火曜日, 5月 30, 2023
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《食う寝る宇宙》81 衛星のクリーンルームに住みたい

【コラム・玉置晋】2月の上旬くらいからでしょうか、目の腫れぼったさを感じて、僕の花粉センサが反応する季節がやってきました。今年はあらかじめ病院で薬をもらって準備していたので、例年に比べて症状は軽めなのですが、つらいものはつらい。つい先日は夜中に鼻がつまって、呼吸困難に陥って死ぬかと思いました。 職場では、鬼の形相で「窓を開けるな!」とオーラを出しますが、コロナ禍ですから換気も大事です。家では花粉症とは縁のない奥様はちゅうちょなく窓を開放します。布団は豪快に外に干します。僕はこれを「花粉症DVだ!」と抗議をしますが、「それが何か?」と却下されます。 「べんぞうさん」大分元気に 本コラム79(2月14日掲載)で、人工衛星の地上試験について書きました。人工衛星は大変繊細な機械の塊ですので、試験はクリーンルームの中で行われます。僕は以前、地上試験中の人工衛星のデータを収集して、評価する仕事を担当したことがあります。 このときは、専用の靴に履き替え、専用の防塵(ぼうじん)服を着て、エアシャワーでホコリを吹き飛ばした上で試験設備に入室しました。今、僕はクリーンルームに住みたいです。 前回のコラムで、ウチの大事な家族である犬の「べんぞうさん」の体調がすぐれないと書いたら、何人かの方から心配のメッセージをいただきました。大分、元気になってまいりました。どうもありがとうございます。(宇宙天気防災研究者)

《食う寝る宇宙》80 火星探査「魔の7分間」

【コラム・玉置晋】ウチの大事な家族である犬の「べんぞうさん」の体調がすぐれません。この数年、検査で腎臓の数値が悪かったので、腎臓ケアの食事に変えていたら、今度は肝臓の調子が悪くなり、手製の食事に替えましたが食欲がなく、昨日も仕事のお休みをいただいて獣医さんに連れていきました。2008年に我が家にやってきたこのワンコ、人間でいえば70歳くらい。70歳だったら、まだまだバリバリ働いている人いっぱいいるぞ。どうか元気になってくれ。 こういう時に限って、仕事の締め切りやら、確定申告の準備やら、異様に忙しい。2月19日早朝に、たまった領収書と悪戦苦闘しながら、NASA(米航空宇宙局)のライブ中継をみていました。NASAジェット推進研究所の火星探査機「パーシビアランス」が火星への着陸を試みている真っ最中です。 これまで各国で試みられてきた火星探査の成功率は半分以下。火星周回への軌道投入、大気圏突入、軟着陸のためのパラシュートの展開―すべて難易度が高い。地球から火星までの距離は光(電波)の速さでも10分かかるので、探査機に事前にプログラムしておき、自己判断させなければならないのです。特に探査機の大気圏突入の時間は、「魔の7分間」として恐れられているそうです。 着陸成功にガッツポーズ 火星の大気圏突入時には、時速2万キロという高速移動しているために、ものすごい勢いで探査機前方の大気を圧しつぶします。圧しつぶされた大気の分子が激しくぶつかり合って、熱が発生します。火星の大気だと2000℃程度に加熱されるので、高温に耐えねばなりません。 そして、着陸点に向かう軌道を修正しつつ、適切なタイミングでパラシュートを開く。しばらく降下した後、「スカイクレーン」と呼ばれるロケット推進で噴射する装置につるされながら、ゆっくりと着陸していきます。この間7分間。NASAの運用室の緊張感がパソコン画面を通じて伝わってきました。着陸成功が報じられたときは、思わず僕もガッツポーズ。

《食う寝る宇宙》66 宇宙開発現場の言霊信仰

【コラム・玉置晋】宇宙開発は科学技術の塊(かたまり)であることは言うに及びませんよね。その中で、僕は人工衛星の運用に関わる仕事をしているのですが、面白いことに非科学的な伝承がいくつかあるので紹介しましょう。 言霊(ことだま)とは「言葉には霊的な力があり、声に出した言葉が現実の事象に対して何らかの影響を与える。良い言葉を発すると良いことが起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こる」ということです。 これは、人間の社会では、あながち間違っているとは思いません。1人から発せられた信憑(しんぴょう)性の怪しい情報が人々に伝播して、国家的な意思決定に影響して、紛争や戦争につながることもありますよね。だから、言葉は慎重に発せねばなりません。 人工衛星運用の現場における凶事とは、衛星が通常とは異なる状態になることです。現場では、不明事象とか不具合が発生したと表現します。最悪の場合、人工衛星が失われることもあり、現場の先輩方はこれを経験してきました。だから、現場で不具合に関する話をすると、ベテランの先輩方から怒られます。 不具合を語る「軌道上技術評価」 ところが、僕は「宇宙天気防災」を専攻しています。宇宙天気は人工衛星の不具合を発生させる疫病神のようなものですが、宇宙天気が世の中に普及するには、その被害を明らかにする必要があります。僕は、衛星運用の中でも「軌道上技術評価」という仕事に取り組んでいます。

