金曜日, 4月 26, 2024
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香り立つ「木の酒」づくり つくば 森林総研に新研究棟

木からお酒をつくるー人類の歴史でもおそらく初めてという試みに挑んでいる森林総合研究所(つくば市松の里、浅野透所長)が9日、研究所内に完成させた「木の酒研究棟」を報道関係者らに公開した。 お披露目されたのは「木質バイオマス変換新技術研究棟」。木造平屋建て約140平方メートルの施設で、内部には①木を1センチの木片に粗くチップ化し、②1ミリサイズの木粉状に粉砕、③さらに水と混ぜながら1マイクロメートル(100万分の1メートル)まで微粉砕し、④クリーム状となった木材を糖化・発酵タンクに投入してアルコール度数1-2度の「醸造酒」を作り、⑤さらに2回蒸留することによりアルコール度数30-40度の「蒸留酒」を得るー5工程からなる装置を配置した。 ①は木材のチップ化によく使われるチョッパーと呼ばれる装置で、②は大豆など粒原料の粉砕に使われる粉砕機、④はバイオエタノールの製造などに以前から使われてきた装置の転用。これら既存技術を組み合わせる中で、③の「湿式ミリング処理」がキモとなった。 木材の細胞壁の厚さは一般に、2〜4マイクロメートルと非常に薄く、この薄い細胞壁構造が密集して硬い木材を作り出している。この木材の細胞壁の厚さを砕く新しい前処理技術が「湿式ミリング処理」。ビーズミルと呼ばれる装置を応用して、木材を水中で高硬度のジルコニア製ビーズとの衝突により微粉砕する。木粉と水を所定の割合で混合し、ビーズミルの粉砕槽に流し込むことで1マイクロメートル以下になるまで微粉砕できる。これによって木材の細胞壁の厚さが砕かれ、中に埋め込まれたセルロースがほぐれて露出する。露出したセルロースは市販の酵素(セルラーゼ)によりブドウ糖に分解でき、できたブドウ糖は微生物によって発酵することができる。 熱処理や薬剤処理なしに木材と水だけで処理できることから、同研究所の森林資源化学研究領域、大塚祐一郎主任研究員(46)らは、木材を直接発酵して造る飲用のアルコールの製造が可能と考えた。木の酒の製造技術については2018年に特許出願し2021年に権利化している。これまでに複数の民間企業、団体から特許の使用申請を受けているという。 こうしたことから、これまで所内外に分散する施設・装置に人と材料を移動させながら、行ってきた試験製造の集約化を図ったのが「木の酒研究棟」。実証的な製造技術開発を加速化するとともに、民間への技術移転を推進するための研修に活用することも目的に開設した。 樹種ごとに異なる香り楽しめる 人類は有史以前から、様々な酒類を生み出し消費してきたが、そのほとんどは穀物か果実の糖分を原料とした酒であり、木を直接発酵して酒を造った歴史はない。このため、「木の酒」を飲料とするためには、特に安全確認が必要となった。 原理的には樹種を問わずお酒にできるが、研究所ではスギ、シラカバ、サクラ(ソメイヨシノ、ヤマザクラ)、ミズナラ、クロモジの6樹種を原料に試験製造を行ってきた。食品安全性の面で、箸や楊枝などに使われた経験からアレルギー発症などのおそれのない樹種を選んだということだ。 研究棟の装置では一度に最大2キロの木材を生産プロセスにかけられるが、2キロのスギからはアルコール度数35度の蒸留酒がウイスキーボトル1本分(750ミリリットル)できる。樹齢50年ほどのスギであれば、スギ1本からウイスキーボトルで100本以上の蒸留酒が製造できる計算という。 9日の公開では試飲は行われず、蒸留酒を嗅ぎ比べる香り体験会が催された。スギは樽酒を思わせる香り、シラカバは白ワインのようなフルーティーな香り、ヤマザクラは華やかな香り、ミズナラはウイスキーを感じさせる芳醇な香り、クロモジは柑橘系の爽やかな香り、と樹種ごとに異なる風味が醸し出されるとの評価があるという。 大塚主任研究員によれば、社会実装までには装置の大型化や酒造メーカーの参入などの課題を抱える。これまで市場関係者とは、味覚や風味を判定してもらうための官能試験に協力を得るなどしており、試飲したレストランのシェフなどからは「シラカバやミズナラは食前酒に使えそうだ」との感触を得ているそうだ。(相澤冬樹)

5/3-7 プレミアムビールとうまいもの祭り

屋外で楽しむビール×グルメイベントをゴールデンウィーク期間、5日間連続で開催する。 ビールやハイボールなど様々なお酒や、市内飲食店を中心としたグルメ(ちびっこメニューあり)が楽しめるほか、子どもも楽しめるステージパフォーマンスも行われる。 【期間】 5月3日(水・祝)~5月7日(日) 【時間】 3日(水・祝) 15:00~22:00 4日(木・祝) 12:00~22:00 5日(金・祝) 12:00~22:00 6日(土)   12:00~22:00 7日(日)   12:00~21:00(ラストオーダー 20:00) 【場所】 つくばセンター広場(TXつくば駅A3出口から徒歩3分) 【内容】 ビール、ハイボール、サワー、ワイン、カクテル、手作り唐揚げ、牛すじどて煮等の飲食物の販売、ステージ企画など 【主催】 プレミアムビールとうまいもの祭り2023実行委員会

筑波山梅まつり開幕 4年ぶり通常に

第50回筑波山梅まつり(同実行委員会主催)が18日、筑波山中腹にある筑波山梅林(つくば市沼田)で開幕した。コロナ禍で2020年は会期途中で中断、21年は2週間遅らせて開幕、22年は中止となっており、通常通り開催するのは4年ぶり。 3月19日までの期間中、つくば観光大使の出迎えや、筑波山名物ガマの油売り口上の実演、観光ボランティアによる園内ガイド、梅を使用したメニューの提供などさまざまなイベントが展開される。 現在の開花状況は、1月は気温が低かったが2月から比較的暖かい日が続いたことからほぼ例年並みで、白梅は3分咲き、紅梅は終わりを迎えている。白梅の見頃は2月下旬から3月初旬と見込まれている。 この日、関係者約60人が参加して開園式が催され、つくば観光大使の宮崎絵美さん(39)、井上魅空さん(35)、吉沢綺音さん(22)の3人があでやかな着物姿で来園者を出迎えた。 同実行委員会の神谷大蔵委員長は「4年ぶりに開催できることは大変喜ばしい。筑波山観光振興のため、おもてなしをさらに充実させていきたい」と話し、五十嵐立青つくば市長、五頭泰誠市議会議長、国光あやの衆院議員らは「このイベントが日常を取り戻すさきがけになればよい」などとあいさつした。 今年は50回という節目の開催であるということから、皆で祝い、地酒で乾杯する「乾杯つくば」イベントが催される。3月4日に筑波山水系の酒蔵の地酒を新酒で楽しむ「新酒de筑波山地酒フェス」、同11日につくばワイン・フルーツ特区の認定を受けて醸造されたワインを味わう「つくばワインフェス」を、いずれも梅林内のおもてなし館前広場で開催する。 この日、梅林を訪れた近くに住む斎藤靖夫さん(80)は「地元だけれど3年ぶりに梅まつりに来た。筑波山は自然だけでなく、素晴らしい文化や歴史があることも知ってほしい。そのためにはもっと多くの人に筑波山に来てほしい」と話した。 筑波山梅林は標高約250メートル付近に位置し、中腹の斜面に広がる4.5ヘクタールの園内には約1000本の白梅や紅梅が植えられている。筑波石と呼ばれる斑れい岩の巨石が園内のあちこちにあり、筑波山地域ジオパークの見どころの一つともなっている。(榎田智司)

