土曜日, 3月 25, 2023
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山口京子

「消費生活アドバイザー」に慣れません 《ハチドリ暮らし》18

【コラム・山口京子】消費者の1人として、日々、何かを購入して生活をしているわけですが、消費者という言葉がストンと落ちないというか、違和感を覚えながら、消費者という言葉を使っています。消費生活アドバイザーの資格を取りましたが、なかなか資格名に慣れません。 この社会に生まれると、物心つかないうちから消費者として登場させられます。子どもの関心を引く商品やサービスの開発が止めどない光景を見ていると、正直、怖くなります。人はどこに向かうのかしらと。 自分は消費者の1人であるけれど、同時に働く人であり、働くことを通じてお金を得て、そのお金を使って消費活動をしている。でも、働く場を失ったら、お金の源泉を失ったら、人はどうやって生きていくのかしら…。60歳を過ぎたあたりから、そんなことを思うようになりました。 自分が子どものころ、農村に生まれたためか、畑と田んぼを耕して、家族の食べる分くらいはつくっていました。また市場(いちば)出しもしていた記憶があります。すでに現金がないと生活はできませんでしたが、今ほどに何でもお金で買う生活ではありませんでした。 1950年ごろ、第1次産業従事者は50%ぐらいはいたのではないでしょうか。わが家の祖父母は専業農家でした。父はトラック運転者になり、農業は三ちゃん農業(じいちゃん・ばあちゃん・かあちゃん)。祖父母が働けなくなると、田んぼは他人に頼むようになっていきました。 「相続土地国庫帰属法」という制度

消費者トラブルに遭わないために《ハチドリ暮らし》17

【コラム・山口京子】今の社会は、商品やサービスを購入して、その商品やサービスを消費して暮らしを成り立たせています。そして、広告の誘引力はとても大きいものがあります。みなさんは、広告の文句にひかれて商品を購入したものの、実物とイメージの違いに落胆したことはありませんか。 消費者としてトラブルに遭わないための知識を得ようと、消費者講座に参加しました。2022年の消費者白書によると、21年の消費生活相談件数は85万件にもなっていました。これは相談があった件数なので、諦めてしまった人たちがいることを踏まえると、かなりのトラブルがあるのではないかと推測されます。 泣き寝入りしないためには、きちんと契約について知ること。契約に際しての規約や約款を確認すること。そもそも、その契約が自分に必要な契約なのか、じっくり考えること。こういったチェックが必要です。どの広告も「今すぐに」と呼び掛けますが、そういう宣伝こそ要注意だと思います。 私たちの暮らしのルールは民法が基本になっています。民法は対等な私人間の関係を前堤にした体系です。しかし、売る側の人たちと私たち消費者の間には、情報の質・量、交渉力などで大きな差があります。その差を前提に、売買の是正を考えたルールを作らないと、公正な取引はできないでしょう。 消費者契約法と特定商取引法を学ぶ その格差を是正するためのルールが、消費者関連法といわれる法律です。講座では特に、消費者契約法と特定商取引法を学びました。消費者契約も契約ですから、民法の契約を基本にしています。その上で、消費者契約の特殊性から、これら2つの法律ができたということです。

「老後」がなくなる「人生100年時代」 《ハチドリ暮らし》16

【コラム・山口京子】数年前までは、「人生100年時代」というフレーズを大げさに感じていました。ですが、両親を見ていて、100歳まで生きるかもしれないと思うこの頃です。病気をして心配したり、回復して食欲も出てきてほっとしたり。そうなればそうなったで、これからのことが気にかかります。本人たちは、「おまえにまかせた」状態です。今回は、お金の管理、施設や病院とのやり取り、行政から届く書類の手続きなどのあれこれ。 父は家で介護してほしかったのでしょうが、話し合った末、施設に入ってもらいました。母の方は、生活の自律度を見ると、もう数年は家で暮らせると思います。 両親の収入は公的年金のみです。これまでの蓄えと合わせて、おおまかなキャッシュフローを作りました。現在の状況が続くと仮定したものと、母も施設に入ると仮定したものとでは、大きく収支が違ってきます。状況の変化をふまえて見直しながら、妹たちと話し合っていくつもりです。 親のこれからを考えつつ、自分たちのことも気になります。これからの人生100年時代は、老後が長くなるのではなく、老後という概念がなくなり、定年という言葉も死語になっていくのでしょう。そもそも、一つの会社に生涯勤め続けることが現実的ではない状況が広がっています。子どもたちを見ていると、そうした状況をシビアに察知しているようです。 私たちの世代は定年があり、退職金を出す企業も多くありました。定年後のプランは退職金とそれまでの蓄え、公的年金あるいは私的年金を利用してどうにかなりました。でも、そういうプランは崩れつつあります。 『お金』はなぜ格差と分断を生むのか?

