金曜日, 3月 29, 2024
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《吾妻カガミ》87 つくばセンタービル再生の問題点

【コラム・坂本栄】本サイトの中ほどに「つくばセンタービル」というタイトルの特設コーナーが設けられています。現時点では、市が同ビルをどう活用しようとしているのか調べた記事と、ビル裏手(正面?)の中央広場への想いを述べた脚本家のコラムがアップされています。今回のコラムではこのセンタービルの問題を取り上げましょう。 記事とコラムは、「具体案、市民に説明なく」(6月26日掲載)、「民意と距離ある計画」(6月27日掲載)、「世界的アート建築に屋根?」(6月28日掲載)、「コラム:磯崎新の設計思想」(7月9日掲載)の青字部をクリックしてご覧ください。磯崎氏は、ノバホール+ホテル日航つくば+センタービル+中央広場を設計した方です。 記事は、①市は空きが目立つセンタービル1階を、事業の立ち上げを目指す起業者の作業区にしようとしている②また、音楽会場・ノバホール右側の建物などは市民活動を支援する拠点に改装しようとしている③しかし、これらの案は市民の意を汲んだものとはいえず、市の情報開示も十分ではない④一方、中央広場に屋根を付けるという改修案に磯崎氏は遠回しに反対している―に要約できます。 起業には「トキワ荘」がよく似合う 一昔前、センタービル1階には銀行の支店や飲食店などが入り、一帯はまさに市のセンターでした。ところが、賑わいの中心がTX研究学園駅に移り、センタービル周辺は駐車の便が今一のこともあって、市の真ん中ではなくなりました。 こういった場所の再生を考える市も、大変です。若い起業者支援のために、旧一等区画を活用しようとする気持ちは分かります。でも、そういった優遇策は彼らのためにならないでしょう。起業には、赤塚不二夫らが雑居した「トキワ荘」がよく似合うからです。ビル・ゲイツはガレージで起業しました。事業の立ち上げには、公務員宿舎跡が向いていると思います。 センタービルを核とするTXつくば駅周辺は、オフィスビル+マンション+飲食店+小売店が立ち並ぶ「ビジネスゾーン」にし、企業の本支店を誘致したらどうでしょうか。センタービルについては、その区分所有権(つくば市53%、ホテル日航つくば38%、筑波都市整備9%)を大手不動産に一括売却し、民間の知恵(再設計は磯崎新事務所?)で再開発してもらったらどうでしょうか。(経済ジャーナリスト)

《吾妻カガミ》87 つくばセンタービル再生の問題点

【コラム・坂本栄】本サイトの中ほどに「つくばセンタービル」というタイトルの特設コーナーが設けられています。現時点では、市が同ビルをどう活用しようとしているのか調べた記事と、ビル裏手(正面?)の中央広場への想いを述べた脚本家のコラムがアップされています。今回のコラムではこのセンタービルの問題を取り上げましょう。 記事とコラムは、「具体案、市民に説明なく」(6月26日掲載)、「民意と距離ある計画」(6月27日掲載)、「世界的アート建築に屋根?」(6月28日掲載)、「コラム:磯崎新の設計思想」(7月9日掲載)の青字部をクリックしてご覧ください。磯崎氏は、ノバホール+ホテル日航つくば+センタービル+中央広場を設計した方です。 記事は、①市は空きが目立つセンタービル1階を、事業の立ち上げを目指す起業者の作業区にしようとしている②また、音楽会場・ノバホール右側の建物などは市民活動を支援する拠点に改装しようとしている③しかし、これらの案は市民の意を汲んだものとはいえず、市の情報開示も十分ではない④一方、中央広場に屋根を付けるという改修案に磯崎氏は遠回しに反対している―に要約できます。 起業には「トキワ荘」がよく似合う 一昔前、センタービル1階には銀行の支店や飲食店などが入り、一帯はまさに市のセンターでした。ところが、賑わいの中心がTX研究学園駅に移り、センタービル周辺は駐車の便が今一のこともあって、市の真ん中ではなくなりました。 こういった場所の再生を考える市も、大変です。若い起業者支援のために、旧一等区画を活用しようとする気持ちは分かります。でも、そういった優遇策は彼らのためにならないでしょう。起業には、赤塚不二夫らが雑居した「トキワ荘」がよく似合うからです。ビル・ゲイツはガレージで起業しました。事業の立ち上げには、公務員宿舎跡が向いていると思います。 センタービルを核とするTXつくば駅周辺は、オフィスビル+マンション+飲食店+小売店が立ち並ぶ「ビジネスゾーン」にし、企業の本支店を誘致したらどうでしょうか。センタービルについては、その区分所有権(つくば市53%、ホテル日航つくば38%、筑波都市整備9%)を大手不動産に一括売却し、民間の知恵(再設計は磯崎新事務所?)で再開発してもらったらどうでしょうか。(経済ジャーナリスト)

《映画探偵団》33 つくばセンタービル 磯崎新の設計思想

【コラム・冠木新市】東京ディズニーランドのシンボル、シンデレラ城が新型コロナウイルスで休園中に改修された。シンデレラ城は、ドイツのバイエルン国王ルードウィッヒⅡ世によって創られたノイシュバンシュタイン城をモデルにしたものである。東京ディズニーランドと同じく1983年に完成した「つくばセンタービル」も、実はノイシュバンシュタイン城の影響を受けて創られている。 「狂王ルードウィッヒが純粋に快楽のために建設したこの折衷主義のあだ花、キッチュの権化ともいうべきノイシュバンシュタインは、いまでは確実にポピュリズムの核心にある。《つくばセンタービル》の複合体が独自の象徴作用をなすためには、私はキッチュ的な要素の使用も辞すまい、と考えたことも事実である」「私はノイシュバンシュタイン的なものへ接近する道を歩んでいたのかもしれない」(磯崎新編著『建築のパフオーマンス』PARCO出版局) 「こんな面白いところが、入場料もとらずに開放されているなんて、信じられない」と言った人がいた。私も30年ほど前から、毎日のようにセンタービルを眺めてきたが、見飽きないし、少しも古びないのは驚きである。晴れた日には、3棟のビルの表面がきらきら輝き、美しいかぎりだ。さらに、1000人以上入るホールがあるのに、巨大さを感じさせないのはなぜだろうか。 なかでも中央の楕円形の広場、いや、庭は実に刺激的だ。何もない空間だからである。だが、東洋的なこの庭は、西洋的な3棟の建物を際立たせている。しかし、権力、財力、名誉を求める人にとっては、廃墟をイメージするような空間は腹立たしさを覚えるのに違いない。力を暗示するシンボルが存在しないからである。 霞ケ浦を模した階段から流れる水は、つくば市の位置に相応する中央へと流れ落ちる。センタービルの空っぽの庭は、創造性を触発する器であり、水が主役なのである。私などは、崩れかけたような岩山に大魔神が埋め込まれているのではないかと、つい想像してしまう。 大映の『大魔神』ドーム屋根案を踏み壊す? 大映の『大魔神』(1966)シリーズは、1年間に3本製作された幻想的な特撮作品であった。大映の美術陣は、大魔神の大きさを4.5メートル、人間の2.5倍に設定した。そして、本建築とミニチュアの中間の精巧なセットをつくり上げた。大魔神が神聖な場所を荒らした領主に怒り、建物を破壊する。屋根瓦が崩れ落ちるシーンは、いつ見ても圧巻である。 昨年3月、磯崎新が建築界のノーベル賞ともいえるプリツカー賞を受賞し、私はつくば市民としてとても嬉しかった。さぞかし、つくば市も喜びの声を上げると思っていたのだが、ホームページで儀礼的なメッセージを出して終わりだった。オイオイ、中心市街地活性化を声を大にして呼びかけているのに、それはないだろうと納得できなかった。しかし最近、やっとその謎が解けた。 受賞と同じ時期の3月に策定された「つくばセンタービルのあり方検討業務報告書」で、なんと、センター広場にアーチ状のドーム屋根をつくることが検討されていたからである。道理で素っ気ないはずである。プリツカー賞は、つくば市にとって目障りだったのだろうか。 東京ディズニーランドは、1年前からシンデレラ城の改修計画を発表している。つくば市は、今までなぜ隠していたのか。センタービルの庭を覆い隠す屋根はなにかを物語っている。 センタービルは、つくば市民のものでも、茨城県民のものでもない。今や世界の文化財である。これでは、「世界のあしたが見えるまち」のコピーに傷がつくのではないか。このままでは、きっと世界の建築家、アーティストの批判の的になることだろう。私には、センタービルの岩山から現れた大魔神が、屋根を踏み壊す映像が見えてしまう。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