バス旅と食で地域の魅力発信 ホテル日航つくばが新プロジェクト

ホテルの中だけでなく、地域の魅力を知ってもらおうと、つくば駅前のホテル日航つくば(つくば市吾妻)が新規プロジェクト「つくたび」バスツアーを展開している。 ホテルの資源や周辺の地域資源を見直し、県南部の中心地にあるという立地を生かした新しい事業で、主旨に賛同した地域限定旅行業者「ラール・アワー」(同市大角豆)との協業で、昨年スタートした。 現在、第2弾として、筑波山梅まつりとつくばの地酒を楽しめるランチ付きの日帰りバスツアーを企画し、予約を受け付け中だ。開催日は3月8日。 バスツアーでは筑波山梅林を散策後、市内の酒蔵「浦里酒造店」(同市吉沼)で出来たての新酒や酒かすで作った甘酒などを味わう。いばらき地酒ソムリエS級の資格を持つ同ホテルのスタッフ林智一さんが同行し、魅力を解説しサポートする。ホテルに戻った後はホテル内のレストラン「日本料理つくば山水亭別亭」で同酒造の酒かすを使ったツアー限定のメニューを味わう。新しい日本酒の楽しみ方として、県産のドライフルーツ3種を使った「日本酒サングリア」を楽しむこともできる。参加費は1人1万9500円(税込み)。 林さんは主要銘柄「霧筑波」を造る浦里酒造について「つくばで開催されたG7科学技術大臣会合で提供されたり、新酒鑑評会で金賞を受賞したりと評価の高いお酒をかもす酒蔵」と解説する。「お酒が好きな人、地元の魅力を存分に味わいたい方たちにお薦め。出来立ての新酒の試飲やしぼりたての酒粕を使った手作りの甘酒など、普段は味わうことの出来ない特別な体験ができる」とツアーをアピールする。 昨年11月には、市内のさつまいも専門店「蔵出し焼き芋かいつか」(同市松野木)提供の焼き芋「紅天使」を使ったデザートとオードブルのランチ作りを親子で体験するプランや、ひとり時間を満喫する「ソロ活」企画として、「つくばワイナリー」(同市北条)のぶどう畑で剪定(せんてい)した蔓(つる)を使用したリース作り体験と県産食材を使ったフランス料理のフルコースなどつくばワインを生みだすブドウ畑の土壌や気候、職人の技術が楽しめるプランを企画。どちらも満員となり好評だったという。 林さんは「ホテルは、地域外のお客様との接点であり、地域がにぎわって初めてホテルにもたくさんのゲストが訪れてくれる。そんな地域活性化の一助になりたいと始めたプロジェクト。始まったばかりで試行錯誤中だが、つくばを訪れ、体験や旅を通して、つくばを第二の故郷のように感じてくれる人が増えていけば」と思いを語る。(田中めぐみ)

今村ことよさん 夏にワイナリーをオープン 筑波山麓

市内4カ所目、ツアーも準備 筑波山南麓のつくば市臼井(六所)で、ワイン用のブドウ畑(ヴィンヤーズ)を手掛けてきたビーズニーズヴィンヤーズ(つくば市神郡、今村ことよ代表)が今夏、ワイナリー(醸造所)をオープンさせる。市内4カ所目になる。 「ワイナリー設立はさらに良い品質のワインを作るための新たなスタート地点。訪れるお客様に、隣接するブドウ畑を見ながらワインを味わってもらうための場所として、ワイナリーツアーなどの準備をしっかりとやりたい」と今村さんは今年の抱負を語る。 約600平方メートルの敷地に、建築面積約150平方メートルのワイナリーを建設、販売所も併設する。これまで醸造は牛久市の「麦と葡萄牛久醸造場」で行っていたが、完成後は、栽培から醸造、販売までを一手に行う。 今村さんは守谷市出身。筑波大学で生物学を学び、2001年に博士号を取得した。第一三共(東京)の研究・開発部門を経て、13年に退職し、ワイン農家を目指した。長野県東御(とうみ)市のワイナリーに研修生として入り、栽培や醸造法を学んで、2年後の15年、つくば市臼井に農地を借りてブドウ栽培に着手した。 研究者時代からワインスクールに通った学究肌。筑波山から沢が流れる山麓の土壌は、花崗岩(かこうがん)のミネラルを豊富に含み、ワインに好適のブドウが出来そうだと目を付けた。ただし県南は気候がブドウにとって暑過ぎる。栽培可能な品種を選び、筑波山の風土に合ったワインを醸したい、と考えている。 つくば市が「つくばワイン・フルーツ酒特区」に認定された17年、初出荷を行ったが、自前で醸造が出来ず、「つくばワイン」を名乗ることができなかった。21年に法人となり、22年事業再構築補助金の採択を受け、ワイナリー建設に踏み切った。 ワイナリーが出来ることにより、醸造から瓶詰め、販売までの作業の流れがスムーズになり、さらに購入者との交流機会が増えると考えている。 現在ブドウ畑は沼田と臼井にあり、白ブドウのシャルドネ、セミヨン、ヴィオニエ、ヴェルデーリョと、黒ブドウのシラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルド、タナなど多品種を栽培している。ほとんどは一人で管理しているが、収穫時などには仲間やSNSで興味を持ってくれた人たちが駆け付ける。 臼井地区に住んで7年になり、地域に溶け込み、草刈りや排水機場の清掃、芝焼きなど、地域のボランティア活動にも積極的に参加している。地域住民は「耕作放棄地がブドウ畑になって景色が良くなった、六所地区はNPO団体が多く活動する。地域は高齢化が進み過疎化が進む一方だが、一筋の光が見えてきたような気がする」と話す。 市内のワイナリーは、つくばワイナリー(北条、19年9月17日付)、つくばヴィンヤード(栗原、20年10月16日、平沢・漆所地区にヴィンヤーズをもつル・ボワ・ダジュール(上横場)の3カ所がある。(榎田智司) ➡ワインに関する過去記事はこちら ➡今村ことよさんに関する過去記事はこちら

