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オリンピックと衆院選挙 《雑記録》26

【コラム・瀧田薫】古代オリンピックは、紀元前776年から紀元393年まで、1200年近くにわたって、ギリシアのオリンピアの地で行われた。この古代オリンピックと近代オリンピックとの違いは、古代オリンピックがゼウス神にささげる宗教的祭典だったことである。大会開催中、参加国は聖なる休戦(エケケイリア)を守り、オリンピアへの往還と神域における武力行使を堅く戒めた。 その結果、1200年間、戦争が原因で大会が中止されたことは一度もないという。一方、近代オリンピック120年の歴史には、2度の大戦による大会中止をはじめ、テロによる選手殺害事件(1972年)や、大国によるボイコットの応酬(1980年、1984年)があった。 西洋史学者の橋場弦(はしば・ゆずる)氏は「商業主義とグローバル資本の論理に翻弄される現代のオリンピックは、どこに向かうのか。金銭を超えた聖なる価値を、オリンピックが見失うことのないよう祈りたい」(UTokyo FOCUS 2020年4月)と述べている。 争点は財政政策(増税か減税)か? さて、衆議院議員選挙の日程だが、コロナの感染爆発中にオリンピック開催を強行した菅首相だけに、オリ・パラ会期中の選挙はないだろう。永田町では、パラリンピック後の9月6日に臨時国会を召集し、補正予算を通して、28日公示、10月10日投開票というスケジュールが有力視されている。ただし、これも「ワクチン接種」の進み具合で延期される可能性がある。 菅政権としては、選挙前に国民の60%程度の接種を終えておきたいところだ。その場合、選挙日程はギリギリ11月28日になる可能性がある。臨時国会を開き、10月21日の衆院議員の任期満了日に解散する方法だが、さすがにこの日程の現実味は薄い。選挙の争点は、コロナ対策、特に財政政策で、具体的には「増税か減税」か、与党、野党それぞれの思惑が交錯する選挙となるだろう。 政府は、コロナ禍への対応で、20年度に3次にわたる補正予算を編成した。医療現場への補助金、企業向け支援、全国民への一律10万円支給などがその中身だが、財源の大半は国債の追加発行(20年度の新規国債発行額は100兆円の大台を超えた)であり、これは過去に類例のない規模である。リーマン・ショック後には消費税の10%への引き上げがあり、東日本大震災後には所得税、住民税、法人税の上乗せがあった。現在、財政当局の本音は「景気回復を条件とする増税案(消費税15%?)」だろう。 これに対し、自民党は選挙前の「だんまり」を決め込み、菅首相は「10年間は消費税を上げない」と公言している。逆に野党は、この時とばかりに「減税」(れいわ新選組の消費税5%案など)を主張するだろう。選挙民にとっては、どう考え、誰に投票するのか、悩ましい選挙となるだろう。 専門家による投票結果予想としては、自民党の議席減で現政権の退陣もあり得るが、自民・公明両党での過半数は維持できるとの見方もある。選挙の結果がどう出ようとも、その後に、財務当局の増税案が急浮上してくることは確かである。(茨城キリスト教大学名誉教授)

事業継承を経営問題と認識、7割超に

帝国データバンク調査 コロナ禍の影響から、倒産、休廃業の増加が懸念される中、回避策として「事業継承」がこれまで以上に注目されている。事業継承の実態を把握するため、帝国データバンク水戸支社が企業の意識(見解)調査を実施した結果、企業の7割以上が事業継承を経営上の問題ととらえていることが分かった。 調査対象の県内企業366社のうち有効回答企業数は174社(回答率47.5%)だった。 事業継承に対する考え方について「最優先の経営上の問題と認識」している企業が9.8%あった。「経営上の問題の一つと認識している」が60.3%と最も高かった。しかし「経営上の問題と認識していない」も21.3%あった。 業種別にみると、経営上の問題として考えている割合が高いのは「卸売」が78.5%、次いで「建設」が77.4%、「運輸・倉庫」が72.2%と続き、「サービス」も69.5%と全国平均を上回った。 事業継承を円滑に行うために必要なことは何かとの質問には、「現代表(社長)と後継候補者の意識の共有」が45.4%でトップ、以下「経営状況・課題を正しく認識」42.5%、「早期・計画的な事業継承の準備」39.7%、「早めに後継者を決定」37.4%と続いた。 政府も、若い世代の事業継承機運醸成や、世代交代に伴う中小企業の成長を促進する施策の推進、税制面の優遇措置、第3者承継の促進など支援体制の強化に努めている。 帝国データバンクは「後継者が取得した資産に対する贈与税や相続税といった税負担が障壁となるケースも否定できず、事業継承には事前準備に加え、より使い勝手のよい税制へと見直していくことが不可欠」と提言している。(山崎実)

土浦写真家協会が8月にも発足 市出身のオダギさんが奔走

土浦市在住の写真愛好家を中心に「土浦写真家協会」を設立する動きが進み、早ければ8月にも設立総会が開かれる。発足に向けて奔走してきた市出身のオダギ秀さん(コマーシャルフォトグラファー)は「土浦の写真文化、写真産業が失われつつあり、これでいいのかと、ずっと心を痛めてきた。同好の人たちが集うことで、土浦の文化風土を再活性化したい」と話す。 具体的な活動としては、土浦市などが主催する写真展の後援、公民館などを使った撮影講座の開催、写真愛好家と写真関連店との交流促進、写真文化を育てるウェブサイトの運営、小規模な写真展を気軽に開ける街中ギャラリーの運営、昔の街並みなどを写した写真の保存(アーカイブ)―などを考えている。 この中でもアーカイブに力を入れる考えで、「明治、大正、昭和の土浦の諸相を記録したような、歴史的な写真を掘り起こし、協会の手で保存したい」と語る。具体的には、旧家などに残されている古い写真を提供してもらい、分類・デジタル化して保存。企画展での公開だけでなく、メディア経由での「土浦の魅力発信」も想定している。 写真文化の振興発展を願い活動 土浦生まれ・土浦育ちのオダギさんは、早稲田大政経学部を卒業した後、商業写真の仕事ほか、写真愛好家を指導する「オダギ塾」の開催、身の回りの風景などを写真で切り取った個展の開催など、多方面で活躍してきた。こういった活動をするうち、土浦の写真文化の衰退が気になり、何とかしなければと思うに至った。 協会の趣意書や規約はすでに作成され、写真塾の多くの卒業生の支持も得ている。また、地元の有力者も加わった理事会メンバーもほぼ固まり、設立準備は最終段階にある。 協会の目的は「土浦市を中心とする写真文化の振興発展を願う活動を行うことにより、土浦市および周辺地域の文化育成と土浦市民および多くの人々の意義ある生涯実現に寄与する」とされている。会費は、写真愛好家など正会員が年2,400円、協会の活動を支援する企業など賛助会員が年5,000円から。(岩田大志) ◆「土浦写真家協会」についての問い合わせはshu@odagi.co.jpまで。