《映画探偵団》33 つくばセンタービル 磯崎新の設計思想

【コラム・冠木新市】東京ディズニーランドのシンボル、シンデレラ城が新型コロナウイルスで休園中に改修された。シンデレラ城は、ドイツのバイエルン国王ルードウィッヒⅡ世によって創られたノイシュバンシュタイン城をモデルにしたものである。東京ディズニーランドと同じく1983年に完成した「つくばセンタービル」も、実はノイシュバンシュタイン城の影響を受けて創られている。 「狂王ルードウィッヒが純粋に快楽のために建設したこの折衷主義のあだ花、キッチュの権化ともいうべきノイシュバンシュタインは、いまでは確実にポピュリズムの核心にある。《つくばセンタービル》の複合体が独自の象徴作用をなすためには、私はキッチュ的な要素の使用も辞すまい、と考えたことも事実である」「私はノイシュバンシュタイン的なものへ接近する道を歩んでいたのかもしれない」(磯崎新編著『建築のパフオーマンス』PARCO出版局) 「こんな面白いところが、入場料もとらずに開放されているなんて、信じられない」と言った人がいた。私も30年ほど前から、毎日のようにセンタービルを眺めてきたが、見飽きないし、少しも古びないのは驚きである。晴れた日には、3棟のビルの表面がきらきら輝き、美しいかぎりだ。さらに、1000人以上入るホールがあるのに、巨大さを感じさせないのはなぜだろうか。 なかでも中央の楕円形の広場、いや、庭は実に刺激的だ。何もない空間だからである。だが、東洋的なこの庭は、西洋的な3棟の建物を際立たせている。しかし、権力、財力、名誉を求める人にとっては、廃墟をイメージするような空間は腹立たしさを覚えるのに違いない。力を暗示するシンボルが存在しないからである。 霞ケ浦を模した階段から流れる水は、つくば市の位置に相応する中央へと流れ落ちる。センタービルの空っぽの庭は、創造性を触発する器であり、水が主役なのである。私などは、崩れかけたような岩山に大魔神が埋め込まれているのではないかと、つい想像してしまう。 大映の『大魔神』ドーム屋根案を踏み壊す? 大映の『大魔神』(1966)シリーズは、1年間に3本製作された幻想的な特撮作品であった。大映の美術陣は、大魔神の大きさを4.5メートル、人間の2.5倍に設定した。そして、本建築とミニチュアの中間の精巧なセットをつくり上げた。大魔神が神聖な場所を荒らした領主に怒り、建物を破壊する。屋根瓦が崩れ落ちるシーンは、いつ見ても圧巻である。 昨年3月、磯崎新が建築界のノーベル賞ともいえるプリツカー賞を受賞し、私はつくば市民としてとても嬉しかった。さぞかし、つくば市も喜びの声を上げると思っていたのだが、ホームページで儀礼的なメッセージを出して終わりだった。オイオイ、中心市街地活性化を声を大にして呼びかけているのに、それはないだろうと納得できなかった。しかし最近、やっとその謎が解けた。 受賞と同じ時期の3月に策定された「つくばセンタービルのあり方検討業務報告書」で、なんと、センター広場にアーチ状のドーム屋根をつくることが検討されていたからである。道理で素っ気ないはずである。プリツカー賞は、つくば市にとって目障りだったのだろうか。 東京ディズニーランドは、1年前からシンデレラ城の改修計画を発表している。つくば市は、今までなぜ隠していたのか。センタービルの庭を覆い隠す屋根はなにかを物語っている。 センタービルは、つくば市民のものでも、茨城県民のものでもない。今や世界の文化財である。これでは、「世界のあしたが見えるまち」のコピーに傷がつくのではないか。このままでは、きっと世界の建築家、アーティストの批判の的になることだろう。私には、センタービルの岩山から現れた大魔神が、屋根を踏み壊す映像が見えてしまう。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

【つくばセンタービル改修】㊦ 世界的アート建築に屋根?

【鈴木宏子】つくばセンタービルのリニューアル計画では、センター広場に屋根をかける計画も検討されている。今回公表されたリニューアルの方向性案には「(センター広場は)多くのイベントが実施されているが、雨天であると実施が難しいなど運営面のリスクが高いことから、雨天時でも実施できるよう屋根の設置を検討する」とある。 今回公表された整備費用約9億8960万円(または約13億6280万円)は屋根を含めた概算費用になるという。「屋根については公共施設基本計画を進める中で検討」(市長・副市長報告案件指示要項)するとされている。 どんな屋根が検討されているのか。2019年3月策定の「つくばセンタービルあり方検討業務報告書」によると、軽量で透明性の高いアーチ状のドーム型屋根が検討されている。骨組みは木材を材質とし、「広場の楕円形に沿って剛強リング梁を設け、リング梁同士の間にアーチ状の架構を渡す」などとかなり具体的な記載がある。費用は非開示。イベントの都度、組み立てて設置するテント式の立派な屋根も各地の式典やコンサートなどですでに使用されているが、可動式の屋根は検討すらされていない。 固定式のドーム型屋根は建物全体のデザインやアート建築としての思想を変えることにならないか。 プリツカー賞受賞 つくばセンタービルは筑波研究学園都市のランドマークとして1983年に造られた。昨年、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した建築家、磯崎新氏の代表作の一つ(19年3月7日)。ポストモダン建築の代表作品ともいわれる。 センター広場は、ローマのカンピドリオ広場を反転した作品とされる。磯崎氏はその思想を「建築のパフォーマンスーつくばセンタービル論争」(パルコ出版局)で、筑波研究学園都市という国家プロジェクトでつくられた街ゆえに、中心に国家のシンボルを描き出すのではなく「中心を空間にし、空間の中に向かって消滅していくような反転した空間をつくり上げた」と述べている。 新しくつくられた街の中心には、普通なら周囲から目を引くシンボルとなる建物をつくるが、磯崎氏は、国家のシンボルをそびえさせるのではなく、あえて中心に沈み込む空間をつくった。 市はリニューアルの方向性案で、センタービルの課題として「店舗を外から視認できない」と、外から見えにくいことが集客する上で課題の一つだと指摘しているが、センター広場の、沈み込む空間こそが磯崎氏のメッセージとなっている。 文化的な事件 同方向性案で市は「磯崎氏の設計思想を継承する」とし、磯崎氏本人から「この建物が転用されていくことについて、それは建築の宿命。庭(センター広場)は500年くらい残っていくものである」という意見を伺ったと記している。 磯崎氏本人の意見は、情報開示された「つくばセンタービルあり方検討業務委託報告書」(2019年3月策定)にもっと詳しく記載されている。 設計者へのヒヤリングによると、磯崎氏は以下のように語っている。 「センタービルは、文化的な事件として世界的な議論が行われた。メディア的な建築、建物が初めてここで出てきた」 「ベラスケスの『ラス・メニーナス』という絵画を構成する視線としての王=不在の王を引き合いに出すと、この『にわ』の不在はその視線がつくり出す建築として、各所に多くの建築の部分が引用されている。それを『読み解く』ことを建築というものが(書物のように)つくることができるということを示したことが事件であり、この建築のメディア性だった」 「中庭は『広場』(カンピドリオ広場)を反転することによって出来上がっている。それは何かといえば『にわ』として考えられる」 「この建物が『転用されていく』ことについて。それは建築の宿命。そこで自分は『にわ』について考えたい。歴史的に建築建物が壊れたとしても、中庭は祖型として500年ぐらい残っていくであろうし、そうあるように考えていた。それはアートの領域として考えてきたものだった」 「兵馬俑やローマのように、またメトロポリタンのセンター部、神殿の上にかかっている屋根の下の空間のように、この中庭が覆われたとしたら、建物以上に覆うことで皇族の儀式や世界的なイベントを開くにふさわしい空間としてつくばを代表する空間になるようなことぐらいのスケールで考えてほしい」 「そういった公共建築についての『事件=事例』が建築として今も使い続けられていることに、設計者としてはよろしくお願いしますという気持ちである」 市民にとって、つくばセンタービルは今どのような存在だろうか。 第1部 終わり 【訂正】第2段落「整備費用約9億8960万円(または約13億6280万円)の中に屋根は含まれていない」を「整備費用約9億8960万円は屋根を含めた概算費用になるという」に訂正しました。(29日)