スイカの苗から変なものが… 《ハチドリ暮らし》15

【コラム・山口京子】思わぬ出来事がありました。今春、畑に、ジャガイモ、ナス、きゅうり、ピーマン、ネギ、玉ネギ、枝豆、インゲン、トウモロコシ、スイカの苗を植えたところ、なんと、スイカの苗についた実は、ウリというか、冬瓜(とうがん)というか、ひょうたんというか、よくわからないものだったのです。 確か、店で買ったときは、苗ポットにはスイカの写真が付いていました。昨年もこの店でスイカの苗を買い、スイカを食べることができたのに…。今年は、どこでどう間違ったのでしょう。苗がスイカではなかったと考えるしかありません。それとも突然変異なんてことがあるのでしょうか。このわけのわからない実がどこまで大きくなるのか、様子見の状態です。 目的のものと実際のものが違っている場合は、目的のものをくださいと言う権利が消費者にはあります。けれども、お店と交渉するにしても、買ったときのレシートもポットに付いていた写真もありません。すでに数カ月も時間が経過しています。こんなことが起きるなんて思ってもみなかったので、証拠となるものは何も取っておきませんでした。 知らないために不利益を被ったら 今回は小さな出来事でしたが、大きな契約では諦め切れないことも出てくるでしょう。それれで、以前聞いた話を思い出しました。 ある方の家に保険会社の営業員が訪問してきて、「いい保険ができたので、今持っている保険を下取りして、新しい保険に入り直しませんか」と勧めたそうです。新しい保険のいいところの説明がありました。それならと、新しい保険に加入しました。古い保険を新しい保険に移す、転換というやり方です。そのときはなんの疑問も抱かなかったそうです。

8050問題と労働者協同組合法 《ハチドリ暮らし》14

【コラム・山口京子】仲間内の勉強会で話をすることになりました。テーマは自由に決めてよいということでしたので、「8050問題と労働者協同組合法」という題にしたいとお伝えしました。 「8050問題」の呼び方は「はちまるごーまるもんだい」です。80代の親が50代の引きこもりの子を抱えている家庭、そこから派生する問題を指します。80代の親の介護や認知症、生活困窮などにより、親子の共倒れや孤立化が社会問題になっています。 数年前、引きこもりの子を持つ家族の会から「これからのライフプラン」で話をしてほしいと言われ、調べ始めました。 「引きこもりの評価・支援に関するガイドライン」によると、「引きこもり」の定義は、「様々な要因の結果として、社会的参加(就学、就労、家庭外での交友など)を回避し、原則的には、6カ月以上にわたって、おおむね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と関わらない形での外出をしていてもよい)」となっています。 引きこもるきっかけとしては、学校でのいじめ、親の教育虐待、就職の失敗や病気、働いていたものの様々な事情で退職し、その後働こうとしても再就職口が見つからない―などが挙げられます。 引きこもる期間は長期化していて、7年以上が5割近くになっています。30年以上も約6パーセントいると推定されています。内閣府の調査では、100万人以上の引きこもりがいるとされていますが、200万人を超えるという指摘もあります。