お泊りは輪泊で 《ポタリング日記》11

【コラム・入沢弘子】目が覚めたら、愛車BROMOTON(ブロンプトン)がこちらを向いている。窓をのぞくと、真下を通過する常磐線。そうでした、昨夜は、自転車と一緒の部屋で過ごせる、JR土浦駅の星野リゾートBEB5土浦に泊まったのでした。 2020年秋、「ハマる輪泊」をキャッチフレーズに開業した同ホテル。自転車を部屋に持ち込んで宿泊することが可能です。開業当初から興味があったのですが、近いだけに泊まる機会がありませんでした。今回は、全国旅行支援適用期間ということもあり、自転車でポタリングして宿泊することにしたのです。 つくば市の自宅からは7キロ。いつも使う慣れた道を通ること20分。土浦市立図書館で本を借り、自転車を押したまま、駅ビルのプレイアトレ土浦のカフェに行き、コーヒーを片手に数ページ読む、というところまでは日常的なこと。今日は、その後にホテルのロビーへ。非日常の始まりです。 チェックインカウンターでの手続き後は、自転車を押したまま部屋に入ります。早速、壁のサイクルラックに自転車をディスプレイ。間接照明だけを点灯し、暗闇に浮かび上がる愛車の姿を堪能します。 掛け時計はチェーンホイールを組み合わせたデザイン。棚に設置されている自転車関連の本や、つくば霞ケ浦りんりんロードのマップを参考のために眺めてみます。かすかに聞こえる列車の警報音。ロールスクリーンを上げると、ホームにいる人と目が合いビックリ。線路が近いことを感じない静かな部屋で、行き交う人や電車を眺めているうち、夜のとばりが降りてきました。 壁にディスプレイした自転車を眺める 空腹を感じロビーに向かいます。このホテルはルームサービスがありませんが、24時間、カウンターで飲み物とスナック類を販売しています。落ち着いた照明のロビーにはテーブルやこたつ、本棚に隠れるように配置されたソファなどがあり、ちょっとした隠れ家のよう。 常陸野ネストビールと、土浦特産のレンコンを使用したスナックを注文。ワインを飲みながら、こたつでボードゲームに興じる女性グループ。ミキサー付き自転車をこいで、スムージーを作る家族連れ。この開放的でくつろいだ雰囲気は、グランピングのパブリックスペースに似ています。 部屋に戻り、今度はガラス張りの浴室でバスタブのお湯に浸りながら、壁にディスプレイした自転車を眺めます。明日はどこをポタリングしようか。この場所からは、つくば霞ケ浦りんりんロードで、霞ケ浦にも筑波山方面にも行くことが可能。常磐線で輪行した先を回るのもいいな。 でも、土浦市内の食べ歩きやお土産買い歩きも魅力的。あれこれ思いを巡らせ、ポタリング気分が盛り上がった一夜でした。(広報コンサルタント)

お泊りは輪泊で《ポタリング日記》11

【コラム・入沢弘子】目が覚めたら、愛車BROMOTON(ブロンプトン)がこちらを向いている。窓をのぞくと、真下を通過する常磐線。そうでした、昨夜は、自転車と一緒の部屋で過ごせる、JR土浦駅の星野リゾートBEB5土浦に泊まったのでした。 2020年秋、「ハマる輪泊」をキャッチフレーズに開業した同ホテル。自転車を部屋に持ち込んで宿泊することが可能です。開業当初から興味があったのですが、近いだけに泊まる機会がありませんでした。今回は、全国旅行支援適用期間ということもあり、自転車でポタリングして宿泊することにしたのです。 つくば市の自宅からは7キロ。いつも使う慣れた道を通ること20分。土浦市立図書館で本を借り、自転車を押したまま、駅ビルのプレイアトレ土浦のカフェに行き、コーヒーを片手に数ページ読む、というところまでは日常的なこと。今日は、その後にホテルのロビーへ。非日常の始まりです。 チェックインカウンターでの手続き後は、自転車を押したまま部屋に入ります。早速、壁のサイクルラックに自転車をディスプレイ。間接照明だけを点灯し、暗闇に浮かび上がる愛車の姿を堪能します。 掛け時計はチェーンホイールを組み合わせたデザイン。棚に設置されている自転車関連の本や、つくば霞ケ浦りんりんロードのマップを参考のために眺めてみます。かすかに聞こえる列車の警報音。ロールスクリーンを上げると、ホームにいる人と目が合いビックリ。線路が近いことを感じない静かな部屋で、行き交う人や電車を眺めているうち、夜のとばりが降りてきました。 壁にディスプレイした自転車を眺める 空腹を感じロビーに向かいます。このホテルはルームサービスがありませんが、24時間、カウンターで飲み物とスナック類を販売しています。落ち着いた照明のロビーにはテーブルやこたつ、本棚に隠れるように配置されたソファなどがあり、ちょっとした隠れ家のよう。 常陸野ネストビールと、土浦特産のレンコンを使用したスナックを注文。ワインを飲みながら、こたつでボードゲームに興じる女性グループ。ミキサー付き自転車をこいで、スムージーを作る家族連れ。この開放的でくつろいだ雰囲気は、グランピングのパブリックスペースに似ています。 部屋に戻り、今度はガラス張りの浴室でバスタブのお湯に浸りながら、壁にディスプレイした自転車を眺めます。明日はどこをポタリングしようか。この場所からは、つくば霞ケ浦りんりんロードで、霞ケ浦にも筑波山方面にも行くことが可能。常磐線で輪行した先を回るのもいいな。 でも、土浦市内の食べ歩きやお土産買い歩きも魅力的。あれこれ思いを巡らせ、ポタリング気分が盛り上がった一夜でした。(広報コンサルタント)

幼い頃の食べ物 《くずかごの唄》121

【コラム・奥井登美子】「いつ何があってもおかしくないです。無理をなさらないでくださいね」。大動脈が乖離(かいり)し、大出血。運よく命をとりとめ、退院する時に夫が医者から言われた言葉を、2人は噛(か)みしめながら生きてきた。 10年前、東京の本郷の画廊で「丸木位里さんを偲(しの)ぶ会」(7月3日付)の最後の日。製薬会社の昔の仲間たちがたくさん集まってくれた。「僕は大動脈の中膜(ちゅうまく)が乖離して、いつ死んでもおかしくない体だ。今日は生前の葬式だと思って、おおいに、笑って楽しく、飲んでください」 「葬式なのに、なぜ? 笑うんですか」 「生きていることがうれしいんだよ。丸木位里さんも俊さんも、原爆という人間の究極の悲劇を見た人だから、とても優しい人だった。私たちに命の楽しみ方を教えてくださった。君たちとの出会いもそうだよ」 私は食いしん坊なので、人との出会いが食べ物と結びついている。秋のある日、丸木先生の家にマツタケがたくさん送られてきて、「食べろ、食べろ、好きなだけ食べろ」と先生に言われ、マツタケをぜいたくに、おなかいっぱい食べた日のことを思い出していた。 ぬかみそ漬け、イワシの塩焼き… その頃から、私の頭の中は夫に何を食べさせようか、という課題でいっぱいだった。日仏薬学会の事務長だった夫は、ワインもフランス料理もくわしい。我が家はワイングラスがあふれていたのに、どうしたわけか、自分が幼い時に食べたものだけが食べ物で、ほかのものは食べなくなってしまっていた。 昭和初期の食べ物。ぬかみそ漬けの樽(たる)も大きくて、邪魔だけれど捨てるわけにいかない。かつお節をたくさん入れた千六本(せんろっぽん)ダイコンのみそ汁。ナスのぬかみそ漬け。味の濃い卵焼き。サンマやイワシの塩焼き。ダイコンおろし。しょうゆをたくさん入れた煮魚。 土浦はしょうゆの町。何にも、しょうゆを大量に使う。塩分は1日6.5グラムと医者に言われているのに、彼の言う通りにしていたら、15グラムは軽く超えてしまう。「今日は庭のギンナンをいれた茶碗蒸しが食べたいなあ。早く、早くしてくれよ」 食べたくなると、待つことができない。私は宇宙人につかえる魔法使いに変身するしかない。(随筆家、薬剤師)

