金曜日, 3月 29, 2024
ホーム検索

筑波大学 -検索結果

If you're not happy with the results, please do another search.

次世代の担い手育成「里山体験プログラム」《宍塚の里山》110

【コラム・田上公恵】里山の保全活動においては後継者不足が大きな課題となっています。持続可能な里山保全を目指すために、当会では2022年度より、広く若者が参加できる「里山体験プログラム」を開始しました。3月の募集と同時に社会人や大学生に応募していただき、人気の企画となっております。 4月に開講式を行い、1年間当会に所属して、保全活動や環境教育、観察会などを体験しながら里山の意義と保全、資源循環、生物多様性、NPOの運営と意義などを学びます。そこに経験豊かな専門家集団がていねいに寄り添って指導に当たります。既定の単位を満たした場合、理事長名の修了証書を授与しており、22年度と23年度はそれぞれ5名の社会人、大学生、大学院生を受入れました。未来の担い手が少しずつ育っていることを大変うれしく思います。 参加者の満足度は高く、里山での体験活動を仕事に生かす社会人、筑波大学の体験活動の単位認定に取り組む学生―それぞれご自分の目標を目指して熱心に履修しています。プログラム生の中には自分の専門性を高めるために月例観察会の講師を希望した大学院生もいます。 人と人、自然と人がつながる場所 以下、1年間の体験を通して寄せられたプログラム生の感想です。 ▽自然を体感できるところ、地域とのつながりや文化・歴史を学べるところ、様々な年代の方と関わり、詳しい資料配布などが非常にためになりました。 ▽広いヤードがあり、様々なプログラムがあるところが非常によいと思います。 ▽見つけた生き物や体験した作業について、詳しい方から解説をいただけることが多く、その場限りの体験ではなく、学びにつなげられるところがよかったです。 ▽単に参加者として関わるのではなく里山の一員として活動に関われること、1人ひとりのやりたいことや得意なことを活動の中で実現してくださること―がよかったです。 ▽体験プログラム参加者はみんな生き生きとしていて、お互いに助け合うこともあって、自然の中で多くの方々と関わりながら活動できたのがよかったです。 ▽様々なプログラムを通して、多面的に里山を観察・体験できたことがよかったです。 ▽特定のボランティアだけでなく、一般の方が参加できるプログラムが多く、活動を通して日常的に里山の意義をアピールできることはとても大切なことだと感じました。 ▽以前よりも、里地里山という地に貢献したいと思うようになりました。 ▽保全活動を継続して実施していくことの大変さをひしひしと感じています。 ▽里山は、単に生き物がたくさんすんでいる自然というだけでなく、「人と人とがつながる場所」と思いました。 ▽「人と自然がつながる場所」だと感じました。活動全体を通して、幼児からお年寄りまで、様々な世代が集って自然の恵みを感じる場所だなと感じました。(宍塚の自然と歴史の会 環境教育部)

次世代の担い手育成「里山体験プログラム」《宍塚の里山》110

【コラム・田上公恵】里山の保全活動においては後継者不足が大きな課題となっています。持続可能な里山保全を目指すために、当会では2022年度より、広く若者が参加できる「里山体験プログラム」を開始しました。3月の募集と同時に社会人や大学生に応募していただき、人気の企画となっております。 4月に開講式を行い、1年間当会に所属して、保全活動や環境教育、観察会などを体験しながら里山の意義と保全、資源循環、生物多様性、NPOの運営と意義などを学びます。そこに経験豊かな専門家集団がていねいに寄り添って指導に当たります。既定の単位を満たした場合、理事長名の修了証書を授与しており、22年度と23年度はそれぞれ5名の社会人、大学生、大学院生を受け入れました。未来の担い手が少しずつ育っていることを大変うれしく思います。 参加者の満足度は高く、里山での体験活動を仕事に生かす社会人、筑波大学の体験活動の単位認定に取り組む学生―それぞれご自分の目標を目指して熱心に履修しています。プログラム生の中には自分の専門性を高めるために月例観察会の講師を希望した大学院生もいます。 人と人、自然と人がつながる場所 以下、1年間の体験を通して寄せられたプログラム生の感想です。 ▽自然を体感できるところ、地域とのつながりや文化・歴史を学べるところ、様々な年代の方と関わり、詳しい資料配布などが非常にためになりました。 ▽広いヤードがあり、様々なプログラムがあるところが非常によいと思います。 ▽見つけた生き物や体験した作業について、詳しい方から解説をいただけることが多く、その場限りの体験ではなく、学びにつなげられるところがよかったです。 ▽単に参加者として関わるのではなく里山の一員として活動に関われること、1人ひとりのやりたいことや得意なことを活動の中で実現してくださること―がよかったです。 ▽体験プログラム参加者はみんな生き生きとしていて、お互いに助け合うこともあって、自然の中で多くの方々と関わりながら活動できたのがよかったです。 ▽様々なプログラムを通して、多面的に里山を観察・体験できたことがよかったです。 ▽特定のボランティアだけでなく、一般の方が参加できるプログラムが多く、活動を通して日常的に里山の意義をアピールできることはとても大切なことだと感じました。 ▽以前よりも、里地里山という地に貢献したいと思うようになりました。 ▽保全活動を継続して実施していくことの大変さをひしひしと感じています。 ▽里山は、単に生き物がたくさんすんでいる自然というだけでなく、「人と人とがつながる場所」と思いました。 ▽「人と自然がつながる場所」だと感じました。活動全体を通して、幼児からお年寄りまで、様々な世代が集って自然の恵みを感じる場所だなと感じました。(宍塚の自然と歴史の会 環境教育部)