入院で高額療養費制度を使う 《ハチドリ暮らし》13

【コラム・山口京子】4月に連れ合いが8日ほど入院しました。医療費の総額は約50万円、そのうち自己負担は3割の約15万円でした。ですが、高額療養費制度を使うことによって、実際の支払額は66,800円でした。 事前に、市役所の国民健康保険課に行き、「健康保険限度額適用認定証」を申請しました。高額療養費の限度額は本人の所得によって変わるので、限度額を知ることが大事です。その額と高額療養費の対象にはならない項目(食事患者負担額、差額ベッド、日用品レンタル代など)を加えて、支払額が算出されます。 4人部屋に入りましたが、差額ベッド代はかからず、日用品費の支払いは別でした(4人部屋でも差額ベッド代が取られることがあるので事前の確認が必要)。なので、病院に払ったのは高額療養費限度額57,600円と食費9200円(1食460円×20食)だけでした。これに日用品レンタル代と雑費12,000円を加えても、総費用は8万円弱でした。 医療保険はチェックが必要 以前、終身医療保険に加入した場合、支払う保険料の総額がいくらになるのか、一生のうちに何回くらい入院するのか―などについて調べたことがあります。わが家の場合、連れ合いが加入していた医療保険の月額保険料は約5000円、30歳から80歳まで入っていた場合の総額は300万円になります。保障は入院日額5000円と手術給付金でした。 ですが、定年を機に解約したので、実際は210万円程度を払ったことになります。それに対して、30歳以降の入院歴は4回、入院日数は延べ33日。支払った医療費の実費は約30万円。公的医療保険制度や健保組合の療養付加金のおかげで、自己負担はかなり軽減されました。

成年年齢が18歳に引き下げられました《ハチドリ暮らし》12

【コラム・山口京子】この4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられました。これは民法の改正によるものです。普段は民法なんて意識しないですが、民法のルールが生活に大きな影響力を持っていることを改めて、感じさせる機会となりました。高校などでは、18歳成年で何が変わるのかを授業で周知しているようです。 18歳になると成人として扱われ、1人で有効な契約をすることができ、親の親権に服さなくなります。具体的には、親の同意がなくても契約を交わすことができます。単なる小遣いの範囲を超えて、携帯電話や車の購入などの契約、クレジットカード作成などが、親の同意なくできるようになります。 行為の自由度が広がる一方で、その責任が重くのしかかります。経済的に自立していないのに、負債を抱えるリスクが生じるのです。 消費者庁や消費生活センターでは、悪質な事業者による18~19歳をターゲットにした契約トラブルを警戒しています。例えば、ネットの世界では「簡単にもうかる」「これを使えばキレイになる」「こんなにお得になる」といった情報があふれ、本当らしいコメントが付いて、見る人の気持ちをくすぐります。簡単にもうかるなら、貧困なんて日本に存在しないでしょうに。 トラブルは消費生活センターに相談 身を守る手立てとしては、ネットを含め広告情報をうのみにしない。知り合いからであっても、もうけ話は断る。関心があるなら、十分に調べる。あるいは、比較検討をする。事業者と話すときは1人ではなく、家族や知人に同伴してもらう。契約や商品・サービスの利用で、トラブルになった場合やおかしいと思ったときは、地元の消費生活センターに早めに相談をしてほしいと思います。

介護施設の父と通所する母 《ハチドリ暮らし》11

【コラム・山口京子】父が現在の介護施設に入所して、ちょうど1年が経過。先月、ケアマネジャーさんから連絡がありました。父が軽い肺炎で、医師から酸素導入の処方があったという報告でした。継続的ではなく、肺の機能が回復すれば外せるとのこと。 しばらくして、また施設から電話がありました。父が酸素導入の管を嫌がって外し、大声で怒り出して困っているというのです。認知の低下があるのかもしれません。家族としては、本人が嫌がるなら外してくださいと、施設担当者と医師に伝えました。 家にいるときから、本人は「こんなに長生きしたんだから、早くお迎えがくればいい」と言っていました。介護が必要になってから5年目、今年89歳になります。自分のことが自分でできない不甲斐(ふがい)なさを持て余しているようです。冗談なのか本気なのか。本当にそう思っているのかもしれません。 施設の父とは、ガラス越しに対面はできますが、踏み込んだ会話は難しくなっています。入所するに当たって、いくつもの書面を作成しました。終末期医療については、痛みは取ってほしいが、延命治療は不要であると意思表示しました。 「とうちゃんは、死にたいとばかり言ってるよ」 でも実際の場面で、具体的な判断が求められる際の難しさに、戸惑っています。呼吸ができないで苦しいと感じたとき、酸素導入を望むのか、やっぱり嫌がるのか。これから父の体はどんなふうに変化していくのか。意識がなくなった後、医師の処方と家族の思いはどう折り合うのか。

