日曜日, 9月 7, 2025
ホームつくば【まちづくりはラジオ体操から】㊤ 住民の絆を守りたい つくば市千現

【まちづくりはラジオ体操から】㊤ 住民の絆を守りたい つくば市千現

【橋立多美】つくば市千現で11年続く取り組みをモデルにして、令和最初の朝に同市竹園でもラジオ体操が始まった。そこには「住民たちがつながる住み良いまちに」というシニア男性2人の思いがある。

朝6時20分頃から、千現1丁目のけやき公園に地域住民たちが集まってくる。30分に「新しい朝が来た」の音楽が流れラジオ体操が始まる。荒天を除き、ほぼ毎日行われているラジオ体操は今年で11年になる。指導にあたるのは同地内に住む今井健之さん(75)だ。

千現1丁目はつくばセンターに近い閑静な住宅地で、1980年代から戸建ての家ができ始めた。今井さんは83年に入居した。55歳で銀行を退職して乗馬やハンググライダーなどの趣味に没頭していた2006年9月、自宅の斜め前に突如14階建てのマンション建設の計画が持ちあがった。

市が建築物の高さ規制をする前の「駆け込み工事」で、日陰時間の延長や機械式駐車場による騒音などを理由に周辺住民が「千現1丁目の住環境を守る会」(阿久沢忍会長)を結成。反対住民らは法律を駆使して計画の縮小を求める運動を粘り強く展開し、翌07年3月の研究学園高度地区指定の施行に工事着工が間に合わなかったため、業者が建設計画を断念した。

同会の副会長だった今井さんは、反対運動を通じて生まれた住民の絆を守り、住みよい千現にしようと決めた。

ラジオ体操をけん引する今井さん=同

ラジオ3台を置き忘れ

市から委託された広報紙の配布や回覧が主だった自治会を活発化させようと、08年度の千現1丁目自治会長に立候補すると、自ら防災士の資格を取得して防災・防犯訓練や公園の清掃、高齢者のふれあいの場「千現カフェ」開設などに尽力。延べ6年間の自治会長職を辞した今も自治会と連携して活動を続けている。

ラジオ体操も自治会長時代に始めた活動の一つ。子供会がけやき公園(約2500平方メートル)で夏休み期間の最初と最後の1週間しか実施しないことを知り、誰でも知っているラジオ体操は住民が緩くふれ合えることから「もったいない、続けよう」と思ったという。

以来、朝5時起きでウオーキングに励んでからラジオ持参で公園に向かう。ラジオ体操が終わると公園のごみを拾ったり参加者と話が弾み、ラジオを置き忘れて帰ることがあるそうだ。妻の操子さんは「3台紛失して買い替えましたよ」と笑う。

今井さんは「ラジオ体操は『お早う』で始まる。それまで道ですれ違って会釈だけだった人と心が通じる会話ができるようになる」と話す。また「たとえ10分でも全身の筋肉を使い、毎日続けることで健康を維持できる」とも。毎日10人ほどの住民が参加し、夏休み中は約50人の児童たちが仲間入りして公園はいっぱいになるという。

昨年7月から、それまで参加したことのない男性が毎朝顔を出すようになった。(つづく)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