制度化なるか? 重度障害者の就労時の介助 つくば市議会で議論

重度障害者が働くと受けられなくなる公的介助サービスについて、つくば市議会で市民団体からの提案をもとに、実施に向けた議論が進んでいる。厚生労働省は「地域生活支援事業」の対象に、通勤・就労時の身体的な介護を加え、昨年10月から市町村の任意事業として提供できるようにした。 厚労省によると、昨年8月時点で全国13市町村が実施予定とした。市民団体「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(事務局・水戸市)の調査によると、今年4月時点で、県内で「利用希望に応じて検討したい」とした市町村は数カ所あったものの、「実施予定」とした市町村はひとつもなかった。 「働いている」のに賃金もらえず 従来の制度では、公的介助サービスは通勤時や就労時は利用できないため、介助が必要な障害者は、働く能力があっても就労が難しかった。昨年から国の地域生活支援事業の中で始まった「雇用政策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」で、国と県から補助を受けて、市町村が職場等における介助や通勤の支援を行えるようになった。 重度身体障害を持つ川島映利奈さん(38)は、障害者団体「つくば自立生活センターほにゃら」代表として活動する。自立生活センターでは、地域で生活する障害者に介助者を派遣する事業を行っていて、川島さんは介助者の採用面接や研修、勤務シフト表作成に関わる。また、障害者や家族からの相談に応じたり、障害のある人とない人が交流できるイベントの企画もしている。平均週20時間、活動している。 しかし、ほとんどの活動に賃金は発生しない。川島さんは障害のために痰(たん)を吐き出す力が弱く、多い時で30分に1回、介助者に痰吸引をしてもらう必要がある。また全身の筋力が弱く、会議の資料を作成するためのパソコン入力や、初対面の人との名刺交換など、活動するために必要な動作のほとんどを介助者にサポートしてもらう必要があるため、常に介助者がそばにいる。公的介助サービスを使っている時間は就労できないため、どんなに活動しても賃金はもらえない。 唯一、月に一度の役員会議の時間だけは役員報酬を受け取っている。その時間は公的介助サービスを利用できないので、痰吸引など必要な介助は自立生活センター事務所が負担している。しかし、川島さんが活動しているすべての時間、介助を自立生活センター事務所が負担することは難しい。つくば市で就労中も公的介助サービスを受けられるようになったら、活動している時間は賃金をもらいたいと川島さんは話す。 川島さんはつくば自立生活センターで活動する以前、筑波大学大学院に在籍していたころ、一般企業に就職したいと思い、障害者向け合同企業説明会に参加したこともあった。しかし、興味のある大手企業の説明を聞きにいったところ、介助者同伴で来た川島さんを見て企業側は驚いた様子だった。生活に介助が必要な重度障害者が参加することは想定されていなかった。 企業の概要説明はしてくれたが、「トイレ介助や食事介助、パソコン入力など、仕事中に必要な介助を企業側で提供するのは難しい。介助者が必要なら、自分で用意してほしい」と言われた。つまり、介助者を雇うお金がなければ働けない。「大手企業でもそのようなことを言われてしまう。こんなに勉強しても働けないと分かり、悲しかった」と川島さんは振り返る。 公開質問状でつくば市にも動き 昨年10月のつくば市長・市議会議員選挙で、市民団体「障害×提案=住みよいつくばの会」は各立候補予定者に、政策提案型の公開質問状を渡したが、その中に「就労中の重度障害者への公的介助サービスの実現」も含まれていた。昨年の12月議会一般質問で、川村直子議員がこの政策提案の実現に向けての具体的な予定を聞いたところ、つくば市は「先行して実施している自治体の事例等を参考に調査を進めていく」と回答した。 5月13日現在、市障害福祉課によると、「昨年度の他市町村における実施状況を、県や国に問い合わせ、国からの報告を待っているところ。県内で実施している市町村はなかったが、再度、国に照会し、調査を進める予定」だそうだ。今後の動向が注目される。(川端舞)

日本で幸せに暮らすために 3カ国語でハンドブック「架け橋」

「外国から日本に来る誰もが幸せに暮らせるように」。そんな思いを込め作られたハンドブック「Briging the gap ( ブリッジング・ザ・ギャップ、邦題:架け橋)」が完成した。外国人が日本で暮らす上で必要な多岐にわたる情報が盛り込まれている。制作は、フィリピン出身の法廷通訳士、島田ビトゥインさん(69)らが発起人となり、筑波大学生のメレシオ・ジャン・コリンさん(22)ら、フィリピンにルーツを持つ若者たちが作業の中心を担った。英語、タガログ語、日本語、各言語をウェブサイトから無料でダウンロードできる。 「これまでになかったハンドブック」 フィリピン人の両親を持つ筑波大4年のメレシオさんは、日系企業のエンジニアとして働く父の仕事の都合で1歳のときに来日した。その後、日本とフィリピンを行き来しつつ中学校から現在は、日本での生活が続いている。 メレシオさんは、今回作成したハンドブックは「これまでになかったタイプ」だと話す。 「日本での生活が長いフィリピン人の目線で作られたことがとても大切です。同じ事柄でも、日本人とは伝え方が変わってきます。規則など明文化された『ダメ』な事柄をあげるだけでなく、慣習による曖昧な判断が必要な場面も解説しました。日本人協力者のチェックも入っているので、誤解のない表現を選ぶことができたと思います」 メレシオさんは幼い頃、両親にかわって自宅に届く書類に目を通していた。保険や年金、ゴミ出しの規則など、わかりにくいことが多かった。大学ではフィリピンからの留学生とともに学園祭や地域イベントで文化紹介をするなど積極的に2つの文化の「架け橋」として活動している。 ハンドブックで特におすすめの箇所を聞くと、法律関係をあげた。 「ビザや在留カード、その他、万が一疑われたり、法律に引っかかったりしてしまうと、日本人でもアドバイスできる人は多くありません。ハンドブックには、相談機関や対処法が書かれています。自分の身を守るためにも必要な知識だと思います」 また生活に欠かせない就業に関する事柄も充実させた。知っておくべき雇用契約内容、仕事の探し方、失業後の補償と手続きなど。 日常生活に必要な事柄もまとまっている。習慣、マナー、冠婚葬祭の服装にお金のやりとり、地域社会の一員としての自治会参加、児童館の利用方法など多岐にわたる。 また、「日本に来る前の確認事項」というチェックリストもあり、訪日前にウェブサイトからダウンロードすることで、事前に準備することができる。さらに情報を得たい場合、各項目に記載されたQRコードから詳細情報にアクセスできる。 若者のエンパワーメントの機会に ハンドブック制作の発起人である島田ビトゥインさんは「外国人が日本で10年、20年生きていくために必要なことをまとめました」と話す。 10年以上、法廷通訳をして感じていたことがある。10代前半でフィリピンから来日する若者が、本人が望まない形で犯罪に関わってしまう姿を何度も目の当たりにした。その背景に、家や学校に居場所を作れないことがあった。そんな若者の多くが、日本語が理解できず、相談先もわからず、日本社会との間に軋轢を抱えざるを得ない状況があるという。 島田さんはなんとかしたいと思っていた。周囲の仲間に声をかけ出し合ったアイデアが、ハンドブック作成になった。日本とフィリピンを結ぶ「架け橋」と名付けたこの活動は、2017年にスタートした。まず、フィリピンから来た人たちが抱える問題を知るため各地のフィリピン人コミュニティーを訪ねインタビューを繰り返した。より広い意見を得られるようウェブアンケートでも意見を募った。 そこで見えたのは、日本に来るための準備が不足していることだった。必要な情報を当事者目線で提供しようと考えた。 本の中には、エッセイとして個人のライフストーリーも複数掲載している。 「個人の物語は、辛い時にどう乗り越えたのか、どんな支援を得ていたのか具体的な事例が盛り込まれているので、そこを見て欲しいです」 ハンドブック作成には、フィリピンにルーツを持つ多くの若者が参加し、デザイン、執筆、翻訳などを担った。書籍版の印刷は、フィリピン人が経営する印刷会社によるものだ。 「このプロジェクトは、若者たちのエンパワーメントの場にもなりました。この経験を次の世代に引き継いで、将来の子どもたちのための活動につながればうれしい。フィリピン人だけでなく、あらゆる移民に応用できる内容です。是非、日本人にも読んでもらいたいと思い日本語版も作成しました」 総務省によると日本に暮らす外国人は2020年6月の時点で288万5904人。茨城には約7万人が暮らし、その内、土浦市とつくば市には1万5000人余りが暮らしている。両市の人口の4%あまり。全国平均の約2倍となっている。 ハンドブック「Briging the gap」はこちらから無料ダウンロードできる。(柴田大輔)

災害対応に過去と未来のクロスビュー 防災科研がWebサイト刷新

防災科学技術研究所(つくば市天王台、林春男理事長)は18日、Webサイト「防災クロスビュー」を一般公開した。水害や地震などの災害発生から進行、復旧までの各局面に関わる情報をはじめ、過去の記録、未来の予測に至る災害情報を集約し、防災にフル活用する。これまで災害時の「対応」を主に発信していた「防災科研クライシスレスポンスサイト(NIED-CRS)」を「予防」と「回復」にも拡張する形でリニューアルを図った。 防災科研と日立製作所が2014年から共同で研究開発を進めてきたSIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)などにより、災害対応に必要な共有された情報をまとめ、統合的に発信するサイト。臼田裕一郎総合防災情報センター長によれば、災害時には、官公庁や研究所、企業などからの情報発信が活発化するが、分散して大量に出てくるため災害の全体像が見渡せない。これらの情報を集約して、予防・対応・回復の各局面を通じて活用できるシステムを目指した。 例えば、今年2月13日夜に発生した福島県沖を震源とする地震(マグニチュード 7.3)についてみると、面的推定震度分布や建物被害推定などの解析、家屋の被害状況、断水や給水支援などインフラ状況、防災科研Hi-netによる震源分布などの観測データ、気象庁が発表している災害の危険度分布など19の情報をサイトにまとめている。気象災害では1時間降水量分布など解析雨量、浸水・土砂災害などの発生危険度のリアルタイム評価結果などの情報が得られる。 平常時は過去の記録や現在の観測、未来の災害リスクを表示、災害時は発生状況、進行状況、復旧状況、関連する過去の災害、二次災害発生リスクなどの災害情報を重ね合わせて見える化(ビュー)した。表示される地図は市町村単位になったり、河川ごとになったり、詳細を確認し、避難に役立てられるものもある。 「防災クロスビュー」サイトはこちら、スマホ版も用意されている。ツイッターはこちら。(相澤冬樹)

