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2020
6月
【オンライン授業奮闘記】教育現場から考える(上)伝え方を模索
2020年6月4日
【田中めぐみ】新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校により、勤務する中高一貫校で4月からオンラインでのリアルタイム授業が始まった。 学習用端末の普及で実現 土浦市の土浦日本大学中等教育学校で高校生に古文を教えている。文科省のGIGAスクール構想に先駆けて、本校では以前より生徒1人に1台ノートパソコンを支給し授業で活用していたことや、スマートフォンなどの普及で自宅でも情報端末に困らない環境にあることが後押しとなった。 通信ネットワークの問題はどうか。総務省の要請により、4月からドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯キャリアは容量超過後も50GBまで無料、テザリング=メモ=オプションも追加無料となった。自宅にインターネット回線がなくても容量超過を気にすることなく授業が受けられるようになり、こちらもクリアできた。 教材や課題はデジタルデータ化し、学校ホームページやクラウドにアップして共有する。生徒らは自宅のプリンターで印刷して準備し授業に臨む。中にはプリンターを持っていないという生徒もいるが、画面上で教材データを見てノートで解いている。 国語の教科ではどうしても大量の文字を読まなければならない。スマホから接続している生徒も多いため、最初は文字が小さくて見えないのではないかという懸念があり、「見えますか?」という問いかけを頻繁にしていたが、ピンチアウト(画面を拡大する操作)を使い慣れている生徒たちに特に心配はいらなかった。 教材をデジタル化 黒板やホワイトボードに書いたものを映すのでは見えにくいため、今まで板書して説明していたものをデジタル化する必要がある。教材の文章をOCR(印刷された文字をスキャナーやデジタルカメラによって読みとりデジタルデータ化する技術)でデータ化し、文を引用しながら要点を解説するスライドを作った。 だが、スライドではアドリブがきかない。生徒の様子を見ながら説明する順序を変えたり補足したりするのに、板書の方が良い部分もある。 スライドやPDFファイルにそのまま書き込む方法を考え、10年ほど前に買ったペンタブレットを出してきた。書き込みながら説明ができるように設定し、なんとなくの授業スタイルができあがった。 準備に長時間 教科指導におけるICT(情報通信技術)の活用ということが現実味を帯びて議論され始めたのは10年ほど前からではないだろうか。15年前はスマートフォンも普及しておらず、スキャナーやOCRなど電子テキストデータ化の技術も実用に足るレベルではなかった。当時はうまく認識しないソフトや周辺機器と格闘し、一晩費やしたことも一度や二度ではない。 それが今や一瞬だ。スマートフォンの進化にも比例する技術発達の恩恵をひしひしと感じる。新型コロナウイルスの感染拡大がもし15年前に起きていたとしたら、休校になっても泣き寝入りするしかなかったに違いない。 しかし、技術の進歩はあっても授業の準備にはかなり時間がかかる。プリントを印刷する時間が一切無くなったのは良い点だが、体感的に教室で行う授業準備の3~5倍の時間を費やしている。それでいてたくさんの情報を伝えようとすると難しい。通常の授業と同様の内容で一度はスライドを作ったものの、情報量が多くなりすぎていると感じてスライドの枚数を間引くこともあった。 生徒、教師、双方とも慣れていないせいもあるが、現段階ではリアルの教室よりも伝えられることが少なくなっているように感じる。 (続く) ※メモ【テザリング】モバイルデータ通信ができる端末を利用してPC、タブレットなどをインターネットに接続すること。
《ことばのおはなし》22 私のおはなし⑪
2020年6月4日