幼い頃の食べ物 《くずかごの唄》121

【コラム・奥井登美子】「いつ何があってもおかしくないです。無理をなさらないでくださいね」。大動脈が乖離(かいり)し、大出血。運よく命をとりとめ、退院する時に夫が医者から言われた言葉を、2人は噛(か)みしめながら生きてきた。 10年前、東京の本郷の画廊で「丸木位里さんを偲(しの)ぶ会」(7月3日付)の最後の日。製薬会社の昔の仲間たちがたくさん集まってくれた。「僕は大動脈の中膜(ちゅうまく)が乖離して、いつ死んでもおかしくない体だ。今日は生前の葬式だと思って、おおいに、笑って楽しく、飲んでください」 「葬式なのに、なぜ? 笑うんですか」 「生きていることがうれしいんだよ。丸木位里さんも俊さんも、原爆という人間の究極の悲劇を見た人だから、とても優しい人だった。私たちに命の楽しみ方を教えてくださった。君たちとの出会いもそうだよ」 私は食いしん坊なので、人との出会いが食べ物と結びついている。秋のある日、丸木先生の家にマツタケがたくさん送られてきて、「食べろ、食べろ、好きなだけ食べろ」と先生に言われ、マツタケをぜいたくに、おなかいっぱい食べた日のことを思い出していた。 ぬかみそ漬け、イワシの塩焼き… その頃から、私の頭の中は夫に何を食べさせようか、という課題でいっぱいだった。日仏薬学会の事務長だった夫は、ワインもフランス料理もくわしい。我が家はワイングラスがあふれていたのに、どうしたわけか、自分が幼い時に食べたものだけが食べ物で、ほかのものは食べなくなってしまっていた。 昭和初期の食べ物。ぬかみそ漬けの樽(たる)も大きくて、邪魔だけれど捨てるわけにいかない。かつお節をたくさん入れた千六本(せんろっぽん)ダイコンのみそ汁。ナスのぬかみそ漬け。味の濃い卵焼き。サンマやイワシの塩焼き。ダイコンおろし。しょうゆをたくさん入れた煮魚。 土浦はしょうゆの町。何にも、しょうゆを大量に使う。塩分は1日6.5グラムと医者に言われているのに、彼の言う通りにしていたら、15グラムは軽く超えてしまう。「今日は庭のギンナンをいれた茶碗蒸しが食べたいなあ。早く、早くしてくれよ」 食べたくなると、待つことができない。私は宇宙人につかえる魔法使いに変身するしかない。(随筆家、薬剤師)

新治本店を復活させる 土浦駅ビル内の佐藤酒店4代目【キーパーソン】

土浦駅ビル「プレイアトレ土浦」2階。書店、焼き芋店、どら焼き店、パン店が並ぶフロアーに、軽く飲食もできる酒類販売店がある。土浦市新治地区の商業施設にも出店していた佐藤酒店だ。29歳の4代目店主、佐藤栄介さんが、長く閉めていた本店(新治地区沢辺)を近くリニューアル開店させると知り、若い店主に酒屋への思いを聞いた。 「土浦小町」「土浦梅酒」が並ぶ アトレ店では、茨城県内で造られる日本酒、焼酎、クラフトビール、ワイン、リキュール、つまみ類だけを販売しており、全国ブランドの酒類は扱っていない。酒は売るだけでなく、レジを別にしたスタンドで飲めるようにしてある。JR常磐線利用者の「軽く一杯」には好都合で、書店や和菓子店などと同居する面白い空間だ。「もっと飲みたい」客には、駅周辺の店を紹介する。 「アトレ店を開いたのは2019年12月。駅ビルに星野リゾートBEB5土浦がプレオープンする半年前だ。星野を核にアトレをサイクリングリゾートの拠点にしようと企画するJR(アトレを経営)、茨城県(自転車観光を振興)、土浦市(駅周辺商業を振興)から『茨城の酒を売る店も入れたい』とオファーがあり、引き受けた。JR・県・市の狙いと、うちが大事にしている地元酒が合致したからだ」 店には、土浦市農業公社が主導して商品化したそば焼酎「土浦小町」(消費税込み1500円)も置いている。佐藤酒店の本店がある新治地区の「常陸秋そば」を使い、水戸の酒蔵に造ってもらった焼酎だ。「小町の里」は新治地区の観光スポット。新治産の梅を使い、つくば市の稲葉酒造に製造を頼んだ「土浦梅酒」(同1980円)も並ぶ。 商業施設店を閉め、2店舗を維持 佐藤酒店は、曾祖父豊一郎氏が1948年、旧新治村沢辺の県道つくば千代田線沿いに創業。同村大畑にショッピングセンター「さん・あぴお」がオープンした1993年、同施設内に2号店を出した。2004年、沢辺の本店を閉め、駅ビルに出店するまでは「さん・あぴお」店だけを営業してきた。 しかし、本サイトの記事「専門店街運営の商業協同組合が破産 土浦の『さん・あぴお』」(11月22日掲載)にもあるように、新治商業協同組合の行き詰まりに伴い「さん・あぴお」店を閉め、長く閉じていた沢辺の本店を12月に復活させ、2店舗体制を維持する。 商業協同組合立ち上げに奔走したのが、祖父忠氏。「さん・あぴお」店を切り盛りしたのが、父豊栄氏。4代目栄介さんは、アトレ店を軌道に乗せ、以前から本店再生構想を温めてきた。「リニューアル店は、駅ビル店を経営する有限会社サトウとは別の会社が担当する。父の名が入る株式会社豊栄をすでに立ち上げた」 4代目は、「さん・あぴお」店閉店にめげず、佐藤酒店発祥の地、沢辺本店を復活させ、新しい展開を考えている。 【さとう・えいすけ】県立土浦湖北高卒。2021年、東洋大学法学部を中退、家業の佐藤酒店(法人名は有限会社サトウ)に戻り、専務。父の後を継ぎ、22年11月から社長。初代豊一郎氏は新治商工会会長、2代忠氏は同会副会長、3代豊栄氏は同会青年部長。1993年、旧新治村沢辺(本店所在地)生まれ、同所に在住。 【インタビュー後記】私が好きな地元日本酒は浦里酒造店(つくば市)の「霧筑波」。料理屋では置いてあるかどうか必ず聞く。家では「剣菱」の清酒(旧2級酒)。ウイスキー類は米産バーボン「ワイルドターキー 8年」。ビールはサッポロの「黒ラベル」。ワインはチリ産の安物。焼酎はあまり飲まない。友人からもらった「土浦小町」はまだ飾ってある。(経済ジャーナリスト・坂本栄)

