【相澤冬樹】本サイトにコラム《好人余聞》を執筆している写真家、オダギ秀さんの写真展「風の肖像」が25日、つくば市小田のギャラリー梟(ふくろう)で始まった。2016年から同画廊を会場に毎年開いている写真展「野仏(のぼとけ)巡礼」の4回目で、この1年間に茨城県や栃木県などで撮影した野仏の作品を中心に、約20点を展示している。
オダギさんの野仏撮影は、写真家として発表する意図を持たずに約30年前から始まった。折々の道筋にお地蔵様などを見つけると、足を止めて撮影してきた。たまたま喫茶店を兼ねる同画廊に立ち寄った際も、小田の宝篋山(ほうきょうさん)にお大師様の像があると聞きつけ、その日の撮影予定を変更してカメラを取り出したのだった。
そのときの写真を含めて、野仏像ばかりを集めて1回目を開いた。以来、同画廊だけで見られる毎年の企画展となった。「普通のポートレートもそうだけど、カメラを3センチずらすと表情が変わる。光の当たり具合だったり、石の陰影で見えてくるものが違う」。そのアングルを探し、レフ版を持ち出したり、寝そべったり、時には一日がかりで、はたまた2度3度と足を運んで撮影した。
写真家の意図か野仏とはそういうものか、いずれの表情をもおだやかだ。「石仏といったら、菩薩様だったり、観音様だったり、それぞれにこんな名で、どんな御利益があるのかなんて情報ばかり出てくるでしょ。僕にはどうでもいい。200年、300年ずっとそこにあって、風に吹かれ、雨に打たれてきた。向かい合ってじっと耳を傾けていると、いろいろな話が聞こえてくる。それが大事」
会期は6月9日まで。オダギさんはできる限り画廊に顔を出し、来場者と話をしたいという。ギャラリー梟(つくば市小田3066、電話029-867-3287、月・金曜日休廊)
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