自立生活通し街が変わる 柴田大輔記者、障害者たちの挑戦つづる つくば

つくば市の障害者自立生活センター「ほにゃら」(同市天久保、川島映利奈代表)の歩みをつづった「まちで生きる まちが変わるーつくば自立生活センターほにゃらの挑戦」(夕書房発行、B5判、271ページ)が9日出版された。著者は、土浦市出身の写真家でNEWSつくばライターでもある柴田大輔記者(43)。 障害を持つ人々が施設や家庭を離れ、自分たちの住む地域で、自分の意志に基づいて介助サービスを活用しながら生活を営む「自立生活」がテーマで、四半世紀にわたり、共に支え合うインクルーシブ(包摂的)な地域社会づくりに挑戦してきた歴史が記されている。 柴田記者は現在、写真家およびジャーナリストとして活動しながら、介助者として、ほにゃらでも活動している。 障害者の自立生活運動は1960年代のアメリカで始まったとされる社会運動だ。重度な障害を持つ当事者たちが自分たちの手でセンターを運営し、障害を持つ人たちの「自立」をサポートすることが中核的な理念だ。当時日本で盛んだった日本脳性まひ者協会「青い芝の会」の運動の流れを部分的に引き継ぎ、80年代から日本でも広がりを見せた。脳性まひやALS(筋萎縮性側索硬化症)など重度身体障害を持つ人々を中心に、各地で自立生活センターが設立されていき、現在は全国に100程度の自立生活センターがある。つくば市のほにゃらは2001年に設立された。現在代表を務める川島映利奈さんや、ほにゃら創設者の一人で、現在も事務局長として活動をけん引する斎藤新吾さんも24時間の介助を必要とする。 著者の柴田記者は「つくばの人たちに読んでほしい。『筑波研究学園都市』という計画された都市の歴史に、障害のある人たちがまちをつくってきたという歴史があることを知ってもらいたい」と話す。 コロナ禍、仕事が激減し介助者に 柴田記者は20代のころに「写真と旅に夢中に」なり、写真ジャーナリストとして中南米の人びとの暮らしを撮影してきた。「半年間バイトの掛け持ちをして資金を貯めては、中南米、特にコロンビアに渡航するという暮らしをずっと続けてきた」という。そんな柴田記者が障害者の自立生活運動に出会ったのは2016年のこと。2年間ほどコロンビアで過ごし帰国した柴田記者は、都内の月3万円のシェアハウスに入居し、すさんだ生活をしていた。そこで東京都大田区で知的障害者の生活を支援するNPO風雷社中の代表、中村和利さんに出会い、障害者の外出や日常生活を支援するガイドヘルプの活動を行うようになった。18年、柴田記者は結婚を機に茨城に戻り、ほにゃらと出会った。同年10月に筑波大学で催されたほにゃらの「運動会」に写真撮影のボランティアに行くことになった。そこで見たのが障害のあるなしに関わらず、皆が楽しむことができる運動会の姿だった。しかしこの時は「障害者の自立生活運動について深く理解していたわけではなかった」と振り返る。20年、新型コロナ禍の影響で写真やライターの仕事が激減した柴田記者は、ほにゃらの介助者として活動を始める。「自立生活や介助、その運動の奥深さにそこで初めて出会った」という。21年秋、柴田記者は、ほにゃらの障害者と関わる地域の人々を撮影した写真展を、つくば市民ギャラリーで開いた。写真展をきっかけに、つくば市松代の出版社「夕書房」の高松夕佳さんと出会い出版が決まった。 茨城の障害者運動の歴史が凝縮 刊行に向けて3年前の2021年から取材、執筆を始めた。当初は「専門的なところまで、深く分かっていたわけではなかった」。コロナ禍で取材がうまく進まない時期もあったというが「ほにゃらの皆さんにいろいろな人をつなげていただき、話を聞いていく中で、ほにゃらができていくストーリーが少しずつ分かっていった」。 特に1980年代以降の茨城における障害者運動の歴史が凝縮されている。63年に千代田村(現・かすみがうら市)上志筑につくられた障害者の共同生活コロニー「マハラバ村」は、重度の障害者たちが神奈川県で交通バリアフリーを求めバスの前で座り込みをした「川崎バスジャック闘争」(1977年)などで知られる脳性まひ者集団「青い芝」の会の、糾弾・告発型の運動の源流となった。柴田記者は「マハラバ村から下りることになった重度障害者の一部は、つくば市周辺で盛んに活動を続けた。そのときに湧き上がった熱量みたいなものが残り火のように引き継がれ、今につながっている」と説明する。著書には重度の障害者の想いや残り火がどのように引き継がれ、ほにゃらにつながるのかが記されている。さらに柴田記者は、今後も茨城、特に地元である土浦やつくばを拠点に介助や障害者の自立生活について考えていきたいと語り「介助という磁場があり、障害者が地域で暮らしていくことは『消えない運動』であり、『やめられない運動』でもある。自立生活を知りたければ、介助に入らなければならないと言われた。本当にその通りだと思う。人が肌と肌で触れ合う、この体温を知ってしまった以上は、今後も地元茨城の自立生活運動を一つの軸にしながら活動していきたい」と話す。(山口和紀) ◆本の出版記念写真展『ほにゃらvol.3 まちで生きる、まちが変わる』が21日から3月10日まで、東京都練馬区のカフェ&ギャラリーで開かれる。入場無料。詳しくはこちら。

無人販売の八百屋をオープン 元留学生が筑波大近くに

近所に八百屋がない筑波大学近くの春日4丁目に9日、24時間営業で無人販売の食品販売店「やおや・春日」がオープンした。同市天久保で四川料理店「麻辣十食」を運営する東洋十食が手がける。野菜や果物のほか、中国からの輸入食品や自社製造のお弁当、コロッケなどの惣菜も販売を始め、近隣住民や大学生らが買い物に訪れている。 店内にはキュウリやトマト、ジャガイモなど一般的な野菜と共に、赤い菜の花や、スティック状のカリフラワー、茎レタスといった珍しい野菜も並ぶ。店舗面積は約35平方メートル。販売する商品は野菜、果物、お弁当など合わせて約100種類ほど。 値段は50円から数百円程度で、一人暮らしの大学生にも買いやすいよう少量ずつパックするなど工夫されている。商品は水海道総合食品地方卸売市場や都内の中央卸売市場から仕入れる。商品の価格に跳ね返らないよう、内装は全てスタッフが手作りして初期投資額を抑えた。無人販売により人件費を抑えているほか、曲がったキュウリなど形が不ぞろいの規格外の野菜を仕入れ、できるだけ安くしている。 支払いは現金かQRコード決済で、品物を選んでから客自身が電卓で計算し、カメラに見えるようにして支払う仕組みだ。 夜遅くまで研究 同店を運営する東洋十食の代表は中国河南省の出身。筑波大学大学院で社会工学の修士課程を修了した。卒業後は都内の会社で働いていたが、自然豊かな環境で子育てしたいと、学生時代親しんだつくば市に戻ってきた。院生時代は大学の宿舎に住み、夜遅くまで学内で研究していた。その経験から「夜中でも食材を買うことができる24時間販売の八百屋が大学近くにあれば便利なのではないか」と思いついたという。都内で勤めていた時、白金や麻布十番の八百屋がにぎわっているのを見て、スーパーマーケットではなく八百屋の業態に魅力を感じたと話す。 孫さんは野菜の仕入れなども行う。「大学生だけでなく近隣に住むお年寄りからも、キャッシュレスでなく現金でも買えるのがありがたいと言われる。喜んでもらえている様子」と好感触だ。野菜を買いに来た筑波大2年の男子学生と女子学生は「オープンしたのを見て気になっていて今日初めて来た。いろいろな野菜があって便利」と話す。東洋十食の代表は「加工食品ばかりだと栄養も偏る。野菜を食べて、大学の後輩たちに元気に、健康になってほしいという思いがある」という。 コロナ禍、都内で人気高まる 街の八百屋は、コロナ禍により家庭内で食事をする内食や巣ごもり消費の需要が高まったことを背景に、都内では、道路に面した店頭に青果を並べる八百屋の人気が集まり、大手食品スーパーが昭和レトロな八百屋の業態で出店したり、ドライブスルーの八百屋もオープンするなどした。農水省の調査によると、2021年には全国の青果市場の約半数がコロナ禍前よりも取扱高を増やしている。(田中めぐみ) https://www.youtube.com/watch?v=zuRiYRuaud4

「もん泊」手ぬぐいを限定製作 つくば建築研究会

イベントで販売へ NPOつくば建築研究会(つくば市谷田部、坊垣和明理事長)は、長屋門に宿泊機能を付加しようと研究活動中の「もん泊プロジェクト」(2020年9月27日付)の一環としてデザイン手ぬぐいを製作し、18日に開かれた第17回市民シンポジウムで披露した。 手ぬぐいは白地にパープルカラーでもん泊ロゴとつくば市域の地図が印刷され、もん泊プロジェクトの研究対象である「長屋門」の市内分布があしらわれている。同会の調査によれば、つくば市内には217軒の長屋門が現存しており、「個人宅の特定にならないよう、あくまでエリア分布の一例として描いた」と、図案をデザインした塚本康彦理事は説明する。今後同会主催のシンポジウムやみちあるきイベントで販売する。製作数は200枚で1枚1000円(消費税込み)。 同日、市民シンポジウムはつくば市栗原の旧下邑住宅(23年5月31日付)で開かれ、糸賀茂男土浦市立博物館館長を招いて長屋門に関する歴史基調講演やパネルディスカッションを行った。さらに昨年から土間の板張り化を進めてきた米倉のお披露目(23年10月24日付)、筑波大学に留学中のエチオピア国費留学生による同国の茶道文化にあたるコーヒーセレモニーが催された。 坊垣理事長は「17回を数えるシンポジウムの中からつくば独特の原風景である長屋門と古民家がクローズアップされ、将来は長屋門と民泊を融合させる目標を掲げた。その実現のために、できることから始めて長屋門を訪ね歩くみちあるきや、米倉の利活用を考えるための板張り改修を手がけた。今後もみちあるきを開催してつくばの減封家と長屋門を紹介していきたい」と述べた。(鴨志田隆之)

