【相澤冬樹】筑波山麓特産のフクレミカン(福来みかん)の皮に含まれる食品機能性を、初めて動物実験で検証した研究論文がこのほど、茨城大学から発表された。肥満を抑える、ストレスに耐えるなどの食品機能性を消費者向けに打ち出すには、科学的知見に基づく根拠が必要になるため、論文の発表は、地域特産品の健康食品アピールに有力な手掛かりを与えそうだ。
論文は、同大農学部の連携大学院で学ぶ東京農工大学大学院博士課程3年、佐藤瑞穂さん(27)を筆頭著者に発表された。指導に当たった同大農学部の豊田淳教授、井上栄一教授、宮口右二教授らが名を連ねている。2論文あり、1つが未熟フクレミカンの果皮を含む飼料をマウスに与えたところ、体重増加と脂肪蓄積の抑制が認められたとする内容だ。

未熟のミカンの皮を使ったのは、あらかじめ県産業技術イノベーションセンターの分析で機能性成分量が完熟のものより多いことが分かっていたため。佐藤さんによれば、実験は2014年産ミカンを使って行われた。青いミカンを大量に購入し、研究室全員で皮むきをして乾かせ粉末にした。
動物実験は、体重約20グラムのマウスを2つのグループに分け、24時間明るさを保った環境で4週間飼育するもの。一方のグループには高脂肪食だけを、もう一方には果皮の粉末5%を混ぜた高脂肪食を給餌した。その結果、高脂肪食だけを与えたマウスは体重を6-7グラム増やしたのに対し、果皮の粉末入りを食べたグループは3-4グラムの増加にとどまった。また血中のコレステロール量と中性脂肪レベルについても、果皮の粉末入りのエサを食べたグループの方が低いことが確認された。
このことから、熟する前のフクレミカンの皮には、抗肥満効果やメタボリック症候群の予防効果があることが確かめられた。果肉を食べるよりも、果皮をジャムや香辛料に加工することが多い利用法も適切だったといえる。フクレミカンなどのかんきつ類には、ストレスに対する抵抗性である「レジリエンス」を獲得する作用をもった物質があり、これも動物実験で確認され、第2の研究論文になった。
豊田教授は「フクレミカンの機能性は以前から指摘されてきたが、その効果が動物実験で確認されたことは大きな前進だ。しかも英文による論文は初めてで大きな意義がある」という。フクレミカンの食品機能性は、こうした実証の積み重ねで確立することになる。