パイオニアは元養護教員【北条宿でコーヒーブレイク】1

つくば市内にいくつもある喫茶店は、老舗から新鋭まで様々な展開を見せている。古民家を活用した店もあり、研究学園地区の外側に店を構える例も増えている。 その中で、行政のくくりでいう筑波地区の「北条宿」(宿=しゅく=は街道の拠点となったところ。本稿ではあえてこの呼称を使う)には、この手の業種が存在しなかった。 補足するなら過去には存在しなかったといった方が適当だ。少なくとも地域の人々は「スナックはあったかもしれないが、喫茶店は聞いたことがない」「そもそもお茶は家で飲むもんだ」と答える。 2022年、現実には3件の喫茶店が存在する。喫茶店やカフェという業種が、いつの間にか北条の町なかに定着したことは、実は新鮮な風景なのだ。北条宿においてコーヒーを飲むことのできる喫茶店を訪ね歩く。 サイフォン式に憧れて 初回に訪ねる「茶房 佳風(さぼう かふう)」は、国道125号の北条歩道橋交差点から南に入った一軒家の店舗。ガソリンスタンドが国道側に所在するため目立たないたたずまいだが、この店こそが北条の地にコーヒーブレイクのスポットを開拓したパイオニアだ。 店主の横山ひろ子さん(71)は、元は養護学校の教員だった。家族の介護のために50歳で職場を辞する。コーヒー豆の焙煎(ばいせん)や淹(い)れ方に触れたのは、教員時代に余暇の楽しみとして参加した公開講座だったそうだ。 「サイフォンで淹れるコーヒーの透き通ったワインのような色がとても素敵で、いつか自分でやってみたいと感じました。教員を辞め、その後家族の介護からも解放されたとき、まだ追いかけられる夢として、コーヒーがあったんです」 当時、公開講座を開いていたのは、利根町などで「コーヒーハウスとむとむ」を経営する小池康隆社長。再び喫茶店のいろはを学ぶために門を叩き、店舗の立地条件や客足の季節毎の変動など、とむとむのノウハウを伝授してもらった。2006年9月に開店した。 クラブハウスサンドは逸品 なぜ北条だったのか? 「自宅から通えるところで人の集まる町が北条でした。小池社長からは、役所と学校の近くは意外に客は入らないよと言われましたね。開店の頃はすごい人だかりで1カ月ほどはてんやわんやでした。でも言われたとおり、年が明けるとお客さんが来なくなった。まさしくお茶は家で飲むもの。そういった風習との戦いというか、じっと待つ毎日でした。その間、絶やさなかったことはいつでも笑顔でいること。それも小池社長の教えです」 店が軌道に乗ったのは3年ほど経過してからだという。客層は喫茶店になじんだ団塊世代が中心となり、午後7時で閉店するところを「8時までやってよ」と要望されたという。 横山さんのコーヒーは蒸気圧でお湯をフラスコからロートへ移しながらコーヒー粉に浸すサイフォン式。カップ2杯分が提供される。サイフォンによるコーヒー抽出は強めの苦みと濃い味わいになるといわれているが、佳風のコーヒーは横山さんが憧れた透き通ったワイン色を醸し出すため、ソフトブレンドのようにあっさりとしている。 手伝いを頼むこともあるが、大半の仕事は横山さんが1人で行う。想像以上にメニューの内容も充実している。お勧めを聞くと「クラブハウスサンド。学生の頃、浜松町の世界貿易センタービル最上階のレストランでホールスタッフのアルバイトをしていました。そのときのメニューでとてもおいしそうだったことと、厨房の人たちの手際を思い出しながら、これは喫茶店でもできるかな、と」 横山アレンジが施されてはいるが、佳風のクラブハウスサンドは、今は貿易センタービル改築のために閉店してしまった浜松町東京會舘仕込みの一品だった。(鴨志田隆之) 続く

老人食のむずかしさ 《くずかごの唄》109

【コラム・奥井登美子】「今日のぬかみそはナスにしてくれ」。ナスのぬかみそ漬けくらい難しい漬物はない。色がすぐに変わってしまう。それなのにうちの亭主は、食べたくなって叫んだら、2~3分のうちに色のよいナスを出さないと怒る。 亭主が製薬会社の研究所に勤務していたころ、日仏薬学会の事務長をやっていた。フランスのシラク大統領が来日した時も握手してもらったらしい。 当時の日仏薬学会の会長は東京理科大・薬学教授の辰野高司先生。辰野先生は、おじい様が東京駅を設計した辰野金吾氏。父上は東大のフランス文学者・辰野隆先生で、フランスに対する思いがハンパな人ではなかった。 亭主は高司先生に、フランス人との付き合い方を手に取って教えていただいたおかげで、ワインの選び方、フランス料理に使うチーズの種類などにも詳しくて、私も彼に教わって、家でフランス料理風のニセ料理をせっせと作ったものだった。 仏壇はしょうゆつぎの隠し場所 そのフランス通が85歳を過ぎてから、自分が幼いころ食べていたものだけが食べ物だと思い込むようになってしまった(幼いころの食べ物だけが食べ物と思い込む老人は多いらしい)。味付けはしょうゆとみそ。昔の人がよく食べた、ぬかみそ漬けが大好きで、白いご飯に漬物、半熟の卵があればいいと言う。 昔、あれほど好きだった牛肉のステーキも、食べてくれない。しょうゆを入れてすき焼き風にすれば少し食べてくれる。タンパク質を、どこでどうやって食べさせたらいいか、私は困ってしまった。幸い、霞ケ浦医療センター病院で栄養指導を受けることができた。 私が「塩分制限で塩分は1日6.5グラムですからね」と言うと怒ってしまう彼も、「栄養指導の時に、先生に言われたでしょう。1食2グラムなのよ」と言うと、怒らないで聞いてくれるので助かる。しかし、敵もさるもの。悪知恵を働かせて抵抗するので始末が悪い。 私がこの家に来た時に、近所に住む親戚のばあさんたちから、仏壇の掃除の仕方が悪いとよく叱られた。バラの花を供えた時も怒られた。私は今でも、仏壇の中だけはあまり見たくない場所になってしまった。 亭主は、私が見たくない仏壇の引き出しにしょうゆつぎを隠して、私が苦心して用意した減塩の料理にも、こっそりとしょうゆをかけていたらしい。(随筆家、薬剤師)

老人食のむずかしさ 《くずかごの唄》109

【コラム・奥井登美子】「今日のぬかみそはナスにしてくれ」。ナスのぬかみそ漬けくらい難しい漬物はない。色がすぐに変わってしまう。それなのにうちの亭主は、食べたくなって叫んだら、2~3分のうちに色のよいナスを出さないと怒る。 亭主が製薬会社の研究所に勤務していたころ、日仏薬学会の事務長をやっていた。フランスのシラク大統領が来日した時も握手してもらったらしい。 当時の日仏薬学会の会長は東京理科大・薬学教授の辰野高司先生。辰野先生は、おじい様が東京駅を設計した辰野金吾氏。父上は東大のフランス文学者・辰野隆先生で、フランスに対する思いがハンパな人ではなかった。 亭主は高司先生に、フランス人との付き合い方を手に取って教えていただいたおかげで、ワインの選び方、フランス料理に使うチーズの種類などにも詳しくて、私も彼に教わって、家でフランス料理風のニセ料理をせっせと作ったものだった。 仏壇はしょうゆつぎの隠し場所 そのフランス通が85歳を過ぎてから、自分が幼いころ食べていたものだけが食べ物だと思い込むようになってしまった(幼いころの食べ物だけが食べ物と思い込む老人は多いらしい)。味付けはしょうゆとみそ。昔の人がよく食べた、ぬかみそ漬けが大好きで、白いご飯に漬物、半熟の卵があればいいと言う。 昔、あれほど好きだった牛肉のステーキも、食べてくれない。しょうゆを入れてすき焼き風にすれば少し食べてくれる。タンパク質を、どこでどうやって食べさせたらいいか、私は困ってしまった。幸い、霞ケ浦医療センター病院で栄養指導を受けることができた。 私が「塩分制限で塩分は1日6.5グラムですからね」と言うと怒ってしまう彼も、「栄養指導の時に、先生に言われたでしょう。1食2グラムなのよ」と言うと、怒らないで聞いてくれるので助かる。しかし、敵もさるもの。悪知恵を働かせて抵抗するので始末が悪い。 私がこの家に来た時に、近所に住む親戚のばあさんたちから、仏壇の掃除の仕方が悪いとよく叱られた。バラの花を供えた時も怒られた。私は今でも、仏壇の中だけはあまり見たくない場所になってしまった。 亭主は、私が見たくない仏壇の引き出しにしょうゆつぎを隠して、私が苦心して用意した減塩の料理にも、こっそりとしょうゆをかけていたらしい。(随筆家、薬剤師)