サンガイア、ホームでトヨタに連勝

今季7勝目 バレーボールVリーグ2部(V2)男子のつくばユナイテッドサンガイア(SunGAIA、本拠地つくば市)は10・11日、つくば市流星台の市桜総合体育館でトヨタ自動車サンホークス(本拠地豊田市)との2連戦を行い、10日はセットカウント3-0、11日は同3-1で2連勝を果たした。つくばの通算成績は7勝9敗、10チーム中8位。 2023-24 Vリーグ2部男子(2月11日、つくば市桜総合体育館)つくば 3-1 トヨタ自動車25-2120-2525-2325-21 両チームとも2連戦の2日目とあって「昨日と同じ試合では勝てない」と、手の内を変えて臨んだ試合。つくばは勝利をつかんだものの「サンガイアらしいバレーをさせてもらえず、今季の7勝の中で最も苦しい勝利だった」と加藤俊介監督は明かす。 第1セットは互角の競り合いから、終盤につくばが堀夏央哉と鎌田敏弥の投入を機に得点を重ね、セットを奪った。第2セットは序盤に5点のビハインドを負い、途中追い上げはしたものの最後まで点差を引きずり、落としてしまう。第3セットは中盤に相手にリードを広げられるが、終盤につくばが架谷也斗や松田康河の得点で取り返した。第4セットは中盤から濱田英寿や架谷、鎌田らの攻撃でリードを広げ、逃げ切った。 「試合の前半から中盤にかけては、相手のブロックやレシーブが粘り強く、攻撃が決まらなかった。後半は整理して、相手の守備隊形を見てコースの打ち分けなどをリセットできた」と濱田主将。 「サーブとブロックが機能せず、うちの強みであるレシーブからの得点につなげられなかった。途中からサーブの狙いを変え、ブロックやレシーブで対応して崩すことができた」と加藤監督。 つくばは前日と比べて攻撃の多彩さも増した。ミドルからは十文字龍翔のBクイックが威力を発揮。「相手のブロックも高かったが、空中でトスを待ってコースを突くことができた」と10本のアタックを決めたほか、ブロックやレシーブでも貢献した。バックアタックでは鎌田、濱田、架谷の3人で10本を決めた。「どこからでも得点できるチームを目指しており、バックアタックに関しても攻撃陣で意識して練習に取り組んでいる」と濱田主将。 これでつくばは開幕7連敗の後を7勝2敗と盛り返してきた。「監督に就任してすぐ開幕を迎え、準備ができないまま11月は連敗を重ねてしまった。12月の中断期間にチームの方向性を確認して練習を重ねたことが今の好調につながった」と加藤監督。狙いを持たせたサーブから相手の攻撃の先を読み、ブロックやレシーブで対応して攻撃へ展開していく。これは大学時代、恩師の都澤凡夫監督に学んだバレーそのものだという。 「都澤先生の思いを継ぎ、先生が目指した形でのチーム作りがしたい」との思いから、今季つくばの監督に就任。「勝つことだけでなく、地元に愛された上で強いチームを作りたい。選手一人一人が全てのことに一生懸命取り組むことで、身近なところからファンを増やし、応援したいと思ってもらえるチームにしたい」 加藤監督は1978年生まれ、群馬県出身。深谷高校で春高バレー優勝、筑波大学でインカレ4連覇を経験。指導者としては桐蔭学園高校(神奈川)バレー部を19年間率い、関東大会出場9回という強豪校に育て上げた。「バレーを教えるに当たっては高校生も大人も大きな差はない。一つ一つのミスを減らし、1本1本のパスをつなぐ。誰かが目立つのではなく、みんなが一生懸命やる。それは日本のバレーが目指す方向でもあると思う」と話す。(池田充雄)

実家損壊など被災学生に経済支援 能登半島地震で 筑波大

一時金や生活支援など 能登半島地震で実家が損壊し仕送りが滞っている学生や大学院生などを対象に、筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)は、20万円の一時金や月5万円の生活費支援、学生宿舎料や授業料免除など独自の経済支援を実施することを明らかにした。 同大によると、福井、石川、富山、新潟の被災4県の出身学生は大学生、大学院生併せて639人おり、26日時点で実家が損壊したなどの報告が学生6人から寄せられている。現在、学生の被災状況を調査しており、支援する学生が何人になるか、現時点で不明。甚大な被害が報告されている石川県七尾市と志賀町出身者については該当者14人に個別に安否確認を実施したとしている。 独自の支援内容は、実家の家計が急変し仕送りがもらえなくなるなど学業を続けることが困難となっている学生に一時金として緊急支援奨学金20万円を給付する。ほかに地震によって実家が全壊、半壊、一部損壊した上、実家からの仕送りがもらえなくなっている学生に1月分から、月5万円の生活費支援と学生宿舎料の免除を実施する。4月からは生活費支援、学生宿舎料免除に加えて、授業料や入学金の全額または半額免除を実施する。 永田学長は25日の定例会見で「被災4県の学生が600人おり、安否確認、安全確認はできたが、実家に大きな問題を抱えている学生がいる。現在個別に調査中だが、被災学生の支援のため寄付を募り始めた。長引いた場合、最長1年半の生活費支援を検討している」などと話した。(鈴木宏子)

ロボット連携で建物を管理 つくば研究支援センター「ベンチャーアワード」大賞に

労働力不足補う 茨城県などが出資する第3セクター、つくば研究支援センター(TCI、つくば市千現、箕輪浩德社長)は26日、つくば発の優秀なスタートアップ企業を表彰する「第4回TCIベンチャーアワード」で、ロボットと建物設備の管理を連携させるシステムを提供するOcta Robotics(オクタ・ロボティクス、さいたま市)のサービスを大賞に選んだ。同社は、つくば市内につくばオフィスと実証フィールドの2研究拠点を置き、ロボット・建物設備連携インターフェースサービス(LCI)の製品化を進めている。特に高層建築物における管理や警備、清掃などの労働力不足を補うのに有効なシステムとされ、ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)の定める環境規格に準じた拡張性の高さなどが選定理由とされた。スタートアップ企業とはいえ、すでに大手デベロッパーの採用実績を上げていることも評価された。表彰式で、前川幸士取締役は「労働力不足が深刻化する今後、ロボットとの連携はさらに求められる。新たなサービスを組み合わせたフレンドリーなショーケース展開をつくばエリアで行っていきたい」とした。同アワードは、高い技術力と独自の事業プランを有する「つくば発ベンチャー」を表彰し、さらなる成長促進と次世代の起業意欲を喚起することを目的に2020年度に始まった。26日は最終審査会が行われ、7社がファイナリストプレゼンに臨んだ。先進性・独自性や実現可能性、成長性などから大賞(副賞100万円)、優秀賞(同30万円)が選ばれた。 今年度はさらに、事業化前の研究・技術シーズを表彰対象とする優秀賞が新設され、2者が選ばれている。審査委員長を務めたTCI箕輪社長は「労働力不足が叫ばれる今日、これに対応した技術のニーズ・シーズが共に高まっている」と講評した。各賞受賞企業は次のとおり。▼大賞 Octa Robotics(本社・さいたま市、鍋嶌厚太代表取締役)「ロボット・建物設備連携インターフェースサービス(LCI)」▼優秀賞 メルフロンティア(東京都文京区、北川全社長)「日本初マグネシウム合金を用いた生体吸収性埋め込み型医療機器の開発・事業化」▽エイゾス(つくば市、沼尻理恵子社長)「ノーコードクラウドAI解析ソフトによるデジタル実験で研究開発の労力100%削減」▼シーズ部門優秀賞 理化学研究所バイオリソース研究センター(つくば市、林洋平チームリーダー)「次世代リプログラミング因子によるiPS細胞の作製」▽筑波大学(つくば市、武安光太郎数理物質系助教)「低価格・高耐久な白金フリー燃料電池触媒」 (相澤冬樹)