【コラム・山口絹記】入院3日目。 病室には相変わらず理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が代わる代わる訪れ、バランス感覚を調べたり、普段の生活サイクルや仕事などに関する質問に答えられるかを検査した。右半身が思ったように動かなかったり、前を見ずに横見をすると転んでしまったりといった症状はあったが、一度失語になってから、短期間でここまで話せるようになることは珍しいらしい。 話せると言っても、頭の中では一度英語で考えたことを日本語に翻訳して話しているような感覚が強く、読解力も大幅に低下していた。そもそも読解力とは何かという話だが、私は、文章を読みながら、どれだけの内容を留保できるか、ということだと思っている。 前の文章を踏まえて次の文章を予測、理解するということ。長い文章、例えば論文や小説ならば、前の段落、全体を踏まえながら読み進めなければならない。もっと言えば、今まで読んだあらゆる文章を踏まえて、目の前の文章に対する理解を深められるかが問題なのだ。 どうやら、頭の中でことばを一時的に記憶、処理しておくような能力が著しく衰えているらしく、自分で文章を書いていても、読み返してみると誤字脱字が異常に多い(救急を急救、脱字を肌字と書いていたり、送り仮名や助詞の誤りが極端に多い。単語に関しては2文字の漢字で構成されるものに誤りが多かった。“癲癇”や“鬱”などの漢字が書ける一方で、“肌”、“脳”、“臓”などの同じ部首の漢字に混同が多く見られた)。 午後には、担当医より脳血管造影検査の説明がされた。私の脳内の影の正体を探るため、腕か脚の動脈からカテーテルを入れ、脳の血管を流れる造影剤を撮影して皆で観よう、ということらしい。つまり脳版バリウム検査。シンプルな発想かつ物騒な話である。 脳動静脈奇形という血管の病気 翌日。 暗い手術室のような部屋で頭だけ固定され、右手首に麻酔を打たれる。10名以上の医師が私からは見えない位置にあるモニターを見上げる中、太めのビーフンのようなプルプルした管が腕の動脈に差し込まれていく。肩のあたりでビーフンがつかえているのを感じた。「いくよー」医師の声とともに、左アゴ、耳、左頭頂部にかけて温もりが広がった。いや、結構熱い。4回程の造影剤注射のたびに医師たちから歓声があがる。楽しんでもらえたようで何よりだが、せっかくの機会、私も一緒に観たかった。 入院5日目。 血管造影検査の結果は、左の頭頂葉にいく動脈と脳表の静脈が正常と異なる形で連絡しており、脳動静脈奇形(AVM)という血管の病気が最も疑われ、これが原因で出血を起こしたと考えられる、とのことだった。治療に関して、ざっくりと説明して欲しいと頼むと、「頭蓋骨を大きめにパカッと開き、出血している部分が外はサクッと中はジューシーな状態になり次第、取り除いてしまったほうが良い」とのことだった。もうここで治療を受けようと決めたのだ。 「やりましょう。あと、造影検査のときの写真ください」。私は答えた。-次回に続く-(言語研究者)
支援の「蚤の市」緊急開催 窮地の出店事業者つくばに集う
2020年6月3日
【相澤冬樹】 近年のフリーマーケットは、実店舗を持たない個人事業者たちが各地に出店する形でにぎわいを創出してきた。雑貨や骨とう、手作り衣料などの取り扱いを生業とする専業の事業主たちだが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、三密回避や移動制限から軒並み開催が中止となり、事業者の多くがほぼ2カ月間、収入を断たれた。その窮状を救おうという蚤(のみ)の市が5日、つくば市内で緊急開催される。 5日、フォンテーヌの森に10店舗 第1回となる「つくのみ~森のなかの小さな蚤の市」は5日午前10時からつくば市吉瀬のキャンプ場「フォンテーヌの森」で開催、アンティーク雑貨、植物、婦人服、クラフト作品など取り扱う10店の出店が決まっている。午後4時まで、荒天中止。 主催はイベント企画運営のKAKAYA MARKET(カカヤ・マーケット、本社・栃木県佐野市、小関広記代表)で、稲敷市の「こもれび森のイバライド」で開くフリーマーケットには従来150以上のショップを集めてきた。同キャンプ場内では古物販売買取の店「家貨屋kakaya」を運営している。 店舗マネージャー、飯島丸子さん(39)によれば、同店がオープンしたのが4月4日、新型コロナで緊急事態宣言が出されたのが同7日で、キャンプ場も閉鎖となったため、いきなりの長期休業に追い込まれた。各地のフリーマーケットが活況を呈するゴールデンウイーク中のイベント企画もできず、ネット販売で糊口(ここう)をしのぐ日々が続いた。 