【鈴木宏子】つくば市が民間医療機関や助産院などに委託して実施している産後ケア事業について、委託先の一つである市内の助産院が、昨年8月から今年8月までの間、契約通りに事業を実施しなかったとして、同市は助産院に対し、委託料など計180万7500円全額を返還請求すると発表した。12月3日開会の市議会12月定例会に同和解案を提案する。
市健康増進課によるとこの助産院は、同市が産後ケア事業をスタートさせた昨年5月に市と委託契約を結んだ。その後、昨年8月から今年8月までの間、12組の母子に計48回産後ケアを実施した。
一方、契約では、助産院を経営する助産師の女性のほかに、助産師2人が産後ケア事業に従事するとなっていたのに、実際は助産師2人は勤務実態が無く2人の名前が無断で登録されていた。さらに、産後ケアの実施場所として市内のクリニックで通所型と宿泊型サービスを実施するとされていたにもかかわらず、48回のうち39回は、自身が経営する助産院や経営者宅のゲストハウス、利用者の自宅などで通所型と宿泊型のケアを実施していた。ケアの実施時間も、通所型は午前10時から午後4時までと規定されているにもかかわらず、午後2時までで打ち切るなど、スタッフ体制、ケアの提供場所、時間帯について、契約通り実施しなかったとされる。
今年8月、サービス提供場所として登録されていた市内のクリニックから市に対し「(同クリニックでは)5月までで(産後ケアを)やらなくなったのに、市から郵便物が届いている」などの問い合わせがあり発覚した。一方で利用者から苦情などは無く、利用者アンケートの満足度も「良かった」「まあまあ良かった」という回答だけだったという。
発覚を受けて市は同助産院への委託を8月に取り止めた。市によると、助産院経営者は契約不履行を認め、市に対し「勝手に解釈し、契約と少しぐらい変更があってもいいと甘く考えていた」などと話しているという。返還請求する約180万円の内訳は、市が事業者に支払った委託料が約164万円、利用者が負担した額が約16万円。
再発防止策として同課は、来年度から予告なしの立ち入り検査を実施するほか、従事したスタッフが署名し押印をする形式に、用紙の書式を変更するとしている。
産後ケア事業は、出産後、産後うつになるなど心身に不調をきたしたり、育児に不安がある母親を対象に、生後6カ月までの乳児の育児相談に乗ったり、授乳やもく浴の指導をしたりする事業。同市では今回、委託を取り止めた助産院を含め市内外の医療機関や助産院計6事業所に委託している。通所型(市の委託料は1回2万2500円、利用者負担は同2500円)と宿泊型(委託料は1回5万円、利用者負担5000円)があり、1人7回まで利用できる。18年度は5月以降、26人が117回利用、19年度は9月末までに47人が60回利用したという。