自動運転バス実証実験開始 1日6便、筑波大を周回

筑波大学(つくば市天王台)で19日、自動運転バスの実証実験が始まった。30日まで平日の8日間、同大キャンパスの6つの停留所に停車し、一周約4キロのコースを1日当たり6便、時速20キロ未満で30分程度かけて走行する。 車体には、障害物を感知するセンサーや遠隔監視、物体や信号を検知するカメラ数台と、位置測定を行う衛星測位システムなどが搭載されている。現段階では、部分的な手動運転と自動運転の切り替えによって走る「レベル2」の小型バス(定員10人)による走行だが、2025年度までに運転手不在でも走行可能な「レベル4」で公道を走る大型の自動運転バスの実現を目指す。 同市は現在「つくばスーパーサイエンスシティ構想」のもと、先端的技術の社会実装に向けた取り組みを進めている。今回は「2024年問題」と言われるバス運転手の時間外労働の規制や、深刻なバス運転手不足による減便、高齢化など、同市が抱える公共交通問題を次世代の技術を用いて解決する狙いがある。 自動運転バスがつくば市内を走行するのは初めて。県内では境町が20年11月から路線バスとして運行を開始している。 筑波大での実証実験は、同大とつくば市、関東鉄道、KDDIなど8者による取り組み。初日の19日はキャンパス内のデモコース(天久保池前〜第一エリア前)約1.6キロを右回りで走行した。 自転車や歩行者が多く行き交い、死角が発生しやすいカスミ筑波大学店付近では、「路車間協調システム」を採用し、道路に設置した4Kカメラにより、広範囲の周辺道路の状況を即時に解析し、バスに提供することで危険を察知する。 またプロジェクトの一環として、位置情報専用スマートフォンアプリ「つくロケ」を利用し、運賃を支払う動作なしに乗り降りできるシステムの実証実験も行われる。バス停と「つくロケ」アプリの両方によるブルートゥース信号の情報が組み合わさることで、乗客の位置や状態を把握し、乗降判定に役立てられる。 自動運転バスは、環境にやさしく電動のグリーンスローモビリティ車両を使用する。土日は運行しない。乗車料金は無料で、事前予約によりだれでも乗車可能。先着順により定員が空いていれば当日予約なしで乗車もできる。 同市顧問で、同大システム情報系の鈴木健嗣教授は、「つくロケ」アプリ運用に関して、「自分の現在位置に合わせて、人々を見守るシステム。人を中心としたデータ活用社会を実現させたい」と述べた。KDDI事業創造本部の松田慧さんは「スーパーサイエンスシティのつくば市で、新しいテクノロジーを掛け合わせて、実証実験に取り組むことに意義がある」と話した。(上田侑子) ◆自動運転バスの乗車予約はこちら

新しいまちでテーマ型コミュニティをつなぐ《けんがくひろば》1

【コラム・島田由美子】10月最終日曜日の夕暮れ時、子供たちが作ったパンプキンランタンがほのかに輝く下、仮装コンテストのグランプリが発表された。ピザに扮(ふん)した少女がディズニーペアチケットを満面の笑みで受け取り、TX研究学園駅周辺地区(私たちは「けんがく地区」と言っている)の活動団体が連携して実施した「けんがくハロウィン2023」が終了した。 地縁的コミュニティーの代わりの存在 けんがく地区はTX開通後18年で人口が2万人以上となった。その間、つくば市新庁舎の開庁、義務教育学校・小中学校の開校、多くの商業施設の開業などを経て、まちとして順調に成長している。しかし急激なまちの発展には課題も多い。 市内TX沿線では、居住年数5年未満の住民が全体の3分の1以上を占め、働き盛り世代が多いこともあって、地縁型コミュニティーである区会の加入率は38%と低く、人口20万~30万人都市の平均65%(2021年総務省調査)の半分程度である。 地縁的コミュニティーの代わりとなる存在として、テーマ型コミュニティーがあり、けんがく地区では駅前花壇づくり、シニアサロン、子供の遊び場づくり、ごみ拾い、ウォーキング、桜の植樹・維持を行う団体などが誕生し、活動を行っている。地縁的なつながりが希薄なけんがく地区で、地域の課題を解決していくには、これらテーマ型団体やそのメンバーが連携し、地域の当事者となって地域全体を考えた活動をすることが求められている。 2回目の「けんがくハロウィン」 けんがく地区で活動する団体の多くは歴史が浅い上、団体同士のつながりがほとんど見られず、多様で多世代に及ぶ交流が少なかったが、この数年、団体間の連携・交流を育む動きが活発になってきている。ワークショップや交流会などを経て、連携づくりのツールとしての「けんがくさくらまつり」「けんがくハロウィン」が開催され、その試みは第1回つくばSDGs大賞を受賞した。 第2回となった今年のハロウィンでは5つの企画が実施された。子供たちや親子連れに商店を訪れてもらい地域にどのような店があるかを知ってもらうトリックオアトリート、交通安全クイズラリーやパンプキン色のゴミ袋を使ったごみ拾いやクラフト、そして商店や企業から賞品を提供してもらった仮装コンテストである。 その運営の特徴は、活動団体や商店、企業、公的機関など多様な主体の連携と、活動団体の負担の極小化である。団体のリソース(人材、知識、情報、ノウハウ、人的つながり、物品など)を共有・活用して、負担を軽くした。例えば、ごみ拾い団体がごみ拾いやごみ袋クラフトを担当したり、交通安全母の会が警備を行ったりするなど、各団体が普段行っていること、得意としていることを生かすようにした。 多様な団体が強みを生かし連携 当日は天候にも恵まれ、1000人を超す来場者があり、参加者も実施者も協力店舗も楽しめるイベントとなった。「けんがくハロウィン」の実施を通じて、各団体の実態や得意不得意を互いに認識し、顔なじみの関係を構築して、緩い組織化を達成することができた。 新しくできたまちでは地縁型コミュニティーが醸成されるまで時間が必要とされるが、それまでのつなぎとしてテーマ型コミュニティーが連携することで代替できるのではないかと考えられる。多様な団体が連携し、それぞれの強み・得意を生かすことで各々が成長し、それがまちの成長につながっていくと確信している。 この欄「けんがくひろば」では、けんがく地区で活動する団体や連携して開催するイベントを紹介していく。(けんがくまちづくり実行委員会代表) 【しまだ・ゆみこ】けんがくまちづくり実行委員会代表、研究学園グリーンネックレス タウンの会代表。本業は海外映画・ドラマの字幕翻訳。TX研究学園駅地区に移り住んだことをきっかけに、まちづくりに興味を持つ。まちづくり活動を行いながら、現在、筑波大学大学院システム情報系非常勤研究員として、都市計画の研究に携わっている。

新しいまちでテーマ型コミュニティーをつなぐ《けんがくひろば》1

【コラム・島田由美子】10月最終日曜日の夕暮れ時、子供たちが作ったパンプキンランタンがほのかに輝く下、仮装コンテストのグランプリが発表された。ピザに扮(ふん)した少女がディズニーペアチケットを満面の笑みで受け取り、TX研究学園駅周辺地区(私たちは「けんがく地区」と言っている)の活動団体が連携して実施した「けんがくハロウィン2023」が終了した。 地縁的コミュニティーの代わりの存在 けんがく地区はTX開通後18年で人口が2万人以上となった。その間、つくば市新庁舎の開庁、義務教育学校・小中学校の開校、多くの商業施設の開業などを経て、まちとして順調に成長している。しかし急激なまちの発展には課題も多い。 市内TX沿線では、居住年数5年未満の住民が全体の3分の1以上を占め、働き盛り世代が多いこともあって、地縁型コミュニティーである区会の加入率は38%と低く、人口20万~30万人都市の平均65%(2021年総務省調査)の半分程度である。 地縁的コミュニティーの代わりとなる存在として、テーマ型コミュニティーがあり、けんがく地区では駅前花壇づくり、シニアサロン、子供の遊び場づくり、ごみ拾い、ウォーキング、桜の植樹・維持を行う団体などが誕生し、活動を行っている。地縁的なつながりが希薄なけんがく地区で、地域の課題を解決していくには、これらテーマ型団体やそのメンバーが連携し、地域の当事者となって地域全体を考えた活動をすることが求められている。 2回目の「けんがくハロウィン」 けんがく地区で活動する団体の多くは歴史が浅い上、団体同士のつながりがほとんど見られず、多様で多世代に及ぶ交流が少なかったが、この数年、団体間の連携・交流を育む動きが活発になってきている。ワークショップや交流会などを経て、連携づくりのツールとしての「けんがくさくらまつり」「けんがくハロウィン」が開催され、その試みは第1回つくばSDGs大賞を受賞した。 第2回となった今年のハロウィンでは5つの企画が実施された。子供たちや親子連れに商店を訪れてもらい地域にどのような店があるかを知ってもらうトリックオアトリート、交通安全クイズラリーやパンプキン色のゴミ袋を使ったごみ拾いやクラフト、そして商店や企業から賞品を提供してもらった仮装コンテストである。 その運営の特徴は、活動団体や商店、企業、公的機関など多様な主体の連携と、活動団体の負担の極小化である。団体のリソース(人材、知識、情報、ノウハウ、人的つながり、物品など)を共有・活用して、負担を軽くした。例えば、ごみ拾い団体がごみ拾いやごみ袋クラフトを担当したり、交通安全母の会が警備を行ったりするなど、各団体が普段行っていること、得意としていることを生かすようにした。 多様な団体が強みを生かし連携 当日は天候にも恵まれ、1000人を超す来場者があり、参加者も実施者も協力店舗も楽しめるイベントとなった。「けんがくハロウィン」の実施を通じて、各団体の実態や得意不得意を互いに認識し、顔なじみの関係を構築して、緩い組織化を達成することができた。 新しくできたまちでは地縁型コミュニティーが醸成されるまで時間が必要とされるが、それまでのつなぎとしてテーマ型コミュニティーが連携することで代替できるのではないかと考えられる。多様な団体が連携し、それぞれの強み・得意を生かすことで各々が成長し、それがまちの成長につながっていくと確信している。 この欄「けんがくひろば」では、けんがく地区で活動する団体や連携して開催するイベントを紹介していく。(けんがくまちづくり実行委員会代表) 【しまだ・ゆみこ】けんがくまちづくり実行委員会代表、研究学園グリーンネックレス タウンの会代表。本業は海外映画・ドラマの字幕翻訳。TX研究学園駅地区に移り住んだことをきっかけに、まちづくりに興味を持つ。まちづくり活動を行いながら、現在、筑波大学大学院システム情報系非常勤研究員として、都市計画の研究に携わっている。

