【コラム・坂本栄】15年前、東京から土浦に戻ったころ、地域のドラッグストア・カワチ薬品の駐車場の広さには驚きました。100~200台が駐車できる広場の奥に店舗を配置するという、「先ず駐車場ありき」のレイアウトです。車社会のお店とはこういうものかと妙に感動したものです。

その車社会を前提にデザインされた研究学園都市のシンボル的なお店、西武百貨店の駐車場に車を入れたときには逆の意味で驚いたものです。立体駐車、走路が狭い、駐車幅も狭い。カワチとは対照的な造りでしたから、いずれ西武は淘汰されると思ったものです(本当そうなりました)。

つくばエクスプレス(TX)が開通してから13年。つくば市の商業的な「ヘソ」は、TX終始点のつくば駅から研究学園駅にシフトしました(駅間競争に終点が負けました)。その理由はいろいろあるでしょうが、「駐車場の使い勝手の善し悪し」があると思います。

ひとつは、カワチと西武の駐車場の形でも指摘しましたように、立駐(つくば駅周辺はこれが多い)vs平場(研究学園駅周辺はほとんど)です。もうひとつは、道路から店舗・駐車場に入る際のアクセスが複雑か単純かの違いです。

つくば駅があるセンター地区の構造は、道路からストレートに店舗・駐車スペースに入れない造りが多く、まるで車を拒否している(お客を拒否している)構造になっています。車社会の研究学園を構想した都市計画者は何を考えていたのでしょうか。想像するに、美しさとか別の機能性を夢想していたのでしょう。

車社会と駐車場

駐車場の話が長くなりました。なぜいくつかの事例を挙げたかというと、本サイトの記事やコラムでも取り上げられていますように、今、つくばのセンター地区問題(西武の建物跡地をどうするか、つくば駅周辺の街をどうするか)が地域の話題になっているからです。

結論を先に言ってしまえば、私は「つくば駅周辺は車社会に不向きな欠陥街だから商業に固執しない方がよい」と考えています。学園都市前期のノスタルジーは捨て、つくば市全体を見据え(あるいは県南中核市の視点から)構想した方がよいと思います。

似たようなことは土浦でもありました。市街地活性化策が議論されていたころ、ある会議でその方策について意見を求められたことがありました。そこで私は①市街地は前車社会(江戸・明治・大正)の構造になっており、現代の商都の要件を満たしていない②それを無理にと言うのであれば、高架道下を公営駐車場にして大駐車スペースを確保すべきだ―と述べました。

今、土浦の旧市街地は「コンパクトシティ」というコンセプトの住宅街化を目指しています(商都復帰を諦めました)。商業地としての適性に欠けるつくば駅周辺も別の絵(住宅+文化福祉施設?)を描いたらどうでしょう。(経済ジャーナリスト)