高性能ベーゴマに「剣」の筆文字 土浦の匠が世に問う新シリーズ

「メカベー」はメカニカルベーゴマ。スピニングトップ社(土浦市港町)代表取締役の高橋克己さん(65)が医療機器開発のスキルを活かし、最長10分間も回り続ける安定感とステンレス製の美しいボディーの高性能ベーゴマを作り上げた。11日には、筆文字のデザインを施した新シリーズ「剣(つるぎ)」の第1弾が発売される。 医療機器の製作スキル生かし 今回登場は、コマの天面に筆文字「剣」をあしらった「Japanese calligraphy(ジャパニーズカリグラフィー)シリーズ」の第1弾。書道家の江森葵鶯(きおう)さんの筆による。筆文字の背景色はシャンパンゴールド、マットシルバー、レーシンググリーン、ワインレッドの4種類がある。これまでにも「虎」や「深海」「一撃入魂」という漢字フォントでデザインした「メカベー」を発表して海外ファンの人気も高い。「剣」も発売前から問い合わせがきているという。 製作者の高橋さんは国内や外資系の医療機器メーカーで40年間医療機器開発、品質保証業務に従事した。日本人の体に合わせた人工心臓駆動装置や血管内の病変部を削る高速回転ドリルなど、高度な精密さが要求される医療機器の製作に携わった。手術室にも何度も入り、機器の改良を繰り返してきたという。培った技術を活かしたいと定年退職後の2017年に会社を起こし、超精密なベーゴマ「メカベー」を作り上げた。 高橋さんは「医療機器を作って病気の人を治そうという使命感で働いてきたが、ベーゴマにも人を元気にする力があると感じる。子どもの教育にも良く、お年寄りの方も健康にする力がある。作り続け、世界中にメカベーを広めたい」と話す。 その特徴は遊びやすさと強さ。ステンレスなどの素材でできており、10分間回すこともできる。普通のベーゴマは紐を結んでこぶを作りコマに巻き付けるが、「メカベー」はこぶを作る必要がなく、より簡単に紐を巻き付けることができ、誰でも短い練習時間で回せるようになるという。 高速での回転バランスを保つ機構や紐巻きの構造などは3つの特許を取得。さらにコマの外周の直線と曲線を交えたくぼみ形状にも特徴があり、「メカベー」どうしで対戦させた時には打撃力が伝わって弾け飛ぶように設計されている。この外周の形状は意匠登録を受けている。パーツを交換したり、内部に5円玉硬貨を入れたりして自分好みにカスタマイズできるのも特徴だ。安定性があるため、他の種類のベーゴマと対戦させると競合するものがないほど強いという。 高橋さんはこれまで、強さを追求した「バトル系メカベー」や美しさを際立たせた「フィギュア系メカベー」、コマを回すのに適した台「バトルリング」などを製作し、オンラインショップで販売してきた。 ベーゴマを改良したおもちゃにはタカラトミーが販売する「ベイブレード」がある。世界80以上の国と地域で発売されており、累計出荷数は5億個を突破。世界大会も行われているため世界中にベーゴマ愛好家がいる。「ベイブレード」からベーゴマ愛好家となった人が、より強く美しいベーゴマを求め「メカベー」について問い合わせしてくるそう。今後は同シリーズの系譜で、日本の思想や文化を象徴する「柔」や「道」「龍」などの筆文字デザインの「メカベー」を製作予定。桜をイメージしたデザインも考案、開発中だ。(田中めぐみ) ◆「剣」は3960円(税込み)。「メカベー」はAmazon、楽天市場、メカベーオンラインショップで購入が可能。メカベーの回し方・基本フォームはこちらの動画で。

カスミの新業態「BLANDE」つくば並木店オープン ウエルシアと売場融合

食品スーパーのカスミ(つくば市、山本慎一郎社長)が28日、つくば市並木4丁目に新業態のスーパーマーケット「BLANDE(ブランデ)つくば並木店」を開店した。ドラッグストア大手のウエルシア薬局と売り場、レジを一体化したのが特徴で、医薬品を除く化粧品や日用品などを食料品とまとめて決済することができる。「フード、ヘルス、ビューティー&ウエルネス」をコンセプトにし、より利便性の高い新しいスーパーマーケットの形を目指す。1号店は売場面積2353平方メートル、年商目標は16億円。 食料品ではカスミのプライベートブランド「MiiL KASUMI(ミールカスミ)」でオリジナル商品を作り、地元ならではの品やこだわりの品をそろえる。総菜売り場ではアジアン、エスニックなどさまざまな国のメニューのデリカを用意。お酒売り場ではアプリを活用して好みのワインを探せたり、有料でワインテイスティングしたりできるコーナーも展開する。つくば市手代木のイタリアンレストラン「TRATTORIA E PIZZERIA AMICI(トラットリア・エ・ピッツェリア・アミーチ)」が監修した焼きたてピザも提供する。 レジを通らずに買い物できるスマートフォンアプリ「Scan&Go Ignica」を利用した会員制プログラム「BLANDE Prime」の導入も新しい試み。ブロンズ、シルバー、ゴールドと3つの会員グレードを用意し、有料会員はオンラインデリバリーの配送料無料やカスミの管理栄養士による健康相談、コーヒー1杯無料などのサービスが受けられる。 カスミによると、「ブランデ」は「混ざり合う」の意味で、人や食、文化が、商品・サービスを通じて交じり合うことを目指している。山本社長は「カスミは開業61年目となった。次の時代に合わせてスーパーマーケットをメタモルフォーゼさせていく必要がある」と話す。ウエルシアにはカスミ側から呼び掛け、協業が実現したという。「BLANDE」ではつくば市にこれまで出店している「カスミフードスクエア」とは違った新しい店舗づくりをしていくという。 同ショッピングセンター敷地内の「BRANDE」東側には4月に無印良品がオープン予定。「BLANDE」2号店は2月に同市研究学園にオープンを予定している。2号店はウエルシアとの協業ではなく、「食」に特化した滞在型の店舗を想定しているという。(田中めぐみ)