県内の緊急事態宣言が解除となった5月14日以降、店の再開準備を進めるなか、KAKAYA MARKETで提携する出店事業者らからの窮状も聞き、キャンプ場を会場に小規模な蚤の市を開催する線で話がまとまった。 やはり書き入れ時のゴールデンウイークに休業を余儀なくされたキャンプ場は再開以降、週末の宿泊客を中心に客足を戻し、夏休みの予約も順調に入っており、開催を積極支援する。 6月以降、週1回ペースでの開催も計画されたが、「まずは平日開催で様子見」と飯島マネージャー。林間のキャンプサイトに1店舗あたり3×3メートルの区画を用意し、客同士が濃厚接触しないよう配慮する。拡大が可能なら、毎週の開催で出店数も増やしたい考えだ。 当日は、インスタグラム(Instagram)を使って生放送ができる「インスタライブ」機能を使ったイベント生ライブ配信を予定しており、開催終了後に動画サイトYoutubeでの販売も行う計画だ。問い合わせ:電話080-4407-8512 HP https://market.ka-ka-ya.com/FB https://www.facebook.com/Kakaya.Market/インスタグラム https://www.instagram.com/kakaya_market/
《くずかごの唄》62 新型コロナの消毒薬
2020年6月3日
【コラム・奥井登美子】「可愛いでしょう。私が作ったマスクなの、使ってみてください」「隣の小母さんが、私に作ってくれたマスクなの、どう似合うでしょう」 マスク不足を逆手にとって、手作りのマスクがいつの間にか、流行の一端、ファッションに昇格してしまった。ファッションショーで、目のきれいな女優さんが着けて歩いたら、面白い風景になる。プレゼント用としても、けっこう珍重されている。 ファッションの一部にもならないのがコロナ消毒薬。インフルエンザなどの感染症が流行るたびに、薬剤師会での勉強会は、消毒薬に関する法律と、その使い方だった。ウイルスの関わる感染症は、それぞれ実に個性的で、消毒薬も取り扱い方も千差万別なのだ。今回は研修会も全部取り止めになってしまったので、よくわからないままに、アルコール系のものがいいといわれている。 「簡易エタノール検知器」 私が今年、庭の薔薇(ばら)の手入れを後回しにしたのは、薔薇の棘(とげ)などが手に刺さったものなら、アルコール系の消毒薬は飛び上がるほど痛くて、怖くて、使えなくなってしまうからだ。 消毒用エタノールはアルコール70%液なのだが,それで手を消毒すると、皮膚に浸(し)みて痛い。アルコールはRNA(リボ核酸)の蛋白(たんぱく)質を溶かすといわれているが、手の皮の蛋白質にも影響があるのではないかと思う。 市販の消毒薬は50種類くらいあって、その中でアルコール系も20種くらいある。今、どこのお店でも入り口に消毒用の液体が置いてある。消毒薬の中にどのくらいのアルコールが入っているか。70%、50%、20%、手の浸み具合でわかる。私の手はいつの間にか、「簡易エタノール検知器」になってしまっていた。(随筆家、薬剤師)
みどりの南小の予定地を移転 小中併設校へ つくば市
2020年6月2日
【鈴木宏子】つくば市が、人口が急増するつくばエクスプレス(TX)みどりの地区に新設予定のみどりの南小学校(仮称)の建設予定地を約600メートル南に移転し、小中学校の併設校を建設することが分かった。もともとの南小予定地には学校用の屋内プールを建設する。 南小は、みどりの義務教育学校の児童・生徒数が増加し、校舎を増築しても足りなくなることから、同義務教育学校から分離新設する。開校は2024年4月の予定。 もともとの予定地は同義務教育学校から1キロほど南の約2.5ヘクタールの県有地だった。今年度当初予算で用地購入費約8億5000万円などが計上され、3月議会で可決されていた。中学校はさらに南に600メートルほど離れた別の場所に新設する予定だった。 市教育局教育施設課によると、小中一貫の義務教育学校から分離新設して学校を新設することから、小学校と中学校を別々に建設すると学習環境が大きく変わってしまい子供たちの負担が大きくなるとして、学習環境を大きく変えないため、南小の予定地を中学校の予定地に移転し、小中学校併設校とする。 新しい予定地は、常磐道とゴルフ場(つくばみらい市)などにはさまれた県有地で、準工業用地。小中併設のため面積を拡張し計約6.1ヘクタールとする。規模は特別支援学級を含め、小学校が6学年で40学級、中学校は3学年で10学級を予定している。