【つくばセンタービル改修】㊥ 民意と距離ある計画

【鈴木宏子】つくば駅周辺、つくばセンタービルリニューアル基本計画策定費や中心市街地エリアマネジメント団体の出資金などが予算化され、市民説明会が開かれないまま、中心市街地をイノベーション拠点にしようという取り組みが始まっている。これに対し市民は、中心市街地に何を求めているのか。 市は2017年から居住者や働く人の意向調査、オープンハウス、アンケートなどで市民の意見をたびたび求めてきた。 市民意向調査結果の方はホームぺージなどで公開されている。調査の一つ、中心市街地居住者580人の意向調査結果では、住民は中心市街地に「商業や滞在型施設などが多く立地し活気にあふれている街」「文化施設や公共施設が多く立地する公的機能が中心の街」を求め、「インキュベーション(創業支援)施設」がほしいとの回答は14番目だった。 市民は生活者として中心市街地に、にぎわいや都市機能、文化を求めている。昨年12月に出された市議会の「今後のつくば中心市街地まちづくりについての提言」も市民の意向に沿ったものだ。 今年3月策定の「中心市街地エリアマネジメント検討業務委託報告書」にも市民の意向について「文化・運動施設、商業施設、子育て施設を望む意見が多い。その他高齢者、子供の居場所、市の窓口、業務機能、ホテル」などと記されており、市は市民の意向を把握した上で、今回のリニューアル案を出したことが分かる。 市の計画は民意と乖離(かいり)してないか。3年半前の前回の市長選でも、中心市街地という場所は別にして、つくばに集積する研究機関のさまざまな資源を活用して科学産業をつくり雇用を増やす科学産業都市づくりを訴えたのは大泉博子候補だったが、市民が選んだのは、総合運動公園問題の完全解決を訴えた五十嵐現市長だった。 市民の意向を市長がどう考えたかは議事録が不存在で、「市長・副市長報告案件指示事項」と題した簡単なメモの一覧表しかなく、意思形成過程を検証できなかった。 「市の顔つくば駅が効果的」 なぜセンタービルに2カ所目のイノベーション拠点をつくるかについて「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」では「(つくばセンタービルは)店舗自体を外から視認できないこと等により不特定多数を集客する商業等の入居は難しい」などと消去法で商業機能を省いている。さらに区分所有者の意向として「ホテルオークラ(ホテル日航つくば)から、ホテル運営が厳しい状況であるため相乗効果を生むオフィス機能となることが望ましい、オフィス機能であれば相乗効果が見込めるため連携した取り組みも可能」との意見があるとも説明している。 情報開示された「中心市街地エリアマネジメント検討業務委託報告書」には、つくば市は研究機関のさまざまな資源を活用した小さなビジネスは起こっているが市に根付く企業が少ないと課題を挙げ、「市の顔となるつくば駅周辺で、資源を活用したまちづくりを表現していくことが効果的」とある。 総合運動公園の教訓どこに 「総合運動公園問題の完全解決」を最大の公約に掲げた五十嵐市長が就任直後、著名な弁護士による総合運動公園事業検証委員会を設置した。総合運動公園がなぜ白紙撤回に至ったかについて同委員会は第1に民意との乖離を指摘し、7つの提言をまとめた。①大規模事業は民意の把握を適切に行い、市民の直接的な要請に基づくものでない事業は市民への説明を十分行うこと②事業計画、基礎的検討の段階で議会への適切な報告を行うこと③財源、市の財政負担の程度について確実な財源と見通しを区別して説明することーなどだ。 同検証委の提言を受け、市は18年9月「大規模事業の進め方に関する基本方針」を策定し、市が主体となる総事業費10億円以上の施設整備事業について、①事業の進め方、必要性や効果、課題、将来への影響など市民に必要な情報提供を十分に行うなど、民意を適切に把握する②事業の客観性を高め市民ニーズに即したものとし、意思形成過程の透明性を図るーなどの手続きを定めた。 「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」によると、センタービルの改修費用は、すべての整備を市が実施した場合は約13億6280万円、市が出資する法人が運営整備した場合は約9億8960万円かかるとある。これはセンター広場に設置が検討されている屋根や、エリアマネジメント団体が担うことが検討されている中心市街地全体のまちづくりを含まない。 事業費は全体でいくらになるのか。エリアマネジメント団体の収支見通しをどう見積もっているのか。つくばには創業支援組織が多くあり多くの取り組みを行っているが、これまでやってきたことの分析はされ、課題を明確にしているのか。なぜ民意と乖離してでも中心市街地でなくてはならないのかー。市は総合運動公園の教訓を生かし市民に説明すべきだ。(つづく)

【つくばセンタービル改修】㊤ 具体案、市民に説明なく

【鈴木宏子】つくば駅前「つくばセンタービルリニューアルの方向性案」を、市がホームぺージ(HP)で公表し、30日まで市民の意見を募集している。具体案が市民に公開されたのは初めて。 センタービル1階アイアイモールの一部に市として2カ所目のイノベーション拠点(多様な働き方を支援する場)をつくること、ノバホール西隣のつくばイノベーションプラザなどに吾妻交流センター、市民活動センターと、国際交流、男女共同、消費生活などの機能を集めた市民活動拠点をつくることなどが柱だ。センタービルのイノベーション拠点を運営し、さらに同駅周辺のまちづくりを担う、エリアマネジメント団体を新設することも検討されている。 出資金すでに予算化 一方、今年3月議会でエリアマネジメント団体を設立するための出資金6000万円と、センタービルリニューアルの基本計画策定費990万円などがすでに予算化され(3月9日付)、6月初めには同基本計画策定業務の委託業者が選定された。 工事が実施されればセンタービル建設以来のリニューアルとなるが、担当の市学園地区市街地振興室によると現時点で市民説明会を開く予定はなく、開くかどうかも決まっていない。 市はセンタービルや中心市街地で何をしようとしているのか。意思形成過程や策定過程、考え方が分かるすべての公文書を情報開示請求した。 報告書も検討委も非公表 開示資料によると、センタービルのリニューアルに向けて市内部で検討が始まったのは2018年7月。19年3月に「つくばセンタービルのありかた検討業務報告書」、20年3月に「中心市街地エリアマネジメント検討業務報告書」がそれぞれ策定されたが、内容が市民に説明されることはなかった。片やヴィジョン(18年7月)戦略(20年5月)などイメージや将来像などは公表された。 昨年7月には、エリアマネジメント団体の在り方を検討する検討委員会も設置されたが、会議は第1回目を除き非公開で行われた。 3カ所で役割分担 市が今回初めてHPで公表したイノベーション拠点(多様な働き方を支援する場)は、1階アイアイモールの一部約2500平方メートルにつくる。新施設の面積としては最大だ。リニューアル案には、働く人の交流の場、シェアオフィス、会議室などのビジネスを支援する機能等、子連れ出勤やリモートワークなど多様な働き方を支援し、働く人同士が交流できる場を整備するなどと説明されている。 市がイノベーション拠点を整備するのは、昨年9月にセンタービル近くの市産業振興センターに開設された「つくばスタートアップパーク」(年間事業費約5700万円)に次いで2カ所目となる。 名称はこれまで「イノベーション拠点」として議会に説明されてきたが、今回「働き方を支援する場」と変更された。同振興室によると、中身は議会に説明したイノベーション拠点に変わりはないという。つくば駅周辺をイノベーション拠点とする検討をしており、センタービルの考え方を分かりやすく示すため「働き方を支援」という表記にしたという。 開示資料によると、国家公務員宿舎跡地の70街区にもイノベーション施設をつくる計画がある。つくば駅周辺で計3カ所になる。3カ所の役割分担として「スタートアップパークで創業支援を行い、ある程度の大きさのオフィスが必要になったらセンタービル、さらに従業員が増えるなど企業規模が大きくなったら70街区という流れ」が検討されている。 全体事業費は不明 来年3月までに設立予定のエリアマネジメント団体には、出資金6000万円のほか、センタービルの床の区分所有権の一部を市が現物出資することも検討されている。現物出資されれば所有権がつくば市のものから、新団体の所有となる。経営がうまくいかなかった場合、センタービルはどうなるのか。市振興室によるとまだ検討されてないという。 ほかに中心市街地に新たに、こども体験施設、チャレンジショップ、賃貸住宅やシェアハウス、ゲストハウスなどの箱モノを整備し、中心市街地をイノベーション拠点にする案が検討されているが、費用は全体でいくらになるのか、エリアマネジメント団体の収支がどう想定されているのかは、市民に知らされないままだ。(つづく) つくばセンタービル 筑波研究学園都市のシンボルとして37年前の1983年に建設された。2018年6月に飲食店すべてが撤退し、現在、空き店舗が目立っている。つくば市(52.86%)、ホテルオークラ(ホテル日航つくば、38.48%)、筑波都市整備(8.66%)の3者が区分所有している。

