【鈴木宏子】公立幼稚園の廃止と公立保育所の民営化が土浦市で進んでいる。市の計画では公立幼稚園は2022年3月までにすべて廃止される。公立保育所は21年3月までに6園が民営化され、残り4園も25年度までに民営化の対象とされる予定だ。
公立幼稚園の再編計画によると、少子化と共働き世帯の増加により、公立は園児数が15年までの10年間で53%減少し、15年度の5園の平均園児数は定員に対し34%になっていたことが背景にあるとする。
一方、公立保育所については、同民間活力導入実施計画や市議会での説明によると、平均建築年数が36.5年(16年時点)となり更新や長寿命化を行う時期を迎えているが、民間にできることは民間にという国の三位一体改革により施設整備の国庫補助金が廃止されたこと、延長保育や多様なカリキュラム志向など多様な保育ニーズにきめ細かく対応するためなどという。
さらに18年時点の試算では、公立幼稚園5園の廃園と公立保育所10園の民営化により、人件費を含めて幼稚園が約9000万円、保育所が約4億円、計4億9000万円の市費の負担減になるという数値が明らかにされている。
母親たちが問題提起
幼稚園や保育園など幼児教育における公共の役割はないのだろうか。
公立幼稚園の廃止が公表された16年、突然の廃止の話に、子供を市立幼稚園に通わせていた母親たちが立ち上がり、同市では近年にない大きな住民運動が展開された。20代、30代の母親たちが市民団体「土浦公立幼稚園を守る会」を結成し、7401人の反対署名を集めて同年6月議会に反対陳情を出した。陳情は趣旨採択されたが、公立幼稚園を廃止とする議案は可決された。
この運動の中で、母親たちから「公立が無くなってしまうと、発達障害など特別な支援を必要とする子供たちが受け入れなくなってしまうのではないか、私立だけで十分が対応ができるのか」などの問題提起が出された。
当時、守る会代表だった小沢恵子さん(37)は、長女が卒園した市立土浦幼稚園について「発達障害などの子には1人の子に1人の先生が付いて、皆が温かく子供たちを見守る雰囲気があった。自分の子に障害児などとの仲間意識が芽生えた」と語る。さらに「廃止や民営化によって土浦市はベテランの幼稚園教諭や保育士さんたちを失ってしまう。ベテラン職員は地域の児童館に異動することもあり、子供をよく知る見守りの輪が地域に広がっていると感じ安心だった」と話し、障害児と健常児が一緒に過ごす統合教育の充実と、地域との連携強化などに公立の役割はあるのではと話す。
幼稚園は、発達障害など特別な支援が必要な園児の受け入れ体制などを整えるため、市内すべての幼稚園と認定こども園園長による市幼稚園連絡協議会を設立した。保育所はこの問題について、後期の実施計画(21~25年度)の中で改めて検討していくとしている。
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