予算の3倍超えた! どう乗り切る? つくば市のPayPay還元

【山口和紀】先月つくば市で行われたキャンペーン「あなたのまちを応援プロジェクト」で還元予定のポイント額が、還元分の予算額6000万円に対して3倍を超える約1億9400万円になったことがNEWSつくばの取材で分かった。キャンペーンは、キャッシュレス決済サービス「PayPay(ペイペイ)」を利用した買い物の購入額の30%を利用者に還元するというもの(2月9日付)。先月1日から28日までの1カ月間行われていた。 1億3400万円分が足りない 市によれば、キャンペーンの条件に該当する決済の総件数は約16万4000回。これらのすべてに対して決済額の最大30%分のポイントが還元されるが、その総額は約1億9400万円相当になるという。 キャンペーンは昨年12月臨時議会で予算化されたが、ポイント還元分としては6000万円が計上されていた。約1億3400万円分が足りなくなってしまった形だ。 つくば市は当初の予算を超過しても打ち切りをせず最後まで続けたが、同様のキャンペーンを先月1カ月の間行う予定だった富山県射水市では、開始10日で予算超過のために打ち切りを決めた。射水市ではポイント還元分として2億円を予算化したが、10日間で還元総額が3億4300万円に達し、2020年度3月補正予算案に3億500万円を追加提案している。 「市の一般財源からの支出はナシ」 今後の対応について、つくば市は補正予算案への追加提案は行わない構えだ。キャンペーンの担当部署である経済部経済支援室の渡邊室長は「事前のシミュレーションの下限値である6000万円をポイント還元分として予算化していたが、今回の結果はシミュレーションの最大値に近い結果となった。想定の範囲内であったことから、予算の超過はしていない。他事業の残額等を流用し対処する」と話す。 ポイントの還元分は市の予算から支出されるものの、「市の一般財源からの支出はない」とされていた。「県と国の交付金を事業費として活用するため」だ。具体的には、国の地方創生臨時交付金及び県の地域企業活力向上応援事業費補助金を用いる。 地域企業活力向上応援事業費補助金は、全体で1億6518万9000円が交付される。市はポイント30%還元キャンペーンのほかに新生児に対する3万円相当のポイント給付などに用いる。国の地方創成臨時交付金の交付額やその使途等の詳細は、現時点では公表されていない。 市の一般財源からの支出は見込まれるかとの質問に対して、渡邊室長は「他事業で支出される金額がまだ確定していないことから、県と国の交付金を超えて、市の一般財源からの支出が必要となるかは分からない。基本的には、県と国の交付金によって事業費をすべて賄う姿勢は変わらない」と回答した。 【訂正】最後の段落「県と市の交付金」を「県と国の交付金」に訂正しました(3月15日)。

コロナ禍 学生4000人が行列 筑波大が食料20トンを無料配布

【山口和紀】筑波大学(つくば市天王台)は22日、学生に食料の無料配布を実施した。地元企業などから約20トンの支援物資が集まり、学生約4000人が列をつくった。一方、想定を大幅に超える学生が集まったことから4時間以上並んだ学生もおり、午後4時ごろには物資が底をついた。 学生生活課の担当職員は「自粛期間に入ってから、こんなに多くの学生を見たのは初めて。午後2時時点で1000人が受け取ったが、今3000人ほどの列ができている」と語った。当初、受け取りにくる学生は「200人から1000人ほど」と考えていたという。 7割が「アルバイト減った」 同大では新型コロナ第3波が到来した昨年12月半ば、生活への影響について学生にアンケート調査を実施した。回答があった学生の7割が「アルバイトが減った」と答えた。 こうした状況を受け学生を支援しようと、今月5日から、教職員のほか、JAやロータリークラブなどの地元企業や卒業生などに支援を呼び掛けた。わずか3日間ほどで地元企業や卒業生が経営する企業などから20トン近い食料が届いた。 コメ7トン、カップ麺2万4000食、レトルトカレー2000食、缶詰2300個、チョコ菓子1万6000個、飲料水1万1000本、キャベツ・ハクサイ各500個、卵1200パックなどだ。 食料無料配布会の開催を、構内の掲示板やサークルなどを通して学生に案内したところ、学生同士のSNSなどで「大量の物資が集まっている」などと瞬く間に広がった。 当日は集まった食料が大量だったことから、配布会場が2カ所に分けられた。メーンの学生宿舎、グローバルビレッジ会場にはカップ麺、レトルト食品、菓子などが並べられ、サブ会場の平砂宿舎には、コメや飲料水などが置かれた。 「これからずっとキャベツ生活」 配布開始は午前10時だったが、8時30分ころには学生が並び始め、1時間前の9時には数百人が列をつくった。開始時間を15分前倒しすることになったが、その後も列は瞬く間に増え、10時過ぎには約1000人が列をつくった。 人文学類3年の男子学生は「もうすでに3時間並んでいる。あとどれくらい並ぶのか全然わからない」と語り、メーンとサブ会場の両方に足を運んですべての食料を受け取るには「あと1時間か、2時間くらいかかるんじゃないかと思う」と話した。理工学群2年の学生は「並び始めて数十分経ったが、ほとんど列が進まない。ここで帰ったら負けだと思いずっと並んでいる」と笑う。 想定を大幅に超えた学生が集まったことについて学生課の担当職員は「うれしい悲鳴というか、ここまで多くの学生が集まるとは正直考えてもみなかった。カップ麺2万4000個など、これだけ大量の物資が底をつくとは想定しておらず、むしろ残ってしまった場合のことを考えていた」と打ち明ける。 食料を受け取った人間学群1年の学生は「並ぶのは大変だった。でも大量の食材をもらえた。本当にありがたい。持って帰るのが大変」と語る。キャリーバックだけでなく、配布された食料を大きな袋いっぱいに詰め込んでいた学生の姿もあった。「キャベツを箱ごと丸々もらった。これからずっとキャベツ生活」「コメとカップラーメン1年分もらった」と話す学生もいた。

JAXA認定ベンチャー 宇宙・衛星ワンストップサービス提供へ

【山崎実】宇宙開発のシンプル化をミッションに、つくば市千現、つくば研究支援センター内に「SEESE(シーズ)」(社長・棚田和玖JAXA研究開発員)が設立され、4月からワンストップサービスの提供を開始する。 世界的規模で小型衛星の製造・打ち上げ機数が急増しているが、そのうち約50%は打ち上げ前、または後に異常発生などからミッションを達成できずに終えてしまっているという。 同社はこのような宇宙・衛星関連産業に取り組む大企業、ベンチャー企業の事業遂行を円滑、確実なものにするため、環境試験ワンストップサービスを行う。環境試験はロケット打ち上げ時や過酷な宇宙環境に衛星が耐え得るかどうかを事前に地上で評価するために行われる工程。 コンサルティングから機材準備、解析評価、試験オペレーター手配など、そのプロセスを一つにつなげてサービスを提供する。 全国に8社しかないJAXA(宇宙航空研究開発機構)認定ベンチャーで、JAXAの知的財産を利用した事業を行うこともできるという。 問い合わせはSEESE(電話080-6728-1754、同社HP)。