イノベーション施設や市民活動拠点など検討 つくばセンタービル再整備

【鈴木宏子】つくば市が2020年度に本格着手するつくばセンタービル(同市吾妻)のリニューアルについて、市は、現在空き店舗となっている同センタービル1階アイアイモールに、ベンチャー企業を支援するイノベーション施設などを整備し、市と民間によるまちづくり会社を設立して運営することを検討していることが分かった。現在のつくばイノベーションプラザとアイアイモールの一部には新たな市民活動拠点を整備することを検討している。 同市は、開会中の3月議会に提案している当初予算案に、同センタービルを再整備するために必要な機能や配置について検討する基本計画策定費(約990万円)と、まちづくり会社である官民連携中心市街地エリアマネジメント団体の設立出資金(約6000万円)を計上している。 3月議会都市建設委員会での市の答弁などによると、まちづくり会社には6000万円の出資金のほかに、市が所有している同センタービルの区分所有権の一部を現物出資することを検討している。2020年度中に不動産鑑定を実施して価値を算定する予定だ。まちづくり会社は21年3月までに設立予定で、センタービルの区分所有権の一部も市から新会社に移転される。市はその分を株式として持つことになるという。 センタービルのリニューアルではほかに、現在のイノベーションプラザに整備を検討している新たな市民活動拠点は、市の交流センターと市民活動センターや国際交流などの機能を有した新たな拠点という。さらに市の窓口の設置なども検討されている。 「あり方検討報告書」は6機能 一方、情報開示請求し公開された市の「つくばセンタービルあり方検討業務報告書」(19年3月策定)では、今後導入することが好ましい機能として、子育てママ、若者、シニア、ファミリーをターゲットとし、①シェアオフィスやインキュベーション施設などイノベーションのための「クリエイティブビジネス機能」②さまざまな人の趣味や活動を支える新たな「地域のコミュニティ拠点」③子供が遊びながら学べる施設や子育てママを応援する託児機能などを備えたシェアオフィスなど「子育て支援機能」④市役所の窓口など「市民サービス」⑤クッキングスタジオなどカルチャースクール等、市民が立ち寄りたくなる「文化機能」⑥飲食のスタートアップ事業を育てる「食の発信拠点」の6つの機能を導入することが好ましい―などとしていた。 担当する市学園地区市街地振興室は、現在の検討案はあくまでも内部検討案だとしている。19年3月策定の報告書とも異なるという。今後、市民の意見を聞いて基本計画を策定するとしている。 ➡つくば市2020年度予算案はこちら ➡つくば市中心市街地活性化問題に関する過去記事はこちら

プリツカー賞受賞の磯崎新氏設計 つくばセンタービルを脚本家が語る 「仕掛けに満ちた建物」

【鈴木宏子】つくばセンタービル(つくば市吾妻)を設計した磯崎新氏が、建築界のノーベル賞といわれる2019年のプリツカー賞受賞者に選ばれた。つくば市在住の脚本家で、NEWSつくばコラムニストの冠木新市さん(67)は、同ビルを「仕掛けに満ちた建物」として、つくばの七不思議の一つに取り上げ、2014~15年にご当地ドラマを制作した。冠木さんとつくばセンタービルを歩いた。 冠木さんがまず教えてくれたのは建築の思想だ。「普通、中心にはシンボル的な施設が建てられるべきだと考えると思うが、磯崎氏はつくばの中心に沈み込む空洞をつくった」という。磯崎氏自身、著書「建築のパフォーマンス―つくばセンタービル論争」(パルコ出版局)で、筑波研究学園都市という国家プロジェクトゆえに中心に国家のシンボルを描き出すのではなく「中心を空間にし、空間の中に向かって消滅していくような反転した空間をつくり上げた」と記している。一方で建築の思想は、つくば市民の間で議論されたり共有されることはほとんどないまま建築から35年がたった。 同ビルの中心にあるくぼ地のセンター広場には、崩れかけた石が積まれてあり廃墟が表現されている。冠木さんは、商業施設クレオの閉鎖やつくばセンタービル内の商店街アイアイモールからの飲食店全店の撤退など、現在直面している中心市街地の空洞化について「磯崎氏にとってすでに折り込み済みだったのではないか」と話し、「磯崎氏は『断片やあつれき、縫合の合い間が別な物語を語り始めることはないかと期待をもっている』と語っている。つくばの中心にあるセンタービルは空っぽの器であり、情報が入り発信して初めて成り立つメディア(媒介するもの)のようなもので、どう使いこなすのかが問われている」と話す。 ご当地ドラマで魅力紹介 冠木さんが制作したドラマは「サイコドン」という題名で、つくば市のケーブルテレビACCSで全16話が放映された。そのうちの3話分で磯崎氏が折り込んださまざまな仕掛けを紹介している。建物の随所に使われているモンローカーブと呼ばれる曲線、筑波山の筑波石と笠間市の稲田石をわざと崩れたように積み上げて廃墟を表現したセンター広場の石、霞ケ浦の北浦と西浦を表現したとされる水の流れなどだ。 さらに独自の解釈もドラマの中で展開した。ホテル「オークラフロンティアつくば」の建物の最上階の独特な形の窓を東西南北を見つめる瞳と解釈し、南を向く瞳がノバホール2階入り口のピラミット型の窓に重なり、さらに重なった瞳がまっすぐ北を見つめ松見公園の展望台とつながっている―などの解釈だ。「瞳やピラミッドはドラマの撮影中に偶然見つけた。つくばセンタービルは至る所に仕掛けが満ちている。いろいろな建築様式がコラージュされていて奥が深い」と述べ「受賞を機につくばセンタービルが市民の間で再び注目され、いろいろな人が新たな魅力を発見できれば」と語る。 【つくばセンタービル】コンサートホール、店舗、ホテル、交流センター、広場などで構成される複合施設。1983年に完成した。設計者はプロポーザルにより13人の建築家の中から磯崎新氏が選ばれた。日本のポストモダン建築の代表作と評価されている。