家計ときちんと向き合う 《ハチドリ暮らし》10

【コラム・山口京子】1月のある日、家計の棚卸しをして、今年の予定をおおまかに立ててみました。皆さんはどうでしょうか? 2021年の1月1日から12月31日までの1年間の収入と支出の額を確認されましたか? 12月31日時点の資産の残高を書き出し、1年前と比較してどうなったかを点検されたでしょうか? それを踏まえ、これからのライフイベントについて話し合われましたか? コロナ感染の影響はどれくらいありましたか? 教育資金の準備や住宅ローン返済の見通しなど、計画は実現できそうですか? 見直しが必要になっていますか? 家族を取り巻く環境は様々です。大事なのは家計ときちんと向き合うことです。 わが家はリタイア世帯となりました。収入は年金と少しの就労で、収入と支出はほぼ同じとなり、貯蓄ができなくなりました。今ある資産がこれからどう推移するのかを、ざっくりキャッシュフロー表で見ていきます。あと数年はこの状態を続け、生活のために資産を取り崩すのは70歳以降に延ばしたいと考えています。 そう思っても、将来のことは分かりません。一寸先は闇かもしれません。あるいは、新しいスタートがあるかもしれません。事情が変われば、その都度見直して、乗り切っていきたいものです。

新成人の「経済的自立のために」 《ハチドリ暮らし》9

【コラム・山口京子】このほど「経済的自立のために」というテーマで約40分講演しました。春に就職するか大学生になる高校3年生が対象です。①給与明細の見方、②1人暮らしに必要なお金、③クレジットカードの仕組み、④今春からの18歳成年のこと、⑤トラブルを避ける方法―などを取り上げ、収入の範囲で暮らす習慣をつけること、自分の行為に責任を持つことの重要性を伝えました。 給与明細の見方では、記載されている勤怠・支給・控除のほか、社会保険の働きや社会保険料についても説明しました。総支給額から税金や社会保険料を引かれた金額が可処分所得ですが、それは総支給額の8割程度になる―などです。 1人暮らしに必要なお金については、住むための経費(家賃や水道光熱費など)は手取りの3割以内に収めるように、暮らすための経費(各種の生活費など)は同5割以内に収めるように、将来のためのお金(積立金など)は同2割程度を目安に予算化するように―と伝えました。いざという時のために、100万円は貯めるようにとも言いました。 トラブルは専門機関に相談 クレジットカードの仕組みについては、クレジット会社と消費者との立替払契約、クレジット会社と加盟店との加盟店契約、加盟店と消費者との売買契約によって、「クレジットカード契約」が成立すると説明。特徴としては、キャッシュレス・後払い・金利手数料の3点があり、金利手数料の有無とリボ払いには注意するよう促しました。 「18歳成年」については、契約の責任の重さを伝えました。これからは20歳ではなく、18歳になると保護者の同意なしで契約ができますが、契約上のトラブルを避けるために、正確な情報を収集する必要性を強調しました。

人生100年時代のマネープラン 《ハチドリ暮らし》8

【コラム・山口京子】「人生100年時代のマネープラン」というテーマでセミナーを依頼されました。そのとき、2019年に話題になった「老後2000万円問題」のことが頭をよぎりました。金融庁の金融審議会報告書に載っていた、「老後の30年間で2000万円不足する」というデータ元は総務省の2017年家計調査報告でした。 それによると、月当たりの高齢夫婦無職世帯の収入は21万円台、支出は26万円台で、ざっくり5.5万円の赤字となり、それが30年続くと計算して出した数字です。また、この家計調査によると、高齢夫婦無職世帯の貯蓄は2484万円程度となっていました。 統計数字の平均はお金持ちが「かさ上げ」するので、実態を表してはおらず、注意が必要です。また、どこの機関が、いつどんな目的で、どんな方法で、どういった対象に向けて、どのくらいのサンプル数で、調査をしたのかによって、出てくる数字は変わってきます。 ですので、セミナーでは統計数字を参考にはしても、大事なのは我が家の家計であり、我が家の暮らし方、考え方、価値観に基づいて、お金の管理や生活設計をしましょうとお伝えします。 ちなみに、2019年の家計調査では、月当たり収入が23万円台、支出が27万円台で、ざっくり3.3万円の不足。2020年は収支とも25万円台で、ほぼ赤字は解消されています。解消された理由としては、コロナ禍で特別定額給付金などにより収入が増えたこと、外出制限などで支出が減ったことなどが挙げられます。 健康寿命・働く寿命・資産寿命を延ばす