子どもたちに科学の楽しさを 筑波大でサイエンスキャンプ

筑波大学(つくば市天王台)で27日、科学に興味を持つ38人の小中学生を対象に「冬のサイエンスキャンプ」が開催された。今年8月の夏のサイエンスキャンプに続き2度目となる。今回は、同大教員らによる気象学と化学の授業が催され、受講生は実験を通して科学を身近に体感しながら理解を深めた。 サイエンスキャンプは、未来の理系人材を育成するためのプログラム「つくばSKIP(スキップ)アカデミー」の一環として、同大社会連携課SKIP(スキップ)事務局が中心となり開催された。同大を含め全国の約20機関で同様のプログラムが開催されており、理科離れを引き止める狙いがある。 同アカデミーは2017年から始まり、今年で7年目。コロナ禍を乗り越え、昨年度から対面での実施が再開された。今年6月の筆記試験を経て、小学5、6年生と中学生の男女40人が受講生として選抜され、理科が好きな生徒や、将来科学技術の分野で活躍したい生徒などが集まった。半数以上が県内から参加し、県外の関東圏からの参加者も目立った。 受講生は9カ月の間、社会問題と関連した科学に関する幅広い分野を学習する。これまで、同大構内の生態系調査、プログラミング、化石発掘実習、画像制作などを体験し、今年9月の「個人研究発表会」では、受講生各自が興味を持った内容をもとにテーマを設定し、研究成果を発表した。 27日の気象学の授業では、日下博幸同大教授による講義と実験が行われた。受講生は、スーパーコンピューターの計算により、日々の気象予測がなされることを学習し、同大計算科学研究センターに設置されているスーパーコンピューター「シグナス」を見学したほか、水と入浴剤、スマートフォンのライトを使い、夕陽のメカニズムを研究する実験や、真空容器に入ったマシュマロが空気圧により膨らむ様子を実験した。 屋外では、受講生は同大院生らと協力し、風速計を使って風の大きさを数値化し、サーモグラフィーカメラで光と陰、アスファルトと芝生というように条件によって変化する温度分布を観察した。また風の流れに乗って風船が動く様子を望遠鏡で観察し、風の向きや風速など目には見えない大気の様子を観察した。 神奈川県から参加した中学2年の女子生徒は、日下教授によるマシュマロと気圧の実験について「空気圧によって、マシュマロが膨らむ様子が面白かった」と話した。東京から参加した小学5年の男子児童は、夕陽のメカニズムを研究する実験が成功した様子を振り返り「夕陽をきれいに再現できたのがよかった」とし、将来については「科学が好きなので参加した。学びの中で興味を持った海洋生物学者を目指したい」と話した。 プログラムは修了式が行われる3月まで実施される。(上田侑子)

高齢者がスマホ予約に挑戦 AIで乗合タクシーを便利に【公共交通を考える】4

高齢化が進むつくば市茎崎地区を対象に12月1日から、同市が運行する乗合タクシー「つくタク」のスマホ予約実証実験が行われている。スマートフォンで専用アプリを開き、乗車時間と場所、目的地を入力して予約すると、AIが自動生成したルートで複数の客を乗せながら効率良く目的地まで運行するという実験で、AIオンデマンドシステムと呼ばれる。来年2月29日まで3カ月間実施される。 「分からない」手を挙げる人続出 実証実験に先立ち11月21日、茎崎交流センターで、自分のスマートフォンからネット予約するための説明会が開かれ、60代から80代の高齢者56人が市職員らのサボートを受けながらネット予約に挑戦した。 つくタク利用者の8割を高齢者が占める。アプリを用いた予約に慣れてない高齢者が説明会に集まった。説明会は、高齢者が自分のスマートフォンに、QRコードからアプリをダウンロードすることから始まった。会場から「分からない」と手を上げる人が続出し、サボートにあたった市職員ら8人が1人ひとりに向き合って操作を支援した。 参加した同市自由ケ丘の民生委員で70代の男性は「みんなに教えないといけないから」と、前かがみになりながらスマートフォンの画面に目を凝らした。森の里の谷中絹代さん(80)は「外出にはつくタクを利用している。予約は当日利用が朝8時半から、当日以外は正午からと決められていて時計を見ながら予約している。操作ができると予約が便利になると聞いて来たが、インストールとかタップとか用語が分からないし難しい」と話した。 実証実験を推進する市科学技術戦略課は来年1月10日まで、同センターのほか茎崎地区の各所でスマホ相談会を開いて普及に努めている。森の里の自治会長、倉本茂樹さん(81)は「つくタクを利用するのは75歳以上の後期高齢者が多くを占めると思う。スマホ操作に不慣れな状況を踏まえて、高齢者でも使いやすいシステムにしてほしい」と、操作に不安な高齢者をおもんばかった。 25年度にネット予約導入へ 国交省の「スマートシティモデル事業」に選定された同市は、筑波大学、KDDIをはじめとする47機関で構成する「つくばスマートシティ協議会」(会長・大井川和彦知事、五十嵐立青市長)を設立。先端技術を取り入れて都市が抱える問題を解決する事業に取り組んでいる。つくタクの実証実験は、市と同協議会、AIを活用した効率的な配車システムのノウハウを持つ民間企業との連携事業で実施されており、同地区で使用されている8人乗りジャンボタクシー3台のうち1台が実証実験に使われている。 つくタクは現在、市内5つの地区(筑波、大穂・豊里、桜、谷田部、茎崎)ごとにオペレーターが電話予約を受け、2011年の運行開始以来、人手作業による配車を実施している。運行は1時間に1便で平日の午前9時台から午後5時台まで。年約4万4000人が利用し、そのうちの8割が高齢者で買い物や通院目的での利用が主体となっている。 同課がまとめた今年4~8月のつくタク利用実績によると、利用者数は5カ月間で2万590人で、前年度同期と比較して158人(0.7%)増えている。月別利用者数や地区別の1時間毎の利用者数などは地区によって増減が見られる。乗合率は全地区平均で52%(昨年は51%)と、ほぼ半数が1人での利用となっている。 一方、全ての地区で予約のお断り数が増加してキャンセル待ちが生じており、利用者からは「予約をとるのが面倒」「予約センターが混み合い、予約できない」など改善を求める声が挙がっている。 茎崎地区では3カ月間にわたる実証実験の後、利用者数や運行距離などのデータ、利用者とつくタクを受託している事業者の感想や要望などを元に検証が行われる。つくタクの運行を担当する市総合交通政策課は、現状の人手による電話予約に加えて2025年度から、24時間いつでもネットで予約受け付け可能なAIオンデマンドシステムを導入することを検討している。(橋立多美) 続く ➡「公共交通を考える」の過去記事はこちら