あす投開票 県議補選つくば市区

知事選と同日で行われる県議補選つくば市区(欠員1)は7日投開票される。立候補しているのは、いずれも元職で県議4期を務めた党県常任委員の山中たい子氏(74)=共産=と、県議一期を務めたタクシー会社社長の塚本一也氏(60)=自民=。元職同士の一騎打ちになっている。投票は同日午前7時から午後7時まで市内76カ所で投票が行われ、同夜午後8時20分から同市流星台の市桜総合体育館で即日開票される。有権者数は20万17000人(8月28日時点)、5日までの期日前投票の投票率は8.84%だった。 上ノ室で最後の訴え 山中氏 山中氏は「自民党政治を変えて願いかなういばらきに」をスローガンに、県立高校新設・クラス増、東海第2原発廃炉などを訴えてきた。塩川鉄也衆院議員、岩渕友参院議員、水戸市区の江尻加那県議、運輸大臣を歴任した二見伸明元衆院議員らが応援に駆け付けた。市内をくまなく回り、連日15~16カ所で街頭演説を重ねた。6日は北条郵便局を出発し、大穂、吾妻、竹園、並木、手代木の各所で街頭演説、同市上ノ室の選挙事務所前で最後の訴えをする。 山中たい子 74 政党役員 共産 元④【公約】①国保税、介護保険料、後期高齢者医療保険料の引き下げ②児童生徒数増に見合う県立高校新設とクラス増設を進める③危険な東海第2原発の再稼働をストップし廃炉に【略歴】福島県小野町出身、日本大学Ⅱ部法学部新聞学科卒。千葉県商工団体連絡会に勤務。つくば市に転居後、1984年から旧桜村議・つくば市議を4期を務め、2003年から県議を4期。前回2022年12月の県議選は次点。現在、共産党県常任委員など歴任 大曽根で最後の訴え 塚本氏 塚本氏は「つくば市を力強くけん引する県政を」をスローガンに掲げる。県歯科医師連盟、つくば市農協、県建築士会筑波支部の政治団体などの推薦、大井川和彦知事候補者、常井洋治氏、飯塚秋男氏ら自民党県議、国光文乃氏衆議院議員、加藤明良参議院議員らの応援を得て、連日、市内各所で街頭演説とあいさつを重ねてきた。6日は午後6時から、同市大曽根のガゾリンスタンド・エネオス大穂サービスステーション堀井商店で最後の訴えをする。 塚本一也 60 タクシー会社社長 自民 元①【公約】①国や県との連携を重視する中でつくばの成長産業の育成②TX沿線No.1の教育環境の実現③高齢者、障がい者、育児家庭が暮らしやすい社会の構築など【略歴】つくば市出身。県立土浦一高、東北大学工学部建築学科を卒業後、筑波大学大学院環境科学研究科修了。1991年にJR東日本に入社し、2006年に大曽根タクシー社長に就任。18年から県議一期を務めた。現在は同社社長のほか、茨城県ハイヤー・タクシー協会会長などを務める。 (柴田大輔、鈴木宏子)

筑波大ラグビー部、一誠商事とスポンサー契約 公式戦で広告解禁

筑波大学ラグビー部が、県南を中心に不動産業を展開する一誠商事(五十嵐徹社長、本社つくば市竹園)とスポンサー契約を締結した。今季から公式戦の試合用ジャージ胸部に同社ロゴが掲出される。5日、一誠商事本社で開かれた記者会見で発表した。今年から、大学ラグビーの公式戦で企業の広告を掲出することが解禁された。 会見には筑波大学ラグビー部から古川拓生部長、嶋﨑達也監督、高橋佑太朗主将と、一誠商事から五十嵐社長が出席。席上で高橋主将は「一誠商事さんには以前からサポートいただいていたが、今回ユニフォームスポンサーになっていただき、試合の場で共に戦えることに部員一同心強く感じている。このサポートに対し自分たちができるのは結果で示すことだけ。素晴らしいラグビーを展開し、勝利という形で恩返ししたい」と感謝の念を語った。 五十嵐社長は「今季から大学ラグビー界でも広告が解禁されたことで、学生の段階からしっかりと資金を集め、企業の力も活用して強化を進め、日本のラグビー全体がさらにレベルアップしていくためのスタートが切れたのではないか。筑波大がさらに発展していく一助となればうれしい」と応じた。 長年つくばを拠点に営業している同社では、サッカーやバスケットボールなど学生スポーツの支援も長年続け、ラグビー部に対しては2019年から練習着などを提供してきた。その関係で毎年、シーズン開始前と終了後には学生たちから活動報告を受けるが、そこで大きな変化も感じているという。 「学生の皆さんが自分たちでスポンサーを集め始めてまだ数年だが、競技面だけでなく地域貢献でもしっかりしたプレゼン資料を作り、一生懸命お願いしてくるようになった。学生なのにここまで作り込んでいるのはすごいな、社会に出た時にさぞかし良い経験になるだろうなという感動を覚えながらお会いしている」と五十嵐社長は目を輝かす。 ラグビー部の広告付きユニフォームは今季公式戦からお目見えする。関東大学対抗戦Aグループに所属する筑波大は、初戦を9月14日、水戸市小吹町のケーズデンキスタジアム水戸で迎える。相手は強豪の明治大学だ。 「明大とは夏にも対戦しているが、セットプレーで勢いに乗るところがあり、今度もプレッシャーが強い試合になると思う。チャンスがあれば一瞬でトライを決めてくるので、しっかりと80分間全員が集中することが大事。自分たちの課題として詰めの甘さがあり、点差が開いて少し気を緩めてしまい逆転を許す場面があった。1点を争う試合になると思うので、全員がしっかり集中し、全力でやり切ることを目標として初戦に臨みたい」と高橋主将は意気込む。 最終目標は大学日本一を決める全国大学選手権。来年1月2日に東京・国立競技場で開催される準決勝まで勝ち進めば、NHK地上波で試合が全国放送される。(池田充雄)