4地区対象、社会実装に16事業 つくば市がスーパーシティ基本方針案

【鈴木宏子】国が進めるスーパーシティ国家戦略特区の指定を目指しているつくば市は18日、3月までに国に申請する基本方針案「つくばスーパーサイエンスシティ構想」をまとめた。高齢者が多い筑波地区(小田)と茎崎地区(宝陽台)、学生や外国人が多い筑波大周辺地区、子育て世代が多いつくば駅周辺地区の4地区で展開を目指す。具体的には16のプロジェクトを掲げ、2030年ごろを目標にデジタル技術やシステムが実際に地域で使われるようにする。 プロジェクトは、高齢者が多い地域で、自宅からバス停まで、自動運転の電動車いすやシニアカーを遠隔操作で走らせたり、マイナンバーカードとデジタルIDなどを活用して行政のあらゆる申請・手続きをスマートフォンから行えるようにしたり、食品購買履歴、病院受診履歴、介護データなど企業や病院、自治体などがそれぞれ保有する自分のデータを本人が一元管理できるようにするなど。 ほかに公職選挙のインターネット投票、ドローンやロボットによる配送、児童・生徒の体調管理のデジタル化、ドローンによる道路や橋などの点検、車やドローンなどに搭載したカメラを活用した地域防犯システムの構築などが挙がっている。 同市が全国から公募して市内での実証実験などを支援している「Society(ソサエティ)5.0社会実装トライアル支援事業」で、ベンチャー企業などから提案を受けた事業が目立つ。 4地区でどのプロジェクトを実施するかは、住民の意向を聞いた上でそれぞれニーズの高いプロジェクトを織り込むという。 住民意向の把握必須 国に申請するまでには今後、地域課題の解決目標、実証実験や実装のスケジュール、推進体制、全体統括者の具体的役割、個別事業を実施する候補事業者、費用を負担する主体や金額、経済的社会的な効果、必要となる規制改革の内容などを詳細に詰めることが必要となる。 さらにスーパーシティは、自治体や企業などがもつさまざまな情報を一元的に活用できる「データ連携基盤」を構築することが前提になることから、個人情報の適切な取り扱いを確保するための具体的な取り組みなどを地域住民に説明することなども求められる。 公募にあたって国は住民意向を把握するよう求めており、市は2月に4地区でそれぞれ住民説明会を開くなどする予定だ。 倍率18倍? 今回、スーパーシティ特区に指定されるのは全国で5自治体程度だとされる。秋にも再公募がある。市によると、1月上旬に内閣府がオンラインで実施した説明会には約90自治体が参加したという。説明会参加自治体がすべて応募すれば、倍率は18倍となる。 指定基準として国は、大きな経済的社会的効果が生じたり、広く波及効果を及ぼしたり、プロジェクト自体が先進性・革新性があり日本の経済社会の風景を変える効果が期待されることなどを挙げている。国の初年度の予算額としては全体で10億円程度が見込まれているという。 基本方針策定にあたって市は昨年12月、パートナーとして市の構想や実行計画の企画立案を共に行う事業者を公募した(2020年12月10日付)。市によると民間企業や研究機関など数十社(団体)から応募があり、連携事業者は後日、発表するとしている。

議会から違和感相次ぐ「市民活動よりオフィスに重点?」 つくばセンタービル改修

【鈴木宏子】つくば市中心市街地活性化の担い手として、同市が来春設立予定のまちづくり会社(地域運営会社)と、同まちづくり会社がつくばセンタービル1階アイアイモール部分と4階吾妻交流センターを改修して貸しオフィスとして運営する事業計画について、五十嵐立青市長は25日、市議会12月議会閉会後開かれた議会全員協議会で説明した。 議会からは、4日にようやく示された、つくばイノベーションプラザ部分1~3階を新たな市民活動拠点にするというリニューアル計画と合わせて「市民活動よりオフィスの比率が大きいと感じる」「高齢者、障害者、中高生など、幅広い世代や多様な市民が集える場なのか」「日本エスコンが開発する商業・業務の複合施設クレオとの連携を図るべき」「磯崎新氏の思想が込められた建築にエスカレーターはいるのか」などの意見が相次いだ。 一方、市が当初検討していた、市所有の地下駐車場と1階アイアイモールの床の区分所有権を、まちづくり会社にあげて現物出資する案について五十嵐市長は、現物出資と賃貸を比較した結果、賃貸することが望ましいとした。現物出資に対しては、12月議会一般質問でも、まちづくり会社が破綻したらどうなるのかという懸念が出ていた。五十嵐市長は「破綻した場合(地下駐車場と1階アイアイモールの)区画がつくば市のものから第3者にわたる可能性があるため」だとした。 議会での説明によると、1階アイアイモール2500平方メートルには、シェアオフィス約1300平方メートルとコワーキングスペース約400平方メートルが整備される。改修費は約2億7300万円で、来春設立される地域運営会社が改修工事をし、利用料をとって貸しオフィスを運営する。吾妻交流センター部分もシェアオフィスにする計画だが、センタービル内の他の場所と等価交換する場合もある。 シェアオフィスの利用料は1坪(3.3平方メートル)月額1万3000円、コワーキングは1人月額1万3000円で貸し出し、5年目の想定として、シェアオフィスは9割、コワーキングは個人40人、法人20社強が利用し、貸しオフィスの利用料収入と駐車場利用料収入として年間約1億1500万円の賃料収入を想定しているとした。 まちづくり会社7つのプロジェクト まちづくり会社の出資者は、市が6000万円を出資するほか、沼尻産業、関彰商事と、AIのベンチャー企業LIGHTz(ライツ)が各3000万円を出資する。ほかに数社が出資予定で、資本金計2億円と7000万円の融資を受けて資金計2億7000万円でスタートする。ただし7000万円の融資の保証や担保等をどうするかについて市は明らかにしなかった。 社員は7人程度で、社長はまちづくり事業に精通している人を当てる、市から2人、ほかの出資会社から数人出向し、直接雇用は1~2人。経費のうち人件費(当初)は年2400万円で、市から出向の2人の人件費は市が全額負担する。年間維持管理費は計約6830万円。 地域運営会社は、つくばセンタービルでの貸しオフィス運営のほか、中心市街地全体を活性化するため、②中央公園でわくわくする場をつくる③センター広場で人がつながる場をつくる④中心市街地全域で生活に役立つ情報を発信する⑤アプリや電子看板など情報発信のベースをつくる⑥科学を遊びながら体験できるAI学習室など子供が体験する場をつくり、ゲストハウスをつくる⑦多様な住み方を支えIot住宅などシェアハウスをつくるーなど7つのプロジェクトが示されたが、具体的に、何を、いつ、いくらでつくるのかなどの事業計画は示されなかった。 1983年に建築されて以来、初めて実施されるつくばセンタービルの本格的なリニューアルについて、全体の具体案が示されたのは今回が初めてだが、五十嵐市長は25日の記者会見で住民説明会は実施しないとした。一方、市議会は12月議会最終日の同日、「つくば中心市街地まちづくり調査特別委員会」(ヘイズ・ジョン委員長)を設置した。小久保貴史議長は「(今回出された)市執行部の提案内容についてさらに情報共有しながら、内容についていろいろ協議したい」としている。来年1月中にも同調査特別委を開くという。 「活動スペースは用意する」 25日の全員協議会のやり取りは以下の通り。敬称略。 山中真弓市議 (地下駐車場の区分所有権をまちづくり会社に現物出資しないで賃貸することになったのに)駐車場料金がまちづくり会社の収入に入っているが、どういうことか。 五十嵐市長 駐車場の利用料がまちづくり会社の収入に入る。市には、駐車場をまちづくり会社に貸すお金が入る。 山中 中央公園でのプロジェクトなど7つのプロジェクトは(今回示された)まちづくり会社の収支に入っているのか。 市長 含まれない。(収支は)順次示す。ふわっとやるのではなく、経営としてやっていく。 川久保皆実市議 (シェアオフィスが9割の入居を想定している等)稼働率の根拠は何か。 市長 周辺の同様の施設やアンケートのデータを踏まえた。 川久保 子連れで働ける環境とあるが、どういうものか。 市長 保育所と同じように子供を一定時間預けて仕事に集中したり、子供を横で遊ばせながら仕事をするスペースを用意する。 川久保 機密性の高い仕事もあり、音が漏れない個室のニーズがあるのではないか。 市長 そういう場所も用意する。 川久保 子連れで働く人が利用できる子供の月齢はどれくらいからか、授乳はできるのか。 市長 まちづくり会社で検討する。 小森谷さやか市議 コロナで就業形態が変わり、つくばに移住する人が増えているということだが、どのくらい増えているのか。 市長 正確な数字は把握していない。問い合わせはある。 小森谷 まちづくり会社に(アイアイモール部分などを)いくらで貸し出すのか。 市長 固定資産税の2.5%。(収支見通しの中の)運営コストの中に入っている。これから不動産鑑定する。かなり安い金額になる。 黒田健祐市議 (7つのプロジェクトが)重要になる。体制やイメージ、どう稼いでいくのか。 市長 天下りOBのような3セクとは一線を画す。(まちづくり会社の社長には)民間で起業した経験があり、まちづくりに精通している人を代表取締役にする。会社設立の際に、一瞬、私が社長になる場合もあるが(自分は)経営はしない。 山本美和市議 日本エスコン(のクレオ)との調整だが、情報共有し、(中心市街地の活性化のため)巻き込んでいかなければならない。センター広場のエスカレーターだが、何でエスカレーターなのか。つくば市は国際会議場から中心市街地に名だたる建築家の建築が並んでいて、思いがこもっている。つくば市民だけではなく日本のまちづくりに大きな意味がある。 市長 エスコン(のクレオ)は来春オープンできると聞いており、随時情報共有している。つくばセンター地区活性化協議会にも加入してもらっている。クレオとセンタービルは双子の兄弟姉妹のようなもの。エスカレーターはセンター広場の課題の一つ、1階と2階の動線に弱さがある。どこから下りていけばいいかわからない。1階と2階を結んでいくことを重要視している。(つくばセンタービルの)意匠はできる限り継承する。(磯崎新氏から)ライブなどをやる北側の階段はさわらないで継承してほしいという意思を受けている。 山本 (リニューアル計画は)オフィスや働く人を支えるという重点が大きいと感じる。クレオの中にもオフィスは入ってくる。旧ライトオンビルも(商業ビルから)オフィスになった。さらに市がこれほど入れる必要があるのか。 市長 エスコン(のクレオ)もオフィスになるが、区画が大きい。かなり大きな企業がフロアを使う。センタービルはシェアオフィスなど区画が小さい。 山本 (センタービル周辺地域の)全体としての貸しオフィスのすみわけがどうなっているのか、概要を出してほしい。 川村直子市議 (リニューアル計画は)働く人を支える重点が大きい。全世代に役立つことが重要だ。高齢者や、リタイアして元気な人が交流するという視点はあるか。高校生の娘がいるが、つくば駅は中継点になっていて、相当数の高校生がつくば駅を通る。中高生の居場所はあるか。 市長 市民活動拠点があり、高齢者が新しい活動をしてみようという場合、最初の窓口になる。中高生のフリースペースは用意しており。300平方メートルを超えるスペースになる。中高生が勉強や自習をしたり、若者が活動するスペースは用意する。 川村 高齢者が働くこと(を支援すること)も検討してほしい。中高生はフリースペース、勉強部屋を用意するだけでなく、居場所となるような、親や教師と違う大人と話をする場という視点も必要だ。 橋本佳子市議 中心市街地を活性化する団体の形態として、調整する機能と実行する機能があり、人やコトをつなぐコーディネート、専門組織が必要とある。(改選前の)中心市街地まちづくり調査特別委員会の中では、プロジェクト2のわくわくする場をつくる、プロジェクト3の人がつながる場をつくるとなるが、(今回のセンタービルのアイアイモールを改修してつくる)働く場は、それとぷつっと切れる。AI学習室とかいろいろな近未来的なものをつくるのか、会社として(貸しオフィスを)運営していくのか、にぎわい、わくわくするものをつくるのか。 市長 (会社として運営するのかという質問は)順番が逆。市民のニーズを満たし、ビジョンや戦略を実現する事業を行う中で収益を上げる。市民ニーズを満たす中で、どのような事業があるか精査して、まちづくりに資する事業を行い、適正な利益を確保する。まちのために事業がある、経営のためにあるのではない、 橋本 (イノベーションプラザ部分の)市民が活動する場についてだが、(市民には)さまざまな人がおり、高齢者や障害者も活動できる場を増やしていかなくてはならない。市民が活動する場と、働く人の場の比率をもう少し考えられないか。 市長 ニーズとして(オフィスの)スペースが必要。高齢者や、企業や研究所で働いた人が、市民活動の場から流れて働く場につながっていくこともある。障害者がフリースペースを使ってイベントを開催したり、市民活動と働く場を切り離すのではなく、副次的に、働く場がリタイア後の活動の場になる。 浅野英公子市議 人件費が2400万円ということだが内訳はどうか。男女共同参画センターをつくってほしい。新しいスペースを生かして(男女共同参画の)展示、相談機能をもたせることを実現してほしい。 市長 人件費はプロパー社員の人件費と、出資会社から出向する社員の一部を負担する。男女共同参画センターは(リニューアルにあたって)最後まで検討したが、DVなど難しい相談が多い状況なので人目に付くとかえって活用はしぼんでしまうので、市役所の中で対応していく。