関東リーグ優勝メンバーから4人がプロ入り 筑波大蹴球部

筑波大学蹴球部からプロ入りする4選手の合同記者会見が25日、つくば市天王台の同大大学会館特別会議室で開かれ、各人が抱負を語った。今季、関東大学サッカーリーグ1部で6年ぶり16回目の優勝、全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)では7年ぶりのベスト4と輝かしい成績を残した選手たちの次のステージでの活躍が期待される。 J1のヴィッセル神戸に内定した山内翔選手は、ゲームコントロールに長けたボランチで「戦術やゲームを認知する能力が高い。一人だけ見えている世界が違う」と小井土正亮監督の評。 プロへの抱負としては「中高の6年間を過ごしたチームに戻れてうれしい。筑波大での4年間がなければ成長できなかった。大学で学んだことを生かし自分が活躍することで、いろんな方々への恩返しになるよう、また大学サッカーの発展につながるよう頑張りたい」と話した。 同じく神戸に内定した高山汐生選手は、身長190センチの恵まれた体格を生かしたダイナミックなプレーが持ち味のゴールキーパー。シュートストップのみならずハイボール処理やコーチングでも小井土監督の評価は高い。 「J1のチャンピオンチームに加入できることをうれしく思う。セットプレーでは自分が前に出て相手に触らせず、コーチングでは声でチームを動かしたり鼓舞し、後ろに自分がいることでチームを安心させられる選手になりたい」 J3カターレ富山に内定した瀬良俊太選手は、テクニックとポジショニングに優れたファンタジスタタイプのサイドハーフ。「意外性やアイデアあふれるプレーで見る人のツボを突く。自分も好きなタイプ」と小井土監督。 「以前は自分のプレーを出したい、見てほしいという意識が強かったが、大学でいろんな人に出会い、チームが勝つために自分に何ができるかを考えられるようになった。今季は相手のプレッシャーを外して展開するだけでなく、自ら前へ出て得点することも意識した。この部分をもっと伸ばしていきたい」 J3のFC大阪に内定した林田魁斗選手は高さ、強さ、速さを兼ね備え、ゴール前でのシュートブロックに優れたセンターバック。「気持ちで戦える男。けがで試合に出場できないときも立ち振る舞いで他のお手本となった真面目な選手」と小井土監督。 「生まれ育った関西でプロのキャリアをスタートできることがうれしい。自分もサッカーからたくさんの夢や感動をもらったので、多くの人に夢や感動を与えられるようになりたい。FC大阪に欠かせない選手になり、J3優勝とJ2昇格に貢献したい」 大学での思い出として最も心に残っているのは、11月4日の関東リーグ東京国際大学戦だったと各選手は語る。同リーグは今季、初めてホーム&アウェー方式で開催され、筑波大はホーム最終戦で2000人超の観客を前に、見事に優勝を飾った。「1グラ(筑波大学第一サッカー場)に多くの人が応援に来てくれて、支えてもらっていると感じた。プロへ行ってもファンやサポーターへの思いを大切にしながらやっていきたい」と高山選手。 一方、最も悔しい思いをしたのは12月21日、流通経済大学龍ケ崎フィールドで行われたインカレ準決勝、明治大に0-1で敗れた試合。「紙一重の差だった。あれほど勝ちたい、負けて悔しい試合はない。この悔しさをプロで晴らしたい」と瀬良選手。 プロの世界では、これまで以上に結果が求められる。山内選手は「プロは大学と違って結果が全て。勝つことでチームはもちろん自分自身の価値も高めていきたい」、林田選手は「選手の価値は結果でしか示せない。常に結果を目指して、必要なことを考えながら成長していきたい」と、来季を見据える。(池田充雄)

サンタがプレゼント、今年も継続 スタッフ不足乗り越え

コロナ禍影響 ボランティアがサンタクロースにふんして子供たちにプレゼントを届ける活動が今年もクリスマスイブの24日、つくば市で実施される。コロナ禍を経た今年は、支部の運営スタッフが確保できず、継続できるか不透明な時期もあった。「クリスマスを祝うことも難しいような経済的に困難な家庭の子供たちに、思い出を届けたい」というスタッフの熱意で継続できることになった。 NPOチャリティーサンタ(東京都千代田区)つくば支部による活動だ(2020年11月27日付)。事前に応募があった家庭にサンタ姿のボランティアが、保護者があらかじめ購入したプレゼントを届けに行く。子供たちにはサプライズでサンタが自宅にやってくる。経済的に困難を抱える家庭の子供たちには無料でプレゼントを手渡す。その費用は、他の家庭の寄付金でまかなわれる。  つくば支部が立ち上がったのは2017年で今年7年目になる。現在、支部の代表を務めるつくば市在住の会沢和敏さん(59)は、20年度の活動でも代表を務めた(20年11月10日付)。「今年度は運営の中心を担う代表者が5月頃まで決まっていなかった。ここで活動が休止になってしまっては、サンタが来る街をつくば市から広げていくという夢もかなわなくなってしまうと考え、代表に立候補した」と話す。会沢さんは20年度に続き、2度目の代表を務める。 「クリスマスを祝うことも難しいような経済的に困難なご家庭もある。そうした子ども達にとって、サンタが家に来て祝ってくれることは一瞬のことかもしれないが、未来まで明るくするものでもあるように感じる。小学校低学年のときに訪問した子どもが、中学校に上がっても毎年のようにサンタが来た思い出を話しているということも聞いた」と会沢さんは語る。 スタッフ不足の原因として「コロナ禍の影響も少なくなかった」と指摘する。21年、22年も、人と人との接触を極力避けることが求められる中で、サンタ活動を継続していくことは難しい場面もあったと振り返る。 今年は運営を担うスタッフが会沢さんを含めて4人、当日のボランティアは10人ほどが参加する。当日ボランティアは事前の講習会を通してチャリティーサンタとしての活動内容や注意点などを学び臨む。 筑波大学医学類の山田夏鈴さんも運営スタッフの一人だ。「子どもの年齢や性格に合わせて対応することを心掛けている。子どもたちや両親の笑顔を見ると、こちらも素敵なプレゼントをもらった気持ちになる」と活動を継続することの意義を話す。(山口和紀) ◆チャリティーサンタつくばはX(旧ツイッター)で情報を発信している。NPO法人チャリティーサンタのホームページはこちら。つくば支部では今年の当日ボランティアの募集は締め切っているが、来年度に向けての運営スタッフを募集している。来年の当日スタッフは10月頃に募集を行う予定だ。