開校時期に変更はない。土地購入費は約18億7000万円。9日開会の6月議会に提案する。 プールは市民にも開放、会議室併設 一方、もともとの予定地2.5ヘクタールは、市が予定通り県から用地を購入し、屋内プールを建設する。みどりの南小中学校のほか、近く開校しプールが設置されない香取台小学校(仮称)、研究学園小中学校(仮称)など他校の児童生徒も利用する。学校の利用がない夜間や土・日曜などは一般市民に開放する。会議室なども設置される予定で、市民が利用できるという。 プールも、みどりの南小中学校と同じ24年4月までのオープンを目指す。 産廃施設近く議会から懸念 南小のもともとの予定地は、つくばエクスプレスの線路をはさんでつくばみどりの工業団地に隣接している。産業廃棄物処理施設が近くに立地しており、予算を審議した市議会3月議会では「小学校用地は産廃施設が目の前にあること、高圧電線の下に位置する場所であるため、地元からは教育環境として問題があるのではという心配の声が上がっている」などとして、環境調査や有害物質の有無についての検査を実施し、地元住民が安心して子供たちを学校に通わせられる教育環境を整備するよう求める意見が一部議員から出ていた。 すでに立地している産廃処理施設の近くに学校を新設する場合、規制はない。一方、県廃棄物処理施設設置の事前審査要領では、今回とは逆の廃棄物処理施設を後から設置する場合、住民説明会の開催や敷地境界から300メートル以内の土地所有者の同意などが必要とされている。 もともとの南小予定地が産廃施設に近いことについて市は、今回の移転とは関係ないとしている。
ナダレンジャーが動画で防災教室 ウェブ学習に活用を
2020年6月2日
【池田充雄】防災科学技術研究所(つくば市天王台)が子ども向けの教育用動画を制作、1日から同所のウェブサイトやYouTubeチャンネルで公開が始まった。新型コロナウイルスの影響で利用が広がるウェブ学習に教材を提供し、防災について広く一般に考えてもらう契機としている。 科学おもちゃで仕組みを紹介 動画は「Dr.(ドクター)ナダレンジャーの防災科学教室」と題する3本。同所の納口恭明博士(67)が地震の揺れ、液状化、雪崩という3つの現象を、手作りの科学おもちゃを使って分かりやすく説明している。例えば雪崩では、容器に水とプラスチックの細粒を入れたものを用意。容器を傾けると細粒が雪崩の動きを再現し、大規模な雪崩ほど速く襲来することなども確認できる。 想定対象は小学4年生~中学3年生。理科や社会科の学習内容とリンクさせたが、大人が見ても興味深い。おもちゃの材料にはペットボトルなど身近にあるものを主に使い、家庭で作って遊びながら理科の実験ができる。放映時間はいずれも6~8分程度。 子ども向け初公開 同所が子ども向けに動画を公開するのは初めて。災害の仕組みをだれもが楽しく学べるものにしようと、サイエンスショーなどで経験豊富な納口さんがカメラの前に立った。納口さんはDr.ナダレンジャーとして1997年から全国の学校、科学館、公共イベントなどでこれまで4000回以上もの活動実績がある。 「今はコロナの方に気を取られがちだが、災害はどんな時でも待ってくれない。多くの人の命を奪う怖いものであり、だからといって単に怖がっているだけでもいけない。この動画が災害に対して理解を深め、防災のあり方について考えるきっかけになってくれるといい」と納口さん。 災害に強い社会へ 防災の基礎は「知る、備える、行動する」だという。社会に暮らす私たち一人ひとりが災害について正しく知り、備える意識を持ち、発生時には適切な行動をとれるようにすることが、防災教育の目標とされている。 同所では災害の予測・予防に加え、災害発生時の応急対応や、被災後の回復まで含めた総合力として防災をとらえ、特に災害から素早くしなやかに立ち直る力を「レジリエンス」と呼んで重視している。 「あらゆる種類の自然災害を対象に、予測・予防・対応・回復の全段階で総合的な研究開発を行い、人々の命と暮らしを支えることが当所の使命。外部との連携や協働を推し進め、一人ひとりが基礎的な防災力を持ち、レジリエンスを備えた社会を実現させていく」と、企画部広報・ブランディング推進課の川嶋一浩調査役は話す。 ➡Dr.ナダレンジャーの防災科学教室はこちら
《雑記録》12 「壺から金平糖」 日本経済はどうなる?