つくば市のLIGHTzなど2社 ジェトロ事業に採択

【山崎実】日本貿易振興機構(ジェトロ)茨城は、海外サプライチェーン(供給連鎖)多元化支援事業に、県内からつくば市のAI企業、LIGHTz(ライツ、乙部信吾社長、つくば研究支援センター内)と、小美玉市のヨコハマモールドの2事業者を採択したと発表した。 この事業は、新型コロナ感染拡大に伴い、国内サプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)さが顕在化したことから、アジア地域における生産多元化などにより分断リスクを低減し、持続可能な供給体制を確立すると共に、日本とASEAN(東南アジア諸国連合)の経済産業協力関係を強化するのが目的。 具体的には、ASEANなどの地域で、海外生産拠点の多元化を図るため、設備導入補助、実証事業、事業実施可能性調査の3つの事業に係る経費の一部を補助する。公募により採択事業を決定した。 つくば市のLIGHTzは第2回公募に申請、64件から21件が採択された。タイで、ものづくりに関する熟達者思考AI(人工知能)を活用したサプライチェーン高度化の実施可能性調査を行う。小美玉市のヨコハマモールドは、第3回公募(設備導入補助型)採択30件の1つ。タイでタイヤ生産用金型の整備導入補助を受ける。 新型コロナのASEANサプライチェーン強靭(きょうじん)化プロジェクトに、県内事業者2社が採択されたことは、産業振興だけでなく、企業の海外進出活動の面からも期待されている。

