【鈴木宏子】「帆引き船と霞ケ浦の魚食文化」をテーマにしたシンポジウムが16日、かすみがうら市坂、市農村環境改善センターで催された。民俗学者で伝統食を研究する筑波学院大学の古家晴美教授が「霞ケ浦の恵みと魚食文化」と題して基調講演し、霞ケ浦の魚食文化の再興について考えた。

10月につくば市で開催される世界湖沼会議の関連行事、サテライトかすみがうらとして開かれた。古家教授は、霞ケ浦の恵みを地域の人々がどのような形で生活に取り込んできたかの歴史を振り返った。

古家教授によると、明治時代になって水産加工技術が発達し、ハゼやエビの佃煮や桜エビなどが製造されるようになり、特に桜エビは中国に輸出するほど品質が高かった歴史を話した。

一方、庶民が霞ケ浦の魚をどのように食べてきたかについては近年の聞き取り調査資料などを基に、春先の田植え前、夜中にたいまつをたいてドジョウを採りみそ汁の具にしたり、イサザアミの煮干しを酢じょうゆをかけて食べたり、生のイサザアミを二枚貝のタンカイ(ドブガイ)の殻の上でいって塩味で食べたなどの食事を紹介した。母乳の出をよくする食べ物として、出産時に嫁の実家からコイ料理が提供された風習なども紹介した。

その上で古家教授は「今後、魚食文化が霞ケ浦地域の特色としてどのように意識化されていくのか見守っていきたい」などと話した。
続いて行われた事例発表とパネルディスカッションでは、滋賀県水産課職員の関慎介さんが、滋賀県が取り組んでいる「琵琶湖八珍」のブランド化の取り組みを紹介した。霞ケ浦の観光帆引き船事業を発展させるヒントとして、岐阜市歴史博物館の大塚清史館長は長良川鵜飼いと観光事業について話した。

同市歴史博物館学芸員の千葉隆司さんは「霞ケ浦は人と魚が食を通じて関わっていたことで輝いていた。霞ケ浦の魚を食べる文化を絶やしてはいけない」などと訴えた。