や腎臓の機能低下。ただし、そうした症状は軽い方だったと思います。 治療が終わる後のことはイメージできていませんでしたが、手術ができるなら、次の展開に進めるのでしょうか。(消費生活アドバイザー)