【相澤冬樹】ナノサイエンス・ナノテクノロジー分野で優れた業績を挙げた研究者に贈られる「第16回江崎玲於奈賞」(茨城県科学技術振興財団など主催)の授賞式が13日、つくば市竹園のつくば国際会議場で行われた。
同財団の江崎玲於奈理事長から賞が贈られたのは、東京大学大学院工学系研究科教授の染谷隆夫さん(51)。ナノテクノロジーを駆使した素材開発によって、曲げたり、伸ばしたり、ねじったりできるようなゴムシートのような有機半導体デバイスを発明した。
この技術で人間の身体のような3次元曲面にさまざまな電子機能を直接貼り付けて、健康状態やスポーツの運動状態などをモニタリングできるようになった。最新のものは厚さが1マイクロメートル、1平方メートル当たり3グラムしかないフィルムに薄型センサーをプリントして肌に貼り付け、心電図を取るなどしており、新しいバイオエレクトロニクスが生み出されつつある。
江崎玲於奈賞は副賞1000万円、染谷さんは夫人同伴で授賞式に臨んだ。記念講演で研究にはつくば時代があったことに触れ、「2003年に研究を始めたころは、プリントは手刷りだった。2005年につくばに来て8年、伸縮性に富み壊れにくいナノ素材がみつかり、大面積に展開できる印刷技術につながった」と振り返った。
授賞式ではまた、県内において科学技術に関する研究に携わり、優れた成果を収めた研究者を表彰する第30回つくば賞が物質・材料研究機構フェロー、廣崎尚登さん(64)の「白色LED用蛍光体の開発」に贈られた。
さらに第29回つくば奨励賞(実用化研究部門)は同機構機能性材料研究拠点グループリーダー、島村清史さん(53)ら3人の「レーザー加工機用の優れたファラデー回転子の開発と実用化」に、同賞(若手研究者部門)が理化学研究所バイオリソース研究センターチームリーダー、林洋平さん(38)の「難病患者特異的 iPS細胞を用いた革新的治療法の創出」に、それぞれ贈られた。