金曜日, 3月 29, 2024
ホーム検索

%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E5%9B%A3%E5%9C%B0 -検索結果

If you're not happy with the results, please do another search.

【シルバー団地の挑戦】16 「つながり結び直したい」 つくばのまぐろ自治会長インタビュー㊦

【橋立多美】シリーズ企画「シルバー団地の挑戦」の舞台、つくば市の森の里団地は、住民の2人に1人が高齢者で、運営を担っていた役員が高齢化し、役員のなり手不足にあえぐ。負担が大きい、活動がマンネリ化しているなどマイナス面を指摘する声もあるという。こうした中、自治会では、シニア世代が平穏な生活を送れるよう、高齢者の引きこもり防止や生活支援事業など高齢化対策事業を推進している。インタビュー2回目は、森の里自治会長の倉本茂樹さん(77)に今後の展望を聞いた。 ―高齢化が進み、近年、自治会ではどのようなことが課題になっていますか。 3年前から急に1人暮らしと認知症者を抱える世帯が多くなり、その対策が喫緊の課題です。1人暮らしで雨戸を閉めて引きこもっているというご近所からの通報や、認知症による徘徊で行方不明になり、警察と民生委員が捜索して保護されるなどの事態は毎月起きています。 私は自治会長のほかに、防災・防犯自警団の団長と市社会福祉協議会のふれあい相談員を兼務しており、1日に3回の巡回パトロール時に、1人暮らしや、同居の家族が仕事で昼間1人になる人に異変がないかなど、見守りをしています。ふれあい相談員には守秘義務があり、約60人の自警団員に個人情報は伝えませんが、さりげない見守り要員として活動してもらっています。力及ばず、私が自治会に関与してから孤独死が2件ありました。この方々は、戸が開かないことを不審に思った訪問介護員と近所の人の通報で発見されました。 ―さまざまな相談に応じて多忙な日々を送っておられますが、結局、だれかが奮闘しないと自治会は成り立たないというのが実情でしょうか。 私は自治会事務所のある森の里公会堂に毎日出向いています。私に付けられたあだ名が「まぐろ会長」。夜でも泳ぎ続ける回遊魚まぐろに例えたそうです。私が会長を7年続けているのは、故郷島根の恩師の教え「社会に貢献しなさい」が染みついているからでしょう。私で役に立つなら…と引き受けています。 高齢化が進む中で国は介護政策を施設から在宅へと転換しました。在宅介護が当たり前となり、高齢化率49.25(2018年の市行政区別人口統計)の森の里は要介護者が激増する可能性がある。家族に頼れない人が増える中、地域の助け合いが重要になります。その要になるのが自治会で、弱まりつつあるつながりを結び直すことが必要です。そのために、もう一肌脱ぐつもりです。 (シリーズ「シルバー団地の挑戦」終わり) ➡「シルバー団地の挑戦」の過去記事はこちら