セミナー再開 「社会保障の仕組み」 《ハチドリ暮らし》7

【コラム・山口京子】コロナ禍の落ち着きにより、対面のセミナーが再開されるようになりました。私は主に、シニアの生活設計・相続、エンディングなどのテーマで話をしていますが、最近、「社会保障の仕組みについて聞きたい」という依頼をいただきました。社会保障の総論的なこと、高齢者に関する保障をテーマに、ということでした。 社会保障の理念は憲法25条にあると言われています。「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(1項)、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」(2項)と、明記されています。この理念のもとに、それを実現する法律が作られ、制度が整備されてきました。 社会保障制度には4つの柱があります。社会保険、社会福祉、公的扶助、公衆衛生の各制度です。社会保険は、国民が病気やケガ、出産、死亡、老齢、障害、失業などの生活の困難をもたらす出来事(保険事故)に遭遇した場合、一定の給付を行い、生活の安定を図ることを目的とした強制加入の保険制度で、社会保障の要になっています。 広義の社会保険には、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つがありますが、一般的には、医療保険、年金保険、介護保険の3つを言います。 両親の生活に介護保険は不可欠 社会保険で画期的だったのは、1961年に実現した国民皆保険と国民皆年金でしょう。それまでは、健康保険や年金に無加入の人たちがいました。そうした人を加入者にするために、国民健康保険、国民年金の制度ができました。当時は高度経済成長の離陸時だったのでしょう。

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7月着工、来年3月ごろ開業へ つくば市旧茎崎庁舎跡地ドラッグストア

ドラッグストアの開業を提案した大和ハウス工業茨城支社(つくば市)を優先交渉権者に決定した、つくば市の旧茎崎庁舎跡地(同市小茎)の利活用について(22年9月26日付)、同市は24日、同茨城支社と23日、30年間の定期借地契約を締結したと発表した。 市公有地利活用推進課によると、今年7月に本格着工し、来年3月ごろまでにオープン予定という。当初、年内オープンを見込んでいたが、コロナ禍で契約締結協議などに時間を要し、開業が約3カ月遅れる見通しだという。 定期借地契約は今年7月1月から2053年6月末までの30年間で、土地賃借料は年約90万円。固定資産税評価額の改定があった時は見直す。 店舗予定地の敷地面積は約2700平方メートル、店舗面積は約1100平方メートル。 周辺住民から要望があった、青果や精肉などの生鮮食品を取り扱うほか、店内に約30平方メートル程度のフリースペースを設け、テーブルといすを置き、来店客が自由に利用できるようにする。さらに敷地内の店外に緑のあるオープンスペースを設け、テーブルといすを置き、来店客がバスを待ったりできるようにする。 茎崎庁舎は2010年4月に閉庁、16年1月に解体され、跡地は更地のままになっていた。(鈴木宏子)

