木曜日, 9月 18, 2025
ホームつくば花火の光束で絵筆のように描く 黒沢富雄さん つくばで写真展

花火の光束で絵筆のように描く 黒沢富雄さん つくばで写真展

【池田充雄】日本写真家協会会員の黒沢富雄さんが、つくば市豊里の杜のギャラリー夢工房で写真展「花火 Fireworks Flowers」を開いている。黒沢さんは常陸大宮市に写真工房を構える。花火を撮り続けて35年。多重露光やアウトフォーカスなどさまざまな技法を駆使しながら、驚きのある独自の花火写真を作り出している。

黒沢さんの手にかかると、花火がさまざまな姿に変容する

花火の撮影スタイルは「カメラを筆代わりにして描いていく」というもの。たとえば光の渦のように見える作品は、スローシャッターでカメラを回転させながら作り出した。赤いチューブがうねうねと四方八方へ伸びたような写真は、星の飛び散る様子をクローズアップでとらえたもの。400ミリの超望遠レンズによる手持ち撮影で、打ち上がっていく花火の玉を追いかけ、開いた瞬間に手を止めてシャッターを切っている。

「最初にどういう撮り方をしようかと考え、デッサン帳にイメージを書き入れながら練り上げていく。だが思った通りに撮れるのは2、3割ほど。花火は偶発的要素が多い。構図やバランスがなかなかうまくいかないし、色や明るさも開いてみるまで分からない。そこが難しさでもあるし醍醐味でもある」

出合いは1985年の水戸の千波湖花火大会。偶然に撮れたススキの穂のような形の写真に新たな可能性を感じ、そこから花火との対話の日々が始まった。最初の個展開催は95年の東京・キヤノンサロン。その後は99年のフジフォトサロンなど。1週間の会期で8000人の来場者を集めたこともあるそうだ。

今回の展覧会では30点を展示しており、その多くは90年代に撮影した。最近の作品も数点あるが、鮮やかさが違うという。「当時はリバーサルフィルムで撮っているが、デジタル写真と比べて透明度が高い。花火の色自体も昔と今とでは若干違う。今の花火はパステルカラーのような淡く透明感がある色彩。写真にするには色が濃い方が深みや重みが出せる」

今後考えているのは、茨城県内の全ての花火大会を写真で網羅すること。「小さいものも含めると40カ所くらいある。芸術的な撮り方ではなく一般的な撮り方で、なるべく早い時期にまとめたい」という。ほかにも久慈川の冬の風物詩のシガや、地元・常陸大宮市の文化遺産である「西塩子の回り舞台」、東日本大震災被災地の復興の様子など、追い求めているテーマは多岐にわたる。

◆写真展は30日(日)まで、つくば市豊里の杜2-2-5 ギャラリー夢工房で開催中。開館時間は午前10時30分~午後5時30分(最終日は3時まで)。入場無料。30日午後1時30分から黒沢さんによる写真教室が開かれる(参加費1000円、コーヒー付き)。問い合わせは電話090-4676-9623(同夢工房)

銀塩プリントならではの豊かな発色も見どころだ

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つくばで突風 高層の解体現場で足場倒壊 吾妻の旧国家公務員宿舎

