【鈴木宏子】昨年11月に発表された土浦市の長期財政見通しで、ショッキングな推計が明らかにされた。今後2028年度まで毎年、10億円を超える財源不足額が生じ、18年度から28年度までの累積収支不足額が145億2000万円にも及ぶというのだ。不足額を一般財源基金で補うと、5年後の24年度には基金が枯渇し、以降は解消困難が財源不足が生じるという。予算が組めなくなる危機的な事態だ。
何が財政をここまで硬直化させているのだろうか。国が借金返済経費の7割を負担する合併特例債を活用して老朽化していた市の主な施設を一気に更新したこと、高齢化などにより社会保障費が年々増加していることが大きな要因だ。
旧新治村との合併による合併特例債の活用は、新治総合運動や新治地区公民館の整備、朝日トンネルの開通など新治地区の整備などから始まり、その後、市役所新庁舎の移転、新消防庁舎、新市営斎場、新図書館の建設など老朽化していた施設を次々に更新した。
大規模事業は市民会館の耐震改修、新給食センターの建設など今も続き、市の借金返済経費である公債費は、ピーク時の23年度に63億円と一般会計歳出合計の12%になる見通しだ。18年度の公債費が49億円(歳出合計の9.8%)だったのと比べると、借金返済に充てる額が26%も増える。
歳出削減のメーンは人件費の抑制
不足額を補うため講じるのが一般財源基金の繰り入れ。財源に余裕がある年度に積み立てておいた財政調整基金を、災害などで財源不足が生じた年度に切り崩して活用する財政上のテクニックだ。しかし無尽蔵に使える「打ち手の小槌」のはずもなく、基金による安易な補てんに頼るのは危うさを伴う。
このため、行財政改革も実施されてきた。直近の第5次行財政改革の成果として市は、16~18年度の3年間で、市職員人件費抑制、心身障害児(者)福祉手当の見直し、ジェネリック医薬品利用による医療費負担軽減などで歳出を抑制し、片や市税徴収強化、ふるさと納税、公有地売却、ネーミングライツや広告掲載などの広告事業などで、計27億円を生み出したと総括する。歳出削減の内訳をみると、人件費の抑制が削減額の9割を占める。職員平均年齢の若返りが主な要因だという。
今年度から始まった第6次行財政改革実施計画では23年度までの3カ年で、使用料・手数料の見直し、補助金の廃止を含めた見直し、公共施設を床面積換算で5%削減するなどが盛り込まれている。市民の痛みを伴う行財政改革が続けられる。
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