お米を買ってもらい、谷津田を保全 《宍塚の里山》99

【コラム・福井正人】宍塚の里山を構成する重要な環境の一つに谷津田があります。冬にも水が張られた谷津田では、早春、ニホンアカガエルが多数産卵します。カエルが増えると、それを食べるヘビが増え、ヘビが増えるとそれを食べる猛禽(もうきん)類が増えるといった「生き物のつながり」が生まれます。このように、谷津田は生き物の生息域として重要な場所になっています。この環境を守ろうと始めたのが「宍塚米オーナー制」で、今年で25年目を迎えます。 人類が稲作を始めたころ水田が作られたのは、水が手に入りやすい谷津田のような環境だっただろうと言われています。しかし、現代のようなかんがい設備の整った水田耕作では、水が引きにくく、田んぼの形も不揃いで小さく、また周りの木々にさえぎられて日当たりも悪いといった問題があります。さらに、湧き水が入るために水温も低い谷津田の環境は、稲の生育にも作業する人間にとっても不利な状況になっています。 このように、生き物の生育環境としては重要でも、耕作条件としては不利な谷津田での耕作を続けていくためには、いろいろな工夫が必要です。例えば、里山のもつ公益的機能の恩恵を受けている非農家である都市部の市民にもお金や労力を提供していただくことです。私たちの会では、支援としての「宍塚米オーナー制」と労力としての「田んぼ塾」(現在の「自然農田んぼ塾」と「田んぼの学校」)を立ち上げ、谷津田での耕作を維持してきました。 「田んぼの学校」では、たくさんの子どもたちが自然と触れ合い、我々の主食である「お米」がどのように作られるのかを学ぶ場所になっています。 宍塚米のオーナーを募っています 宍塚米オーナー制では、毎年4~9月、谷津田の支援に賛同してくれるオーナーを募り、10月末に谷津田を耕作してくれている宍塚の農家からお米を買い取り、オーナーに発送しています。品種はコシヒカリで、宍塚の里山の猛禽類の象徴サシバにちなんで「宍塚サシバ米」と呼んでいます。

マスクを脱いで巣立ちも 筑波大で4260人の卒業式

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)の卒業式・学位授与式が24日、大学会館で行われ、スーツや袴に身を包んだ生徒らが新たな門出の日を迎えた。22年度の卒業・修了者は4260人。マスクの着用については自由で、一部の生徒らはマスクを外して式に臨んだ。 式典は学群が2回と大学院が1回の3回に分けて実施され、永田学長から各学群の代表者に学位記や卒業証書が手渡された。卒業生と修了生のみが参加し、家族や在校生らは会場の様子をライブ配信で視聴する形となった。式典後の祝賀会は開催せず、謝恩会については大学側が自粛を求めた。 永田学長は式辞で、筑波大が東京高等師範学校の創設から数えて150年を迎えたことや、昨年から文部科学省より指定国立大学法人に指定されていることを述べ、「みなさんがそれぞれに新しい挑戦をすることこそが、本学の価値を世界に発信することであり、みなさんに続く後輩たちの活動の幅を広げていく」と激励した。 卒業式で式辞を述べる永田学長 人文・文化学群日本語日本文化学類の鎌田真凜さん(22)は「コロナ禍での生活は、これまでの当たり前を覆すことばかりだった。オンラインが中心となり、友人や先生方と顔を合わせることすら難しくなった時期もあるが、同じ思いや悩みを抱えた仲間がいることが何よりも救いになり、変わり続ける状況の中でも学びを止めることなく進み続けてこられた」と述べ、教職員や地域の人々に支えてくれたことへの感謝の意を伝えた。 式典の前後には、卒業生が在校生や家族らと大学会館脇に咲く桜を背景にして写真を撮影し、喜びを分かち合った。人文・文化学群で西洋史を専攻し、卒業後は就職するという河野太一さんは「時の流れが速く感じ、うまく言葉にできない。対面授業からオンライン授業、オンライン授業から対面授業への切り替えに慣れるのが大変だったので感慨深い。卒業後は仕事と趣味を充実させたい」と話した。人間学群心理学類に所属する女性は「大学院に進学するので実感があまりない。臨床心理士の資格を取り、将来は心理の関係で働くことができれば」と将来の希望を話した。(田中めぐみ)

聖地土浦に「パトレイバー」デザインマンホール デビューを前に市役所で展示

土浦市オリジナルの「機動警察パトレイバー」デザインマンホール15種類が完成し、24日から市役所2階(同市大和町)で展示が始まった。4月9日まで展示したあと、土浦駅周辺道路に設置する。 カプセルトイのアクリル製マンホールキーホルダーも作成、4月下旬からまちかど蔵(同市中央)、きらら館(同市大和町)で販売する。デザインマンホールの情報をSNSで拡散した人には、オリジナルグッズとして紙製コースター(約2000個)を郵送する。 パトレイバーオリジナルキーホルダー 2022年に開催の「機動警察パトレイバー30周年突破記念 in土浦『TV-劇パト2+』展」では全国から約3000人のファンが来場した。根強いファンが多いため、デザインマンホールを設置することで同市を訪れる人を増やし、回遊性や消費を高めるのが狙い。 キャラクターの背景は土浦の風景や名産