1階の旧飲食店街はオフィスに つくばセンタービル改修計画 屋根は取り止め

【鈴木宏子】議会からも市民からも十分な説明がないと批判がある、つくばセンタービル(同市吾妻)のリニューアル計画について、4日、市議会全員協議会が開かれ、五十嵐立青市長はリニューアル計画概要を説明した。旧レストラン街の1階アイアイモールを働く場を支援するオフィスとし、現在のつくばイノベーションプラザ1~3階は新たな市民活動拠点とする配置イメージが示された。 一方、センター広場にドーム型屋根をとりつける計画は取り止めになった。屋根は、市が6月にホームページで「リニューアルの方向性案」を示した時点では、雨天時にもイベントが開催できるように計画されていた、市学園地区市街地振興室によると、屋根の計画に対してはさまざまな意見が市に寄せられたことなどから「デザインに配慮し取り止めた」という。同センタービルは、2019年に建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した建築家、磯崎新氏の代表作の一つで、ポストモダン建築の代表作。 リニューアル計画によると、もともとはレストラン街だったが現在はすべての飲食店が撤退した1階アイアイモール約2500平方メートルは、働く人を支援する場とし、コワーキングスペース、テレビ会議ブース、シェアオフィスなどを整備する。子連れ出勤のサポートなど多様な働き方を支える場とし、来年3月に市と民間企業が出資して設立する予定のエリアマネジメント会社(まちづくり会社)が運営する。 新たな市民活動拠点となる、つくばイノベーションプラザ部分の1~3階約2800平方メートルには、吾妻交流センター、市民活動センター、国際交流センター、消費生活センターを集めるほか、市役所の駅前市民窓口をつくる。各センターの事務スペースのほか、現在、吾妻交流センターにある会議室、音楽室、調理室などを整備する。さらに300平方メートルを超えるフリースペースをつくり図書コーナーを設置したり、現在1階にあるノバホールの小ホールを2階に移してさまざまな利用ができるホールに改修する。 ほかに、センター広場の周囲に、2階ペデストリアンデッキから1階の広場に行けるエスカレーターを2基つけたり、センター広場の破損箇所を改修したり、イベントが開催しやすいよう電源盤を増設などする。 事業費は市が直接工事をする部分として、新たな市民活動拠点の整備が約3億3000万円、エスカレーターの設置やセンター広場の破損箇所改修などが5億7000万円の計約9億円。設計費用約1億3300万円を合わせると計約10億3800万円になる。 市は今年6月時点で整備費を約9億9000万円としていた。屋根の取り付けがなくなったのに事業費がほぼ変わらない理由について同室は、老朽化しているセンター広場の破損箇所などを改修するためとしている。一方、オフィスとする予定のアイアイモールの改修は、新たに設置されるエリアマネジメント会社が行うという。 今後のスケジュールは、来年3月までに基本計画と基本設計を策定、2021年度に実施設計をし、22~23年に改修工事を実施する。リニューアルオープンは23年度中の予定。工事は段階的に実施するため、吾妻交流センターや市民活動センターが閉鎖されることはないという。 現在4階にある吾妻交流センターを移設した跡地の活用についてはまだ決まっておらず、区分所有権を交換するか、働く場を支援する場として活用するかなどを検討している。 一方、だれがどのように運営するかや収支計画などがいまだに公表されていないエリアマネジメント会社の概要については、今月25日までの12月議会会期中に再度、全員協議会を開いて、議会に説明するとした。 「屋根取り止め さすがだが、進め方に不安」 つくばセンタービルをテーマにドラマを制作したことがあるつくば市在住の脚本家、冠木新市さんは「屋根の計画が取り止めになったと聞いて、さすがつくば市には良心があると感じた。これで世界に対して恥ずかしくない。ただ気になるのはこれまでの進め方だが、改修について情報がきちんと出されていない。これからもこんな進め方なのか不安が残っていたが、市長は広報に力を入れると言っているので、今後はそういうことがないと期待したい」と話す。 ◆リニューアル計画は、新型コロナの外出自粛要請終了後から28日まで、つくば駅前のBiviつくばイベントスペースでオープンハウスを開いて市職員が説明し市民の意見を求める。現時点で市民説明会を開催する予定はない。 ➡つくばセンタービルの過去記事はこちら ➡つくば市中心市街地の過去記事はこちら

高齢化団地で振興事業、2駅周辺でシェアサイクル つくば市長が2期目所信

【鈴木宏子】改選後初のつくば市議会12月定例会が3日開会し、五十嵐立青市長は2期目の所信を表明した。高齢化が進む住宅団地で周辺市街地振興事業を横展開するとしたほか、つくば駅と研究学園駅周辺でシェアサイクルを導入するなどと表明した。一方、課題の中心市街地活性化や旧総合運動公園用地について新たな言及はなかった。 まず新規感染者が急増している新型コロナウイルス感染拡大対策について、市役所窓口でのデジタル手続きを推進するほか、健康体操教室を通した高齢者の体力づくり支援、地元企業からの相談体制強化など、きめ細やかに取り組んでいくとした。 まちづくりについては、1期目に実施した、旧町村の旧市街地8地区などでの活性化協議会設立や市内外から地域活性化プランを募るコンペなどの取り組みを、他の周辺地域や住民が減少している住宅団地などにも横展開していくと強調した。 一方、中心市街地活性化については、つくばセンタービルをリニューアルして新たな市民活動拠点、市民窓口、多様な働き方を支える場を整備し、中心市街地を活性化する主体となるまちづくり会社を立ち上げるとするにとどまり、改選前の9月議会で指摘があった、まちづくり会社をだれが、どのように運営するか、収支は見合うのかなどについて言及はなかった。 1期目に「総合運動公園問題の完全解決」を最大公約に掲げながらも方向性を示すことができなかった旧総合運動公園用地については、「市民や議会の意見を聞きながら、市にとって必要な方向性について、財政面での実現可能性とも合わせてできるだけ早い段階で決定したい」とするにとどめた。 陸上競技場の整備についても、議会や有識者会議の意見を聞きながら進めていくとするにとどめた。一方、廃校跡地を活用して文化芸術拠点を整備するとし、インフラ整備では多発する災害に備え防災倉庫を含めた拠点の整備を進めるとした。 ほかに、自転車利用の促進について、つくば霞ケ浦りんりんロードがナショナルサイクルルートに指定されサイクリングを楽しむ機運が高まっているとして、旧筑波東中跡地などの廃校を活用して、りんりんロードから立ち寄ることができる自転車の拠点を整備すると表明したほか、つくば駅や研究学園駅周辺でシェアサイクルを導入するとした。 子育て環境の整備では、子供の医療費助成について、現在、高校生は入院費用のみ助成しているマル福を、高校生の外来診療まで拡大するとした。 教育では、今後5年間でTX沿線に、香取台地区小学校、研究学園小中学校、みどりの南小中学校(学校名はいずれも仮称)を整備するとし、エアコン整備について、小中学校の特別教室や児童館のプレイルームにも拡大するとした。 福祉ではほかに、高齢者憩いの広場の整備推進や、筑波大と連携して取り組む児童発達支援センターの開設などを進めていくとした。

《ひょうたんの眼》32 コロナ感染対策 今の選択肢

【コラム・高橋恵一】冬季のインフルエンザ流行と重なると恐れられていた第3波の新型コロナ感染拡大の様相があらわになって来た。欧米や東アジアでの再感染拡大と軌を一にしており、さらに本格的な対策が必要である。しかし驚くべきことに、今日に至っても我が国の検査体制、医療体制の不足が報告され、従事者は極限に達している。 新型コロナ感染の情報を察知したのが1月。一斉休校や緊急事態宣言などを経ながら、5月中旬になると、医学的にも、論理的にも、有効な対策の方向も見いだせず、右往左往しているうちに、運よく落ち着いた。当然、次の感染拡大に向けて、医療体制、感染防止対策の万全を期すことと、感染拡大によって引き起こされた収入減と雇用崩壊の救済策が最重点策であった。 一方、経済対策としてGoToキャンペーンを推進し、観光や飲食業界へのテコ入れ、人々の消費マインドの振興のための補助金の給付、ポイント還元などの実質的値引き支援などが実施されているが、何よりも、コロナ感染の恐怖と不自由を抱えたままで経済活動が回復するとは思えない。 もともと、我が国の経済不振は、コロナショックで始まったわけではない。1990年代のバブル崩壊後、不況が繰り返され、失われた20年を取り返すとしてアベノミクスを推進したが、効果が無く、失われた30年へまい進している。個人消費が回復しないのだ。税の優遇策はなどで大企業の業績を上げれば、トリクルダウンして広く個人所得も増大するなどというのは、妄想だということが明らかになった。むしろ、個人所得の格差は拡大するばかりだ。 医療体制を立て直し国民生活の安定を図れ 多くの分野でIT化デジタル化が進み、業務の効率化が図られたが、その成果は、労働時間の短縮、休暇の拡大など労働環境の改善に向けず、雇用人員の削減につなげてしまった。公務員の世界でも、アウトソーシングの拡大により正規職員を削減した。働き方改革などの掛け声の下で、これらの流れが非正規職員の拡大、不安定な雇用の拡大になり、この点でも低所得層が増えてしまった。 また、高齢化社会の進展により増額が当然なのに、社会保障負担の抑制を図り、医療介護費の増額を抑えた結果、その分野に働く人たちの賃金を低水準にしてしまい、慢性的な人手不足が続いている。 個人消費を改善するには、低所得層の所得、賃金を上げることだ。医療も介護も政府が従事者の給与額をコントロールできる職種であり、年金や生活保護費、雇用保険の拡充なども政府が決定できるのだ。ベーシックインカムも検討する。もともと足りない所得層にカネが回れば、消費にまわる率が高く、経済の好循環が実現するのだ。 コロナ感染の中で、エッセンシャルワーカーの頑張りを称賛したりしても、賃金などの改善が無ければ、長続きしない。長期的な格差社会の是正を目標に置きながら、医療体制を立て直し、国民の生活の安定を図ることが、新型コロナ感染の現状で選択すべき道であろう。(地図好きの土浦人)

