火曜日, 12月 7, 2021
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《沃野一望》23 正岡子規『水戸紀行』追歩 (3)

【コラム・広田文世】 灯火(ともしび)のもとに夜な夜な来たれ鬼 我(わが)ひめ歌の限りきかせむ  とて。 正岡子規の『水戸紀行』を追歩する令和版珍道中は、取手から国道6号線を北へ向かって歩く。この辺りの国道は、子規が歩いたころとは異なる道筋となる。旧水戸街道は、右手高台下の市街地を抜けていく。旧街道には江戸時代の本陣跡が残っている。そこを、水戸藩九代藩主の斉昭や息子の慶喜が江戸に向かい、子規は北に向かった。 令和版は、現在の6号国道を行く。 緩い坂を下ると、左手前方の平野の彼方に、筑波山の秀麗な紫の鋭角が望める。子規は、ある年の年賀状で、「…富士の山めでたく候。筑波の山めでたく候…」と記している。富士山と筑波山を対等に並べ憧れていた。

《沃野一望》21 正岡子規『水戸紀行』追歩(1)

【コラム・広田文世】灯火(ともしび)のもとに夜な夜な来たれ鬼我(わが)ひめ歌の限りきかせむ  とて。 明治22年、文科大学(現在の東京大学文学部)国文科に籍をおく学生が、寄宿舎のある本郷から水戸へ向け、徒歩で出立した。国文科の学友で水戸人の菊池謙二郎訪問を、ふっと思いついた。足にまかせ行ってみるかと、明治時代の学生は、気楽に歩きはじめる。 学生の名は、正岡子規。22歳。ただし正確には、この時点でまだ子規の号を名乗っていない。水戸から帰ったあと大喀血(かっけつ)し、「鳴いて血を吐く」子規を号することになる。しかしここでは子規、と使わせていただく。 子規は、水戸から帰ると発病、壮健だったときの旅の思い出を『水戸紀行』としてつづった。あのときは、元気だったなあと、回想している。 さて、その『水戸紀行』のコース。 東京本郷の寄宿舎を出立し、はるか前方に筑波山を遠望しての北千住、松戸、我孫子。我孫子の先で利根川を渡り茨城県に入り、取手、藤代、牛久と水戸街道を北上、土浦から石岡を経て水戸、さらに大洗にまで足をのばしている。帰路は、水戸線と東北線の汽車を乗り継ぎ(当時、常磐線はまだ開通していない)上野へ戻る4泊5日の日程の、ほとんどが徒歩だった。

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筑波大教授、強制わいせつ容疑で逮捕

筑波大学教授が強制わいせつ容疑で7日、つくば警察署に逮捕されたとして、同大は同日、記者会見を開き「大学としてこのたびの事態を極めて重く受け止めています。被害者の女性に対し心からお詫びします」と謝罪した。 逮捕されたのは大澤良・生命環境系長(61)。今年4月から9月にかけて同大の研究室で、20代の女子学生の胸などを複数回触ったとされる。 同大によると、被害学生本人から9月28日、同大のハラスメント相談センターに「先生の研究室でセクハラ行為を受けた」などの相談があった。 10月11日、加藤和彦副学長に報告があり、加藤副学長は同日、被害学生の話を聞いた上で、大澤教授に対し、被害学生とは接触せず電子メールなども送らないよう申し渡した。 その後11月2日から同大懲戒審査委員会が、双方から聞き取り調査などをしていたという。同大は、大澤教授がわいせつ行為を認めたかどうかについては調査中だとしている。 一方、その後も大澤教授はj、他の学生に対し教育・研究の指導業務を行っていた。

50年の味、Aセットが出迎える【クルマのある風景】2

和風レストラン キャニオン 平田貴夫さん つくば 「表筑波スカイラインをドライブして、下大島の古いレストランで食事をした後、うちにやってくるお客さんがいます。そういったミーティングとドライブコースがあるそうですよ」と、前回取材したノスタルヂ屋の松浦正弘店主が教えてくれた。 つくば市下大島の古いレストランといえば、「和風レストランキャニオン」に違いない。創業して50年を過ぎている。昔から国道沿いのにぎわう店舗として地元の常連客やクルマ好きがやってくる。創業者である平田和夫さんが、無類のクルマ好きだったこともあり、当時の言葉で言えばドライブインとして成功した店だ。 創業50年を超える老舗レストラン 平田さんは2018年に亡くなり、助手として厨房に入っていた息子の貴夫さん(51)が2代目となって切り盛りしている。メニューは50年の間に増えているが、ほとんど変わらない和風の洋食が出迎える。

グローバリゼーションに新ルール 《雑記録》30

【コラム・瀧田薫】ダニ・ロドリック氏が「グローバリゼーション・バラドクス(The Globalization Paradox)」(2011年)を出版してから、今年でちょうど10年になります。この間、「グローバリゼーション」に関する論文・著作が数多く発表・発行される中で、この本の存在感はまだ失われていません。 この書物が発行された当時、著者は世界経済の「政治的トリレンマ」(民主主義、国家主権、グローバリゼーション)を同時にバランスよく追求することは不可能で、旗色の悪くなった国家主権と民主主義を守るために、グローバリゼーションをある程度制限することもやむを得ないと主張しました。 この主張を経済学の観点から見れば、いわゆる新自由主義的論理が市場と政府は対立関係にあると考えるのに対して、金融、労働、社会保障など、国家がコントロールする諸制度が補完しない限り、あるいは政府による再分配やマクロ経済管理が機能しない限り、市場はうまく回らず、秩序あるいは社会的安定も確保できないとする考え方と言えるでしょう。 政治学においても、国家の統治能力の向上なしに持続的な経済発展は望めないとの見方が有力ですし、ロドリック氏の考えは正鵠(せいこく)を射たものと思われます。 主権国家が新たな規制枠を用意

商品はカタログや自動車雑誌【クルマのある風景】1

サーキットのモータースポーツでもオフロードのクロスカントリーでもなく、日常にある自動車と向き合う人々は数多く存在する。ニッチ(すきま市場)とも、趣味の世界ともいえる、つくば、土浦のクルマのある風景をたずねた。 ノスタルヂ屋 松浦正弘さん つくば つくば市花畑に所在する「ノスタルヂ屋」は、一見すると昔ながらのレコード店のように見える店内だが、ここで取り扱われているのは音盤ではない。ジャンル別、メーカー別、車種別に分類された、1950年代くらいから現代に至る、内外各自動車メーカーが販売した自動車、オートバイのカタログや自動車雑誌が商品、まさしく趣味の世界だ。 そんな品物に商品価値があるのかと言えば、興味のない人には古本以下だが、かつて乗ったことのあるクルマ、昔からほしかったクルマを手に入れた、そのような人々には至高の宝物がカタログなのだ。 店主の松浦正弘さん(69)は、20代の頃に東京・中野区で「ブックガレージ」という名の店を起こし、40年を超えてこの商売を続けている。自動車雑誌がオールドカーの特集を組み、特定車種のヒストリー記事をまとめる際、自動車会社にさえ現存しないカタログなら編集者は松浦さんのもとを訪ねる。