【伊藤悦子】二科展をメーンに土浦で長く活躍した画家、吉田正雄の作品展が19日から、土浦市大和町の市民ギャラリー(アルカス土浦1階)で始まった。没後翌年の1999年開催された「吉田正雄の世界展」から20年ぶりとなる「世界展Ⅱ」は、「土浦とパリ、バリ」がテーマ。油彩や版画の絵画作品をはじめ、木彫や彫刻作品など全部で63点で構成する。
吉田の子息で、ヨシダ・アート(土浦市永国)代表取締役の吉田薫さんによると「父の友人や後輩から、また吉田正雄展ができないかという声が多く寄せられていたが、展覧会を開くのはなかなか大変なこと。土浦に市民ギャラリーができたことから2回目の『世界展』を開くことにした」。20年も経つと、土浦生まれの偉大な画家を知らない人も増えており、「この機会に土浦の方に知っていただきたい」という思いもあったという。

吉田正雄(1935-1998)は土浦市大手町生まれの芸術家。1954年に19歳で二科展に全国最年少で初入選。1961年にはフランスに渡りアカデミーランソン・アトリエ17に入学し、イギリス出身の画家スタンレーウィリアム・ヘイター氏に学んだ。当時、フランスに行くのは大変なことで「渡仏前日は町内をあげて壮行会を開いた」そうだ。1993年にバリ島へスキューバダイビングに行った際、地元の彫刻集団に影響を受け、2カ月に一度はバリの工房に通って作品を作り続けた。
今回、作品は「土浦」「パリ」「バリ」の3テーマに分けて展示した。「3テーマの作品の違いなどもみていただきたい」と薫さん。見どころは、パリのコーナー天井に飾られた「オンディーヌの天井画」。「天井画として父が描いたものだが、今まで一度も天井に展示したことがなかった。天井に飾られているのを見たいという思いがあった。作品自体はかなり重みがあるため、インクジェットでレプリカを作成することで、今回初めて天井画として展示することができた」と話す。
土浦市の87歳の男性は「作品がどれも立派でとにかく驚きです。すばらしいの一言」と作品に見入っていた。龍ケ崎市から訪れた19歳の男性は「独特の色使いが本当にすごい。彫刻も迫力がある」と感想を話していた。