《食う寝る宇宙》64  ソロリソロリと3時半起床

【コラム・玉置晋】まずは御報告。2020年4月12日、宇宙ビジネスサロンの一般社団法人「ABLab」において、宇宙天気プロジェクトを発足させました。プロジェクトメンバーがキックオフミーティングの様子をまとめましたので、こちらをご覧ください。 プロジェクトのコンセプトは「宇宙天気キャスタ・宇宙天気インタプリタが活躍する近未来社会を創造する」です。「宇宙天気キャスタ」は読んで字の如くですが、「宇宙天気インタプリタ」って何?という人は、コラム49とコラム50をご覧ください。昨年末に鹿島神宮でうけた神様のお告げ(コラム51)を、しっかり実践しておりますよ。 このプロジェクトは、ABLabと僕がお世話になっている茨城大学理学部・野澤研究室(宇宙天気防災)の協力により、「教育・研究」「社会ニーズの醸成」「利用・防災」の3つの柱をつなげていきます。 愛犬のご飯は僕の担当 さて、上記の宇宙天気プロジェクトを推進するために、僕は「会社勤めの宇宙エンジニア」と「宇宙天気防災を研究する社会人大学院生」の二足のわらじを履いています。時間のやりくりが大変なのですが、どのような1日を送っているのか紹介します。 朝3時半にムクっと起き出し、ソロリソロリと椅子に座ってパソコンを開く。「ガタ」という椅子のきしむ音、カチャカチャというキーボードの音。これらの音で家族を起こすわけにはいかない。一挙一動を慎重に行う必要があります。

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異星人と犬 《短いおはなし》15

【ノベル・伊東葎花】若い女が、ベンチで水を飲んでいる。傍らには、やや大きめの犬がいる。「犬の散歩」という行為の途中で、のどを潤しているのだ。なかなかの美人だ。身なりもいい。服もシューズも高級品だ。彼女に決めるか。いやしかし、犬が気になる。動物は敏感だ。余計なことを感じ取ってしまうかもしれない。 私は、遠い星から来た。今はまだ体を持たない。水のような流体だ。ターゲットを探している。性別はどちらでもいいが、女の方に興味がある。すっと入り込み脳を支配して、地球人に成りすますのだ。そして我々の星にとって有益なデータを持ち帰ることが目的だ。誰でもいいわけではない。容姿は重要。生活水準も高い方がいい。あの女は、大企業に勤めている。申し分ない。犬さえいなければ。 私には時間がない。地球時間で5時間以内に入り込まないと、気体になって宇宙に戻ってしまうのだ。意を決して、女に近づいた。耳の穴から入り込む。一瞬で終わる。一気に飛び込もうとジャンプした私の前に、犬が突然現れて大きくほえた。 しまった。犬の中に入ってしまった。 「ジョン、急にほえてどうしたの?」女が、私の頭をなでている。どうしたものか。地球人については学習してきたが、犬についてはまったくの無知だ。逃げようと思ったが、首からひも状のものでつながれている。とりあえず、犬になりきって様子を見よう。そしてチャンスを狙って女の方に移るのだ。立ち上がって歩き出した私を見て、女が目を丸くした。「ジョン、2足歩行が出来るの? すごいわ。ちょっと待って、動画撮るから」しまった。犬は4本足だった。 それから私は「人間みたいな犬」として、ユーチューバー犬になった。ソファーでテレビを見たり、フォークを使って食事をするところをネットでさらされた。想定外だが、女と同じベッドで寝られることだけは、まあよかった。女は優しくて、いつも私をなでてくれた。「いい子ね」と褒めてくれた。女が眠っている間に、犬の体から女の体に移動することは易しい。しかし女の無防備な寝顔を見ると、なぜか躊躇(ちゅうちょ)してしまうのだ。