【シルバー団地の挑戦】15 「マンネリで何が悪い」 つくばのまぐろ自治会長インタビュー㊤

【橋立多美】超高齢社会における自治会運営のあり方や存在意義とは何なのか。入居者が一斉に高齢化しているつくば市内最大の住宅団地「森の里」を舞台に2018年4月から1年間、自治会の動きを追ってきた。シリーズ企画「シルバー団地の挑戦」最終回にあたって、森の里自治会長の倉本茂樹さん(77)に2回にわたり、自治会運営の課題を聞いた。 ―役員のなり手不足が深刻と言われます。 1980年の自治会設立以来、会長と副会長5人は立候補制です。定員に達しない副会長や部長、会計などの役員は、各街区から選ばれる新しい街区委員の中から決めることになっていました。 私が初めて自治会に関わったのは定年退職後です。女房に代わり、初めて街区委員として新街区委員会に出席しました。しかし夜になっても終わらない。役を押し付け合っていたからです。私はこの席で副会長を引き受け、選挙管理規則を改正して新街区委員から役員を推薦してもらうようになりました。もちろん当事者に承諾をとります。 その後3年の副会長時代を経て、会長職7年目の今年は、60代の女性4人が副会長と部長を引き受けてくれました。白髪頭の会長に同情してくれたのでしょうか。役員がシニア世代の男性に偏ると、女性のニーズや声が反映しにくくなるので喜ばしいことです。 ―高齢を理由に自治会を退会する人が多いと聞きます。 99の街区が輪番制で街区委員を決め、広報紙の配布や回覧、会費徴収をしていますが、骨が折れるとか、病気がちであることを理由に自治会を辞めていく人がいます。徘徊など緊急時には自治会員の有無を問わず支援していますが、こうした人ほど地域とつながっていてほしいと思います。 今年度から街区委員の負担を減らすために、これまで3カ月分ごとの徴収だった会費を、半年または1年分まとめて納入できるようにしました。足腰が弱くなり子どもに数日に一度食料を運んでもらう世帯が増えています。一括で納めたら近所と顔を会わせることもなくなります。個人的には、1人暮らしの世帯には3カ月に一度は行って安否確認をしつつ世間話をしてほしいと思っています。 ―外出が難しくなった高齢者が自治会を退会する一方で、若い人たちは自治会に関心がないと聞きます。 自治会に対し、子育て中の若い世代を呼び込む取り組みをしたらどうかという意見がありますが、約3000人の住民中20~30代はわずか412人(14%)。若い世代は夫婦で仕事を持っている人がほとんどで、自治会には参加していない。呼び込むためのアイデアを出してくれても誰が担うのか、という問題があります。 現実として、自治会役員だけでは開催できない夏祭りなどの行事を、高齢者が多い自治会サークルが支えています。文化部に属するスポーツや趣味のクラブ員たちです。気持ちを一つにしたグループの力を借りないと新たな事業の永続性は望めない。行事がマンネリ化していると言う声もあるが「マンネリで何が悪い」という思いがあります。(続く) ➡「シルバー団地の挑戦」の過去記事はこちら

【シルバー団地の挑戦】14 防災士が地域独自の防災計画作りに着手

【橋立多美】つくば市南部の住宅団地、森の里に、平常時は防災の啓発に励み、災害時は避難の要となる人がいる。防災士の松村健一さん(68)。同団地に住んで39年になる。 森の里は首都圏のベッドタウンとして谷田川沿いの平地に造成された。約1300世帯が暮らす市内最大の団地だ。1970年代後半に若年層の入居が始まり、一斉に高齢化が進む。 2015年9月10日、常総市を流れる鬼怒川の堤防が決壊し3000軒以上の家屋が浸水した。松村さんの妻の友人の家がこの時浸水被害に遭い、妻とともに泥の掃除に駆け付けた。この体験が防災への考えを一変させた。「自分の身や家族を守るため」と翌年、同市で行われたNPO法人日本防災士機構の研修講座を受講して防災士になった。 阪神・淡路大震災を教訓として創設された防災士制度は、災害初期段階で、自助と近隣住民同士による共助の活動をけん引する人材の育成を目的としている。研修で専門知識を体系的に学んだ松村さんは、災害に強い地域づくりの推進役になれたらと、昨年度、防災・防犯部を担当する森の里自治会副会長に就いた。 就任1カ月後から毎月発行される自治会報「森の里だより」に防災コラムを書いてきた。「一般論ではなく、森の里ではどんな災害が予想され、どう対処したらいいかという身近な問題を取り上げてきた」と話す。防災活動の重要性を説くコラムの影響か、昨年11月、同自治会が実施した自治会運営に関するアンケートに防災対策を望む住民の声が多く寄せられた。 在宅避難者への配付方法模索 今年度も同じ役に就いた松村さんは「森の里独自の防災計画を作り、災害時体制を確立したい」という。計画の柱は①地震と液状化②避難生活③水害対策だ。 地震と液状化については、東日本大震災の時に液状化で住宅2棟が傾いた経験を生かした計画を盛る。避難生活は「在宅避難」を見込む。同団地と地続きの市立茎崎第三小が避難所に指定されているが、近隣の住宅団地からも避難してくると総勢5000人に上る。自宅が倒壊するなど帰れない人を除いて在宅での生活を想定し、飲料水と食料の配付方法を模索している。水害対策については土のう用の砂約3トンを団地内の広場に備蓄している。 高齢者を始めとする災害弱者が自然災害により被災する事例が多い。これまでは個人情報保護法が妨げになって対象者を把握できなかったが、13年の法改正で自治体に要支援者名簿の作成が義務付けられ、個人情報を地域の民生委員や自主防災組織が共有できるようになってきた。同団地には1人暮らしの高齢者200人が住む。支援が必要な人への仕組みづくりを避難計画でカバーしたいと松村さんは考えている。 平成の30年余は多くの災害に襲われた。「災害の教訓を令和の時代に生かして、地域ぐるみで災害時に対応できる体制を整えたい」と松村さんは熱意を込めて話してくれた。 ➡【シルバー団地の挑戦】の過去記事はこちら

