【相澤冬樹】価値観の違いより、違いの価値観を理解する方が重要かもしれない―。つくばインターナショナルスクール(TIS、つくば市上郷)校長のシェイニー・クロフォードさんが19日、水戸市内へ出前授業、20年を超す日本滞在で身につけた日本語を巧みに操り、国際理解を進めるアプローチ法を体験的に説いた。
シェイニーさんはこの日、同市有賀町の妻里市民センターで開催の「みと好文カレッジ」の講師に招かれた。1995年に来日し、福島県田島町(現南会津町)で足かけ6年間英語教師を務め、2002年からはつくば市で日本語の勉強や翻訳の仕事など、英語・日本語のコミュニケーションに携わってきた。1992年設立のTISは英語を話す子供たちのために、英語をベースとした教育を進めている学校で、2008年から運営に関わり、11年から校長を務めている。
「ちゃんとさ」が壁になる
講座は「今、つくばがおもしろい」をテーマにした連続講演会の2回目で、双方向のSNSツールを使うなどしてユーモアたっぷりに話を進めた。「つくばでは人口統計が地区別に出るのだけど、おもしろいのは『うち外国人』っていう項目まで集計されているところ」など達者な日本語で会場を和ませた。
シェイニーさんの母国、カナダは外国人比率が20%を超え、カナダ人と外国人を区別しなくなっている。外国人とは何か、カナダ以外で生まれた人か、両親が外国人か、パスポートの国籍か、定義が意味をなさなくなっているからだ。ところが日本で一段と国際化が進んでいるはずのつくばでも、「うち外国人」の感覚からは抜け出せずにいる。そんな環境で「いきなり友達になる」のはとても難しい。
大学などで学生同士が交流するにはサークルに入るのが近道だが、実際に「外国人」が入会・入部する例は極めて少ない。「日本人はものごとを皆で『ちゃんと』考えてから行動をする考えがしみこんでいて、この『ちゃんとさ』が壁になっている」という見方を示した。
シェイニーさんの身についている流儀は正確さよりスピード、「とにかく早くやるのが大事だ」という考え方で、文化の違いが見いだされる。これが対立して時にケンカになってしまう。友達をつくるのに1年もかかるのは大変に思えた。
いわば外側に殻をもつ卵が日本人で、自分の中に芯をつくる桃が外国人。卵と桃のどちらが正しいということではなく、「違い」に価値があるということを学んだ。これを理解しないと異文化同士で友達を作るのは難しいし、「実は、日本人同士でも友達になれない」と結んだ。
会場の女性からは「興味のあったインターナショナルスクールの話は聞けなかったけど、違いの価値観という見方は自分にはなく、とてもおもしろいと思った」という感想が聞けた。