【山崎実】「霞ケ浦宣言」を採択して閉幕した第17回世界湖沼会議=10月19日付け=を受け、県は、霞ケ浦水質保全条例など水質浄化に関わる関係条例改正の検討に入った。新たに罰則規定などの厳しい処分を盛り込む方針で、浄化の加速化を図るのが狙い。
県は新たな具体的政策課題(目標)について、流域の市民グループや関係住民、団体などと協議を始めた。”待ったなし”という危機感の現われだ。
現在、水質浄化活動のベースになっているのが霞ケ浦水質保全計画。現行の第7期計画は2016~20年度までだが、昨年度の調査によると、汚染の目安とされるCOD(化学的酸素要求量)値は7.4(㍉㌘/㍑)で、前年度は7.2とほぼ横ばい状態が続いている。しかし「泳げる霞ケ浦」を現実にするためには「5㍉㌘/㍑前後にまで抑え込む必要がある」(環境対策課)という。
西浦の生活排水は流域人口の約22%、19万5000人の家庭からの排水が未処理。北浦は流域の約5割、4万3100人の家庭からの排水が未処理のまま放流されている。
そこで県は、現行計画の中でも特に生活排水、工場・事業所排水に重点を置き、排水基準の順守、啓発指導を強化する。
具体的には、20年度までに生活排水処理率を西浦で15年度の77.7%から20年度は83.3%、北浦で52%から69.7%に引き上げる。対策として、下水道などの整備促進のほか、市町村をバックアップし、下水道の幹線と流域住宅との連結を推進し、下水道接続率を西浦で90.6%、北浦で85.4%まで底上げする方針だ。
事業所立ち入り検査800カ所に拡大
問題は、流域で営業、事業活動を行っている飲食店などを含む工場・事業所からの排水対策だ。昨年度までは300事業所を対象に水質保全の立ち入り検査を実施し、排水の現況確認と基準順守の徹底、指導、監督を行ってきたが、今年度は対象事業所を800カ所に拡大した。
監視の目を光らせ、規制強化を図っているものの、チッ素、リンなどが排水基準を超えているなどの違反事例は後を絶たないのが実情。加えて、現行条例では違反しても、最終的には事業所(者)への勧告、改善命令を出す行政指導までで、違反に伴う罰則規定は無い。
このため、県は「実効的な浄化活動を推進するには、止むを得ない措置。罰則規定を含む水質保全関係条例の改正を検討し、実施に踏み切りたい」(同課)と腹を固めた。
世界湖沼会議を一過性に終わらせないために、県、市町村、流域住民など関係者の浄化活動への取り組みが正念場を迎えている。