レストラン街から飲食店すべて撤退 つくばセンタービル

【鈴木宏子】つくば駅近くのつくばセンタービル(同市吾妻)1階のレストラン街、アイアイモールから22日、飲食店がすべて撤退した。同日、最後に残ったそば店「一成(いちなる)」が閉店。閉店を惜しむ馴染み客らが最後のそばをすする姿が見られた。 同ビルでは今年5月20日、1983年の同ビル開業と同時に開店したピザチェーン店「シェーキーズ」が閉店、続いて同月末、スペイン料理店「ボンド」が閉店し、「一成」が最後に残っていた。 同ビルを運営する筑波都市整備(同市竹園)によると、現時点で新たに入居を予定している店舗や事務所などはないという。同市では、中心市街地の求心力の低下が問題になっていることから、今年度、市が同センタービルの在り方を検討する調査を実施する。同都市整備は「その中で、どうあるべきか考えたい」と話す。 かつて「どの店も行列」 閉店について、一成を運営する一成フードサービスの成山正樹社長(53)は「さびしい限り」と語る。同店は24年前の1994年にオープンした。当時センタービルに空き店舗はなく、どの店も行列ができていた。当時、成山社長は20代で、厨房に入ってそばを打ち、現在の味を完成させた原点が同店だったという。人通りが少なくなった原因については「隣接した場所にたくさんあった駐車場がマンションや商業施設、業務ビルになり、アクセスが悪くなってしまったのも一因ではないか」と話す。 近くに勤務し昼食を食べに来たという牛久市の男性会社員(57)は「月1回必ずセンタービルに来てシェーキーズに立ち寄っていた。一成も今日で閉店になると知ってびっくりした」と述べ、職場の同僚3人で来た男性は「無くなると困ります」と話していた。 新たな在り方 市が調査 同センタービルは日本を代表する建築家、磯崎新氏の設計により建築された。同都市整備の小林睦営業部長は「建てられた当初はつくばの中心の中の中心だったが2009年に常陽銀行、10年に筑波銀行が撤退したころから役割が変わってきた。つくばエクスプレスが開通し、新しい商業施設ができ、人の流れが変わってきた」とし「つくば市から、センタービルの役割を見直してはどうかと言われている。私たちもそうだろうと思うので、その中でこれから何が必要か考えていきたい」とする。 市は中心市街地の活性化を検討する一つとして、同ビルの在り方を検討する調査を7月から来年3月まで約470万円かけて実施する。センタービルの施設や設備の現状、周辺の公共施設との関連、市場性などの基礎調査を実施。同市学園地区市街地振興室は、調査結果をもとに今後の在り方を改めて検討したいとしている。

シェーキーズ20日閉店 つくばセンタービル 35年の歴史惜しみ行列

【橋立多美】つくばセンタービル(つくば市吾妻)1階のレストラン街、アイアイモールにあるピザチェーン店「シェーキーズ筑波学園店」が20日に閉店する。同センタービルがオープンした1983年に開店し、35年間市民に親しまれてきた。西武筑波店、イオンつくば駅前店に続いて中心地区のにぎわいがまた一つ消える。同店前では、閉店を惜しむ人たちが連日行列をつくっている。 シェーキーズは関東を中心に23店舗を展開するピザチェーン。運営本部のアールアンドケーフードサービス(東京都世田谷区)によると、2014年頃から売り上げが下降傾向となり、近隣の商業施設の撤退もあり、やむなく撤退を決めたという。 閉店まで残り3日となった17日の正午過ぎ、40人以上が店の前で行列をつくり順番を待った。市内在住の40代の母親と娘2人は「寂しいし名残り惜しい」。60代の男女5人は「みんなピザ好きで土浦から誘い合って来ていた。これからどうしよう」と話した。牛久在住の49歳の男性は「当時通っていた牛久高校の期末試験が終わると、友人と50ccのバイクで来るのが決まりだった。青春時代の1ページが終わる」。精算を済ませた40代の男性は「今日も変わらずおいしかった」と話した。 4割が空き店舗に 同店はアイアイモールの核店舗の一つ。同モールがあるセンタービルは、建築家、磯崎新の代表作として知られ、コンサートホールや交流センター、ホテルなどの都心機能を併せもつ施設として建設された。 つくばセンタービルを運営している筑波都市整備(同市竹園)によれば、同モールは12区画あるが、同店が閉店することで4割の5区画が空くことになるという。 センタービルオープンに次いで、科学万博が開かれた85年に大型商業施設クレオが誕生した当時は、同モールとクレオを結ぶ平坦な歩道があった。市内外から集まった多くの買い物客は回遊してショッピングを楽しむことができた。 その後94年に歩道がなくなり、クレオと分断された格好になった。さらに2009年に常陽銀行、翌年関東銀行(現筑波銀行)が撤退し、モールの活気が徐々に失われていったという。総務部長の糸賀徹さんは、2銀行が撤退した頃にはオープン当初の来館者数の半分以下になっていたと振り返る。 小林睦営業部長は「シェーキーズは固定客が多くモールの核だっただけに、撤退は痛手」と話す。つくばエクスプレス(TX)開業や周辺に大型商業施設ができたこと、市庁舎が研究学園地区にできたなど社会的背景が変わってセンター機能が失われたとした上で、「人気店の撤退を機に、文化と科学が集積するセンター地区で求められる機能は何かを追求していきたい」とした。 「中心地が疲弊し厳しい状況だと分かっている」と語ったのは、つくばセンター地区活性化協議会事務局長の稲葉祐樹さんだ。中央広場を囲むセンタービル1階のモールは階段で2階のペデストリアンデッキに通じるが、ベビーカーを押す人や高齢者などはビル内のエレベーターに乗るという動線上の問題がある。稲葉さんは「磯崎新の設計を変えず、どう使いやすい施設にするかが課題」と話した。

3月1日トナリエに移転 つくば献血ルーム

現ルームは25日まで 県赤十字血液センターのつくば献血ルーム(同市吾妻)が3月1日、つくば駅前のつくばセンタービル2階から、近くの商業施設トナリエつくばスクエア クレオ4階に移転する。同ルームは24年前の2000年4月に開設し、10年8月にリニューアルされた。移転は開設以来。現ルーム25日まで。移転に伴い26日から閉所となる。 同ルームの献血協力者が2010年度から22年度にかけて約1万人増加し約2万6000人となり、ゆとりある新たな空間が必要になったこと、設備の老朽化などが移転の理由だ。 移転後の床面積は、35平方メートル広い436平方メートル。土日祝日は予約で混雑することから健診室を増設し、健診医師が2人体制で常駐する。待合室には肘掛け付きの椅子が35席用意され、周囲の視線が気にならないよう座席の配置を工夫する。採血ベッドの台数は2台増え計15台となり県内最大数だ。 無料のWi-Fi環境を整え、座席近くに充電可能なコンセントを備える。多様なジャンルの漫画や雑誌、書籍などを閲覧でき、待ち時間や採血後の休憩のため快適で落ち着いた雰囲気を提供する。待合室の壁は筑波山をイメージした山々が連なる図柄となる。 同ルームの22年度献血協力者は2万6127人で目標者数の約2万4000人を約1700人上回っている。年齢別では50代が最も多く29.7%、次いで40代が26.4%だった。年に2回目以上献血するリピート率が高い傾向にある。 一方20代は13.9%、10代は3.1%と、若年層の献血離れが課題だ。同ルームは、Xアカウント(旧ツイッター)での発信や、周辺大学、高校への呼び掛けのほか、県による「10代・はたちの献血キャンペーン」を通して記念品をプレゼントするなど、若年層をターゲットとした周知活動を行い献血協力者確保に力を入れる。 コロナ禍では、学校や職場に献血バスが出張する献血バス会場がキャンセルになり、輸血用血液の在庫がひっ迫するなどの課題があった。現在ではほぼ解消している。 同ルームの平澤伸之所長は「24年ぶりにリニューアルオープンをするということで、快適な空間をぜひ体感してほしい。皆さんに驚いていただけるような献血ルームにできれば」と話し、森髙晋平管理係長は「新ルームはつくば駅直結で、商業施設内にあるので、買い物後に献血することも可能。駅や駐車場からも、よりアクセスしやすくなった献血ルームに足を運んでいただければ」と述べる。 つくばセンタービルを区分所有する新都市ライフホールディングス茨城事業本部(旧筑波都市整備)によると、移転後の跡地は現時点で未定という。(上田侑子) ◆新つくば献血ルームは3月1日午前10時にトナリエつくばスクエアクレオ4階に移転オープンする。受付時間は平日、土日祝日とも午前10時から午後5時30分まで(成分献血は午後5時まで)。「日本赤十字社ラブラッド」アプリで会員登録すれば献血の予約可能。血液検査の結果も確認できる。電話予約も可。問い合わせは電話0120-298-102または電話029-852-7888(つくば献血ルーム)へ。Xアカウントはこちら。