水戸支部と統合 学生団体ドットジェイピーつくば 背景にスタッフ不足

筑波大学1、2年生などが議員事務所やNPOなどでインターンシップを実施する事業を提供してきた学生団体「ドットジェイピーつくば支部」の存続が困難となり、10月、同水戸支部と統合した。つくば支部のスタッフ不足が背景にある。 つくばエリアで来年2〜3月に行われる春期インターンシップでは、水戸支部運営の下、活動先を一部の議員事務所に絞ってインターン生を募集し、実施を目指す。 ドットジェイピーは全国に約30カ所の拠点を持ち、大学生スタッフが中心となって、若者の投票率向上を目的に活動するNPOだ。学生が長期休暇に入る春期と夏期にインターンシップ事業を提供し、全国で4万人以上の学生が参加している。 つくば支部の始まりは、2008年に千葉茨城支部が発足したこと。その後、分割を経て16年に茨城支部となり、17年につくば支部と水戸支部に分かれた。 不在者投票所設置も つくば支部の参加学生は希望に応じて、議員インターンシップとNPOインターンシップを選択し、春期(2〜3月)、夏期(8〜9月)のいずれかの2カ月間活動する。NPOは、発展途上国の農業技術開発に向けて活動する国際団体や、里山保全活動団体、動物愛護団体などと連携し、学生に体験の場を提供してきた。 同支部はほかにも若者層の選挙啓発活動に力を入れてきた。16年の参院選では、筑波大生の投票率を向上させるため、「投票率向上プロジェクト」を大学の協力を得て企画し、その一環として、市選挙管理委員会が期日前投票所を同大構内に設置したり、同大生に向けて選挙啓発授業などを実施してきた。22年の参院選、県議選では、投票すると飲食店などでお得なサービスを受けられる「センキョ割」を実施した。 「明確な目的もって行動」が魅力 水戸支部スタッフで、茨城大学1年の金子博雅さん(19)は、つくば支部のスタッフ不足による水戸支部との統合について「インターンを通してスタッフになり、活動するケースが多い中、つくば支部はインターンシップ事業に参加する学生が少なく、スタッフ獲得につながらないこと、また、新型コロナの行動制限がなくなり、学生自身がこれまで以上に(インターンシップではない)娯楽面に時間を割けるようになったことが影響し、スタッフ不足につながったのでは」と話した。 金子さんは23年の夏期に水戸支部の議員インターンシップに参加し、スタッフになった。インターン中にコロナにかかり、描いたように活動できなかったことを思い起こし、これからの参加学生のために全力を尽くしたいと思ったことがスタッフになったきっかけだ。「明確な目的を持って行動できるようになることがインターンシップの魅力」と話した。 水戸支部では現在、茨城大生を中心とした11人のスタッフが在籍しており、今月22日まで、春期インターンシップ参加学生を募集中だ。同支部では、議員インターンシップに加え、食品フードロスの解決を支援するNPOや児童クラブ、世代間のデジタル格差の解消に向けて活動するNPOなどでインターンシップを提供している。(上田侑子) ◆ドットジェイピー水戸支部の公式Xやインスタグラムのダイレクトメッセージでインターンシップ説明会や参加申込受付中。

大和ハウスの取得手続き完了 つくば自動車研未利用地

大和ハウス工業(本社大阪市)は18日、日本自動車研究所(JARI)がTX研究学園駅南側に所有していた未利用地(つくば市学園南2丁目、15.5ヘクタール)の取得手続きが完了したと発表した。同社はここに中高一貫校「茗渓学園」を誘致するほか、分譲マンション、商業施設、研究施設、産業・物流施設、保育施設を建設するなど、総合的に開発する。 駅南開発の総事業費は約350億円 JARI未利用地は、公募型プロポーザル(事業計画提案)方式で売却された。取得に応募したのは3企業で、大和ハウスが提案した取得価格と事業計画の総合点が一番高かった。12月4日に売買契約が結ばれ、18日、用地が引き渡された。 開発用地は、県道・土浦坂東線(エキスポ通り)、国道・取手つくば線(サイエンス大通り)の近くにあり、TX研究学園駅から徒歩9分の一等地。駅の反対側には、イーアスつくばやコストコなどの大型商業施設がある。 大和ハウスは、同地の開発計画を「SSC(スーパー・サイエンス・シティ)つくば学園南プロジェクト」と名付けた。2024年8月から建設工事に入り、28年4月に全体が完成する。総事業費は約350億円(うち土地取得費が142億円)という。 用地内に茗渓学園の移転先を確保 用地の北東区画(全体の28%に相当する4.3ヘクタール)は、茗渓学園(つくば市稲荷前)の移転先に充てる。同学園によると、大和ハウスの取得手続きが完了したことを受け、来春にかけて同社と契約内容を詰める。早ければ、来年3月の理事会で駅南移転を正式決定、学園運営に必要な区画を取得する。駅南開校は2029年4月の予定という。 茗渓学園は、筑波大学とその前身の東京教育大学のOB会「茗渓会」によって、1979年4月に設立され、生徒数は現在1526人。帰国子女や留学生が多く、生徒用の寄宿舎も充実し、海外大学進学を推奨するなど、国際色が強いのが特徴。 応募急増、茗渓は次のステージに 宮崎淳校長・理事は「駅南移転が報じられたこともあり、(高校3年になったら新学園に移る)来春(中学)入学者の推薦入試は過去最高の人数になった。また、TXが通る千葉の保護者がうちに強い関心を持つようになっている、とも中学進学塾から聞いた」とし、駅南移転が各方面から注目されていることに驚いている。 さらに、新学園の魅力を一層高めるため「駅から5分で通えるように、駅と学園の間に近道を設けたい」と述べている。茗渓学園は2029年(創立50周年)を機に次のステージに入りそうだ。(岩田大志) <関連記事・コラム> ▽「…茗渓学園が移転へ…大和ハウスが開発」(10月20日掲載) ▽「学園運営に磨き…TX南移転は29年…」(11月6日掲載)

人工都市つくばの草創期を記録 齋藤さだむさん写真展

1980年代を中心に建設途上だった筑波研究学園都市の草創期を記録した、つくば市在住の写真家、齋藤さだむさん(74)の写真展「人工都市つくば 草創の風景」が8日から、つくば市千現、ギャラリーネオ/センシュウで開かれている。モノクロ写真やカラーのポストカードなど約80点が展示されている。 平らに造成された土の大地の向こうにぽつんと建つ完成したばかりのつくばセンタービル、造成工事で出た残土が堤防のように長く積み上げられた現在のカピオ駐車場周辺、伐採した樹木をその場で生木のまま燃やし白い煙が立ち込める現在の大清水公園―。筑波研究学園都市建設時の生々しい光景が写る。 完成したばかりの国家公務員宿舎群や、夜は真っ暗になる街中で異様な光を放つパチンコ店のネオンで赤茶色に光る雑木林などの作品もある。 齋藤さんは長野県出身。1977年、筑波大学芸術学系に技官として赴任し、つくばに転居。90年まで同大職員を務めた。大学の仕事の傍ら、国家プロジェクトによってつくられた人工都市の草創期を撮影し記録に収めてきた。 「初めて土浦駅に降り立ち、バスに乗って筑波研究学園都市に入った途端、がーん、がーんという杭を地面に打ち込む大きな音が響いた」と当時を振り返る。 85年に開催されたつくば科学万博のきらびやかな建物や、見物を楽しむ人々の様子、その後、次々に解体されるパビリオンの変遷を記録した写真もある。「何もないところに突然、科学万博の建物ができて、隆盛を極め、人々が楽しんだが、1年も経たないうちに壊された。映画を見ているかのようにわずか1年で変わっていく姿を実体験し、街の運命も人の運命と同じように、生まれて、成長して、新しいものに変わっていくということを衝撃をもって感じ、写真とは何かを考える転機になった」と話す。 写真展は、1979年から2000年までつくばの文化発信拠点だったライブハウス「クリエイティブハウス アクアク」の記録を残したいと、12月から来年2月まで、トークイベントや展示会を開催する有志でつくる「アーカイブ アクアク」(12月8日付)が、同イベントの開催に合わせて企画した。 アーカイブ アクアクのメンバーで同ギャラリーを主宰する山中周子さん(39)は「齋藤さだむさんの作品はただの記録ではなく、そこにある光、そこにあった環境をとらえ、芸術性がある。ずっとつくばにいる人も、新しくつくばに来た人も、いろいろな世代に見てほしい」と来場を呼び掛ける。 齋藤さんは「草創期のころのつくばをテーマに、演劇や音楽のパフォーマンスを展開しようとする若いメンバーたちの考えに賛同して写真展を開いた。46年前に土浦駅に降り立ってからのつくばでの時間の往還を、会場でお会いできる方一人一人と感じたい」と話す。(鈴木宏子) ◆齋藤さだむ写真展「人工都市つくば 草創の風景」は8日(金)~24日(日)の金・土・日曜の午後1~5時まで、つくば市千現1-23-4 マイコーポ二の宮101、ギャラリーネオ/センシュウで開催。入場無料。詳しくは同ギャラリー(メールinfo@neotsukuba.com)へ。