つくば市内で18日午後、突風が発生し、つくば駅近くの同市吾妻2丁目、国家公務員宿舎解体現場で足場が倒壊したり、花室地区で2階建て現場事務所が倒壊した。栗原地区では落雷が原因とみられる火災が発生するなど多数の被害が出た。つくば市によるといずれもけが人などは確認されていない。 このうち吾妻2丁目の国家公務員宿舎解体現場では、13~14階建ての高層住宅の解体工事中、ベランダのある壁面の壁一面に取り付けてあった足場と防音防塵パネルほとんどが崩落し、敷地内の地面に積み重なった。解体現場脇の中央通りの歩道や一部車道にも散乱した。 近くのマンションに住む会社経営の40代男性は「午後2時55分ごろに出掛ける用事があったが、北側から急に風が吹いてきて強風と豪雨で出掛けるのを少し延ばしていた。雨が弱まった午後3時25分ごろ出掛けようとしたら、公務員宿舎の解体現場の足場が倒壊しているのが見えた。風の音がすごくて、倒壊した音は聞こえなかった。ちょうど解体現場の脇を通って北に向かう予定だったのでそのまま出たら巻き込まれるところだった」と話し、「足場が歩道や車道まで散乱していたので、けが人が出なかったというのは本当に奇跡だと思う」と話した。 吾妻2丁目の国家公務員宿舎では今年5月末から来年4月末までの期間で解体工事が実施され、低層住宅の解体が終わり、現在は高層住宅の解体が行われていた。18日午後5時前、白い塀で囲まれた解体現場には崩落した足場やパネルなどが高く積み重なっていて、樹木を押し倒していた。敷地内では作業員が重機を使って片づけたり、中央通りの歩道では、散乱した樹木を回収し掃除する作業員らの姿が見られた。 当時つくば市では竜巻注意報が出ていた。 18日午後5時30分時点で同市がまとめた市内各地の突風の被害は以下の通り。 【家屋・建物の被害】▽花室地区:2階建て現場事務所の倒壊 1件▽花室地区:民間スポーツ施設のシャッター破損 1件▽上ノ室地区:家屋の屋根瓦の破損 2件▽上ノ室地区:消防団詰め所の外壁の破損 1件▽上ノ室地区:資材置き場とその周辺10棟の被害▽上ノ室地区:飛来物による車庫の一部破損 1件▽上広岡地区:園芸施設のハウス・作業所の被害▽栗原小学校:連絡通路の引き戸が倒れ、窓ガラス破損【倒木】▽筑穂地区、研究学園地区、桜地区、上ノ室地区:倒木 7件▽メモリアルホール施設内樹木の枝折れ2カ所▽その他、市内各所で枝折れ多数【火災】▽栗原地区:落雷が原因と思われる火災 1件【その他】▽並木2丁目:足場倒壊 1件▽吾妻地区:公務員宿舎跡地の足場倒壊 1件

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海外出張 市長はファーストクラス可 つくば市議会委員会が否決

旅費条例改正案「市民の理解得られない」 国内や海外出張をする際につくば市長や市職員らに支給される旅費について定めた市職員旅費条例改正案が開会中の同市議会9月会議に提案されている。17日開かれた市議会総務文教委員会(木村清隆委員長)で同条例改正案について審議が行われ、市長が海外出張の際に利用する航空機の運賃について、現在の旅費条例がビジネスクラスまでとなっているにもかかわらず、改正案はファーストクラスまで利用できるようになることに対し委員から「市民の理解が得られない」などの意見が相次ぎ、同改正案は賛成少数で否決された。議会最終日の10月3日、本会議で改めて審議される。 同改正案は、国家公務員旅費法が改正されたのに伴って、同法にもとづき市の旅費条例を全面的に改正する内容。円安の進行などにより宿泊費などの上限も大幅に引き上げられる。 海外出張の際の航空機の運賃について現在の市職員旅費条例は「最上位の直近下位の級の運賃」(27条)と市独自に定め、市長はビジネスクラスまでしか利用できない。一方、来年4月施行予定の条例改正案は、海外出張の場合、市長には「最上級の運賃の額」を支給できるようになり、ファーストクラスを利用できるようになる。 17日の委員会での市人事課の説明によると「国家公務員の旅費法をよりどころに旅費を3段階で設定した。特別職は出張に伴う負担が大きいため長時間の移動時間を活用して体調を維持する必要があるためより高い上限を設定した。茨城県知事や他市・区を参考にした」などとし、「必ずしもファーストクラスに乗らなくてはいけないものではなくて出張に応じて適宜判断する」とした。 これに対し委員から「ビジネスクラスでも十分体調を養うことができる。ビジネスクラスとファーストクラスは値段が違い過ぎる。現在の条例の規定をどうして緩めるのか。五十嵐市長は(ファーストクラスに)乗らないと思うが、だれが市長になっても市民感覚に合わせたものにすべき」(小森谷さやか市議=市民ネット)▽「(3段階の運賃設定のうち)ファーストクラスに乗れるというのは内閣総理大臣と一緒になる。実際に乗らないとしても乗れるように(条文改正)することが理解できない。今、政治に厳しい目が向けられている」(樋口裕大市議=Nextつくば)▽「ビジネスクラスでヨーロッパに行くのに現在100万円くらいかかるがファーストクラスは2倍の200万円かかる。他市町村長は年に1回か2回しか海外に行かないのに、つくば市長は年に何回か行っている。市民の税金で行くのに市民にどう説明できるのか。つくば市には東京都が定めているような海外出張の運用指針もない」(山中真弓市議=共産)▽「ファーストクラスにする必要はない。市民感覚からすればビジネスクラスで十分」(飯岡宏之市議=Nextつくば)など厳しい意見が相次いだ。 採決で賛成したのは塩田尚市議(つくばクラブ)と渡辺峰子市議(公明)2人だけで、同条例改正案は否決となった。議会最終日の10月3日は修正案が出される見通しという。 つくば市長の海外出張をめぐっては、今年2月と6月の市議会定例会議一般質問で山中真弓市議(共産)が取り上げ、五十嵐立青市長は直近3年間で計5回の海外出張を行い2365万円の市税を使ったこと、海外での宿泊費が市職員旅費規則に定められた金額を超過し、市の規定が骨抜きになっていることから、旅費規程の見直しが必要だ、などと指摘した経緯がある。(鈴木宏子)

