筑波学院大学(つくば市吾妻)は、学生が教室から地域に出て、NPOや企業などと社会貢献活動をするオフ・キャンパス・プログラム(OCP)に取り組んでいる。経営情報学部ビジネスデザイン学科2年の塚原太一さん(20)は昨年夏、OCP活動の一環で、認定NPO法人「宍塚の歴史と自然の会」(及川ひろみ代表)と宍塚大池(土浦市宍塚)で外来魚の駆除活動を体験し、同NPOが蓄積したデータをもとに大池の魚の種の変化を未来予測した。

経営情報学部ビジネスデザイン学科2年
塚原太一さん
県立土浦工業高校出身

―なぜ宍塚大池で活動しようと思ったのですか。

大学ではビッグデータを使った未来予測の勉強をしています。宍塚の会は1980年代から大池の生態系の正確なデータをもっていました。大学で学んだ技術を使って宍塚大池の未来予測をしたいと思いました。企業はすでにIT技術を使って将来の需要や業績予測などをしています。この技術を自然保護にも役立てたいと思いました。

―外来植物や外来魚の駆除も体験したそうですね。

昨年6月から8月まで毎週1~3日宍塚大池に通い、水面を覆い水中の酸素を奪うヒシの刈り取りや、在来魚を食べてしまうブラックバス、ブルーギル、アメリカザリガニなどの駆除を手伝いました。宍塚の会と学生計5、6人が毎回参加し船2隻で作業をしました。2時限目の授業が始まる10時半に間に合うように、平日は朝8時から2時間程度、土曜日は昼過ぎまでです。

ヒシの駆除は、胴長を着て救命胴衣を着け、手ごぎボートに乗って刈り取ります。最初は根っこから抜いていたのですが、泥も一緒に引っ張り上げるのでとても重労働でした。重くなって船が転覆しないように、3、4本抜いては岸に戻って陸に揚げ、それから船にたまった水をバケツでかき出し、また沖に戻る作業を繰り返しました。去年の夏はとても暑かったのですが、代表の及川さんはとてもパワフルでした。毎年この作業をしているということで、すごいなと思いました。

刈り取ったヒシをボートに積み岸に向かう筑波学院大学の学生ら=昨年夏(塚原さん撮影)

ヒシの駆除に関する文献がなかなか無いということで、宍塚の会は同時に、ヒシを容器で栽培し、手探りで駆除方法を研究していました。根っこから引き抜かなくても、種になる下の部分から切るとその年は種ができなくなると分かり、途中から、引き抜く方法から刈り取る方法に切り替えました。

2014年ごろアメリカザリガニが急増し駆除したところ、今度はヒシが増えたと聞きました。アメリカザリガニがヒシを刈り取って増えるのを抑えてくれていたんです。食物連鎖のパワーバランスについて考えさせられることが多い活動となりました。

外来魚は、定置網やかごを水中に仕掛けて駆除しました。週1回くらい網を引き揚げ、掛かった魚の種類と重さを測ってデータを取ります。在来魚は池に戻します。

―大池の魚のデータを解析して未来予測したそうですが、どんな結果が出ましたか。

アメリカザリガニが減るとヒシが増えるという相関関係がデータでも見えてきました。それからブラックバスやブルーギルなどの外来魚が増えて在来魚が減ったということもデータで一目瞭然でした。

未来予測では、だれも何も手を打たなかった場合、22年後には大池にメダカがほとんどいなくなるという予測が出ました。宍塚の会が駆除をしなかったら、在来魚はコイなど大きい魚しか残らないことも分かりました。ただし稚魚は外来魚に食べられてしまいますから、コイも今いる大きい個体しか残りません。

未来予測した自然環境の変化を、自然に関わりながら環境を守っている農家や漁業者などに伝えていけたらいいと思いました。未来が分かれば対策方法が必ず出てくると思いますから。

―大学ではこれからどんな勉強をしたいですか。

高校で画像処理技術を勉強したので、さらに技術を学びたいと憧れの先生がいる筑波学院大学に進学しました。防犯カメラの画像から特定の人を見つけるとか、不審な動きをする人を検知するとか、指紋認証などが画像処理技術です。大学ではさらにAR(拡張現実)の技術も勉強していて、歩行しながらのAR技術をもっと学びたいと思っています。例えば新築マンションの物件を見学し、歩きながらスマートフォンなどの画面を通して部屋の中を見ると、現実にはないテーブルとか家具とかが置かれているように仮想現実を見せる技術です。大学院に進学し、将来は画像処理技術の仕事に就くことを目指しています。

(聞き手・鈴木宏子)

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