明菜と聖子が市長選挙に出たら? 《映画探偵団》73

【コラム・冠木新市】「中森明菜と松田聖子がつくば市長選挙に出たら、どちらが選ばれるだろうか?」と考えた。2月4日、ホテルグランド東雲で開催した『新春つくこい祭ツアー/80年代の中森明菜を舞い歌う』第1景の本番中だった。 明菜の80年代のヒット曲に合わせ、フラメンコと日本舞踊を次々に披露。参加者の手拍子、足拍子、掛け声でグングン盛り上がった。圧巻は『二人静』の曲によるフラメンコと日本舞踊の競演。扇を短刀に見立て、2人がグサッと刺すしぐさにはどよめきが起きた。 第2景であいさつに立った来賓は「見ていて、青春時代を思い出し涙ウルウルになりました。現在では娘がカラオケで歌っています」と話されていた。明菜再ブ一ムが起きていると知ってはいたが、眼前の40代以上の女性の反応を見て、本当にそうなのだなと実感させられた。 80年代の明菜の曲とつくばの歴史を重ねた構成(映画探偵団72)を理解していただけるか心配だったが、第2景の民謡版『少女A』が終わったあと、長年つくばで暮らす人がわざわざ私のところにいらして、構成が良いとほめてくれた。どうやら分かってくれたようだ。 今回のイベントで明菜のことを調べると、明菜より2年前の80年にデビューし同時期に活躍した松田聖子の存在が浮き上がってきた。 何人かの女性に明菜と聖子のことを尋ねると、皆熱心に2人のことを語ってくれた。髪型、衣装、振付などにこだわりセルフプロデュースする明菜を支持する派とぶりっ子と揶揄されながらも海外での飛躍をめざしていた上昇志向の聖子支持派に分かれる。また、2人とも大好きだという女性も多くいた。 薬師丸ひろ子と原田知世は? 2024年2月はつくば史にとって特別な月になる。2月1日、洞峰公園が茨城県から無償譲渡された。2月12日には、つくばセンタービルに市民センターと消費生活センターと市国際交流協会が入った「コリドイオ」(イタリア語で回廊の意味)がオ一プンするからだ。 明菜派、聖子派がどんな反応を示すか興味がある。洞峰公園を無視しコリドイオのことを語るのか? コリドイオよりも洞峰公園の維持管理に関心を示すのか? 2つの出来事を分けて考えるのか? だが2つの場所は都市の中心軸として一つにつながっている。別のものではない。 つくばセンタービルができた年、筒井康隆原作、大林宣彦監督、原田知世主演の角川映画『時をかける少女』(1983)が公開された。未来から植物採集にやって来た若者に女子高校生が恋をしてしまうというお話。未来人は念波を用い関係者の記憶を書き換える。 この年、先に角川映画でデビューしていた薬師丸ひろ子と原田知世のアイドル競争が始まった。音楽業界の明菜と聖子、映画業界の薬師丸ひろ子と原田知世の活躍も同時期だったのだ。また明菜は角川映画のファンでアルバムを作っている。 今秋にはつくば市長選挙を控えている。鍵を握るのは80年代に明菜と聖子の歌声で育った女性たち、ひろ子と知世の映画を見ていた女性たちである。 だからであろうか、2人が市長選に出たら、どっちが勝つかなどと不埒(ふらち)な妄想が湧いてしまったのだろう。 次のイベントも80年代の女性を対象にするつもりである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

明菜と聖子が市長選挙に出たら?《映画探偵団》73

【コラム・冠木新市】「中森明菜と松田聖子がつくば市長選挙に出たら、どちらが選ばれるだろうか?」と考えた。2月4日、ホテルグランド東雲で開催した『新春つくこい祭ツアー/80年代の中森明菜を舞い歌う』第1景の本番中だった。 明菜の80年代のヒット曲に合わせ、フラメンコと日本舞踊を次々に披露。参加者の手拍子、足拍子、掛け声でグングン盛り上がった。圧巻は『二人静』の曲によるフラメンコと日本舞踊の競演。扇を短刀に見立て、2人がグサッと刺すしぐさにはどよめきが起きた。 第2景であいさつに立った来賓は「見ていて、青春時代を思い出し涙ウルウルになりました。現在では娘がカラオケで歌っています」と話されていた。明菜再ブ一ムが起きていると知ってはいたが、眼前の40代以上の女性の反応を見て、本当にそうなのだなと実感させられた。 80年代の明菜の曲とつくばの歴史を重ねた構成(映画探偵団72)を理解していただけるか心配だったが、第2景の民謡版『少女A』が終わったあと、長年つくばで暮らす人がわざわざ私のところにいらして、構成が良いとほめてくれた。どうやら分かってくれたようだ。 今回のイベントで明菜のことを調べると、明菜より2年前の80年にデビューし同時期に活躍した松田聖子の存在が浮き上がってきた。 何人かの女性に明菜と聖子のことを尋ねると、皆熱心に2人のことを語ってくれた。髪型、衣装、振付などにこだわりセルフプロデュースする明菜を支持する派とぶりっ子と揶揄(やゆ)されながらも海外での飛躍をめざしていた上昇志向の聖子支持派に分かれる。また、2人とも大好きだという女性も多くいた。 薬師丸ひろ子と原田知世は? 2024年2月はつくば史にとって特別な月になる。2月1日、洞峰公園が茨城県から無償譲渡された。2月12日には、つくばセンタービルに市民センターと消費生活センターと市国際交流協会が入った「コリドイオ」(イタリア語で回廊の意味)がオ一プンするからだ。 明菜派、聖子派がどんな反応を示すか興味がある。洞峰公園を無視しコリドイオのことを語るのか? コリドイオよりも洞峰公園の維持管理に関心を示すのか? 2つの出来事を分けて考えるのか? だが2つの場所は都市の中心軸として一つにつながっている。別のものではない。 つくばセンタービルができた年、筒井康隆原作、大林宣彦監督、原田知世主演の角川映画『時をかける少女』(1983)が公開された。未来から植物採集にやって来た若者に女子高校生が恋をしてしまうというお話。未来人は念波を用い関係者の記憶を書き換える。 この年、先に角川映画でデビューしていた薬師丸ひろ子と原田知世のアイドル競争が始まった。音楽業界の明菜と聖子、映画業界の薬師丸ひろ子と原田知世の活躍も同時期だったのだ。また明菜は角川映画のファンでアルバムを作っている。 今秋にはつくば市長選挙を控えている。鍵を握るのは80年代に明菜と聖子の歌声で育った女性たち、ひろ子と知世の映画を見ていた女性たちである。 だからであろうか、2人が市長選に出たら、どっちが勝つかなどと不埒(ふらち)な妄想が湧いてしまったのだろう。 次のイベントも80年代の女性を対象にするつもりである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

80年代の中森明菜とつくば《映画探偵団》72

【コラム・冠木新市】今年も、2月4日ホテルグランド東雲でやる『新春つくこい祭ツアー』(主催/国際美学院、つくば舞踊研究会)のプロデュースで幕を開ける。 演劇的な全3景の構成で、第1景はつくばセンター地区から筑波山に向かう「つくこい」バス車中での踊りの映画上映(実際に踊る)、第2景はゲスト歌手のショ一で、第3景は狸屋旅館の大宴会場で参加者が踊る。 第1景の日本舞踊とフラメンコの踊りには、毎回テ一マがある。2022年は筑波の歌を集めた「筑波組曲」。23年は生誕70周年を迎えた「アジアの歌姫テレサ・テン」の曲。そして、今年は「80年代の中森明菜」の曲にした。 昨年夏にはテ一マを決めていた。中森明菜の82年のデビュー曲『スローモーション』から91年の『二人静』まで、1年1曲で10曲踊る。 私には『二人静』が懐かしい。脚本家デビュー作、角川映画内田康夫・原作、榎木孝明・主演『天河伝説殺人事件』(監督市川崑)のイメージソングだったからだ。作曲家の関口誠人が歌うものと中森明菜が歌うものと、どちらも気に入りカセットテープに録音して繰り返し聞いた。 残念ながら映画の中では流れなかったが、市川監督がなぜ採用しなかったかは聞きそびれてしまった。 私が東京から来たのは1993年 10年間の中森明菜の歌声を10曲聞くうちに発見したことがある。中森明菜が歌姫になる過程と、つくばの街の成長がピッタリと重なるのだ。 デビュー翌年1983年、つくばセンタービルが完成したときは『禁区』。1985年、つくばエキスポセンターが完成し、ショッピングセンター「クレオ」がオ一プンし、国際科学技術博覧会が開幕したときは『ミ・アモーレ』。1987年、つくば市発足(大穂町、豊里町、桜村、谷田部町の4町村が対等合併)のときは『難破船』。 1988年、つくば市と筑波町が合併、つくば都市交通センターが設立されたときは『TATTOO』。1990年、つくば三井ビルがオ一プン、つくば市立中央図書館が開館したときは『水に挿した花』。1991年、つくば都市振興財団が設立され、常磐新線整備に関する基本計画を国が承認したときは『二人静』。 私が新新住民として東京から引っ越して来たのは1993年。つくば市が一段と落ち着いたときだった。30年が過ぎ今では、私もシン・旧住民となったが、できれば中森明菜のデビューした1982年に移転したかったと思う。 西部の荒野に忽然(こつぜん)と街が生まれ、形成されていく様子。また、そのときには中心地区だった谷田部や筑波町が、周辺地区と呼ばれるようになるプロセス。これらを見たかった気もするからだ。 今、中森明菜ブ一ムが起きている。そして、つくば市は「人口増加率全国1位」だ。シン・住民もドンドン越して来ている。そうそう、第2景では、キングレコード専属歌手の比気由美子さんに民謡版『少女A』を゙歌ってもらう。 もしかして、中森明菜デビュー当時と現在のつくばの状況は似ているのかもしれない。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家) ➡NEWSつくばのサポータになって活動を支援してください。詳しくはこちら