民有林に防除対策費を補助 ナラ枯れ被害拡大防止へ つくば市

ナラ枯れなどによる森林被害の拡大を防ごうと、つくば市は今年度新たに、市内に森林を所有する民間地権者を対象に、防除対策費用の2分の1を補助する制度を創設した。 筑波山周辺の森林や公園など市有地のナラ枯れ被害に対してこれまで同市は、防除対策に取り組んできた。一方、筑波山周辺など市内の民有地の森林でも被害が出ており民有地で対策を施さないと被害拡大を防ぐことができないことから新たに補助を実施する。 同市鳥獣対策・森林保全室によると、現時点での申請者はゼロで、市が相談を受けている地権者が一人。市はホームページや市報などで広報してきたが、補助制度や防除方法を知らない地権者もいると見られる。 ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という体長5ミリほどの昆虫の被害を受けたコナラやクヌギなどが、昆虫の体に付着した病原菌、ナラ菌の繁殖により水分が枝葉に行き渡らなくなり、紅葉前の7~8月頃に急速に葉の色が赤褐色に変色し枯死する被害。幹が太く樹齢を重ねた樹木が被害を受けやすいとされ、枯死した樹木は早期に対策をとらないと、翌年以降、被害が拡大するとされる。2020年9月に県内で初めて、つくば市内で被害が確認され、以後、拡大し、県林業課によると現在、県内44市町村中36市町村で被害が確認されている。 筑波山系では2022年に朝日トンネル付近で確認されたのが最初。翌23年には筑波山や周辺の森林でナラ枯れが目立つようになる中、つくば市では23年、南麓の同市臼井、市有地の筑波ふれあいの里で、ナラ枯れが確認された32本を伐採し、薬剤によるくん蒸処理を実施した。翌24年には観光拠点の筑波山梅林奥の市有地の林道、四季の道周辺に被害が広がり、市は13本を伐採しいずれもくん蒸処理した。 一方、今年は筑波山の林道沿いの市有地に関しては新たな被害は確認されていないという。昨年、四季の道沿いで、被害を受けやすいとされる幹が太く樹齢を重ねた樹木をあらかじめ伐採などしたことなどが被害の拡大を防いだとみられている。 つくば市で補助対象となるのは①幹にあらかじめ殺菌剤を注入し行き渡らせておく殺菌剤を樹幹に注入する方法(補助額は1回当たり上限5万円。カシナガに入り込まれ木くずが出た時点で注入しても効果は期待できない)②成虫が飛来する5月ごろから約半年間、樹木の幹に粘着剤やビニールシートを巻き付けカシナガが入り込むのを防ぐ方法(同5万円、粘着剤にとらえられたカシナガを生きたまま放置すると仲間を呼び寄せることがあるので、粘着剤と殺虫剤を併用する方法もある)③被害を受けた樹木を伐採し薬剤で燻蒸処理または焼却処理する方法(同15万円)。今年度予算は165万円で、市は1件につき平均20万円程度、8~10件の申請を想定している。 市鳥獣対策・森林保全室の石塚正巳室長は「市として、ふれあいの里や四季の道など市の施設で、伐倒しくん蒸処理するなどの対策をしてきたが(被害が)全て無くなったわけではない。個人の土地については広報するのみで、(市が)直接的な対策をしていないので根絶はなかなか難しい」という。 一方土浦市は2024年、ナラ枯れ被害に遭った朝日トンネル付近のコナラ16本を伐採した。費用は、運搬、処分、交通封鎖の人件費を含み計583万だった。同市はナラ枯れに対応できる補助金として小規模森林整備補助金があり事業費の70%を補助できるとしている。 ナラ枯れの被害については、全国で毎年調査が実施されている。県林政課によると23年度に被害が確認された市町村は33市町村、24年度は34市町村、25年度は36市町村と市町村数は徐々に増えている。県全体の被害面積はつくば市内で初めて確認された2020年が200平方メートル、21年も200平方メートルだったが、22年に3000平方メートルと15倍に広がり、23年はさらに前年の2.3倍の6700平方メートルに拡大した。24年度の被害面積は6100平方メートルと前年度の91%だが、同課は、森林の奥の広葉樹まで調査が及んでいないなどから、被害は前年と同程度とみている。(榎田智司)