《ひょうたんの眼》32 コロナ感染対策 今の選択肢

【コラム・高橋恵一】冬季のインフルエンザ流行と重なると恐れられていた第3波の新型コロナ感染拡大の様相があらわになって来た。欧米や東アジアでの再感染拡大と軌を一にしており、さらに本格的な対策が必要である。しかし驚くべきことに、今日に至っても我が国の検査体制、医療体制の不足が報告され、従事者は極限に達している。 新型コロナ感染の情報を察知したのが1月。一斉休校や緊急事態宣言などを経ながら、5月中旬になると、医学的にも、論理的にも、有効な対策の方向も見いだせず、右往左往しているうちに、運よく落ち着いた。当然、次の感染拡大に向けて、医療体制、感染防止対策の万全を期すことと、感染拡大によって引き起こされた収入減と雇用崩壊の救済策が最重点策であった。 一方、経済対策としてGoToキャンペーンを推進し、観光や飲食業界へのテコ入れ、人々の消費マインドの振興のための補助金の給付、ポイント還元などの実質的値引き支援などが実施されているが、何よりも、コロナ感染の恐怖と不自由を抱えたままで経済活動が回復するとは思えない。 もともと、我が国の経済不振は、コロナショックで始まったわけではない。1990年代のバブル崩壊後、不況が繰り返され、失われた20年を取り返すとしてアベノミクスを推進したが、効果が無く、失われた30年へまい進している。個人消費が回復しないのだ。税の優遇策はなどで大企業の業績を上げれば、トリクルダウンして広く個人所得も増大するなどというのは、妄想だということが明らかになった。むしろ、個人所得の格差は拡大するばかりだ。 医療体制を立て直し国民生活の安定を図れ 多くの分野でIT化デジタル化が進み、業務の効率化が図られたが、その成果は、労働時間の短縮、休暇の拡大など労働環境の改善に向けず、雇用人員の削減につなげてしまった。公務員の世界でも、アウトソーシングの拡大により正規職員を削減した。働き方改革などの掛け声の下で、これらの流れが非正規職員の拡大、不安定な雇用の拡大になり、この点でも低所得層が増えてしまった。 また、高齢化社会の進展により増額が当然なのに、社会保障負担の抑制を図り、医療介護費の増額を抑えた結果、その分野に働く人たちの賃金を低水準にしてしまい、慢性的な人手不足が続いている。 個人消費を改善するには、低所得層の所得、賃金を上げることだ。医療も介護も政府が従事者の給与額をコントロールできる職種であり、年金や生活保護費、雇用保険の拡充なども政府が決定できるのだ。ベーシックインカムも検討する。もともと足りない所得層にカネが回れば、消費にまわる率が高く、経済の好循環が実現するのだ。 コロナ感染の中で、エッセンシャルワーカーの頑張りを称賛したりしても、賃金などの改善が無ければ、長続きしない。長期的な格差社会の是正を目標に置きながら、医療体制を立て直し、国民の生活の安定を図ることが、新型コロナ感染の現状で選択すべき道であろう。(地図好きの土浦人)

コロナ禍、資金供給最大に 筑波銀行中間決算

【鈴木宏子】筑波銀行(本店 ・土浦市、生田雅彦頭取)は13日、2021年3月期第2四半期決算を発表した。新型コロナに見舞われた半年間(20年4~9月)について、中小企業への貸出金が前年度末と比べ501億円増加するなど、預金、貸出金ともに中間期ベースの1年間の増加額としては、同行誕生(2010年)以来、最大となった。 預金は、個人の特別定額給付金(1人10万円)の入金のほか、地元中小企業の手元資金確保などにより大幅に増加し、前年度末比1427億円増の2兆3944億円になった。貸出金は、コロナ関連融資に力を注いだ結果、中小企業貸出金が前年度末比501億円増の7021億円、貸出金全体でも同比621億円増の1兆7478円となった。 貸出金は業種に関係なく万遍なく増えているという。一方、コロナ倒産は現時点で限定的だとしている。 生田頭取は「第1フェーズが(地元中小企業への)資金供給だとすると、資金供給のピークは過ぎた。これから第2フェーズとなる」とし、「これだけ膨らんだ融資を(企業は)今後、返済しなくてはいけないが、(収益が)元に戻っただけでは返済できない。元に戻して、プラスアルファの超過収益を得るためにどうしていけばいいかを一緒に考えないといけない」「販路拡大、業態転換、事業継承支援など、超過収益が得られるようビジネスモデルをつくらないといけない。できることはたくさんあるので、いろいろな手段を使いながらお客さんと向き合っていきたい」などと話した。 第2四半期の業績(連結)は、銀行本来の業務の収支である業務粗利益は、投資販売手数料や法人関連手数料の増加により役務取引利益は増加したが、有価証券利息配当金の減少により資金利益が減少したことなどから前年同期比12億2500万円減の141億800万円となった。 銀行の通常の活動から生じた利益を表す経常利益は、営業経費や与信関係費用の減少に加え、株式関係損益も改善したが、業務粗利益の減少により、前年度期比5700万円減の13億6500万円となった。

《ひょうたんの眼》31 成長戦略はデジタル化でよいのか?

【コラム・高橋恵一】アベノミクスによる景気の好循環や女性活躍社会など掛け声倒れの長期政権が終了し、新政権がスタートした。政権への諸疑問に対する納得いく説明もないまま。 新首相は、国民に「自助、共助、公助、絆」を呼びかけ、コロナ対策と景気回復を重要目標に、戦略目標としてデジタル化と規制改革を掲げ、具体的施策として、少子化対策のための不妊治療補助と業務の効率化のための「はんこ」廃止を打ち出した。 前首相は、少子高齢化を「国難」と言い放ったが、少子化も高齢化も人類が生活水準の高度化とともに迎える現象であって、長寿をいかに前向きに受け止めて社会経済の仕組みを構築していくか、少子社会で安心して産み育てる環境を整えるかであろう。医療福祉、教育、経済など、こちらも多面的な対策が求められている。不妊治療への保険適用に続いて、その数百倍以上の予算規模の少子高齢化対策は打ち出されるのだろうか。 「はんこ」の役割は、本人の意思確認、案件への同意・承認、権威の証明などであろう。特に、同意承認は、組織の意思決定の過程で膨大な作業になっている。しかし、本来、多数の承認が必要なのだろうか? 私の経験でも、稟議(りんぎ)書に10人以上の印が押されて決済を求められた経験があるが、押印者の1人に、案件の説明と意見を聴くと、内容を理解していない場合が多かった。 意思決定に責任を持って対応する人間だけに絞ればよいだけだ。「はんこ」を止める以前に、はんこを押す人数を減らすことが先だ。最前線、現場の実務者に、権限と責任を持たせることが真の改革であろう。 IT化で利益を得るのは誰か? デジタル化の推進が新政権の最重点とされ、今般の新型コロナ感染対策でも、デジタル化の遅れが悪影響したといわれている。国際的にも遅れを挽回するため、デジタル庁を新設して推進するのだという。具体的には、マイナンバーカード登録を、2022年までには100%にするとか、キャッシュレス化も100%を目指すのだろう。 ところで、私の手伝っている「いのちの電話」(自殺予防のため24時間体制の電話相談)では、SNSでの相談事業も始めるが、SNS管理事業者に、登録料30万円と、月額10万円の管理料を払うことになった。 相談員は無償のボランティア、事務局は最低賃金ぎりぎりの非常勤。収入源は、有志の企業や個人の寄付金という事業である。また、小さな駅前の床屋さんは、老婦人1人で営業しているが、カード会社への登録料とキャシュレス決済の手数料が5%かかるので、お客さんの強い要請がないときは、現金決済にしてもらっているという。 IT化、デジタル化、キャシュレス化の進展で、膨大な利益を得られるのは誰なのか? マイナンバーカード登録が100%になったら、システム管理会社は10%登録時の10倍以上の収入増になるのだろう。政府肝いりの目玉政策は、御用業者の稼ぎと連動することになる。 コロナ対策と言いながら、持続化給付金やGOTOキャンペーンの事業請負業者の手数料など、コロナショックで困っている人の支援なのか、便乗業者への利益供与なのか、なんともいやらしい事態の展開である。(地図好きの土浦人)

《ひょうたんの眼》31 成長戦略はデジタル化でよいのか?