80年代の中森明菜とつくば《映画探偵団》72

【コラム・冠木新市】今年も、2月4日ホテルグランド東雲でやる『新春つくこい祭ツアー』(主催/国際美学院、つくば舞踊研究会)のプロデュースで幕を開ける。 演劇的な全3景の構成で、第1景はつくばセンター地区から筑波山に向かう「つくこい」バス車中での踊りの映画上映(実際に踊る)、第2景はゲスト歌手のショ一で、第3景は狸屋旅館の大宴会場で参加者が踊る。 第1景の日本舞踊とフラメンコの踊りには、毎回テ一マがある。2022年は筑波の歌を集めた「筑波組曲」。23年は生誕70周年を迎えた「アジアの歌姫テレサ・テン」の曲。そして、今年は「80年代の中森明菜」の曲にした。 昨年夏にはテ一マを決めていた。中森明菜の82年のデビュー曲『スローモーション』から91年の『二人静』まで、1年1曲で10曲踊る。 私には『二人静』が懐かしい。脚本家デビュー作、角川映画内田康夫・原作、榎木孝明・主演『天河伝説殺人事件』(監督市川崑)のイメージソングだったからだ。作曲家の関口誠人が歌うものと中森明菜が歌うものと、どちらも気に入りカセットテープに録音して繰り返し聞いた。 残念ながら映画の中では流れなかったが、市川監督がなぜ採用しなかったかは聞きそびれてしまった。 私が東京から来たのは1993年 10年間の中森明菜の歌声を10曲聞くうちに発見したことがある。中森明菜が歌姫になる過程と、つくばの街の成長がピッタリと重なるのだ。 デビュー翌年1983年、つくばセンタービルが完成したときは『禁区』。1985年、つくばエキスポセンターが完成し、ショッピングセンター「クレオ」がオ一プンし、国際科学技術博覧会が開幕したときは『ミ・アモーレ』。1987年、つくば市発足(大穂町、豊里町、桜村、谷田部町の4町村が対等合併)のときは『難破船』。 1988年、つくば市と筑波町が合併、つくば都市交通センターが設立されたときは『TATTOO』。1990年、つくば三井ビルがオ一プン、つくば市立中央図書館が開館したときは『水に挿した花』。1991年、つくば都市振興財団が設立され、常磐新線整備に関する基本計画を国が承認したときは『二人静』。 私が新新住民として東京から引っ越して来たのは1993年。つくば市が一段と落ち着いたときだった。30年が過ぎ今では、私もシン・旧住民となったが、できれば中森明菜のデビューした1982年に移転したかったと思う。 西部の荒野に忽然(こつぜん)と街が生まれ、形成されていく様子。また、そのときには中心地区だった谷田部や筑波町が、周辺地区と呼ばれるようになるプロセス。これらを見たかった気もするからだ。 今、中森明菜ブ一ムが起きている。そして、つくば市は「人口増加率全国1位」だ。シン・住民もドンドン越して来ている。そうそう、第2景では、キングレコード専属歌手の比気由美子さんに民謡版『少女A』を゙歌ってもらう。 もしかして、中森明菜デビュー当時と現在のつくばの状況は似ているのかもしれない。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

6000個のランタン つくば駅前を彩る

市内の小中学生がカバーをデザインした約6000個のランタンに火を灯す「ランタンアート2023」(つくばセンター地区活性化協議会主催)が16日、つくばセンター広場などつくば駅周辺で始まった。ろうそくやLEDライトを使ったランタンの光が温かく街を彩る。17日までの2日間開催される。 ランタンは同市吾妻のエキスポセンター前から竹園の商業施設デイズタウン前までの遊歩道約1.2キロにわたって配置された。装飾カバーは公募で参加した市内の小中学校や義務教育学校13校の小中学生が制作。カラフルな絵を描いたり、色画用紙を切り抜いて貼り付けたりしてデザインした。 16日夕には多くの人でにぎわい、写真撮影をする姿が見られた。センター広場のステージでは、ゴスペルグループなどのステージパフォーマンスも行われ、クリスマスシーズンらしい雰囲気を演出していた。 会場の一角には、LEDによって様々な色に変化するペットボトルのランタンが置かれ、多くの人が足を止めて見入っていた。つくば市内で活動する小中学生のプログラミングサークル「CorderDojo(コーダー道場)つくば」がマイクロビットというプログラミング教材を使って制作した作品で、同日開催されたプログラミングのキッズ講座に参加した親子10組の作品も加えて展示された。サークルに参加し、ランタンを制作した春日学園義務教育学校9年生の櫻井みのりさん(15)は「見る人が楽しくなることを意識してプログラミングした」と話した。小学校4年生の時に学校でマイクロビットを使って学び、プログラミングに興味を持ったという。 子どもを連れて鑑賞に訪れた市内の40代男性は「ろうそくや紙を使ったアナログのランタンもデジタルのランタンもあり、温かさと技術とが融合していて新鮮さを感じる」と語った。 「ランタンアート」イベントは2009年から始まり、コロナ禍で2年間は中止となったが、昨年から再開した。今年で13回目の開催となる。毎年つくばの冬の風物詩として人々の目を楽しませている。 イベントを主催する同活性化協議会事務局の岩﨑香央里さんによると、今年は昨年に比べ約1000個多いランタンが配置されているという。岩崎さんは「つくばセンタービル1階中央広場部分の配置デザインは吾妻小学校と吾妻中学校の生徒が連携して考えてくれた。このような学校間の交流も生まれたことは大変うれしい」と語り、「どのランタンも工夫が凝らされた素敵なデザインになっているので、一つ一つゆっくりご鑑賞ください」と来場を呼び掛けた。(田中めぐみ) ◆17日(日)は午後4時45分から午後7時半まで点灯する。天候の状況によって中止、点灯時間が短くなる場合がある。 【追加18日午前11時35分】17日は強風のため中止になりました。 https://youtu.be/2cf6iy8tYaI