11カ国の出演者決まり制作発表 「世界のつくばで子守唄」コンサート

歌のコンサート「世界のつくばで子守唄 海のシルクロードツアー2023制作発表会」が28日、ホテル日航つくば(つくば市吾妻)ロビーで行われた。同市在住の脚本家、冠木新市さんの企画・プロデュースで、7月1日に開かれる。11カ国、15曲の子守歌をそれぞれの国や地域の出身者、約40人が歌や舞踊で披露し、コンサート後は各地域の交流会を行うという。 中国語の歌「祈り」を歌う劉暁紅さんと伴奏する大川晴加さん=同 制作発表会はコンサート会場となる同ホテルの「ジュピターの間」前で行われた。大川晴加さんのピアノ伴奏に合わせ、中国出身の劉暁紅(リュウ・ギョウコウ)さんが中国の歌「祈り」を歌い、披露した。「祈り」は日本の「竹田の子守歌」と同じ曲調で、中国だけでなくミャンマーでもよく知られる曲だという。演奏後はバングラデシュ出身のアナミカ・スルタナさんや台湾出身の潘頤萱(ハン・イガン)さんら出演者たちがそれぞれ自己紹介し、挨拶した。 挨拶する出演者の潘頤萱さん=同 つくば市在住で外国人サポートの仕事をしているアナミカさんは、コンサートで「アイアイチャンドママ」(日本語訳「来て、来て、ムーンおじさん」)という歌を披露する。この歌はアナミカさんが子どもの頃に母親から聞いた歌で、アナミカさんの母親も子どもの頃に聞き、代々伝わってきたという。「どのくらい古くから歌われているか分からない。子どもがよく眠ることを願う歌。バングラ語(ベンガル語)で歌います」と話す。

川遊び創出に海洋クラブ助け船 【桜川と共に】4

「最近の子どもたちは川に入ってはいけないと教わる。もっと川で遊んで、桜川の環境に興味を持ってほしい。そして澄んだ桜川を取り戻したい」。桜川漁協の組合員らは、大人が安全を重視するあまりに子どもたちが川から遠ざかっている現状を憂う。そんな中、子どもたちが川で遊ぶ機会を創出しようと、桜川に新しい風が吹き込んできた。 地元NPO、7月から本格的な活動へ 桜川での自然体験活動を先導するのはNPO法人Next One.(ネクストワン、つくば市研究学園)。筑波大学大学院で体育科学を修めた井上真理子さん(39)が代表を務める。桜川漁協の協力を得て今年から「B&G Next One.海洋クラブ」を発足させた。本格的な活動を7月から開始する。月1回、桜川での自然体験を行い、地域の人と交流しながら、環境問題についても学びを深めていく予定だ。 式で挨拶する山本杏さん=桜川漁協(つくば市松塚) 28日には、同クラブの活動拠点となる桜川漁業協同組合(つくば市松塚)でカヌーやライフジャケットなどの舟艇器材配備式が行われた。式では井上さんや器材を提供した公益財団法人B&G財団(東京都港区)の理事長である菅原悟志さんらが挨拶。市内外から訪れたクラブ員の児童ら16人とその保護者ら、つくば市環境保全課や観光推進課の職員も出席し、児童と漁協組合員らがクラブ発足を記念して桜の木2本の植樹を行った。式後は児童らが組合員やネクストワンのスタッフらから手ほどきを受けて釣りやカヌーの体験を行い、桜川の自然を満喫した。

土浦市立博物館が郷土史論争を拒絶!《吾妻カガミ》158

【コラム・坂本栄】土浦市立博物館と市内の郷土史研究者の間で論争が起きています。争点は筑波山系にある市北部(旧新治村の一角)が中世どう呼ばれていたかなどですが、博物館は自説を曲げない相手の主張に閉口し、この研究者に論争拒絶を通告しました。アカデミックディスピュート(学術論争)を挑む市民をクレーマー(苦情を言う人)と混同するかのような対応ではないでしょうか。 「山の荘」の呼称はいつから? 博物館(糸賀茂男館長)と論争しているのは、藤沢(旧新治村)に住む本堂清さん(元土浦市職員)。社会教育センターの所長などを務め、退職後は市文化財審議委員、茨城県郷土文化振興財団理事も歴任した歴史通です。「山の荘物語」(私家版)、「土浦町内ものがたり」(常陽新聞社)、「にいはり物語」(にいはりの昔を知り今に活かす会)などの著作もあります。 争点はいくつかありますが、主なものは現在東城寺や日枝神社がある地域の呼び方についてです。本堂さんは、同地域は古くから「山の荘」と呼ばれていたと主張。博物館は、同地域は「方穂荘(かたほのしょう=現つくば市玉取・大曽根辺りが中心部)」に含まれ、中世室町時代以前の古文書に「山の荘」の記載はないと主張。この論争が2020年12月から続いています。 博物館によると、この間、本堂さんは博物館を11回も訪れ、館長や学芸員に自分の主張を展開したそうです。そして、文書による回答を要求されたため、博物館は「これ以上の説明は同じことの繰り返しになる」と判断。これまでの見解をA4判3枚の回答書(2023年1月30日付)にまとめ、最後のパラグラフで論争の打ち切りを伝えました。 その末尾には「以上の内容をもちまして、博物館としての最終的な回答とさせていただきます。本件に関して、これ以上のご質問はご容赦ください。本件につきまして、今後は口頭・文書などのいかなる形式においても、博物館は一切回答致しませんので予めご承知おきください」と書かれています。博物館は市民との論争に疲れ果てたようです。