蔵元集まり地酒談義 「神郡塾」 筑波の米、水、土にこだわり

地域人材の育成を目指す「神郡(かんごおり)塾」(塾長・青谷洋治坂東太郎会長)の1月講座が16日、つくば市臼井の美六山荘で開かれた。「つくばの酒を知る」をテーマに、筑波山周辺の2つの酒造店代表とワイン向けブドウの栽培家がパネリストになって、素材や水、土壌にこだわりぬく地酒・地ワイン談義を飲酒抜きで繰り広げた。 地産地消のあるべき姿 浦里酒造店 浦里浩司さんは同市吉沼に1877年創業の浦里酒造店5代目蔵元、代表銘柄「霧筑波」で知られる。酒の仕込みが始まる11月から翌年4月まで、酒蔵に菌を持ち込まないよう、好物の「納豆絶ち」をして臨むという。 県酒造組合副会長を務める浦里さんは、県内の日本酒消費量に占める県内蔵元のシェアが合わせて16%程度しかないのを嘆く。そのなかで浦里酒造は地元、つくばはじめ県内出荷分が約95%になる販売戦略をとってきた。茨城県にゆかりの小川酵母にこだわったのが「霧筑波」だが、酒米は富山県の栽培農家と契約する「五百万石」だった。 地産地消のあるべき姿を「地元の米、材料で作る酒」に求め、原料米まで地元産を使おうと、3年前から地元農家と契約して特別純米「霧筑波 吉沼米」を作り上げた。「筑波米」の方が売り出しやすいという声もあったが、旧大穂地区の集落名、吉沼の名をあえて使った。「今季はいいコメが取れ、仕込みも順調で楽しみだったけど、落ち着きを見せていたコロナが新年に入って拡大の気配。消費の持ち直しまでまだまだがまんが続く」と語る。 ミネラル分豊富な筑波の水 稲葉酒造 稲葉伸子さんは同市沼田に1867年創業の稲葉酒造6代目。2人姉妹の二女で、「子供のころから仕込みに来ていた杜氏(とうじ)の後を付いて、母も入ったことのない女人禁制の麹室(こうじむろ)にも出入りしていた」という。百貨店勤務を経て、1999年に後継に名乗りをあげ、女性杜氏として代表銘柄「男女川(みなのがわ)」を受け継いだ。 季節労働者の杜氏に頼らない常用雇用の社員による酒造り。麹室の微妙な温度管理などは夜間にも及び、「照明のない筑波山の満天の星空の下、酒蔵に通う」のが日常となって、純米大吟醸「すてら」を手掛けた。ステラは「星空」の意味だ。 百人一首に歌われた「筑波嶺(ね)の峰より落つる男女川」、筑波山の花こう岩質の土壌から流れ出る水は地元産の酒米「五百万石」と相性がいい。豊富なミネラル分がキリッと果実酒タイプの味わいをかもす。「辛口で冷やして飲むとおいしい」そう。山田錦を用いる「すてら」は若い人に好まれる味という。 ワイナリー開設目論む ビーズニーズヴィンヤーズ 今村ことよさんは大手製薬メーカーの研究職から転職して、40歳で同市臼井にビーズニーズヴィンヤーズを設立、2015年にブドウ栽培を始めた。製造は長野県内の醸造所に依頼してスタートした。初出荷は17年。製造は現在、牛久市内へ委託醸造に出向く格好になっている。Spiral(スパイラル)ブランドの白ワインなどがある。 今村さんが筑波山麓にブドウ畑を求めたのも、花こう岩質の土壌が決め手。ワインの場合「ほぼブドウの出来でワインの出来が決まってしまう」ため、土壌の良し悪しが気候と並んで重要になる。筑波山は硬い斑れい岩に被われた山頂部を除いて花こう岩が山体を作り、その崩れた土壌が山すそに水はけのいい豊かな農地を作る。 ヴィンヤーズはワイン専用のブドウ畑のことで、現在1.5ヘクタールほどの広さがある。夏の終わりから秋にかけボランティアがやってきて収穫を手伝ってくれるほかは、ほとんど1人でブドウ樹のせん定や草取りなど畑仕事をこなしている、今シーズンの収穫は約5トン。「気候のせいで黒ブドウ(赤ワインの原料になる)の収量が思わしくなかった。白ブドウ、黒ブドウを混ぜて5~6アイテムのワインを作るが、当初狙っていた範囲の味が出せるようになり、もう少し絞り込みたいと思っている」。ゆくゆくは製造から販売まで手掛ける自社ワイナリーの開設を目指している。(相澤冬樹) ◆神郡塾 リーダー育成、交流事業などを展開。今年10周年を迎える。講座は月例開催。次回は「会津の武士道」をテーマに2月13日午前9時から美六山荘(つくば市臼井20512-1)で開催予定。事務局電話0280-93-0180

ユーザーコミュニティで伝説、走行距離63万㎞【クルマのある風景】4

聚文化研究所 伊藤春樹さん 土浦 土浦市中央1丁目で街づくりコンサルタント「聚文化研究所」を主宰する伊藤春樹さん(68)は、ある自動車のユーザーコミュニティーにおいて、伝説化した人物という意外な顔を持つ。 ある自動車とは、伊藤さんが所有していたスズキエスクード。1997年式の初代モデルだ。このクルマは伊藤さんの常用、仕事用として使われ、積算走行距離63万キロを刻んだ。参考として添えると、この車種の最長不倒距離はそれまで、兵庫県に存在した58万7000キロの個体であった。ところがこの個体は90年代に既に廃車にされており、販売したディーラーの店長しか実物を見ていない。 1台の車がそれほどの距離を走ることができるのか? という検証は、あとに続く誰かがやらなくてはならなかった。 伊藤さんは当時、そのような挑戦の逸話を知らない。実家のある岩手県釜石市との行き来や、主に首都圏各地の街づくりコンサルティング業務、ライフワークの霞ケ浦環境調査フィールドワークなど、必要に駆られての運用を続けていた。 「エスクードは2台乗り継いでいます。最初の1台は排気量の小さなワインレッドの車体で、パワー不足は否めなかったけれど、使い勝手が良くて私の仕事にはベストマッチだった。2台目の銀色は2000ccに拡大されて、より扱いやすくなって、長距離も難なくこなせましたね」 最初の1台をなぜ乗り換えたかと言えば、タンクローリーに追突され全損したのだという。しかし四輪駆動車としての基本性能の高さと自身を生還させた頑丈さが、同じ車種を選択させるに至った。この偶然が、伊藤さんの運転によって2012年、ユーザーコミュニティー・ESCLEV(エスクレブ)で、エスクード史上2番目に積算走行距離50万キロを超えさせた。 「走行距離には何一つ意識することはなくて、日常の足として走らせていただけですが、友人で同じ車の所有者から『あなたを探している人がいる』と知らされて、コンタクトすることになりました。そのようなコミュニティーがあることも知らなかったのです」 ユーザー間の交流に顔を出し、そこで伊藤さんがとてつもない記録保持者だという話題で、羨望の的となっていることを聞かされた。デイキャンプの会場では伊藤さんの車に人だかりができ、エンジンルームを覗き込む者、駆動系を見るために下回りに潜り込む者が相次ぐ。 「まあちょっと驚きでした。車のオーナーズクラブというと、敷居が高いものだろうと思っていましたが、彼等はクラブではなく『部室』だと言う。参加してもしなくても自由だし、日頃は誰もいないけれど、誰かが手をあげたら三々五々集まってくる。こういうスタイルは受け止めやすかったですね」 こうして伊藤さんの車は、一躍人気者になる。しかし伊藤さんは変わらず淡々と走り続け、2019年夏に60万キロを突破した。陸送トラックやタクシーの領域だ。古い四駆にはこれを上回るものもあるが、それらはおおむね頑丈なディーゼルエンジン。伊藤さんのようにガソリン車でこれをこなすのは大変なことだ。 「故障は、それらしき前兆を感じたら即座に整備に入れてきたので、ほとんど不調を出しませんでした。それでも20万キロを越えたところでエンジンのオーバーホールは行いました。普段、気をつけていることはあまりありませんが、仕事をする上で、途中で動かなくなるのは困るので、ちょっとエンジン音がおかしいなど気になることがあるとメーカーさんにもっていきました」 それでもここまで走らせると、エンジンオイルの流出が治まらなくなった。エンジンを降ろして重整備をするか迷ったが、同年秋、63万キロで引退させることとなった。「楽しいクルマでした。自分の年齢や体力のこともあり、後継はコンパクトな軽自動車にしましたが、これも意外にエスクードのコンセプトを引き継いでいるので、フィールドワークにはもってこいの1台です」 この車種のコミュニティーというくくりで、60万キロを超えた個体は、伊藤さんのほかにはまだ1台しかいない。乗り換えてもなお、伊藤さんは伝説的な存在として語り継がれている。(鴨志田隆之) ■聚文化研究所 土浦市中央1-12-5 電話029-885-7821 終わり