【コラム・高橋恵一】アベノミクスによる景気の好循環や女性活躍社会など掛け声倒れの長期政権が終了し、新政権がスタートした。政権への諸疑問に対する納得いく説明もないまま。 新首相は、国民に「自助、共助、公助、絆」を呼びかけ、コロナ対策と景気回復を重要目標に、戦略目標としてデジタル化と規制改革を掲げ、具体的施策として、少子化対策のための不妊治療補助と業務の効率化のための「はんこ」廃止を打ち出した。 前首相は、少子高齢化を「国難」と言い放ったが、少子化も高齢化も人類が生活水準の高度化とともに迎える現象であって、長寿をいかに前向きに受け止めて社会経済の仕組みを構築していくか、少子社会で安心して産み育てる環境を整えるかであろう。医療福祉、教育、経済など、こちらも多面的な対策が求められている。不妊治療への保険適用に続いて、その数百倍以上の予算規模の少子高齢化対策は打ち出されるのだろうか。 「はんこ」の役割は、本人の意思確認、案件への同意・承認、権威の証明などであろう。特に、同意承認は、組織の意思決定の過程で膨大な作業になっている。しかし、本来、多数の承認が必要なのだろうか? 私の経験でも、稟議(りんぎ)書に10人以上の印が押されて決済を求められた経験があるが、押印者の1人に、案件の説明と意見を聴くと、内容を理解していない場合が多かった。 意思決定に責任を持って対応する人間だけに絞ればよいだけだ。「はんこ」を止める以前に、はんこを押す人数を減らすことが先だ。最前線、現場の実務者に、権限と責任を持たせることが真の改革であろう。 IT化で利益を得るのは誰か? デジタル化の推進が新政権の最重点とされ、今般の新型コロナ感染対策でも、デジタル化の遅れが悪影響したといわれている。国際的にも遅れを挽回するため、デジタル庁を新設して推進するのだという。具体的には、マイナンバーカード登録を、2022年までには100%にするとか、キャッシュレス化も100%を目指すのだろう。 ところで、私の手伝っている「いのちの電話」(自殺予防のため24時間体制の電話相談)では、SNSでの相談事業も始めるが、SNS管理事業者に、登録料30万円と、月額10万円の管理料を払うことになった。 相談員は無償のボランティア、事務局は最低賃金ぎりぎりの非常勤。収入源は、有志の企業や個人の寄付金という事業である。また、小さな駅前の床屋さんは、老婦人1人で営業しているが、カード会社への登録料とキャシュレス決済の手数料が5%かかるので、お客さんの強い要請がないときは、現金決済にしてもらっているという。 IT化、デジタル化、キャシュレス化の進展で、膨大な利益を得られるのは誰なのか? マイナンバーカード登録が100%になったら、システム管理会社は10%登録時の10倍以上の収入増になるのだろう。政府肝いりの目玉政策は、御用業者の稼ぎと連動することになる。 コロナ対策と言いながら、持続化給付金やGOTOキャンペーンの事業請負業者の手数料など、コロナショックで困っている人の支援なのか、便乗業者への利益供与なのか、なんともいやらしい事態の展開である。(地図好きの土浦人)

3氏の横顔紹介 つくば市長選

【鈴木宏子】任期満了に伴うつくば市長選と市議選は25日投開票される。市長選に立候補した新人の富島純一氏(37)=無所属=、現職の五十嵐立青(42)氏=同=、新人の酒井泉(71)=同=3氏の横顔を紹介する。 事業成長の秘訣は「素直に聞き、信じて任せる」 【富島純一氏】22歳のときつくばで起業し、現在、自動車販売、障害福祉、保育・学童、農業など幅広い事業を展開する。経営に携わるグループ企業は14社。140人以上の社員を抱える。 コロナ禍の今年、苦境にあるつくばの飲食店に呼び掛け、県内で初めて、ドライブスルー型弁当販売イベントを仕掛け成功させた。 土浦市生まれ。10代のころヤンチャし、中学を出て父の仕事を手伝った。父の会社が倒産、16歳で一人暮らしを始め、土木建築や塗装の仕事をして自立した。 18歳を過ぎたころ、ネクタイを締める仕事に就きたいと思ったが、中卒という学歴がネックになった。 姉の死をきっかけに心機一転。仕事に就けないなら自分で会社をつくろうと思い立ち、22歳で中古車販売会社を起業した。 成功の秘訣を「(自身の)素直さ」だと話し、「分からないところは聞いて、人に仕事を任せたら信じて任せ」てきたと振り返る。 本業のほか、若手経営者の異業種交流会を立ち上げたり、県立八千代高校の臨時派遣教員として講演したり、少年院を出た少年たちの就労支援にも尽力する。 座右の銘は、明治生まれの哲学者で教育者、森信三の「人生二度なし」。信三は「職業に上下もなければ貴賤もない。世のため人のために役立つことなら、何をしようと自由である。しかし、どうせやるなら覚悟を決めて10年やる…」と説いた人物だ。 家族は、妻と息子2人の4人。早朝の2時間が自分の時間で、朝起きて半身浴をしながら1日のスケジュールを確認する。2歳の長男を保育園に送迎するのが日課という。 留学先で衝撃「目の前にいる人に何ができるか」 【五十嵐立青氏】筑波大学大学院在学中、26歳で最年少の市議となり、2期務めた後、2012年に市長選に初挑戦した。当時の現職に次点で敗れたが、総合運動公園問題が浮上した15年、住民投票運動の中心的役割を果たした1人だ。翌年の市長選で、幅広い議会会派や市民に推され初当選を果たした。 政治家を志したきっかけを、留学先での体験だったと振り返る。 4年のとき大学を1年休学し、スコットランドのグラスゴーに留学した。かつて工業地帯だった街だ。留学先で熱を出し病院で診察を待っていたとき、目の前に座っていた母親が、ぐずる娘を殴った。自分が殴られたようにショックを受けた。 当時大学で安全保障を学び外交官の仕事に引かれていた。「目の前にいる子供の安全が保障されていなかった。殴った母親も自分の安全が保障されてなかったからだと思う。目の前にいる1人の人間の安全を保障することが先だと思った」と当時の体験を振り返る。 「目の前にいる人に何ができるかを考える場所にいたい、そういう思いはグラスゴーのときと変わってないし、今の方が強くなっている」と話す。 つくばに戻り、志を遂げようと市議に挑戦した。市議の仕事と大学院の勉強をこなしながら、企業組織向けコーチング事業を展開する会社のプログラムを受けてコーチの資格をとり、2008年にコーチングオフィスを設立。2010年には障害のあるスタッフが働く農場を運営するNPO法人を設立した。 母親は元つくば市議。家族は、内閣府職員の妻と3男1女の6人。家事は、妻が料理、子供が皿洗い、自身は洗濯を担当しているという。 心を空っぽにするため毎朝15分程度、瞑想している。コロナで飲み会がなくなり6キロやせたと話す。 沿線開発見直し つくばの屋敷林守られた 【酒井泉氏】高エネルギー加速器研究機構の元研究者。TX沿線開発区域の地権者の1人としてまちづくりに関わり、中根・金田台地区で緑地と菜園と住宅が一体となった緑農住一体型住宅を提唱する。 研究者として、放射性廃棄物を無毒化する研究を行っていた。素粒子を使って核交換し短寿命化する方法だ。「ミューオンを使う核交換は将来有望で、原理的には可能。埋設処分は反対。何万年も地面に埋めるきれるものじゃない」という。 高エネ研では、2008年から稼働を開始した東海村の大強度陽子加速器J-PARC(ジェイパーク)の設計に、計画段階から中心メンバーの1人として関わった。陽子ビームを直線型加速器から円形型加速器に入れる装置は酒井さんの設計だ。独創的なアイデアで、当時は別の方法が検討されていたがひっくり返したという。 つくばのまちづくりには関わったのは、TX沿線開発がスタートする30年前から。バブル景気真っただ中だった1990年代始め、当初、県などから示されたつくば市の沿線開発区域は、集落も屋敷林も含めた計2000ヘクタールを開発するという計画だった。 つくばの屋敷林を全部つぶして何が残るのか。もう一回まちづくりを考え直そうと、「区画整理事業の改革について」という論文を書き、開発区域の見直しを提唱した。谷田部地区など他地区の地権者と協力し、開発区域は2000ヘクタールから1300ヘクタールに削減された。つくばの屋敷林がこうして守られた。 現在は中根・金田台地区の地権者らでつくる桜中部まちづくり協議会の副会長を務める。 家族は、97歳の母親と妻、長男夫婦の7人。趣味は剣道と山登り。剣道は6段の腕前だ。

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