人工都市つくばの草創期を記録 齋藤さだむさん写真展

1980年代を中心に建設途上だった筑波研究学園都市の草創期を記録した、つくば市在住の写真家、齋藤さだむさん(74)の写真展「人工都市つくば 草創の風景」が8日から、つくば市千現、ギャラリーネオ/センシュウで開かれている。モノクロ写真やカラーのポストカードなど約80点が展示されている。 平らに造成された土の大地の向こうにぽつんと建つ完成したばかりのつくばセンタービル、造成工事で出た残土が堤防のように長く積み上げられた現在のカピオ駐車場周辺、伐採した樹木をその場で生木のまま燃やし白い煙が立ち込める現在の大清水公園―。筑波研究学園都市建設時の生々しい光景が写る。 完成したばかりの国家公務員宿舎群や、夜は真っ暗になる街中で異様な光を放つパチンコ店のネオンで赤茶色に光る雑木林などの作品もある。 齋藤さんは長野県出身。1977年、筑波大学芸術学系に技官として赴任し、つくばに転居。90年まで同大職員を務めた。大学の仕事の傍ら、国家プロジェクトによってつくられた人工都市の草創期を撮影し記録に収めてきた。 「初めて土浦駅に降り立ち、バスに乗って筑波研究学園都市に入った途端、がーん、がーんという杭を地面に打ち込む大きな音が響いた」と当時を振り返る。 85年に開催されたつくば科学万博のきらびやかな建物や、見物を楽しむ人々の様子、その後、次々に解体されるパビリオンの変遷を記録した写真もある。「何もないところに突然、科学万博の建物ができて、隆盛を極め、人々が楽しんだが、1年も経たないうちに壊された。映画を見ているかのようにわずか1年で変わっていく姿を実体験し、街の運命も人の運命と同じように、生まれて、成長して、新しいものに変わっていくということを衝撃をもって感じ、写真とは何かを考える転機になった」と話す。 写真展は、1979年から2000年までつくばの文化発信拠点だったライブハウス「クリエイティブハウス アクアク」の記録を残したいと、12月から来年2月まで、トークイベントや展示会を開催する有志でつくる「アーカイブ アクアク」(12月8日付)が、同イベントの開催に合わせて企画した。 アーカイブ アクアクのメンバーで同ギャラリーを主宰する山中周子さん(39)は「齋藤さだむさんの作品はただの記録ではなく、そこにある光、そこにあった環境をとらえ、芸術性がある。ずっとつくばにいる人も、新しくつくばに来た人も、いろいろな世代に見てほしい」と来場を呼び掛ける。 齋藤さんは「草創期のころのつくばをテーマに、演劇や音楽のパフォーマンスを展開しようとする若いメンバーたちの考えに賛同して写真展を開いた。46年前に土浦駅に降り立ってからのつくばでの時間の往還を、会場でお会いできる方一人一人と感じたい」と話す。(鈴木宏子) ◆齋藤さだむ写真展「人工都市つくば 草創の風景」は8日(金)~24日(日)の金・土・日曜の午後1~5時まで、つくば市千現1-23-4 マイコーポ二の宮101、ギャラリーネオ/センシュウで開催。入場無料。詳しくは同ギャラリー(メールinfo@neotsukuba.com)へ。

つくば駅前に市民窓口センター 12月1日開所

市内7カ所目 つくば駅前の商業施設、BiVi(ビビ)つくば2階に12月1日、市内7カ所目の市民窓口センター「つくば駅前市民窓口センター」が新設される。住民票や印鑑証明書などを交付する市役所の出先機関で、つくばエクスプレス(TX)の駅前に同窓口センターが設置されるのは同市で初めて。近隣住民のほか、つくば駅を利用する通勤者などの利用も想定し、火曜から土曜の午前10時から午後7時まで開庁する。 他の6カ所の市民窓口センターと同様に、転入届など住民異動届の受付、納税証明書など税に関する証明書の交付などを実施する。平日の午後4時30分までは、自動車臨時通行許可(仮ナンバー)の申請受付、母子健康手帳の交付、市税や介護保険料の納付なども受け付ける。 マイナンバーカードを使って住民票などを発行するコピー機を兼ねた証明書発行機も設置されるほか、各自のスマートフォンであらかじめ申請内容を入力し、同センターの窓口にあるタブレットで申請手続きをする「書かない窓口」の一部機能を導入する。 面積は約196平方メートル、カウンターは、いすに座って申請などができるローカウンターが三つと、立ったままで申請するハイカウンターがあり、待合席が12席ある。 開所に向け、今年9月から11月半ばまで改修工事を実施した。改修費は約3750万円。職員は10人が配置される。 当初は、つくばセンタービルのリニューアルに合わせて、同センタービル南側に新設する市民活動拠点内に設置する計画だったが、同拠点には吾妻交流センターや市民活動センターの機能を合わせた施設のほか、市消費生活センター、市国際交流協会が入居し、市民窓口センターの面積を確保することが難しくなったことから、同窓口センターがBiViつくばに新設されることになった。 BiViつくば2階にはもともと、案内所の「つくば総合インフォメーションセンター交流サロン」と「筑波大学サテライトオフィス」が入居し、イベントを開催したり、学生が勉強するスペースとして利用されてきたが、交流サロンは今年3月に閉館、サテライトオフィスは4月から休館、7月に閉館した。 つくばセンタービル内の市民活動拠点のリニューアルオープンは来年2月の予定だが、BiViつくばの市民窓口センターは一足早く開所する。 ◆同窓口センターの開庁時間は火曜から土曜の午前10時~午後7時。受付時間は午後6時30分まで。日曜、月曜と祝日などは休み。詳しくは電話029-883-1111(同市市民窓口課)

つくばの伝説の謎を解き明かす 舞台「金色姫伝説旅行記」上演

11月3日から3日間 つくば市に伝わる「金色姫(こんじきひめ)伝説」などをテーマに、ドラマ映像や朗読、ダンス、歌などを上演する舞台「金色姫伝説旅行記つくばシルクロード2023」が11月3日から5日まで3日間、つくば市神郡、大谷石造りの「石蔵Shiten」で上演される。構成、演出は市内在住の脚本家、冠木新市さん(71)が手掛ける。主催は市民団体「スマイルアップ推進委員会」(冠木代表)。 舞台は、つくば市神郡の蚕影山(こかげさん)神社に養蚕信仰の一つとして伝わる「金色姫伝説」と、「常陸国のうつろ舟」伝承がテーマ。金色姫伝説は5世紀後半、舟で流れ着いた日本に養蚕技術を伝えたとされる天竺(インド)の金色姫の伝説。うつろ舟奇談は、江戸時代、茨城県の海岸にUFO(未確認飛行物体)のような鉄でできた丸い形の舟が漂着し、中に異国の女性が乗っていたという伝承で、滝沢馬琴の「兎園小説」など、複数の古文書に記されている。 冠木さんは、二つの伝説から着想を得てストーリーを作った。金色姫とうつろ舟に乗っていた女性は共に異国の女性であることなどから、舞台の中で二つの伝説がどのように結びつくのか、また滝沢馬琴が「南総里見八犬伝」に金色姫をどのように描いているかを独自に解釈し、その謎を解き明かしていく。 出演するのは舞踊家でスリランカ出身のナディーシャ・ニルミニさん(45)、つくば市出身のダンサー楓さん(16)、シンガーソングライターの宮田まゆみさんら。楓さんはつくば市出身の高校2年生。5歳からバイオリンを習い始め2020年からストリートダンスを始めた。舞台第3章の「瓦版・うつろ舟事件」で踊るダンスの振り付けを自ら行った。「物語と曲をマッチさせた振りを作るのに苦労した。最初曲に合わせて振り付けを作ったが、冠木さんからもっと自由に踊っていいと言われ、曲調を超えるようなダンスにした」と話す。 ほかに牛久市出身のソプラノ歌手、大川晴加さんが5日に出演し「筑波恋古道」などを歌う。筑波恋古道は冠木さんが作詞し、つくばの地名を散りばめた曲で、大川さんが歌うことで壮大な印象になるという。 衣装を担当する渡辺和子さんは「金色姫の優雅な姫らしい雰囲気を出そうとこだわった。ニルミニさんの美しい自前の衣装を見て、全体的に豪華で派手な衣装になった」と話す。渡辺さんは茨城弁で語り部を務める。 冠木さんは舞台上で、ほぼ一直線につながる洞峰公園からつくばセンタービル、北条のつくば古道入口、蚕影神社、臼井の坂道、筑波山を、養蚕信仰の伝説にちなんで「つくばシルクロード」と名付ける。「舞踊と音楽で、眠っているつくばの歴史と文化を呼び起こしたい」とし「新しい『金色姫伝説』を世界にアピールしたい。若い人にぜひ見に来てほしい」と呼び掛ける。(田中めぐみ) ◆公演「つくつくつくばの七不思議シアター『金色姫伝説旅行記 つくばシルクロード2023』」は11月3日(金)、4日(土)、5日(日)の3日間開催。いずれも開場は正午、開演は午後0時30分。入場料は2000円(消費税込)。定員は各回30人(要予約)。問い合わせは電話090-5579-5726(冠木さん)。

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