2020年6月2日
【コラム・瀧田薫】壺から金平糖(こんぺいとう)を取り出そうとして、手が抜けなくなって困った話。最近、この話をよく思い出す。 筆者の記憶では、主人公は名代の因業爺(いんごうじじい)。村の寄り合いで壺に入った金平糖を振る舞われ、壺に手を入れると、どうしたものか手が抜けない。引っ張りだそうと血管が膨れあがるほど頑張ってみるが、抜けない。最初は大笑いしていた周囲の衆も、だんだん心配になり、壺を押したり引いたり、ああしろ、こうしろと指図もしてみるが、壺はびくともしない。とうとう、爺様は泣き出す始末。 見かねた家の主、大事な壺だが爺様の手にはかえられぬと、煙管(きせる)で壺を叩き割ると、金平糖をぎっちり握りしめた爺様の大きな拳が出てきた。話はそこまでで、この話をどう解釈するかは、それぞれに任されているようだ。 さて、昨夜(5月26日)のことだが、偶然、NHKスペシャル「苦境の世界経済・日本再建の道は」(再)を視聴した。番組に招かれたゲストは、経済再生担当大臣・西村康稔氏、コロンビア大学教授・伊藤隆敏氏、そして三菱経済研究センター長・武田洋子氏のお三方であった。 正直、三者の話は噛み合わず、特に西村氏は浮いていたが、筆者なりに番組の内容をまとめると、今後生き残る企業の条件として、①変化への対応力②AIの活用力③長期的ビジョンを備え、持続可能な企業たることに重きを置く経営方針が必要ということだった。 いわゆる新自由主義の影響で、企業経営が「株主の利益と短期利益の優先」に流れていたとの批判は目新しいものではないが、新型コロナウィルスの影響でこうした企業経営の見直し論が力を増してくることは十分考えられる。 政府は新たな流れを邪魔するな 面白いと思ったのは、新時代の経営を目指す企業のモデルとして、SONY社の名前が挙げられたことだ。長い低迷からの復調ぶりは聞いていたが、改めてこの会社の今後の動きを追いかけてみたい。 次に、伊藤氏と武田氏の視点から出てきた「ニューノーマル」という言葉が目立った。コロナウィルスの影響で人々の暮らし方が変わりつつあり、それが今後の日本社会の「ニューノーマル」(日常性?)として定着するとの見方である。加えて、社会的距離(対人距離?)の取り方、テレワークの普及、地域分権の拡大、デジタル化の進行などが予想されるということだ。 番組の最後に司会者から「伊藤さん、これからの日本経済について、政府に何を期待されますか」との問いが投げかけられた。すると、伊藤氏から、口調はとても穏やかだったが、間髪をいれず、「政府には新たな流れを邪魔しないでほしいと思います」という答えが返ってきた。番組はこの言葉で閉じられた。 伊藤氏は、現政府が金平糖(既得権、旧技術、過去の成功体験など)を手放せるとは思っていない、と筆者は理解した。政治と大きな船、簡単に方向を変えられないものだが、現政府が手を抜けないまま、壺(日本経済)を叩き割ってしまう事態、それだけは勘弁してほしいと思う。(茨城キリスト教大学名誉教授)
法務局が遺言書保管 7月10日から開始
2020年6月1日
【山崎実】高齢化社会の進展に伴い、「終活」をめぐる様々な問題が持ち上がっているが、法務局は7月10日から自筆証書遺言書を保管する「自筆証書遺言書保管制度」を開始する。 「終活」の中でも特に大切な問題と位置付けられているのが、相続トラブルを防止するための遺言書の作成だ。 遺言書の形式には、公正証書遺言、自筆証書遺言などがあるが、自筆証書遺言は本人のみで作成することができ、自由度は高いものの、作成後、自宅で保管することが多く、紛失するなどの事例が多かった。 これらの問題を解消するため、新たに導入されるのが今回の自筆証書遺言書の保管制度だ。利用者は保管申請を法務局、及び支局に行う。制度の「Q&A」によると、保管申請の手数料は、その後の保管年数に関係なく、申請時に定額(遺言集1通に付き3900円)を納めることになる。 新制度の導入について水戸地方法務局は「この制度を利用される以外にも、これまで通り、自ら保管することはもちろん、公正証書遺言制度を利用することも可能なので、それぞれの特徴を踏まえ(利用方法を)判断してほしい」としている。 保管制度に関する詳しい問い合わせは水戸地方法務局(供託課、電話029-227-9917)。