【シルバー団地の挑戦】12 若い世代の参加が鍵 自治会存続に向け住民アンケート

【橋立多美】超高齢化社会の今、高度成長期に建てられた住宅団地や大型の分譲マンションの住民が一斉に老い、自治会が岐路に立たされている。高齢化による活力の低下や加入者の減少、活動をけん引する役員の担い手と後継者不足などで継続が難しくなり、解散した自治会もある。また独り暮らし高齢者が増えたことで安否確認や空き家問題など、自治会は新たな課題に応じた活動に迫られている。 入居開始から40年、つくば市茎崎地区の森の里自治会は住民の2人に1人が高齢者という深刻な高齢化に直面している。昨年6月には「高齢化に伴う自治会運営等に関する検討委員会」を設置して打開策を探ることにした。委員は11人で構成され、佐藤文信さん(68)が委員長に就いた。 検討課題の解決には住民のニーズを知ることからと11月に会員全世帯(1067世帯)を対象にアンケート調査を実施した。調査は選択方式で回答する13の設問のほか、自由に意見を記載する欄を設けた。463世帯(43・4%)から回答を得て集計と分析を行い、年頭に「答申及び意見書」を自治会に提出。このほど同文書が住民に公表された。 文書は自治会運営の維持について、冒頭で街区委員(町内会では班長に相当)対策を揚げている。輪番制の街区委員が各部会に属する一方で、担当街区の会費や寄付金集めなどの役割まで担っているが、高齢で負担が増していることから軽減を提案。軽減されれば脱会の防止策にもなると記述する。同じように役員も役割の見直しと人員の削減を求めている。その他、体力を必要とする夏まつりの準備作業に外部組織を活用する案や、自治会活動を側面から支える自主的な住民組織「コミュニティー委員会」の検討などが盛り込まれた。 世代間を切れ目なくつなぐ活動を 委員たちの意見を集約した最終章の「課題の解決に向けて」では、高齢化対策の特効薬はないとしつつ、子育て中の若い世代を呼び込むことが自治会活性化の鍵を握ると述べる。時間はかかるが、空き家のリノベーションや空き地を利活用して子育て環境を整えることで、若い世代の入居を促そうとするものだ。 さらに「高齢者向けのイベントや事業が多い。子育て世代にも目を向けて」の意見が多く寄せられたこともあり、生活に密着した防災訓練など家族で参加できるイベントや活動の実行を提言。世代間を切れ目なくつなぐことで、住民間の交流と自治会本来の助け合いが生まれるとした上で、「高齢化対策はこの辺りからスタートしてはどうか」と結ばれている。 森の里自治会は3月24日に定期総会を開く。次年度自治会長に立候補して無投票当選が決まった現自治会長の倉本茂樹さん(76)は「2019年度の活動及び予算は、答申の中から実行に移せるものを(優先したい)と考えている。総会で会員の皆さんの理解を得たい」と話す。 調査をまとめた佐藤文信さんの話 意見書で触れたが、自治会の存続には若い世代との融合が欠かせないと思う。そのための仕掛けが重要で、ITを使いこなす若手に自治会の情報発信を任せるなど、時代に即した活動を展開することで人材の幅も広がる。また、多様化する住民の要望に応えるには女性たちの行動力がモノをいう。だが回答者が世帯主に偏り、潜在している女性たちの意見を拾い上げることができなかった。手だてを考えるべきだった。 ➡【シルバー団地の挑戦】の過去記事はこちら

Most Popular