【相澤冬樹】青色花研究でトップをひた走る日本、平成の間に青いカーネーションと青いバラの開発に相次ぎ成功し、商品化した。次の狙いはキク。サントリーグローバルイノベーションセンター(本社・東京)と農研機構花き研究部門(つくば市藤本)は共同で、青い花色のキクを作出し、実用化に向けた研究を進めている。開発中の青いキクを一般公開する特別展示が、9日から筑波実験植物園(つくば市天久保)で始まるのを前に、同機構上級研究員、野田尚信さん(47)から話を聞いた。
野生のキクや人の手で作出された栽培キクには、紫や青の花色はない。花に青を発色させるには、青色味を帯びたデルフィニジン型アントシアニンという色素を蓄積させるのがカギとなった。遺伝子組換え技術を用いる。研究部門の前身である花き研究所では2001年から作出に取り組んでおり、野田さんは着任した2007年から研究に加わった。
遺伝子導入後、発根、生育を経て、温室内で開花させるまでには約10カ月かかる。バラやカーネーションで使われたペチュニアやパンジーの遺伝子ではうまくいかず、カンパニュラ(キキョウ科)の遺伝子を導入することで青色系の作出に成功したのは2011年(発表は13年)、アントシアニンに水酸基1つを加えた改変だった。しかしこの段階では花色は紫に近く、青色とは言い難い出来だった。
ここで野田さんが目を付けたのが、濃い青色の花をつけるチョウマメ、原産地のタイでは花が染料にも使われる。デルフィニジンに糖を2つ付けた青色遺伝子がある。カンパニュラ+チョウマメの遺伝子を同時導入すると、もともと花に含まれていたフラボン(補助色素となる有機化合物の一種)と作用し合って、青を発色した。成果を得たのは2017年のことで、発表には大きな注目が集まった。

農林水産省統計だと、キクの生産額は680億円(2016年)で、日本の花き生産の32%を占める。一方花き産業では利用できる青色系の花が乏しいのが長年の課題となっており、青いキクにはフラワーアレンジメントやブーケなど葬祭需要以外に販路を広げる期待があった。野田さんはこれまでに、16品種・系統の青色化に成功している。
しかし実用化にはなお、高いハードルがある。遺伝子組換え農作物は環境中への拡散防止措置が不可欠で、栽培中に近隣の野生キクと交雑してはならないから、花粉と種子が出来ない「不稔」であることが求められる。この作出も組換え技術で行う。そのうえで国の生物多様性影響評価の手続きを受けるため、一般ほ場で栽培が始まり市場で流通するまでには「あと10年程度の時間がかかる」(野田さん)ということだ。
樹脂標本でのお披露目
ここまでの研究の一部が筑波実験植物園で行われた縁で、今回の特別展示となった。お披露目されるのは、標本用に透明樹脂に封入された青いキク。一輪咲きからスプレー咲きの大型のものまで各種ある。サントリーフラワーズ提供で青いバラと青いカーネーションも展示される。
会期は9日から24日まで、毎週月曜日と22日は休園。9日には特別セミナーが組まれていて、野田さんも「青いキク~誕生までとこれから」をテーマに講演する。入場には実験植物園の入園料がかかる。一般310円、高校生以下と65歳以上は無料。問い合わせ電話029-851-5159