祭囃子と縁日と、それからラムネ《ことばのおはなし》85

【コラム・山口絹記】つくばに住むようになってから、新型コロナによる中止期間を除いて、なんだかんだと毎年つくばの夏祭りには足を運んでいる。目的はつくば駅周辺で行われるパレードとねぶた、というよりも縁日の方である。今年はこどもたちを連れて2日連続での参加だ。 私が育った東京の下町では、縁日は夏以外にも定期的に行われている、日常の延長にあるものだった。たまたま出かけた日に縁日がやっていれば、友人とたこ焼きを買って半分ずつ食べたりするのだが、いつ縁日がやっているか、ということは意識したことがなかった。 しかし、つくばではおそらく(私が知らないだけかもしれないが)縁日は夏にしかやっていない。東京に住んでいた頃はありがたみなど感じていなかったのに、いざ日常から消えてしまうと恋しくなるもので、この10年くらいは日程を調べて縁日に通っているというわけだ。 毎年の特別なイベントに こどもたちのラムネの瓶をあけて手渡す。喉を鳴らして飲むこどもたちにつられて、自分も一口飲んでみる。最近のラムネ瓶はプラスチック製なので、なんとなく風情に欠けるような気もするが、猛暑の中で祭囃子(ばやし)を聞きながら飲むラムネはいつの時代でも格別においしい。 つくばに来た当初は妻と2人で気ままに歩いた縁日も、気が付けば上の娘を肩車して行くようになった。小さかった娘はもう手をつながずに人ごみを歩けるようになり、今は目を離すとどこかへ行ってしまう下の息子の腕をつかんでいなくてはならない。そのうち、こどもたちもそれぞれの友達と祭りに行くようになると思うと、いつの間にか日常の延長だった縁日が、毎年の特別なイベントに思えてくるのだから不思議なものだ。 何かを見つけて人ごみに消えていく息子を追いかけながら、そんなことを考える。(言語研究者)

「神経多様性」を妄想する《看取り医者は見た!》44

【コラム・平野国美】非常事態で輝いた自閉症スペクトラムの図書館員の話(前回コラム)から、私の妄想は膨らむのです。人類がまだ獲物を追いかけ、新天地を求めて移動していた時代。その集団の先頭を歩いたのは、神経多動性(ニューロダイバーシティ)という特性を持つ人々だったのかもしれません。彼らの飽くなき探究心と衝動性は、集団を未開の地へと導く力となりました。しかし、その旅もいつか終わりを迎えます。 肥沃な土地に恵まれ、食料を安定して得られるようになったとき、人類は定住という新しいフェーズへと突入したのです。そして、この定住化という歴史的な大転換を支えたのが、「自閉症スペクトラム(ASD)」の特性を持つ人々だったのではないでしょうか。 定住生活の象徴ともいえるのが稲作です。稲作は、広大な土地を移動し続ける狩猟採集とは全く異なる、精密な「システム」でした。いつ種をまくか? 水を引くタイミングは? 収穫の時期は? すべては綿密な計画と繰り返されるルーティンワークによって成り立っています。 ここで、ASDの特性である「ルーティンへの強いこだわり」「シングルフォーカス(一点集中)」という才能が、驚くべき力を発揮したはずです。多動性を持つ人々が絶えず新しい刺激を求める一方で、ASDの特性を持つ人々は定まった手順を厳密に守ることで心の安定を保ちます。稲作という変化の少ない重要な作業を安定して続ける上で、彼らの「変わらないこと」へのこだわりは、集団全体の基盤を築く上で不可欠な要素だったのです。 稲作に生きた「守り人」の才能 稲作は、単に作業を繰り返すだけでは達成できません。その年の気候や土壌の状態、稲の成長具合といった、目に見えない無数の情報を読み解き、次の年に生かす必要があります。ASDの特性を持つ人々の中には、人間関係の複雑な「空気」を読むのは苦手でも、特定の分野で驚異的な観察力を発揮する人が多くいます。稲の葉のわずかな色の変化、土の湿り気、病害虫の兆候…。 彼らは、そうした非言語的な情報を誰よりも正確に把握し、集団に伝える「知恵袋」であり、「データベース」だったのではないでしょうか。彼らの緻密な観察力と、それを体系的に記憶する能力がなければ、稲作という文化は次世代へと受け継がれなかったかもしれません。 彼らは、稲作というシステムを維持し、集団の知恵を次世代へと伝える「守り人」だったのです。集団の中に「神経多様性」を持つことによって、我々はここまで生き抜いてきたのです。つまり、社会や組織が生き抜くためには、この多様性を持つことが必要不可欠だったと思われるのです。(訪問診療医師)