《吾妻カガミ》83 つくばの市長選まで5カ月
2020年6月1日
【コラム・坂本栄】コロナ禍の緊急事態宣言が解除され、用心しながら通常の仕事や生活に戻ろうということで、まちにも活気が戻ってきました。コロナの心配もあり、つくば市長選挙(10月25日)絡みの動きはこれまで水面下でしたが、こちらもそろそろ表に出て来そうです。 コロナ対応で力む現職 もっとも、早々と2期目出馬を表明した五十嵐市長にとっては、コロナ対応そのものが選挙を意識したものであったようです。現職にとっては日々の仕事が次の選挙の通信簿になりますから当然です。早めの出馬宣言(2月27日掲載)も、コロナの広がりを意識したものだったのかも知れません。 コロナ対応で点を稼ごうと思ったのか、拙速(せっそく)な判断もいくつか見られました。例えば、首相が学校を休校にするよう要請したのを受け、3月上旬、小中を休みにしながらも、自主(自習)登校は認めたことです。父母の困惑を読んで、気配りをしたのでしょうが、「密を避ける」というコロナ対応の基本に照らすと、これは真逆(まぎゃく)でした(後で取り下げ)。 市内事業者への配慮も含め、市長のフライングについては、本コラム「善政? つくば市のコロナ対応」(4月6日掲載)、「つくば市のコロナ対応を点検」(5月4日掲載)で取り上げました。詳細はそちらをご覧ください。 初期段階だけでなく、5月下旬にも「おやっ」と思う対応がありました。5億の税金を使って、70歳以上と18歳以下の市民に5000円の商品券をばらまくという善政です。第1波コロナの収束をにらんで、駆け込んだのでしょう。実にホットな対応です。その内容は「つくば市が第2弾の緊急経済対策」(5月21日掲載)でリポートされています。 挑戦者は着々出馬準備 前回の市長選は、五十嵐さん、保守系前市議、革新系元衆院議員の戦いになり、総合運動公園計画が住民投票で「否決」されるという前市長の失政に乗じ、市民運動を繰り広げた五十嵐さんが勝ちました。 今秋の選挙に名乗りを上げているのは、今のところ現市長だけですが、保守系の現職県議が着々と準備を進めています。市民の心がコロナで占められているとき、選挙は優先度が低いと考え、出馬表明は控えているそうです。「密を避ける」が求められているのに、会合は控えなければなりませんから、実にクールな判断といえます。でも、そろそろ正式表明するのではないでしょうか。 前回選挙での五十嵐さん勝利の主因は、総合運動公園反対で盛り上がった市民運動の流れを加速させたことです。選挙戦術としては見事でした。 今回選挙の争点の一つとして、挑戦者は、この運動公園問題の「あと処理の不手際」を突くようです。①用地を買い戻させる公約が反古(ほご)になった②用地処分が議会の反対で宙に浮いている―と。つまり、現市長は公約を守れないばかりか、それによって生じた問題を処理する能力もない、と。 現市長にとって、前回は追い風に作用したテーマが、今回は逆風になるわけです。選挙とは面白いものです。挑戦者は、現職の仕事の検証だけでなく、自分の学園活性化プラン(運動公園問題処理の対案も含め)も提起してください。発信力で有利な現職に比べると、コロナ禍で活動が制約されるという、ハンディキャップを負ってはいますが。(経済ジャーナリスト)
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