伝説のライブハウス「アクアク」原点回帰 つくばで3つのイベント

山下洋輔さんジャズコンサートなど かつてつくば市に存在した、多くの著名人が足を運んだライブハウス「クリエイティブハウスAkuAku(アクアク)」。今も、当時を知る市民に語り継がれる「伝説的」な存在だ。アクアクに関連する3つのイベントが、12月から来年2月にかけてつくば市内で開催される。 その第1弾となるのが、15日につくばカピオ(つくば市竹園)で開かれるジャズコンサート「特別な一日」だ。世界的ジャズピアニストの山下洋輔さん、ロックシンガーのカルメン・マキさん、作曲家兼アレンジャーで知られるベーシスト水谷浩章さんが出演する。かつてアクアクを主宰し、「特別な一日」実行委員長の野口修さん(68)と山下さんの40年にわたる親交により実現する。 活動の原点は山下洋輔さん 「オープニングアクトは(山下)洋輔さん。あの日が私たちの原点でした」と、野口さんが当時を振り返る。 1979年、筑波大学のキャンパスに隣り合う現在のつくば市天久保に、1軒のライブハウスが誕生した。カフェとイベントスペースを兼ねそなえた「クリエイティブハウス アクアク」だ。旧桜村(現つくば市)出身の野口さんが、数名の筑波大生たちと立ち上げた。現在の天久保には、学生向けのアパートやマンションが立ち並ぶが、当時は筑波研究学園都市の開発初期。雨が降ると未舗装路はぬかるみ、栗や野菜の畑の中に立ち始めた建物は、まだまばらだった。天久保のアクアクからは「500m先の東大通りが丸見えだった」。 「アクアク」とは、モアイ像で知られるイースター島の言葉で「何かを創造しようとする欲求」を指すという。当時、23歳だった野口さんと学生たちは、まだ文化施設がなかった研究学園都市に文化の拠点をつくろうと考えた。オープニング企画を山下さんのライブに決めた理由を野口さんは「アクアクでは、自立した自由な個人が互いを認め合い、一緒に生きていくことを追求したかった。洋輔さんのステージにはそれがあった」と話す。 「洋輔さんたちは、自立した個人がステージに立ち、互いに認め合うことから始まり、舞台を成立させていく。初めはどんな音を出すのかわからないもの同士、演奏しながら関係性を築いていく。それを見ている私たち観客も、いつしかそこに引き摺り込まれ、演者と関係性を築いてく。会場全体がひとつの『社会』として形作られていく感覚になる」のだと語る。 このオープニングアクト以降、アクアクでは、幕を下ろす2000年までの21年間、山下さんとの企画を毎年続けてきた。さらに詩人・谷川俊太郎、思想家・吉本隆明、映画監督・若松孝二、俳優・大杉漣ら、数々の著名人を招いて詩の朗読会や音楽演奏、演劇、舞踏、映画上映、ワークショップなど多岐にわたる活動を、表現活動への熱にあふれるつくばの若者たちと共に繰り広げていく。 今を見つめ返すコンサートに 野口さんが、もう一つの「原点」と語るのが、劇作家の寺山修司。野口さんが寺山の作品に関心を抱いた70年代は、60年代に隆盛した学生運動が、意見を異にする人に暴力を向け、活動自体を閉塞させていく時代だった。そうした中で、舞台上で問題を提起する前衛的な寺山の作品に触れ、野口さんは強く感銘を受けたという。カフェとステージが同居するアクアクは、寺山が渋谷で主宰した、劇場と喫茶店が同居する「天井桟敷館」をモデルにした。 寺山の劇団「天井桟敷」が輩出したのが、今回、山下さんと共演するカルメン・マキさんだ。山下さんと共に、野口さんにとっての「原点」が同じステージに立つジャズコンサートへの個人的な想いをこう語る。 「コロナ禍で、表現活動が制限される苦しさを経験した。一方で、強者も弱者も区別なくコロナに罹ることで、垣根なく、互いに助け合う社会ができるのではと期待した。どう健康を維持し、どう生き延びていくかをみんなで考え合う機会になるはずだった。しかし、現実は差別が助長され、世界各地で戦争が続いている。混乱し続ける時代だからこそ、私自身、原点を見つめたいという思いがあった」 「人間にとって大切なことは戦争ではない。いかに個人が自立して、自由に生きるのかということ。コロナ禍の時代から、再び表現活動ができる時代になった。多くの方と共に、同じ会場で一緒にコンサートを聞くことで、改めて、人間を見つめる大切さを思い出す機会になれば。今回の企画は、私自身にとっても『原点回帰』だが、こんな時代だからこそ、皆さんにとっても、今を見つめ返す『特別な一日』になるといい」と野口さんが呼びかける。 ジャズコンサート「特別な一日」は、12月15日(金)19時からつくばカピオホールで。全席指定。一般5500円、学生・障害者4500円。詳細、問い合わせはイベントホームページ、または電話090-8580-1288(野口さん)へ。 記録を残したい 第2弾、第3弾のイベントは、野口さんが「原点に返りたい」とコンサートを企画していたところ、アクアクの記録を残したいと考える有志がコンサートに合わせて関連企画を立ち上げ、3つのイベントが実現することになった。 第2弾は、12月16日(土)16時からギャラリーネオ(つくば市千現)で、野口さんとつくば市を拠点に活動する劇団「踊母会」によるアクアクに関するトークイベントが開かれる。第3弾は、1月25日から2月5日にかけて千年一日焙煎所カフェ(つくば市天久保)で、アクアクを振り返る展示会「アクアクの時代 1979-2000」がそれぞれ、野口さんを慕う有志らによるアーカイブアクアク実行委員会により開催される。問い合わせはメール(千年一日珈琲焙煎所)へ。(柴田大輔)

日越国交50周年 関彰商事とハノイ工科大が記念事業

ジョブフェア、日系企業向け最大のイベントに 日本とベトナムが1973年9月21日の外交関係樹立から今年で50周年を迎えたのを記念し、関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)は3日、ハノイ工科大学のフィン・クェット・タン学長らを招き、同大学へのスポンサー契約更新の調印式と日越外交樹立50周年の記念品贈呈式を行った。 関彰商事は2016年にハノイに駐在員事務所を設立、同年からグループの人材派遣会社セキショウキャリアプラスがハノイ工科大の協力を得て、同大学で合同企業説明会「セキショウ・ジョブ・フェア」をスタートさせた。同フェアは今年で第10回を迎え、日系企業のベトナム高度人材採用およびベトナム人求職者の就労サポートに貢献している。 18年からは同大学との間にスポンサー契約を締結。19年にはサッカー部を日本に招き、鹿島アントラーズFCや筑波大学蹴球部などの協力を得て、交流試合やサッカー教室を開催するなど活動支援を行ってきた。 今回のスポンサー契約更新について、関社長は「16年のベトナム進出以来、同大学には非常にお世話になっている。今年のジョブフェアは2600人の参加者を集め、同国で最大の日系企業向けイベントとなった。今後も人材関連事業のみならず、同大学やベトナムとの関係拡大・深化につながる取り組みを継続発展させ、相互文化理解の促進など両国の架け橋として大きな役目を果たしていきたい」と述べた。 ハノイ工科大のフィン・クェット・タン学長は「関彰商事にベトナムの若者が大勢勤務していることを知ってうれしく思う。社員とも意見交換したが同社とハノイ工科大の間には共通の教育理念があると思う。それは誠実で優秀な人材を輩出し、グローバルに活躍してもらうことだ。学生が日本の企業でより良く働けるよう、日本の文化に詳しくなる機会なども提供していきたい」と語った。 筑波大学とサッカーで交流も 今回の招聘(しょうへい)にはハノイ工科大のサッカー部員3人も同行。記念行事として同日、筑波大学セキショウフィールドで、ハノイ工科大と関彰商事サッカー部の混合チームが、筑波大蹴球部と交流試合を行った。 ハノイ工科大はベトナムでは強豪とされるが、日本の大学サッカー界でトップレベルにある筑波大との対戦を経験し、選手たちは「(筑波大は)技術や体力、チームワークも優れている。貴重な機会をいただけた」「楽しく参加させてもらった。今日学んだことを生かし、もっと頑張りたい」などと語った。 試合を視察した関彰商事スポーツアドバイザーでU-22日本代表監督の大岩剛さんは「サッカーは言葉が伝わらなくても交流を深めることができる。今日の経験が彼らの将来の一助となってくれるといい。ベトナムのサッカーは近年非常にレベルが上がり、アジアでも注目度が高い。今後は日本にとっても強敵になってくると思う」と話した。(池田充雄)

Most Popular