銘酒をつなぐ伝統の水戸線 《茨城鉄道物語》11

【コラム・塚本一也】茨城県を最初に通った鉄道は東北線であり、県内で最初に開業した鉄道も実は常磐線ではなく、水戸線であることは以前お話ししました。昔は、茨城県民は水戸線を使って小山回りで東京へ行っていたようです。水戸線の歴史は古く、2019年1月16日で開業130周年を迎え、JR水戸支社では当時、盛大にイベントを開催しました。そんな水戸線の沿線は、歴史に裏打ちされたように、県内有数の酒蔵がラインナップされております。 茨城県は日本有数の酒どころであり、大小合わせると県内に約45の酒蔵があります。茨城県酒造組合の資料によれば、北から久慈川水系、那珂川水系、筑波山水系、鬼怒川水系、利根川水系と、5つのカテゴリーに分類されるようです。その酒蔵地帯を、那珂川水系から筑波山水系を経て、鬼怒川水系へと県を横断するようにつないでいるのが水戸線なのです。 例えば、始発の水戸駅近辺には、私の好きな「一品」を造る吉久保酒造、明利酒造、木内酒造があります。少し走ると、笠間の須藤本家、笹目宗兵衛商店があり、稲田に着けば「稲里」の磯倉酒造があります。さらに筑西市に入ると、来福酒造、真壁の村井酒造、西岡本店などが軒を連ねます。そして終点に近づき、結城駅周辺にはこれまた私の好きな銘酒「武勇」を造る武勇と結城酒造が控えております。 お座敷列車で日本酒をチビチビと… このように、沿線にこれだけ数多くの酒蔵がそろっている路線は大変珍しく、これを観光に生かせないものかと思慮しているところであります。夏になるとビール列車を走らせるという企画は、地方ローカル線でニュースになることがあります。しかし、「日本酒列車」では酔いが回るのが少し早すぎるような気もするので、お座敷列車でチビチビとやりながら、のんびりと旅行するような企画がよいのかもしれません。 また、お酒にはそれに合ったつまみが、ご当地の食文化としてもてはやされます。ブルーチーズと赤ワインのように、お互いを引き立てる地元の名産品をセットで用意すべきでしょう。昨今話題となっているジビエ料理で、何か開発はできないでしょうか? イノシシのジャーキーなんかは、辛口の日本酒に合うような気がするのですが、私の好みになってしまいますね。(一級建築士)

銘酒をつなぐ伝統の水戸線 《茨城鉄道物語》11

【コラム・塚本一也】茨城県を最初に通った鉄道は東北線であり、県内で最初に開業した鉄道も実は常磐線ではなく、水戸線であることは以前お話ししました。昔は、茨城県民は水戸線を使って小山回りで東京へ行っていたようです。水戸線の歴史は古く、2019年1月16日で開業130周年を迎え、JR水戸支社では当時、盛大にイベントを開催しました。そんな水戸線の沿線は、歴史に裏打ちされたように、県内有数の酒蔵がラインナップされております。 茨城県は日本有数の酒どころであり、大小合わせると県内に約45の酒蔵があります。茨城県酒造組合の資料によれば、北から久慈川水系、那珂川水系、筑波山水系、鬼怒川水系、利根川水系と、5つのカテゴリーに分類されるようです。その酒蔵地帯を、那珂川水系から筑波山水系を経て、鬼怒川水系へと県を横断するようにつないでいるのが水戸線なのです。 例えば、始発の水戸駅近辺には、私の好きな「一品」を造る吉久保酒造、明利酒造、木内酒造があります。少し走ると、笠間の須藤本家、笹目宗兵衛商店があり、稲田に着けば「稲里」の磯倉酒造があります。さらに筑西市に入ると、来福酒造、真壁の村井酒造、西岡本店などが軒を連ねます。そして終点に近づき、結城駅周辺にはこれまた私の好きな銘酒「武勇」を造る武勇と結城酒造が控えております。 お座敷列車で日本酒をチビチビと… このように、沿線にこれだけ数多くの酒蔵がそろっている路線は大変珍しく、これを観光に生かせないものかと思慮しているところであります。夏になるとビール列車を走らせるという企画は、地方ローカル線でニュースになることがあります。しかし、「日本酒列車」では酔いが回るのが少し早すぎるような気もするので、お座敷列車でチビチビとやりながら、のんびりと旅行するような企画がよいのかもしれません。 また、お酒にはそれに合ったつまみが、ご当地の食文化としてもてはやされます。ブルーチーズと赤ワインのように、お互いを引き立てる地元の名産品をセットで用意すべきでしょう。昨今話題となっているジビエ料理で、何か開発はできないでしょうか? イノシシのジャーキーなんかは、辛口の日本酒に合うような気がするのですが、私の好みになってしまいますね。(一級建築士)

土浦市などの自粛要請を21日から解除 知事「全国まれな成功事例」

県内での新型コロナウイルス感染拡大を受けた自粛要請について、大井川和彦知事は20日記者会見し、1週間延長していた土浦、つくばみらい、利根3市町に対する不要不急の外出自粛要請と営業時間短縮要請を21日から解除すると発表した。11月27日に出され最大12市町村に及んだ要請は3週間ですべて解除となる。 直近1週間(13~19日)の県内の状況について大井川知事は、新規感染者数144人(自粛要請直後の11月29日~12月5日は301人、12月6~12日は165人)、病床稼働率は44.3%(同55.3%、同51.3%)まで改善したとした。人口1万人当たりの直近1週間の新規感染者はつくば市は同1.18人、土浦市は同1.30人。 大井川知事は「全国で新規感染者数が過去最大値を更新し続けている中、対策を講じたタイミングと実行の徹底により、茨城県は新規感染者数の抑え込みに成功した。まれな成功事例」だと強調した。抑え込みができた最大の理由は「大規模な検査の徹底」だとし、政府の12月28日から1月11日までのGoToトラベル全国一斉停止について「全国一律で止めてしまうのではなく、(旅行の)直前にPCR検査をして陰性が分かった人はGoToを利用できるなど第3の道があり得た」などと話した。 飲食店などの営業時間短縮要請に対する協力金については、16日以降、国の協力金が4万円に加算されたため、土浦市など3市については16日から20日まで協力金を当初の2万円から4万円に引き上げるという。 一方、全国的には感染が拡大している状況にあることから、引き続き警戒を怠らないよう改めて呼び掛け、直近1週間の新規感染者数が人口10万人当たり15人を超える都道府県の帰省について注意を呼び掛けた。現時点で同15人を超えているのは北海道、埼玉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、高知の10都道府県。 つくばの医師のワイン会「配慮足りない」 一方、土浦市内で病院を開業する男性医師が11月中旬、つくば市内の自宅でワイン会を開き、37人が参加し、17人が感染した問題について大井川知事は「ちょうど土浦で感染が拡大し一斉検査を実施していた時期。医師の立場として配慮が足りなかったと思う」とコメントした。

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